ギターヒーロー   作:右から左へ

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※前話の注釈
Webラジオと言ってるだけで、普通に動画の生配信です
GR〇〇VE LINEでもラジオと同時に動画配信してたからそんなノリ




チケット争奪レース

 

 

 ── 少し時間が巻き戻り、体育祭の翌週

 

 

『まもなく新宿~、お出口は~……』

 

「ひとりちゃん、着いたわよ。降りましょ!」

「ぼっちちゃん、はぐれないようにね~」

「は、はひ……」

 

 混雑した電車に揺られながら、新宿に到着した。下北沢から一本、10分ほどで着くくらい近く、電車もホームも人で溢れ返っている。

 すでに人混みでグロッキーになりつつ、ずんずん進んで行く山田を追って、喜多ちゃんと虹夏ちゃんに手を引かれてついていく。

 

 前世ぶりに来た新宿駅は、やはり見渡す限り人の波で埋め尽くされていた。

 

 わざわざ新宿まで来たのは、きくり姐さんのライブを観にきたからだ。車で送って貰うか悩んだけど、結束バンドのみんなでお出かけだし、新宿駅周辺は車じゃ逆に不便だったりするので、電車で移動してきた。けど、想像以上にきっつい。帰りはタクシー使おう。

 

 新宿ダンジョンを迷いなく進む山田を、喜多ちゃんにしがみつきながら追いかけ、階段を上ったり下りたり、複雑な地下構内を進む。そして若者がたむろしている階段をのぼると、地上に出てすぐに新宿FOLTが見えた。

 

「ここだよ」

「雰囲気あるね……」

「スターリーよりアングラ感ありますね……」

「…………」

 

 オシャレだけど、スターリーより年季の入ったその佇まいは、ヴィランの溜まり場になってそうな雰囲気ある。

 

 思わず入るのに躊躇していると、

 

「あ、相澤先生……」

 

「ん……? 誰かと思ったら後藤か」

 

 何故かきくり姐さんを背負った相澤先生と遭遇した。

 

「ど、どうしたんですか、それ」

 

「これが財布もスマホも忘れて、飲み屋で無銭飲食していたのに遭遇してな……金を貸してくれと泣きつかれたから立て替えてやったら、礼にライブのチケットを押し付けてきて寝やがった……」

 

「お、お疲れさまです……」

 

 疲れた様子の相澤先生の背中で、すやすやと気持ちよさそうに寝ているきくり姐さん。もうすぐライブの開演時間だと思うけど、寝ていて大丈夫なのか……きっとダメなんだろうな。

 

 そんな全く起きる様子のないきくり姐さんを、相澤先生が揺り起こした。

 

「おい、いい加減起きろ。ライブだったんじゃないのか」

 

「んあ? もう着いたのー? あれ結束バンドのみんなじゃん? あれ、ぼっちちゃんはー??」

 

 寝ぼけた様子で辺りをキョロキョロと見渡しているが、私と目が合っても気が付いてないみたいだ。それも当然で、体育祭以来、外出するとファンに囲まれるようになってしまったため、最近は変装するようにしているからだ。

 

 黒いウィッグに黒縁の伊達メガネ、服装も母親が買ったガーリー系はやめて、少し地味なやぼったい服装にしている。

 

「あ、わたしです……」

 

「あっ、ぼっちちゃん! どうしたの? イメチェン?」

 

 眼鏡を外して軽く会釈すると、すぐ分かったようで、にぱ〜と笑いながら懐から鬼ころを取り出して、美味しそうに飲み始めた。

 

「起きたなら降りろ。人の背中で酒を飲むな」

 

「ぷはー! あや、ありがとね、相澤っち!」

 

 相澤先生の背中から降りるが、足取りがふらふらしている。そして私にもたれかかって来たかと思うと、急に抱きついてきた。

 

「そうだ! 昨日! ライブだったでしょ!? スターリー行ったのに入れなかったんだよ~。満員だって言われてさー。ね、ね、次のライブのチケットちょうだい!お願い! ねっ!」

 

 そのまま抱っこちゃん人形のようにしがみついて喚きだすきくり姐さん。チケットをあげたいのは山々だけど、昨日ライブが終わったばかりだから、次のライブのチケットはまだ貰ってない。

 

「あ、あの、次のライブのチケットはまだ無くて……」

 

「えー!? あ、じゃあ、FOLTでやろうよ! 対バンしよ! 対バン! あ、これからライブだから今から演る?」

 

 そのライブを観にきたんですが。

 

 そんなやり取りをしてると、FOLTから慌てた様子の女の人が駆け出してきた。何かを探しているようでキョロキョロと辺りを見回し、きくり姐さんに気が付くと鬼の形相で詰め寄ってきた。

 

「廣井ッ! また遅刻しやがって、もうとっくにリハ終わってるぞ!!」

 

