やっぱアセンブルは大事だなって。ラスティに手こずってた俺を救ってくれたメリニットのEARSHOTに感謝。
『ランナー、興味深い情報を入手した。見てくれ』
「ん?」
すいせいにスパチャという名の現金を押し付けて帰った駆は、jrが集めていた情報に目を通していた。jrがディスプレイに映したのは、派手な広告を用いたイベントの告知だった。
『バトルロイヤル・アリーナという催しものだ。月に一度開催される大規模イベントで、常に多くの参加者を募っている』
「ほう。アリーナというと、オールマインドのシュミレーターを思い出すな」
『驚いたことに、このバトルロイヤル・アリーナのシステムもほぼ変わらない仕様だ。本人の戦闘力をデータ化し、電脳空間で戦わせるようだ』
「そんな事が可能なのか……?確かにこの世界には強化人間以外にも特殊な出自の人間がいるようだが」
『そこがこのアリーナの面白い所だ。ホロワールドというゲーム内のキャラクターを強化して、自分のアバターとして使える』
早い話が自分の腕に自信があるものはそのままで、そうでない者はゲームを遊んでキャラクターを強くして挑む事のできるイベントだ。種族による格差を無くすために生まれたシステムと言えるだろう。
『しかも笑える事に、俺達のACもこのゲーム内で再現可能だ』
「なに!?本当かそれは?」
『ああ。ACのように部分ごとのパーツを買って、それを組み合わせてバトルスーツを作るんだ。既に組み上げてある』
「おお!凄いな、これは!」
そう言ってjrがゲーム内で撮った写真を見て、駆は興奮した。まさかゲームでもリアルなACに乗れるとは思っていなかったのだ。大きさは本物のAC程は無く、他のキャラクターよりも一回り大きい程度だったが充分だろう。
『ACは始めからある程度のステータスがあるが、育成ツリーは他のキャラクターに比べて少ない』
「即戦力を揃えられるが、育成による強化の恩恵は少ないってことか……」
『おまけに性能の良いパーツは値段も相応だ。アセンブルのバリエーションは限られるだろう』
「それでも俺達にとっては、一からゲームを始めるよりは勝算があるな」
『その通りだ』
jrは次にバトルロイヤルで良好な戦績を残している上位ランクのリストを表示した。
『バトルロイヤルは点数制で順位を決める。相手を倒すのは勿論だが、ダメージを与えるだけでも点数は入るようだ』
「最後の一人になるまで戦うって訳じゃないのか……」
『参加する人数の関係で難しいのだろう。点数制のルール故に複数人で疑似チームを結成して生き残る作戦もあるようだ』
「なるほどな。じゃあ、この上位ランカー達もか?」
『そうだな。湊あくあと宝鐘マリンが組んだ“あくあマリン”、さくらみこと星街すいせいのコンビ“みこめっと”、猫又おかゆと戌神ころねの“おかころ”のように名前が付けられる程度には有名な戦術だ。
もっとも、これはあくまでバトルロイヤルだからな。正式なチームとして参加することはできない。今挙げたチーム名も単に呼びやすいように名付けられただけだろう』
「そうか……しかし見事に上位が女の子で占められているな」
『作戦と実力の賜物だろう。現実にしろゲームにしろ、彼女達は何らかの才能を発揮して輝かしい結果を残し続けている。自他共に彼女達は“ホロメン”という呼び名が定着している』
「ホロメン……さくらみこもそう呼んでいたな」
誤解だったとはいえ、親友のために体を張る度胸を見せたさくらみこ。なるほど、賞賛を受けるのに相応しい人間だったと駆は一人納得していた。
『ホロメン同士の横の繋がりも深い。過去のランナーのやらかしが共有されていても不思議ではないな』
「ああ……何故か誇張されていたのだけが気になるが」
『噂が肥大化するのはよくあることだ。気にしてもしょうがない』
「そうだな……ん?なあ、バトルロイヤルって賞金が出るのか?」
