ギターヒーロー   作:右から左へ

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NIPPON

 

 

 そして昼休み。

 

 いつもの謎スペースで弁当を食べようと席を立つと、何故か廊下に他クラスの生徒たちが溢れていた。

 

 そして何故か全員私を見ている。

 

「ひぇっ……」

 

 思わずデクくんを盾にして背中に隠れた。

 

 体育祭の直前にも同じ事があり、他のクラスの人達がA組に押しかけてきて宣戦布告をしたり、何故か異様に敵意を向けてきた。

 

 それなのに体育祭ではA組が上位を独占していたので、きっとまたヘイトが高まっているはずだ。そんな中、ヒーロー科で唯一予選落ちした私がここにいる。

 

 まさか、あげつらいに来たのか、泣くぞ。

 

 また嫌味でも言ってくるのかと身構えてると、遠巻きに私を見ているだけで誰も何も言おうとしない。そんな状況に頭に血が上った爆豪が凄みにいった。

 

 やっちゃえ爆豪! なぎ払え!

 

「モブども邪魔だッ! どけッ! 殺すぞッ!!」

 

「おぉ、すまん。道を開けろってよ」

 

 イキリ立つ爆豪に、他クラスの子たちはすんなりと道をあけて譲る。前みたいなギスギスした雰囲気はないようだ。

 

「お、おう……」

 

 勢いをそがれた爆豪は教室を出ていく訳でもなく、その場で手持ち無沙汰に突っ立っている。妙な空気になったところで、爆豪が再びキレ散らかした。

 

「いや、テメェら、A組になんの用だァ!?」

 

「お前には関係ねぇよ。俺ァちょっとギターヒーローに用事があるだけだ」

 

 ヤクザの鉄砲玉みたいな男子生徒が、ギロリと私のことを睨みつけてくる。体育祭で切島くんとガチンコの殴り合いをしていた……鉄哲くんだったかな。どちらも身体が硬化する、個性被りの子だったのを覚えている。

 

 そんな相手にガンをとばされ、ひょえっと思ってデク君の後ろで縮こまっていると、デク君が私をかばうように前へ出た。頼もしい。

 

「ギターヒーローに何の用だってんだ、ゴラァ!?」

「テメェには関係ねぇつってんだろうがァ!」

「あぁ!? ヤんのかゴラァ!?」

「いてまうぞ、ボケェ!!」

 

 そんな私をよそに、爆豪と鉄哲くんがメンチを切って威嚇し合っている。……ここ、国内最高峰のヒーローを養成する学校だよね? 底辺ヤンキー高校じゃないよね?

 

「はい、ストーップ」

 

 そんな鉄哲くんにスパァンとどでかい張り手が叩き込まれると、ぐしゃりと地面に叩き付けられた。

 

「揉めごと起こすんじゃないよ」

 

 B組のまとめ役、姉御の拳藤さんだ。

 

「なにすんだ、拳藤!」

「それはこっちのセリフ。喧嘩しに来たんなら帰るよ」

「ぐぬぬ……」

「ごめんね。こいつギターヒーローのファンでさ、サインが欲しいんだってさ」

 

「体育祭の曲、死ぬほど感動した! サインくれ!」

 

「あ、はい、いいですよ」

 

「いいのかよ!?」

 

 何故か爆豪が驚いてるけど、ヒーロー科では「芸能レッスン」*1もあり、ファンサービスもヒーロー業務の一環だと授業を受けている。サインを求められたら応えた方がいいだろう。

 

 鉄哲くんが嬉々として差し出してきた色紙とペンを受け取って、つい「Bocchi」とサインしようとして思いとどまった。ライブ後の出待ちでファンに囲まれた時には「ぼっち」名義でサインしたけど、今はバンドは関係ない。

 

 だから───

 

 

Guitar Hero

 

 

 ちょっと恥ずかしいけど、そうサインする。

 

 

 名は体を表すと、相澤先生が言っていた。

 