「あ、志麻じゃん。ごめんねー、財布忘れてさー、居酒屋から出るに出れなくて……」

 

「なら連絡くらいしろ! というか言い争ってる暇も無いんだ、早く来いッ!!」

 

「あ、対バンしよ~……」

 

 そう志麻さんに怒鳴られて、FOLTの中に引き摺らていく。もうSICKHACKのワンマンライブが始まる時間だ。

 

 そのままライブハウスの中に入っていく相澤先生についていくと、フロアはスターリーの倍以上のキャパ、中規模の箱といった感じ。

 

 そして、すでに店内には客が入っていて、客層がスターリーとは全然違っていた。結束バンドの観客は学校の友だち繋がりがメインなので、ほぼ高校生。その上、過半数以上が喜多ちゃんのフレなので、オシャレで陽キャなパリピJKばかり。

 

 しかし、FOLTには成人済みのガラの悪そうな客が大半で、顔や腕にタトゥーが入っている人もいる。ヴィランの溜まり場っぽい雰囲気ある。

 

「ひょえぇ……」

「おうちかえりたい……」

 

 みんなで相澤先生を盾にして背中に隠れながらフロアを進んでいくと、カウンターに立っている背が高めの、目付きの悪い男の人が話しかけてきた。

 

「あら、ヒーローさんが何の用? ウチは真っ当なライブハウスよ」

 

 気だるそうにしている男の人は、下唇と両耳に沢山のピアスがあり、シルバーアクセをジャラジャラと身に着けている。そして前をはだけた紫色のシャツを羽織り、長髪をポニーテールに纏めた艶があるオネエ系。

 

「今日はただの客だ」

「あ、あの……きくり姐さんにチケットを貰って……」

 

「あら~、きくりの知り合いの子? ここ(FOLT)の店長、吉田銀次郎、37歳で~す。銀ちゃんて呼んでね。……もしかして、あの子(きくり)また外で何かやらかした?」

 

「居酒屋で無銭飲食しそうになっていたところを立て替えはしたな」

 

「あの子ったら……ごめんなさいね。酔っ払うとよくスマホや財布を忘れてくのよ……困った子だわ」

 

 ため息をつく銀ちゃん。

 

 いかにも反社な出で立ちだけど、面倒見がいい、心が乙女なおっさんだ。きくり姐さんが酔って機材や建物を破壊しても出禁にせず、弁償だけで許しているほど懐が深い。

 

 スターリーだったら一発レッドでぶん殴られて出禁だろう。まぁ、店長はきくり姐さんの素行を知ってるから、スターリーでライブをさせる気は無いみたいだけど。

 

「じゃ、ゆっくりしてってね。トガちゃ~ん、カウンターお願い!」

 

 そう言って、スタッフに指示を出しながら忙しそうにライブの準備に戻っていく。きくり姐さんが連絡もつかずに、ついさっきまで行方不明だったみたいだから大変そうだ。

 

 見渡すと、フロアの客もどんどん増えてきてほぼ満員、もう500人以上はいそう。インディースバンドのワンマンで、ここまで集客できるんだなぁと感心していると、バンドグッズを販売しているコーナーを見つけた。

 

 オタク心をくすぐられて物販に吸い寄せられると、SICKHACK(シクハック)のバンドグッズがあった。通販でいくつか買っていたけど、見たことないグッズが沢山ある。

 

「あ、あの……ここから、ここまで2個ずつください。あ、SIDEROS(シデロス)のグッズもある……これも2個ずつで」

 

「ひとりちゃん、どうして2個ずつ買うの?」

 

「じ、実用と保管用です」

 

 布教用も買いたいけど、布教する相手もいない……いや、耳郎ちゃんならこういうの好きかもしれない。CDを貸して引きずり込もう。

 

「あ、布教用にCDを1枚ずつ追加でお願いします」

 

「ぼっちちゃん、買うね……私たちも早くちゃんとしたバンドグッズ作らないとだねー……誰かさんが勝手に海賊版売らないように」

 

「バンドグッズは貴重な収入源」

 

 山田が100均の結束バンドを、勝手にバンドグッズとして売り出していたのはすでに虹夏ちゃんに報告済みだ。喜多ちゃんの周辺でも、みんな色とりどりの安物の結束バンドを巻いていて、申し訳なさで居た堪れないらしい。

 

「作るとしたら、私たちもお揃いで着れるバンドTシャツとタオルと……ちゃんとした結束バンド型リストバンドとかかなぁ」

「ストラップとかキーホルダー、缶バッジも売れ線ですよね!」

「ぼっちがサインしたギターピックとか、高く売れると思う」

「CDも作らないとだねー」

 