『肯定だ。1位から3位までが3万、4位と5位が2万、6位から10位までに1万の賞金が授与される』
「月一のゲームのイベントにしては豪勢だな……」
『イベントの基盤になっている“ホロワールド”というゲームは、ホロライブ学園が主体となって開発し、運営しているからな。世界に発信しているエンターテインメントとしての価値は高い。常に参加者を募り、コンテンツを衰えさせないための手段の一つなのだろう』
「なるほどな……」
他にも上位50名の中に入ることができれば、賞金こそ無いが上位ランカーとして名前が出るために宣伝効果は見込めるそうだ。ルビコンほど殺伐としていないとはいえ、この惑星でも裏で荒事は起きている。なにせ自分が拉致されたのだから。
この世界での力試しにもってこいで、上位の戦績を残せば売名効果と賞金が狙える。仮に負けてもペナルティーは存在しない。もしこれが企業からの依頼であったなら、絶対に裏を疑う案件だった。
「――よし、バトルロイヤルに出るぞ、jr」
『了解だ、ランナー』
――――――――――――――――
――バトルロイヤル・アリーナ開始時刻
〔俺の初仕事をランナーの母星で行う事となるとはな〕
〔準備できた機体は軽量二脚タイプ。武器はチャージ可能なリニアライフルとショットガン、両肩に4連ミサイルだ〕
〔OSはブーストキック、マニュアルエイム、アサルトアーマーが開放してある。忘れているとは思わないが、一応な〕
〔上位ランカーと張り合うには育成が足りていない。願わくば鉢合わせたくないものだ〕
〔――メインシステム、戦闘モード起動。ランナー、仕事の……いや、ゲームの時間だ〕
〔独立傭兵ランナーの名を広めに行くぞ〕
――――――――――――――――
バトルロイヤル・アリーナでは、ステージのあらゆる場所にパワーアップアイテムが置いてあり、取得すればこの1試合中だけ特殊なパワーアップ効果が得られる。キャラの育成が不十分ならば、このパワーアップアイテムを集めることで下剋上を狙える可能性も生まれる。
「お、見つけたぞ!アイテムボックスだ!」
「よし。この調子で強くなって、俺達も上位ランカー入りだ」
無論、バトルロイヤル・アリーナについて下調べをした駆も知っている。
そしてそれをどう活用するかも考えていた。
「へへ、お先に失礼するぜ――ぐあっ!?」
「……なっ!?」
パワーアップアイテムの存在を知った時、駆は思った。――これは囮に使える、と。
『身を隠す場所が多い場所のアイテムなんか、のこのこ取りに来るから狙われるんだ』
少し離れた場所で隠れながらチャージ弾をお見舞いした駆は、飛び出してブーストを吹かせて強襲を仕掛ける。背後から撃たれて体勢を崩した一人をショットガンで仕留めにかかった。
「え、ACだと!?今時使ってる奴がいやがったのか!」
『まず一人』
引き金を引き、ショットシェルにたっぷり詰まった弾丸が敵を襲う。適正距離で撃たれたそれは一つも外れることなく、鈍い金属音と共に残っていた体力を全て奪い去っていった。
「こ、この野郎!」
残った一人が慌てて剣を振りかぶってくるが、残念ながらACの機動性に張り合える動きはできていなかった。あっさりかわされたところでブーストキックを食らい、リロードが終わったリニアライフルとショットガンの同時射撃を受けて、青い粒子となって消えていった。
『そして二人。思った通り、パワーアップアイテムを取りに来るのは大して強くないのが多いな』
〔ランナー、同じ場所で狩りを続けるといずれバレる。移動を提案する〕
『了解だ』
囮として使っていたアイテムを取得し、ブーストダッシュで次の戦場へと駆けていく。道すがら、見かけた他プレイヤーを落としながら進んでいった。
小高い丘をジャンプで超えようとしたところで、レーダーが複数の反応をキャッチする。
