「……墓参りに来たはずなんだがな」
霊魂に実体の鈴と脇差を持った天狗が嘆いている。咎を背負った天狗が、友の墓参りにもらい受けた二つの道具、それはある別の事柄から引き寄せられていた。
「夜であるからにしては空気が異質すぎるな……」
「うっ、ひぐっ、」
「誰かないているのか?」
泣き声がする方へ向かう天狗、向かった先には祠とそのそばで泣く少女がいた。
「大丈夫か?」
「え…あっ……お兄さん…だれ?」
「……
「え、えっと」
『呪われたヤツが来たよ』『学校来ないで欲しいよね』『早く死ねばいいのに』『おいっ、これ食べろよ』『あっははははほんとに食ったぜこいつ』『早く死ねよな』
「…………」
何かを思い出して震える少女、それを見て黙って引くことにした風師。
「そうか、言いたくないのならいい、それよりもここを抜け出したほうがいい」
「う、うん」
「そういえば、お前の名前は何と言う?」
「
「そうか……?何かいるな、」
風師は泣いていた少女、離合風菊を連れて歩き出す。友への墓参りの道すがらの人助け、彼の名前は人を見下す意味をなすが、懐かしい面影に風師はこんな状況でもかなりのご機嫌だ。
「アレは…鴉、いや人面鳥か?」
「あっ、空を見ると…」
「?!」
気配をたどってたどり着いた先にいた怪異、人面鳥。逃げるように空へ飛ぶので自然と視線を上に向ける風師と空を見ることを恐れる風菊の注意喚起、一歩遅く、怪異によって呪いが振りまかれる。
「悪い、もっと警戒するべきだったな……」
「ごめんなさい、私が言わなかったから」
「いや、知らなかった俺の落ち度だ、それよりも今ので目をやられた、少し運んでくれ」
「わ、わかった」
気配をたどることを可能とする風師であったが、異質な空気と呪われた身ではそれは叶わなかった。
「あれ?なんで君がここにいるの?」
風菊が夜の祠から離れて進むとカメラを持った一人の女性が、呪いに侵された二人に声を掛ける。
「?」
「あれ?覚えていない?おかしいな、呪いの対処法は教えたはずなのに…」
「呪い?」
「ごめんね、詳しく話している時間はないの、君は知っているはずだから、この先の鳥居をくぐれば町に戻れる、思い出して、君は呪われるだけの理由と、解除する力がある」
重要なことながら直ぐに、別れを告げる女性、何がなんだかわからずに、その場を後にしようとしている。
「……それと、君、この子を守ってくれるかい?」
「……これも何かの縁だ、いいだろう」
風師は女性の言葉に了承をする。そして、また歩き出す。
「……やはり、呪いだけでは形容しがたい物だなこれは、」
「そういうものなの?」
「呪いと言ってもいろいろあるがな、だが、あまり力はなさそうだな、アレラ以外は」
風師が見つめる先には、同じく幽霊と、地面に埋まった怪異がいた。
『ふむ、片方は似ているな、我が友に、そしてもう一つは、これは勝てる気がしないなぁ』「気を付けろ、あれはただの怪異ではない」
「おや、どうしました?」
「いや、形が綺麗だな」
怪異として、形が確定している幽霊は、女の姿をした剣士だった。
「なるほど、そういうことでしたか。私は色々あってこっちに来た者です。それよりもこの下のはどうにかしたほうが良いかと」
「確かにな、風菊、下がっていろ」
「う、うん」
地面に埋まっている怪異に女の幽霊と友に近づく風師。
「行きますよ」
「ああ、」
「ぶっはぁ、いや~助かりましたよ。御二方、ありがとうございます」
出てきたのは金髪金眼の羽を生やした女性、土に汚れた服を払い、挨拶をする。
「私は
「まったく、ずいぶんと元気ですね、申し遅れました。私は、
「風師天傲だ」
「離合風菊だよ」
地中に埋もれていたのに、異質な空気の中なのに、元気よく、楽しんでいこうと、笑うメリア、呆れながらも遅い挨拶をする雛菊。
「で、なんでこんな場所にいるんだ?怪異は夜に動くものだが、明らかに今の時代の怪異じゃないな」
「いいじゃないですか、旅は道連れ世は情け、協力しましょうよ、恐らくですが貴方も記憶があやふやなのでは?」
「気づいていたのか」
風師の質問に淡々と答えるメリア、逆に聞かれた言葉に風師は面を食らう。
「記憶、みんななくなってるの?」
「全部ではないでしょう。ですが、この街の、この惨状では、そう行ったものは普通と捉えるべきです」
「雛菊さんはこういったことに慣れてるの?」
風師とメリアの会話に自分を含め、皆の記憶の大半がなくなっていることに気づく風菊。心細い声に雛菊が安心をさせるように話す。
「慣れてないですよ、ですが、住んでいたような気がします。それに、悲観しているだけでは進めないですから」
「そうなのかな、」
「しみったれた空気ですね!もっと気楽に行きましょうよ!」
「空気を読め貴様は」
「こんな怪異だらけの街で、こんな空気では押しつぶされてしまいます!なら、知り合いもいない少女もいるんですから、楽しまないと!どんなことでも楽しんだものがちです」
子供ながらに、この状況に納得しようとする風菊を逆に明るく話すメリア、陰鬱な空気は瞬時に消し飛び、怪異しかいない夜の町が一瞬で変わる。
「街が滅びようが、世界が滅びようが、残った我々で何とかするしかないんです。先ずは無くしたものを取り戻しましょう!風菊、家に案内してくれますか?」
「……うん!」