 自分たちのバンドグッズを作るというのも恥ずかしいけど、一ファンとしたらやっぱりバンドグッズがあると嬉しいもんだ。早くけつばんちゃんぬいぐるみを作りたい。

 

 

 そして、推しのバンドグッズを大量にゲットしてほくほくしていると、フロアの隅のテーブル席に座っているSIDEROSメンバーを見つけた。

 

 ぼざろ原作では結束バンドのライバル的ポジションだった、新宿FOLTを拠点にしているガールズメタルバンドのSIDEROS(シデロス)

 

 メタル系は、画太郎大先生の絵に釣られてジャケ買いした「マキシマム ザ ホルモン」がすごく刺さったので、CDを全部買ってヘッドバンキングしながらヘビロテして聞いていた程度。ジャンル自体はそれほど聞いてなかった。

 

 だから、ネットでSIDEROSのCDが通販されているのを見つけて、特に期待せずにファングッズ感覚で買っただけ。

 

 だけど、そんなSIDEROSの曲は、私に良く刺さった。

 

 

「あ、あの……シデロスのヨヨコさんですよね?」

 

「そうだけど、何?」

 

「あの、サ、サインください!」

 

 色紙が無いので、買ったばかりのSIDEROSのニューシングルのCDの封を開け、CDの表に直接サインしやすいようにペンと共に差し出す。最近はよくサインをねだられる事が多かったから、ペンだけは持ち歩くようにして良かった。

 

「べ、別にいいけど……あんた達も書きなさいよ」

「うちらもっスか? いいんです?」

 

「ぜ、ぜひ!」

 

 ヨヨコちゃんがサラサラっとサインを書くと、他のメンバーにも書くように促してくれる。そしてメンバー全員のサイン入りCDが完成すると、私に手渡してくれた。

 

「はい」

 

「か、家宝にします!」

 

「サインくらいで大袈裟ね。そんなのいつでも書いてあげるわよ」

 

「じゃ、じゃあ、ギターにもサイン貰えますか?」

 

「え゛っ」

 

 いそいそとケースからギターを取り出して、ヨヨコちゃんに差し出す。最近愛用している、八百万さんが創造したギターだ。

 

「え……本当にギターにサインするの? 後から文句言っても知らないわよ……?」

 

「い、言わないです!」

 

 恐る恐るといったように、ギターにサインをするヨヨコちゃん。そのまま隣のあくびちゃんにギターを渡そうとしたが、

 

「いや、自分はムリっス。それ、話題のギターヒーローモデルすよね? 何百万すると思ってるんスか」

 

「いま、三百万くらい」

 

 ぶんぶんと首を振って絶対にギターを受け取ろうとしないあくびちゃんに、山田がシュバってきて値段を告げた。

 

「元々100万ちょいの最上級のハイエンドモデルだったけど、ギターヒーローが雄英の体育祭で使ってるのが話題になってから転売ヤーが買い漁って高騰してる。生産数もそれほど多くないモデルだから、まだまだ上がると思うよ」

 

「「ひえっ……」」

 

 そんな事になってるのかとちょっとびっくりした。

 

「な、なんてギターにサインさせるのよ!? 責任持てないわよ!!」

 

「も、もらい物だったので……それに売るつもりはないので大丈夫です。大切に使います」

 

 他のSIDEROSのメンバーは頑なにサインしようとしないので、仕方なくギターをケースにしまう。あくびちゃん達のサインも欲しかった……

 

「ふ、ふんっ! 私たちはギターヒーローも抜いて世界一のバンドになる予定だから、そのギターももっと価値が出るはずよ!」

 

 プルプル震えながらそう宣言するヨヨコちゃん。原作のSIDEROS(シデロス)は、同年代のバンドの中で頭ひとつ以上飛び抜けて上手く、原作では未確認ライオットで優勝してメジャーレーベルからも声がかかっていた実力派だ。

 

 実際、日頃からよくSIDEROSの曲は聞いてるので、それがただの虚勢じゃないのは知っている。

 

「それに、ギターヒーローにカバーされたインディーズバンドは、SICKHACK(シクハック)と私たちSIDEROS(シデロス)だけなのよ!」

 

 そう言ってヨヨコちゃんが胸を張る。

 

 確かにインディーズじゃその2バンドしかカバーはしてないけど、ただ普段からそれほどインディーズにアンテナ張ってないだけなんだ。

 たまにタワレコのインディーズコーナーで試聴するけど、前情報がないとスコップするのも一苦労だし、メジャーデビューしているバンドですら全て追いきれてない。

 

 基本的にランキングから適当に自分好みのアーティストや曲を見つけたら、弾いてみたでギターソロにアレンジしてるだけ。それは前世の曲も、今世の曲も変わらず、割とミーハーな方だと認識してる。

 

「ギターヒーローにカバーされるって、そんなに凄いことなんですか……?」

 