『む……この動きは戦闘中か?』
見つからないように丘の上を覗ける高度ギリギリまで機体を浮かせると、派手な桜色の爆発が多数のプレイヤーを蹴散らしているのが確認できた。
「みこに勝とうなんて百年はえーんだよ!みこちゃんボンバー!!」
「う、うわあああああ!?」
巫女服を基調にした衣装を纏った、さくらみこが手にしている大幣が振るわれると魔力弾が飛び、それを当てられた相手は断末魔をあげて煌びやかな爆炎の中へと消えていく。一対多でもまったく引けを取らない戦いぶりは、傭兵稼業の駆の目から見ても強敵と判断するのに申し分ない。
〔上位ランカーの一人、さくらみこだな。戦闘ジョブ『戦巫女』をベースに育成を重ねた、広範囲攻撃を得意とする魔法系プレイヤーだ〕
『大物と出くわしたか……だが、連戦の後なら魔力は回復しきっていないはず。そこを攻めるか』
リニアライフルのチャージを溜めつつ、レーダー上の反応がみこ一人になるまで隠れ潜む駆。戦闘音で他のホロメンが加勢に来ないかが懸念事項だったが、その気配を感じないままで丘の上は静けさを取り戻した。
『最初の一発はマニュアルで狙う。ロックオンアラートで気づかれるからな』
マニュアルエイムに切り替えてから、ゆっくりと丘に上がり様子を窺う。戦闘を終えたさくらみこは、丁度反対側に歩き出そうとしていた。
慎重に狙いを定め、リニアライフルの銃口をみこの後ろ姿にあわせる。一呼吸おいて、引き絞られたままのトリガーを放して、チャージ弾が発射された。
当たる。そう確信した駆はロックオン機能をオートに戻し、ミサイルの発射ボタンに手をかけた。
「――い゙っだぁ!?」
アラートが鳴るより早くチャージ弾の直撃を受けたさくらみこは、予期せぬダメージで悲鳴を上げて体勢を崩した。しかし仮にも上位ランカー。即座に立て直して後ろを振り返り、迎撃の構えを取ろうとする。
「こんにゃろー!不意打ちしたくらいでみこに――いだだだっ!?」
振り向いて啖呵を切ろうとしたところに、既に発射されていた連装ミサイルが襲い掛かる。一度距離を取ろうと後ろへ飛びのくが、その時点で距離を詰めていたACからのショットガンが強制的に動きを止める。
「ぎゃうっ!!……なんなんだよいきなりー!疲れてるみこに粘着して恥ずかしくないのかよぉ!!……てか、ACなんて久しぶりに見た!誰なんだよ名を名乗れぇー!」
『独立傭兵ランナー。バトルロイヤル・アリーナ初参加のニュービーだ。お前を倒して名を上げに来た』
「どくりつよーへー?なんだよキャラ作り込んでんな………………いやその声聞いたことあんぞ!この前すいちゃんとこにいた跳だろお前ぇ!」
『まあそうだが……ACに乗っている時はランナーで通ってるんだ。そっちで呼んでくれ』
「うるせぇー!!女の子にバンバン弾ぶち込みやがっ……いだいいだい!!」
スタッガーを取った後も続いているお喋りに付き合っていたランナーだが、両手両肩の武器はリロードが済み次第みこに撃ち込んでいる。
対するみこも大幣を振り回して抵抗を試みているが、さっき技を連発したせいで減った魔力が回復しきっておらず、得意の大技も出せずにACの機動力に翻弄され続けている。リロードの隙を埋めるようにして放たれたブーストキックが決まり、二度目のスタッガーを取られたみこが絶叫する。
「うあ゙ーー!なんでみこにこんな……なんか恨みでもあんの!?」
『恨みは無いが、ゲームなんでな……このまま落ちろ、さくらみこ』
「やだーーーー!!みこのバトルロイヤルがこれが終わりなんてやーーだーー!!」
相当、手間暇をかけてキャラ育成をこなしたのだろう。それがこうもあっさり落とされそうになっているのだから、みこの心情は察するに余りある。ランナーも心の内で密かに不憫に思っていた。