 だから、これは私なりの決意表明。このサインに負けないヒーローに……なれたらいいな。うん。

 

 それにしても、原作ぼっちちゃんの真似してサインの練習をしておいて良かった。上手く書けたので調子にのって、けつばんちゃんのイラストを追加したら、なぜかホラー絵になった……

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 私の画力は画伯並*2だったのを忘れて、呪いの人形が首を吊っているような絵を描いてしまった。

 

 サインは可愛くかけるのに、どうして……

 

「ぎ、ギターヒーローとしてサインするのは初めてなので、ちょっと失敗しましたね……書き直します」

 

「おぉ、初物か! 縁起良いからそのままでいいぞ! あんがとな!」

 

 そう言って握手も求められたので手を握る。何だか有名人になった気分だ。色紙を持って意気揚々と出ていく鉄哲くんを、何故か爆豪が親の仇を見るような目付きで睨んでいる。

 

「じゃあ、私もお願い」

 

「あ、はい」

 

 拳藤さんからも色紙を差し出されたので、同じようにサインをする。ホラーになるので今度はけつばんちゃんは描かない。うん、上出来。

 

「サンキューね! 応援してるよ、ギターヒーロー」

 

「あ、あの僕も……」

 

 拳藤さんに色紙を渡してまた握手すると、今度はデクくんに色紙を差し出された。

 

 そして気が付くと廊下に溢れていた他のクラスの生徒たちが並んでいて、ズラリとサイン待ちの行列を作っている。

 

「ヤオモモ! 色紙作ってくれよ、頼む!」

「俺も!」「私も!」

 

 それを見たA組の生徒たちも、何故か八百万さんに頼み込んで色紙を創造してもらい、同じように並びはじめた。同じクラスなら別に並ぶ必要なくない……?

 

 そして、ひたすらサインと握手を繰り返したけど、列は減るどころか増えてきている。どうやら上級生っぽい人たちも並びはじめているようだ。

 

 そのまま昼休みが終わっても列が途切れずいたため、午後の授業にやってきた相澤先生にその騒動が発覚して、全校生徒に向けて校内サイン禁止令が出された。

 

 とはいえ、それ以降は常に遠巻きに人集りが出来るようになってしまい、落ち着いて昼飯を食べることも、謎スペースでギターを弾くことも出来なくなってしまった。

 

 

 動物園のパンダになった気分だ……

 

 

 

 ◇

 

 

 

「ご、ご飯を食べる時は、誰にも邪魔されず、自由で救われてなきゃダメなんですよ……独りで、静かで、豊かで……」

 

「お前は何を言ってるんだ」

 

「お、落ち着いてお昼ご飯が食べたいです……」

 

 謎スペースでギターを弾いてたのが周囲にバレたせいで、人が押し寄せるようになっていた。ウサギは寂しいと死ぬけど、構いすぎてもストレスで死ぬんですよ。*3

 

 昼休みの居場所が無くなり、落ち着ける場所を探して校内をさまよっている所を相澤先生に見つかって、事情聴取として職員室まで連れてこられた。

 

 そして、職員室で弁当を食べながら、相澤先生にグチをこぼしている最中だ。

 

「分からんでもないがな……婆さんに頼んで、保健室で食わせてもらうか」

 

「ほ、保健室でギター弾いても怒られませんかね……?」

 

「怒られるに決まってんだろ。というか前は何処で弾いてたんだ?」

 

「えと……人気(ひとけ)のない別棟の階段の下とか、ですかね」

 

「ハァ……」

 

 なぜかクソデカため息を吐かれた。何で?

