星旅の覇者   作:エビーフ

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無知の知晴れの日

正月

 

人間は今頃おせちでも食べている頃だろう

 

いや、初詣に行っているかもしれん

 

人間の頃は一人で…

 

この話は止めておこう

 

 

 

 

そう、めでたいことに我輩は無事に一歳を迎え、この広い放牧地に馬として立っている。

 

「おっ、ボー」

 

(佐藤か)

 

「どうだ、ボー。今日も元気に走ったか?」

 

(……当然だ。我輩は今日も風になったぞ)

 

我輩はドヤ顔で答えた

 

佐藤は笑いながら首をかしげた。

 

「お前、ほんとに走るの好きだな。

この調子だと、将来が楽しみだ。」

 

(当然だ。まだまだ世界は広い。もっと速く、もっと遠くまで―)

 

そんな思いを胸に秘めながら、我輩は藁をむしゃむしゃ噛む。

 

(佐藤も正月から仕事か、大変だな)

 

そこへ、他の厩務員がやってきた。

 

「お、ボーか。元気にやってるな」

 

(誰だ……?)

 

佐藤が肩を小突く。

 

「こいつは佐々木。今日からボーの世話も手伝うってさ」

 

我輩は鼻を少し動かして挨拶代わりに鼻鳴きをする。

 

佐々木はそれを見て、眉をひそめながらも小さく笑った。

 

「先輩、ボーは日本語がわかるんじゃないっすか?」

 

「ボーは競走馬になれなくても芸を覚えて食っていけるぐらいには頭がいいからな」

 

「ボーは日本語が分かるのか?」

 

(……もちろん、我輩は元人間だからな)

 

我輩は首を振って軽く鼻を鳴らした。

 

「ほら先輩」

 

 

「こいつの父も頭が良いって知ってるだろ」

 

「そうっすけど」

 

 

佐々木は我輩をしばらく観察していた。

 

その目には、警戒心も、興味も、淡い期待も混ざっていた。

 

(……っておい、父は誰なんだよ‼️)

 

佐藤は笑いながら我輩に言う。

 

「ボー、いっぱい食べて大きくなるんだぞ」

 

(もちろんだ。)

 

(で我輩の父はだれなんだよ!)

 

夕方の光が厩舎を染め、風が窓から吹き込む。

 

「よし、次はあっちの…」

 

佐藤と佐々木は父を教えてくれないままどっかに行ってしまった。

 

(我輩の父は誰なんだよ~)

 

佐藤も佐々木も、いつもクリスタルウィンドの話しかしてくれない。

 

もしかすると我輩が知るべき時は、もっと先かもしれない。

 

でも競馬好きとしても我輩がどの血統なのか知りたいし… 

 

てか今が何年で我輩がどの世代かも分かんないじゃん。

 

母がクリスタルウィンドということは引退した2015年以降

 

それ以外何もわからん。

 

だいたい何で我輩が馬になったのかも分からないし

 

最近馬の本能に自我が持っていかれてってる気がするし

 

よく考えたら実は今の自分の状況をあまり知らないことに気づいた。

 

 

ああ夜空に輝く星よ

 

我輩に全てを教えてくれ

 

我輩は無知を知った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「先輩、ボーは絶対日本語わかってるっすよ」

 

「馬が分かるわけないだろ」 

 

「いや絶対わかってるっすよ」

 

「ならボーに聞いてみるんだな」

 

「自分はボーが日本語分かってるに明日の晩御飯かけるっす」

 

「おっ、本当か」

 

「アイツ頭がいいっすもん」

 

「なら明日確認するか」

 

「そうっすね、Yes,Noの紙でも用意してきますよ」

 

 

 

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