だが、バトルロイヤル・アリーナに出た以上は誰にだって起こり得る事態だ。さくらみこだけが特別なのではない。さっさと割り切ったランナーは真正面からショットガンをお見舞いし、みこにトドメを刺した。
「うぇぇ負けたぁ!お前、顔覚えたかんなぁ!次会ったら56す!ぜってー56すぅぅぅぅぅぅ!!」
『…………』
いくら何でも口悪すぎるだろ。コーラルをキメたドーザー並みに口調が乱暴なみこが消えるのを眺めながら、ランナーはそんな事を思っていた。
〔さくらみこの撃退に成功だ。これである程度、ランナーの戦績が認知されるだろう〕
『タイマンを意識していない構成で助かったな。ここまで一方的に勝てるとは思っていなかった』
〔消耗した後を狙えたのは運が良かった。仮に万全な状態で出くわせば簡単にはいかなかっただろう〕
『今回、彼女は運が無かったな』
――――――――――――――――
大物を倒した後も、パワーアップアイテムを利用した狩りを行っていたランナー。彼はここで大きな壁とぶつかる事態に陥っていた。
「みんなー、ここにもアイテムがあったよぉー!」
「おお~、流石ころさん」
「やりますねぇ!」
「そういえば、みこちゃんもうやられちゃったんだって」
「えっ、それ本当ですか?」
「あちゃ~、誰かと合流する前に狙われちゃったのかなぁ?」
「こぉね達は序盤で集まれたから良かったよぉ」
「でも、油断は禁物だよ」
大物が釣れたのは良い。だが、明らかにチームアップに慣れている上位ランカーが四人も来てしまった。
『ラッキーパンチは何度も続かないな』
〔戌神ころね、猫又おかゆ、白上フブキ、大神ミオ。この四人の集まりはゲーマーズと呼ばれている。個人のプレイングスキルも高い。これではこちらが餌の立場だ〕
『獣人二脚タイプが四人か……』
〔戌神ころねは『ファイター』、猫又おかゆは『シーフ』の完全物理型、白上フブキと大神ミオは妖術と刀を扱う『陰陽師』『退魔師』を併せ持つバランス型だ〕
『さっきのように速攻を仕掛けるのは無理か……』
隠れて観察していたランナーだったが、ゲーマーズの四人の様子が変化した事に気付く。
「ん~……みんな、気づいてる?」
「はい。白上も視線を感じますね」
「誰かに見つかったのかなぁ?ノエたんとか、ぼたんちゃんとか」
「うち達が集まってる所に仕掛けてくるかな……?」
何かに感づいた素振りを見せて、頭のケモ耳を動かして周囲の様子を探り始めた。
『……気取られたか?』
〔獣人は人間に比べて感覚が鋭い。ACのレーダー並とは思わなかったが……〕
『このまま隠れていても、いずれ見つかる。そうなる前に先手を打つべきか』
〔今のお前では敵わないだろう〕
『言ってくれる。なに、負けても死ぬわけじゃないんだ。ルビコンよりは気が楽だ。それに、今の機体でどれだけ食らいつけるか試してみたくなった』
〔ゲームではあっても遊びではない。忘れるなよ、ランナー〕
『当然だ……!』
ランナーはマニュアルエイムに切り替えて、集団の中心目掛けてミサイルを発射する。音に反応したホロメンが一斉にミサイルの発射された方向に顔を向けた。
「――ミサイルだ!でもロックされてない!みんな離れて!」
その中でもいち早く気付いたのは、シーフとして索敵能力に優れていた猫又おかゆだった。手早く他の仲間に指示を出して、自分も大きく飛びのいてその場を離れた。
仲間との距離が離れた空間のど真ん中に、クイックブーストで飛んできたACが勢い任せに着地する。それを見たフブキが興奮して声を張り上げた。
「うわぁー!ACだぁーーー!!アリーナで見なくなって久しいけど、やっぱりカッコいいですよねーー!!」
「いや、フブキさあ……たった今、攻撃されたのに何を呑気に叫んでるのさ」
「それは勿論分かってますって!やい!さっきから白上たちを見てたのはあなたですね!?」
『そうだ。鼻が利くな、野良犬』
「狐じゃい!!」