 

「お前はヴィランに狙われてるのを忘れているのか……人気の無いところに独りで居るんじゃない。あまり行動を制限したくはないんだがな」

 

「えっ、でも雄英ならセキュリティもしっかりしてるし、安全じゃ……」

 

 雄英バリアがあるし、校内には講師兼ヒーローが沢山いる。ヴィランに狙われているとはいえ、国内でトップクラスで安全なはずだ。

 

「忘れたのか、ヴィラン連合にはワープの個性持ちがいる。それに……」

 

 そこで言葉を区切ると、相澤先生らしくなく、どこか迷いを含んだまま言い淀んだ。机を指でとんとんと弾きつつ、慎重に言葉を探しているようで、やがて考えがまとまったのか、その指先がぴたりと止まった。

 

「……お前には伝えておいた方がいいか。雄英に内通者が居る可能性がある。だから校内でも単独行動は控えろ。昼も他の連中と食堂にいた方が安全なんだがな」

 

「む、む、無理です! えっ、内通者!?」

 

「あくまで可能性の話だから他言無用だ、絶対に他の奴には漏らすなよ。いるかも分からん内通者探しで、疑心暗鬼になるのは避けたい」

 

「い、いるんですか……?」

 

「まだ疑惑程度だが、用心するに越したことはないというだけだ。特にお前はな」

 

 原作でそんな展開あった……? 体育祭が終わってヒーロー殺しが出てくるくらいまでは覚えてるんだけど、それ以降は読んでなかったのでよく分からない。ちゃんと読んでおけば良かったなぁ……あっ、ヒーロー殺し!

 

 慌ててスマホを取り出して、ニュースサイトを検索する。しかし、どこにもヒーロー殺しの情報は見当たらなかった。

 

「どうした、急に」

 

「つかぬ事をお聞きしますけど、ヒーローを殺して回るヴィランっています?」

 

「ヒーローに殉職はつき物だが、最近はそんな凶悪なヴィランは聞いた事ないな」

 

「そうですか……」

 

 原作では今頃クラスメイトの飯田くんのお兄さんが犠牲になってたような気もしたけど、そんな様子もないし、そもそもヒーロー殺しが台頭していないようだ。

 

 

「そういえば、お前に聞いておきたい事がある」

 

 私が少し安堵していると、真剣な表情で相澤先生がそう尋ねてきた。

 

「えっ、私はスパイじゃないですよ」

 

「お前にスパイが出来るとは思ってないから安心しろ」

 

 原作知識で迂闊なことを聞いたかな、と思って慌てて否定したら鼻で笑われた。失礼な。

 

「体育祭以来、ギターヒーローのことで雄英に問い合わせが殺到していてな、少々業務に支障が出てきている。ネットでのギターヒーローちゃんねるの活動は再開するつもりはないのか?」

 

「ぎ、ギターヒーローちゃんねるですか? 今は授業とか補習とかバンドで忙しくて、配信する余裕が無いですね……」

 

 体育祭が終わっても、まだ補習は続いている。他のクラスメイトは入学前に受験に備えてみっちり鍛え済みなのに、私はジョギングくらいしか運動してなかった。

 その差が一ヶ月ちょいで埋まるわけもないし、クラスのみんなも同様に鍛え続けている。

 

 そして人一倍補習を頑張った上で、バンド練習も遅くまで行っている。自宅に帰るころにはフラフラだし、配信する気力も時間も無くなっている。

 

「だろうな。なら仕方がない」

 

「えっ、いいんですか?」

 

「聞いてくれと言われているだけだからな。聞いた上で、お前が無理だと言うなら仕方ないだろう」

 

 なら聞くなよ、と思うけど、聞いた事実が大事なんだ。大人は汚い。

 

「それともう一つ聞いておくが、お前が今まで配信した動画、音楽系の配信サービスを使う予定はないのか?」

 

「えと……使い方がよく分からないので」

 

「なら仕方ないな。もう話は終わったから行っていいぞ。婆さんには話を通しておくから、明日からは保健室で……」

 

「仕方なくないのさッ! ガキの使いじゃないんだから、もっとちゃんと説得してくれないと困るんだよ!」

 

 ネズミ……根津校長がカットインしてきて、適当に終わらせようとした相澤先生に食ってかかっていた。

 