「こぉねは野良じゃないやい!ミオしゃに飼われてるから!」
「いや飼ってないし!?」
「そうだよ、ミオしゃのペットは僕なんだから」
「おかゆんは何言い出してるの!!」
〔ここにもハンドラーがいたようだ〕
『……躾はしておけ、ハンドラー』
「違うっつってんでしょ!?」
騒がしいお喋りの時間は終わり。五人のプレイヤーがそれぞれ戦闘態勢をとって、仕掛けるタイミングを狙っていた。ランナーの正面にいたおかゆが、にんまり笑いながら話しかけた。
「フブにゃも言ってたけど、ACを見たのは本当に久しぶりなんだぁ」
『……?』
「だからキミはきっと、アリーナには初参加だと思うんだけど、どうかな?」
『ああ、その通りだ。独立傭兵ランナー。名前を売るために参加した』
「ふふ、そっかそっか。じゃあ、ベテランの可愛いお姉さんが、初めてのキミに胸を貸してあげちゃおうかなぁ?」
おかゆの表情が挑発的な笑みへと変わり、腕を組んで胸を強調するようなポーズを取った。まるで色仕掛けのような行動に動揺したり呆れたりする周囲のホロメン達。
『そうか。ならば遠慮なく借りるとしよう』
ACのショットガンが火を噴いた。素早く鋭く差し込まれた一発は、おかゆのしなやかな身のこなしの前に避けられてしまった。
「あははっ、思い切りが良いね!みんな、思ったより手強そうだよ!」
「もう!からかってないでちゃんと戦いなさいよ!」
「AC戦は久々です!真面目に楽しくやりましょう!」
「いくよぉ、新規者くん!」
――――――――――――――――
ホロワールドでのACの扱いは、他の種族と比べても特殊な面が目立つ。例えば高速移動であるダッシュアクションは通常ならばスタミナを消費するものであるが、ACの場合はダッシュの代わりにブースト機能が備わっており、ただ地上を移動するだけならばゲージは消費しない仕様になっている。ゲージ消費はジャンプ、アサルトブースト、クイックブーストだけに限定されており、移動面で言うならACのほうが優れていると評価できるだろう。
「くぅぅ、思っていたよりしぶとい……」
相手が近接武器を持っていないので何度か斬り合いに持ち込もうとして、AC特有の機動力で上手く躱されているフブキが言葉をこぼす。ゲーマーズ側は数で優っているが、高速移動のスタミナ消費の有無が理由で戦況を拮抗にまで押し込まれていた。ランナーに一番食らいついているのは四人の中で一番動けるおかゆだが、シーフ職は防御力が薄いので強引に攻め込んでも返り討ちにされる可能性が高い。
『生き残る術は、ルビコンで嫌というほど叩き込まれたからな。――緩んだな?』
「え?ぐはっ!」
集中が途切れ、スタミナ管理をミスしたフブキがショットガンの一撃でスタッガー状態に陥る。AC戦でのみ発揮される特殊状態のスタッガーは、攻撃を受けて衝撃値が溜まると発生する。少しの間だけ行動が制限され、受けるダメージも増加するデバフ状態だ。スタッガーになったフブキに向けて、リニアライフルと肩ミサイルが放たれる。
「フブキ、危ないっ!」
『!……くそ、またか』
「な、ナイスフォロー!ありがとうミオー!」
ミオがフブキを押しのけるように庇い、思うようにダメージを与えられないランナーが悪態を吐いた。このようにチームプレイには利点があるが、欠点もあった。
ACは他キャラよりも当たり判定が大きく、フブキやミオの妖術による範囲攻撃なら容易くダメージを与えられる。だが、混戦状態に持ち込まれることによって、自分以外のチームメンバーを攻撃に巻き込んでしまう可能性があるために使えないのだ。
範囲攻撃を食らわない位置まで離れるとチーム同士のフォローが出来ず、ACの機動力で一人ずつ潰される。ゲーマーズは苦しい戦いを強いられていた。
「あたしを忘れちゃ駄目だよー!」
『うおっ!?』