「しかし校長、現状でも後藤はすでにオーバーワーク気味ですよ。補習は減らせませんし、バンド活動は支援するという約束です。そして、動画配信を強要する権利は我々にはありません」

 

「それには考えがあるのさ……その前に音楽配信なら詳しい人材がいるじゃないか! カモン、山田くん!」

 

 校長がパンパンと手を叩くと、山田……プレゼント・マイク先生がやってきた。

 

「何か用スか?」

 

「ギターヒーローの楽曲、音楽配信したいんだけど、君に権利周りや手続き代行お願いできるかい?」

 

「おぉ! ようやく配信する気になったのか! そのくらいならお安い御用だが……レコーディングはやり直さないのか?」

 

「えっ……それって、けっこう時間かかったりしますよね? 音源はとってあるので、それで大丈夫なら、そのまま使いたいんですけど……」

 

 レコーディングを真面目にやろうとするとかなり時間がかかるイメージがある。自分でやってた時でも満足いくまで、繰り返し繰り返し練習しながら録音していた。

 それに大体7年間、ほぼ毎日、弾いてみた(稀にオリジナル)を投稿してたから、ざっくり2500曲くらい?ある。その内半分はこの世界の曲の弾いてみただから、権利者に無断で音楽配信は出来ない。

 

 それを除いても配信出来るのは1250曲くらいになるから、それを全てレコーディングし直すのは時間がかかりすぎるからやりたくない。

 

 それに、広告収入が増えてからは機材にもお金かけてるから、それほど音質は酷くないはずだし。

 

「そんな暇は無い、レコーディングは無しだ」

 

「ふーむ、ちゃんとした設備で録りたかったが、しゃーないか。いいぜ、後で音源持ってきてくれ。それと書類と……あ、そうだ! 『ピースサイン』はレコーディングさせてくれよ。あれは動画配信してないだろ?」

 

「あの曲を配信してくれという問い合わせも多かったからネ! ぜひ頼むよ!」

 

「あ、はい」

 

 校長が仕切ったら秒で纏まった。面倒にならなければ、勝手に進めてもらって問題ないので助かる。書類仕事とか超苦手。

 

 

「よし! 音楽配信の件はこれで一段落かな。後は動画配信の件だけど……」

 

「音楽配信するなら、動画配信は無理にやらなくてもいいんじゃないんですかね」

 

「相澤くんが窓口がパンクしている苦情や陳情、お偉いさん方の小言の対応をしてくれるなら、それでもいいんだけどネ?」

 

 相澤先生がうんざりした様子でこぼすが、校長から釘を刺されて無言で顔を逸らす。そんなに問い合わせが酷いのか……今もなお、職員室で鳴り続けている電話の対応に追われているオールマイトは、私に関係ないと思いたい。

 

 

「後藤くん、これは取り引きだ。断ってくれても構わないよ」

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 

 ─── 数週間後の昼休み

 

 

「「Plus Ultra!」」

 

「さあ、始まりました、ギターヒーローちゃんねる、UAレディオ。お昼の配信の時間でーす!」

「今日で6回目ですねー」

「本日のアシスタントは私、ピンキーと!」

「インビジブルガールでお送りします!」

「そして、メインパーソナリティはもうお馴染みの」

 

「ぎ、ギターヒーロー、です。よろしくお願いします」

 

「「パチパチパチパチパチ!」」

 

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コメント:お、一週間ぶり

コメント:急に配信しなくなったから終わったかと思ってた

 

 

「ごめんねー、職場体験でヒーロー科は一週間、プロの事務所まで出向してました!」

「防犯上の観点から、学校行事の予定は配信で話すなと言われてるからねー」

 

コメント:襲撃があったからしゃーない

コメント:防犯意識がしっかりしてるようで何より

コメント:職場体験はどこの事務所にいったん?

 

 

「私とインビジブルガールはヨロイムシャの事務所だったよ!」*4

「色々と勉強になったけど、特に大きな事件もなく平和に終わったね」

「ねー、平和が一番!」

「ギターヒーローはガンヘッド事務所でしょ?」

 

「あ、はい。お茶……ウラビティと一緒にガンヘッド事務所にお世話になりました」

 

コメント:意外なヒーロー事務所だな

コメント:ガチなバトルヒーローじゃん

コメント:芸能系に強いとこに行ったかと思ってたが

コメント:音楽系とかな

 

 

「せ、戦闘能力が皆無なので、欠点を補おうかなと……ガンヘッドさんに格闘術を親身に教えて頂いたので、本当に有意義でしたね」

 

「ギターヒーロー、戦闘訓練すごい頑張ってるよね!」

「毎日イレイザーヘッドにしごかれてるよね。頑張っててエライ!」

 

「えへへ……それほどでも」

 

「では、あまりお喋りに夢中になってると、また苦情がくるのでオープニングはこの辺にして、一曲目行きましょー!」

「今日はなに弾くのー?」

 

「特に決めてないですね……何かリクエストがあれば弾きますけど」

 

「ピースサイン!」

「もうそれ何度もリクエストしてるじゃん! いい加減別なのにしようよ!」

「だって動画配信されてないし、ここでしか聞けないんだよ!」

 

「あ、この前、プレマイ先生にレコーディングして貰ったので……音楽配信サービスに、もうすぐ登録されると思います……」

 

「マジで!?」

「やった〜!」

「じゃあ、別なのにしようか……リスナー何かリクエストある?」

 

コメント:「はたらきたくない」

コメント:「きのこたけのこ戦争」

コメント:「TAVEMONO NO URAMI」

コメント:未発表のオリジナルがあれば

コメント:何かテンション上がるやつ

 

 

「あ、上三つは無理ですね……相澤先生からそれ系はライブや生配信で絶対弾くなと言われてるので」

 

「え、どうして?」

 

「ひ、ひみつです……なので未発表の曲でいいですかね?」

 

「おーけー! 未発表の曲、聞きたい!」

 

「た、体育祭で『ピースサイン』とどっちを弾くか迷った曲ですね。ギターソロアレンジで、椎名林檎の『NIPPON』、です……。あ、合図したらそこのトランペットをプァーと吹いてもらっていいですか?」

 

「いいよー!」

 

コメント:椎名林檎シリーズ好きだけど、ギターヒーローの年齢考えたら小学生の時に歌ってたと思うと闇深

コメント:歌舞伎町の女王を歌う小学生♀

コメント:罪と罰すこ

コメント:小学生が考えられる歌詞じゃねえな……

コメント:「私が作曲した訳じゃないので」

コメント:わけがわからないよ

 

 

 

 

『Hurray! Hurray!

 日本晴れ! 列島草いきれ 天晴!

 

 Cheers! Cheers!

 いざ出陣! 我ら時代の風雲児!』

 

\プァ ーーー !!/

 

 

 

 ・

 

 ・

 

 ・

 

 

 

『Hurray! Hurray!

 The wind is up

 And blowing free on our native home!

 

 Cheers! Cheers!

 The sun is up

 And shining bright on our native home!』

 

 

 

「うおぉぉぉ! 何かもの凄く燃えるね、この曲!!」

「無性にサッカーしたくなってきた!? ナンデッ!?」

 

コメント:ほんまサッカーしたい不思議

コメント:ちょっと公園行ってくる

コメント:男子がみんな校庭に走って行ったんだけど……

コメント:よしサッカーしようぜ! お前ボールな!

 

 

「あ、サッカーワールドカップの日本代表の応援歌なので……」

 

「ワールドカップって大昔にやってたやつ?」

「なるほどね……なるほど?」

 

コメント:個性社会になってから消えたスポーツの祭典だったか?