もっとも、苦しい状況なのはランナーも同じだ。当たり判定の広さのせいでダメージが重なり、ダメージレースでは完全に負けている。ころねの巨大なハンマー攻撃の直撃をかわしたはいいが、重量武器の衝撃波が当たりスタッガーを引き起こす。
『しまっ――』
「僕がいただくよ~?」
スタミナ切れで動けないころねに代わり、狩るチャンスを狙っていた獣の如くおかゆが躍り出た。両手に構えたシミターの連続攻撃が、ACの残り体力を瞬く間に削っていく。
「ふふ、キミも中々強かったよ。だから……最後は派手にイカせてあげるね♡」
勝利を確信し、舌なめずりをしながら大技の構えに入ったおかゆ。大きくシミターを振り上げながら飛び上がったところで、ミオから怒号が飛んだ。
「何やってんのおかゆ!相手を見て!」
「え?」
改めて相手を見たおかゆは目を見開いた。ACから緑色の光が溢れ出していたのだ。
「――あ、ヤバっ――」
興奮していたおかゆはすっかり忘れていた。ACの奥の手とも呼べる回数制限のある特殊スキルの1つ。発動させた技のキャンセルは出来ず、そのままACに突っ込んでいく。
――おかゆのシミターが届く寸前で、巨大なパルス爆発が発生した。
「うわあぁぁぁぁぁぁぁ!?」
「「「お、おかゆー!!」」」
アサルトアーマーに身を焼かれ、大技をキャンセルさせられた挙句にスタッガーになってしまったおかゆに対し、ランナーはショットガンとリニアライフルを撃ち込んだ上でダメ押しとばかりにブーストキックを食らわせた。
「ううっ、乱暴されたぁ……僕をどうするつもり……?」
『どうもこうも、脱落してもらうだけだが……』
「塩対応……あ~あ、負けちゃったか。みんな~、僕の仇をよろしくね~」
「うおーーーっ、おかゆんの仇ぃ!お覚悟!!」
『受けて立つ!来い!』
消えてしまったおかゆの為に、戦意を滾らせて斬りかかってくるフブキ。ランナーがそれを迎え撃とうと動き出した所で、jrから警告が飛んできた。
〔ランナー、こちらに接近してくる反応が一つある〕
『この状況で乱入者か!?』
「……むっ、白上の五芒星センサーも反応しました」
「このスピードって……」
戦いの手を止めて、こちらに向かってくるプレイヤーを確認しようとする。目を凝らしてみてみると、彼女はメイスを振り回しながら派手な土埃を上げて突進してきた。
「こんまっするこんまっする~!!団長もまーぜてーー!!」
「ウワーーーーーー!!ノエル団長来ちゃったーー!!」
「今はちょっと不味いかもーー!」
『また上位ランカーか……!』
ノエルの勢いに気圧されるホロメンを尻目に、ランナーは全ての火器をノエルに向けて発射した。相手が避ける素振りすら見せず、攻撃が全弾命中したのを目の当たりにしたランナーは目を疑ったが、着弾した時の硬い金属音を聴いて血の気が引いた。
ノエルは直撃に怯みもせずに突進を続け、ACとゲーマーズに向けてメイスを振り下ろした。凄まじい衝撃が戦闘で傷付いたプレイヤー達を襲う。
『おいどうなってんだあの重量二脚は!!こっちの手持ち武器が全部弾かれたぞ!?』
〔上位ランカー、白銀ノエル。白銀聖騎士団という治安維持部隊のトップだ。戦法は思考能力まで戦闘力に回しているような豪快な突撃。魔法のような特殊攻撃こそ持たないが、単純な筋力と頑強さを盾にして、強引な攻めで相手をすり潰してくるぞ〕
『人間版のジャガーノートか……!?』
たまらず空へ逃げ出したACに構わずに、ノエルは地上にいる残りのゲーマーズを叩き潰している。その隙にクイックブーストを使って離れようとした瞬間、一筋の光がACを貫いた。
『なんだ、何をされた……!?』
〔……こちらのレーダー外からの長距離狙撃だ。してやられた〕
「おっ、流石はフレア!相変わらず良い腕してるぅ!」
「くぅ、回復する時間さえあれば……」
「ううっ、今回はこれまで……おつでしたぁ!」
「ごめんおがゆ~……仇は取れんかった……」
〔AP残量0。残念だが、ここまでだ〕
『上位ランカーのホロメンを二人倒せたんだ、悔いはない……』
「――えっ!?見ない顔だし、アリーナは初めてだよね?凄いねキミ!ちょっとお話聞きたいな……ああ、消えちゃう!待って待って!」
――――――――――――――――
――バトルロイヤル・アリーナ終了後
〔撃破数は38人。内上位ランカーは2人。残念ながらランク入りにはならなかった〕
〔囮作戦は効果はあったが、いささか消極的だったようだ。撃破数が伸びず、スコアを稼げなかったのがランク外の原因だ〕
〔だが、さくらみこと猫又おかゆの二名を撃破できたのは僥倖だった。独立傭兵ランナーの名を知らしめるきっかけになるだろう〕
〔分かっているとは思うが、今後もホロワールドを遊んでパーツ確保とOSの拡張を忘れるなよ〕
〔白銀ノエルのような、極端な特化型は珍しくない。こちらも手札を増やさなければ、上位ランカーは夢物語で終わる〕
〔リザルトは以上だ。今日は速やかに休息しろ〕
[RANK≫B]
―――――――――――――
新着メッセージ2件
――さくらみこ――
「にゃっはろー。エリート巫女アイドルのさくらみこだよ」
「バトルロイヤルでは世話になったにぇ~。あの後も見てたけど、みこをやっつけた後にゲマズにも絡みに行くとかマジで命知らずじゃん」
「それで割と良い試合してんだからさ、みこもビックリしちゃったよ」
「あれ見てさ、ノエちゃんが警備とかの仕事を任せてもいいかも!って言ってるらしいにぇ。みこ詳しいことは知らんけど」
「…………ぅぇ」
「……それと、すいちゃんの時は言い過ぎたにぇ」
「ホロメンに話聞いて回ったんだけど、確かにお前に声かけられたけど、断ったら大人しく引いていったってみんな言ってた……」
「みこ達にナンパしてくるもっと質の悪いのがいるからさ、お前もそうなのかって勝手に思ってたにょ……」
「…………噛んだ」
「と、とにかく色々言ってごめん。変な噂はみこが違うって言うから、少なくともホロメンの間では誤解は無くなると思うにぇ」
「それからさ、ホロワールド一緒にやらない?」
「あのAC、全然育ってないみたいだし、エリートなみこが進めるの手伝ってやるにぇ」
「その気があったら連絡ちょうだい。じゃ、おつみこー」
「もぐもぐ~おかゆ~!キミに酷い事されてポイ捨てされた猫又おかゆだよ~」
「バトルロイヤルお疲れ様~。いや~、あの後にノエルちゃんが来るのは予想外だったよ~」
「あ、最後にキミを墜としたのは不知火フレアちゃんっていうんだ。エルフ族で弓装備の女の子だよ~可愛いよ~」
「それと、みこちゃんが君について話を聞いて回ってたみたいだけど、僕は正直忘れてたな~」
「女の子と仲良くなりたいなら、時には強引さも必要だよぉ。もちろん、迷惑にならない範囲でね?」
「もし、それを守れるならぁ……僕達と一緒にホロワールドで遊ぼうよ~」
「負けた時は、あ゙~~~ぐや゙じい゙~~~!!って感じだったけど、フブキちゃんも言ってた通りホロワールドだとAC乗りってあんまりいないんだ~」
「だから、キミの事にみんな興味津々……みたいな?」
「そういう事だから、色よい返事をお待ちしてま~す。完食~おかゆ~!」
ランナー、どちらの依頼を受ける?
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さくらみこ
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猫又おかゆ
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二人同時
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依頼を断る