コメント:教科書で見た記憶はある

コメント:こんな名曲聞いたことないんだが

コメント:いつものギターヒーローの存在しない記憶

コメント:よくわからん個性

コメント:不思議ちゃん極まってる

コメント:やっぱり天才は何かを犠牲にしないとなれないんだな……

 

 

「でも、この曲なら体育祭にぴったりだね!」

「どうして体育祭で歌わなかったの?」

 

「どっちを歌うか悩んで、ピースサインにしたので……」

 

「そうだった!!」

「来年! 来年の体育祭で歌って!」

「その前に配信! 音楽配信プリーズ!」

 

「は、配信する予定は無くて……」

 

コメント:工エエェェ(´゚д゚`)ェェエエ工

コメント:そんな殺生な

コメント:よし、雄英に問い合わせしよう

コメント:それだ!

コメント:何かギターヒーローがスマホ見だした

コメント:いつものイレイザーヘッドからの指令だろ

 

 

「えっと……近日中にレコーディングして配信させるので、雄英に問い合わせはしないように。問い合わせしてきたら配信はさせん……だそうです」

 

コメント:ラジャー了解!

コメント:ありがとうイレイザーヘッド!

コメント:神

コメント:配信たのしみ

 

 

「音楽配信決定! という事で、くれぐれも問い合わせは控えてください!」

「イレイザーヘッドはやると言ったらやる人なので、冗談でも問い合わせが殺到したら本当に配信なくなりますからねー」

「というわけで、二曲目いきましょー! じゃあまたリスナーからリクエスト募集します!」

「今度は未発表は無しね! 過去に発表されてる曲からで!」

 

 

 ・

 

 ・

 

 ・

 

 ・

 

 ・

 

 

「あ、予鈴だ!」

「午後の授業が始まるので、今日はここまで!」

「じゃあ、まったねー!」

 

「「Plus Ultra!」」

 

「「バイバーイ!」」

 

 

 芦戸さんと葉隠さんの元気の良いあいさつと共にペコリとお辞儀をすると、配信がきれた。

 

「ひとりちゃん、おつかれー」

「授業始まっちゃうから早く教室戻らないとね」

「次の授業なんだっけ?」

 

「あ、英語ですね」

 

 さくっと後片付けを済ませ、カードキーで施錠すると、私専用の放送室(プライベートルーム)を後にして教室に戻る。

 

 

 なぜ生配信をしてるのかというと、校長先生から、私のためにプライベート空間を学内に用意するから、その代わり昼休みのギター練習の風景でも配信してくれないか、という提案があったからだ。

 

 配信は強制じゃないから、気が向いた時だけでいい、配信以外でも部屋はいつでも自由に使って構わないと言われたので、つい了承してしまった。

 

 用意された部屋は職員室の隣。セキュリティはガチガチらしく、教室と同じぐらいの広さで、防音ガラスでコントロールルームとブースに区切った本格仕様。プロも使っていそうな音響機器やレコーディング機材もひと通りそろっている。

 

 内装もやたら豪華で、ふかふかのソファーやお洒落なローテーブル、折り畳み式の仮眠用ベッド、ウォーターサーバーに冷蔵庫、小さなキッチン、洗顔台やユニットバスまで完備。冷蔵庫には常にペットボトルのお茶やジュースが補充され、ローテーブルにはお菓子のケータリングまで置かれていた。

 

 普通にここで暮らせそうなほど整っている。ホテルか。

 

 お昼ごはんも、ランチラッシュに特別にランチボックス(弁当)を作ってもらい、部屋まで届けられるようになった。おかげでわざわざ母親に弁当を頼む必要も無くなった。毎日弁当を作るとか、地味に大変だからね、ほんと。

 

 ここまでして貰って配信をサボる訳にもいかないし、「いいから配信しろ」という校長の無言の圧も感じた。

 

 なので、初回はプレゼント・マイクに手伝って貰ってWebラジオ感覚で生配信した。成果は上々、流石プロのラジオDJと思えるほど、話題回しが完璧だった。私なのに全く緊張せずに話せたし。

 

 2回目以降はお茶子ちゃんや梅雨ちゃんに手伝って貰えるようになり、だらだらと教室のノリで喋りながら、適当にリクエストされた曲を弾くようになった。そしていつの間にか、A組女子でアシスタントを持ち回りで配信をやるようになり、今にいたる。

 

 配信以外でも暇があれば何かと入り浸るようになると、すっかりA組女子のたまり場になっていた。

 

 そうして八百万さんが色々な楽器やリラックスアイテムを創造しまくっては部屋に設置していった結果、ここでずっと暮らしたいと思えるほど快適空間になってしまった。

 

 それに、やっぱり防音がしっかりした部屋だから、ガンガン音を鳴らしても怒られないというのが良いね。

 

 実況生配信も興味はあったけど、コミュ障の私が出来るわけないので、やろうとも思ってなかった。だけど、陽キャ揃いのA組女子のサポートのおかげで順調に配信できている。

 

 前世でもラジオは結構聞いていて、Ad〇ちゃんも一時期オール〇イトニッ〇ンでメインパーソナリティを務めていて、初々しい感じが良かった。

 

 それ以外は主におっさんがMCやってる番組ばかり聞いていた。お笑い芸人系、スカ〇ケ……その中でも一番好きな番組は「GR〇〇VE LINE」だった。ラジオDJの軽快なトークと即興DJミックスが凄くかっこよくて、色々なアーティストを招いては楽しくお喋りをしていた。

 

 そして、定期的にMCが失言しては炎上していた思い出……そんな番組を打ち切ったJ(自主規制)は絶対に許さない。

 

 今世でも当然プレゼント・マイクのラジオDJは聞いているし、山田もラジオリスナー兼ハガキ職人なので、プレマイ先生のファンらしい。たまにラジオの話で一緒に盛り上がっている。

 

 そんな前世から好きだったラジオというコンテンツを、Webとはいえまさか自分でやるとは思わなかったけど、やってみると意外と楽しい。

 

 録画の動画配信だと納得いくまでレコーディングを繰り返すから疲れるし、Webラジオならライブ感覚でやれるから思ってたより気が楽だ。人目も無く、身内のノリで好きにやれるのがいいね。

 

 

 そういえば、警戒していたヒーロー殺しは結局現れず、職場体験は何事もなく平和に終わってしまった。

 

 飯田くんのお兄さんは普通にヒーロー活動してるし、デク君も職場体験で野生のヴィラン退治を何件かさせられただけで終わったらしい。

 

 ネットで調べても全く情報が無いし、そもそも存在してないっぽい。

 

 

 別に事件が起きて欲しいわけじゃないけど、何かもやるな。

 

 

 

 

*1
スピンオフのヴィジランテ参照

*2
しょうこお姉さん

*3
ただの俗説

*4
2人の職場体験の情報ないのでインターンと同じ事務所ということに






Webラジオ、校内放送もされてます

アシスタントの傾向
・梅雨ちゃん&お茶子
まったり雑談しながらゆるりと曲を弾いて終わる

・葉隠&芦戸
一番ラジオを意識してちゃんとやってる
陽キャ二人で話題を上手く回して盛り上げ隊

・耳郎&八百万
ディープな音楽の話題だったり、音楽史とかの話題がメイン
耳郎ちゃん、セッションお願いしようとして、いつもヘタレて諦めている

そして、Webラジオのコメントには検閲が入っている想定です。犯罪予告や脅迫、バンド関係のたれ込み、「おっぱい!(気さくな挨拶)」などのセクハラ発言は表示されないようになっています

酷いケースは垢BAN、公安関係者に自宅訪問されています

なので基本行儀の良いコメントしか表示されてません

アンチも湧かない平和な世界


作中で使った楽曲をSpotifyに纏めていますhttps://open.spotify.com/playlist/3b5CPp2GTcLwipbnNBoNph?si=RkK8r2ZATBylBshI-9P-eA&pi=npUESHt5TCmxG



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