「当たり前じゃない、カリスマよ! 今のところは世界で一番ギターが上手いわね、今のところは! それに作る曲も神がかってる曲ばかりなのよ!」

 

 ドヤ顔を決めるヨヨコちゃん。作曲はろくにしてないから誤解なんだけど、そこまで褒められると悪い気はしない。

 

「あの、ギターヒーローに勝手にカバーされても、怒ったりしないんですか……?」

 

「怒る訳ないじゃない! アレで私たちの知名度爆上がりして、フォロワー数も増えたんだから!」

 

 よし、言質とったぞ。遠慮なくカバーしよう。

 

 今日買ったSIDEROSの新曲を練習して、昼のWebラジオで演奏しようかな。

 

 

「盛り上がってるところ悪いっスけど、姐さんたちのライブ始まるッスよ」

 

 薄暗かったステージがライトアップされ、きくり姐さんと志麻さん、寿司侍さんが登場する。

 

 

 そして、この日のSICKHACKのライブは、テンションが上がったきくり姐さんが、ダイブしたり、観客に口に含んだ酒を吹きかけたり、歌詞を忘れて即興でアレンジしたり、MCでFワード連発したり、機材を壊して銀ちゃんに怒られたり、酔いすぎてゲロ吐いたり。

 

 なのに、これだけ暴れてもブレない演奏、むちゃくちゃやってるけど、キメる時にはキメる。

 

 

 想像以上にぶっ飛んだ、

 

 最高にロックで、最高なライブだった。

 

 

 

 そして、よく見たら最前列にプレマイ先生がいるし、酒とゲロかけられてない? 大丈夫?

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 ─── 時間がとんで、六月中旬

 

「テメェ、どういうことだデクッ!!」

 

「どうしたの、かっちゃん?」

 

 制服もとっくに夏服に変わり、梅雨に入ってじめっとしたとある朝、登校早々に何の脈絡もなく爆豪が、デク君にキレ散らかしてきた。いつもの朝だ。

 

 そんな理不尽に慣れた様子のデク君が、普通に返事をしている。

 

「これ見ろやッ!!」

 

 そう怒鳴りながらデク君に突きつけてきたスマホを私も覗き込むと、『ギターヒーロー、ライブ活動確定!?』とのタイトルのネットニュースの記事が載っていた。そして、その記事にスターリーで結束バンドがライブしている時の、私の写真が使われている。

 

 スターリーは撮影NGなのに……観客の誰かが勝手にSNSにアップしたのかな。

 

 そして、そこに映り込んでいる観客の一人、手ブレで少し分かりにくいけど、特徴的なもじゃもじゃ頭は、デク君だなこれ。

 

「これ、テメェだろうが! 何故黙ってやがった!!」

 

「えーと、その……」

 

 チラチラと私を見てくるデク君。私が言わないでくれとお願いしていたので、知らんぷりは出来ない。

 

「あ、あの、私が言わないように頼んでいたので……」

 

「……なんでだよ」

 

「えと、小さなライブハウスなので、そんなにキャパが無いから話が広まっても人が入れなくて……」

 

 先週、4回目のライブを終えたけど、箱のスケジュールや告知のフライヤーにも結束バンドを載せてないのに、話が広がっているのか入れない当日客が行列を作っているらしい。

 

 喜多ちゃんや虹夏ちゃんの周りでもチケットを融通してくれという声が多くて、全然足りてないみたいだし、これ以上追加でチケットを回してもらうと、喜多ちゃんの友だち分が減るだけなので申し訳ない。

 

 すでに秀華高校ではチケット争奪戦が勃発してると言ってたし、また喜多ちゃんが死んだ目になってしまう。

 

 とりあえず、今回もまた親の分のチケットを融通するしかないかな。

 

「とりあえず、今は1枚だけチケットあるので……」

 

「ちょっと待って欲しい!」

「俺だってライブ観に行きてえ!」

「ギターヒーローのファンはお前だけじゃねえぜ!」

「……譲れない戦いがある」

「ガールズバンド!!」

 

 財布からチケットを取り出して爆豪に渡そうとすると、教室中の男子から「ちょっと待った」がかかった。

 

「何だ、テメェら……」

 

「爆豪くん! ライブに行きたい者は君だけじゃない! ここは希望者で公平にいこうじゃないか! 公平にッ!」

 

 男子たちが「殺してでも奪い取る」という目で殺気立ってる。こういう騒ぎになりそうだな、と思ってあまり吹聴しないようにしてたのに……どうすんのこれ。

 

 とりだしたチケットをどうしようかと困っていると、それを見かねたヤオモモさんが、私の手からチケットを取った。

 

「はい、いったんこのチケットは私が預かりますわ。副委員長として」

 

「ずりーぞ、ヤオモモ!」

「預かるなら委員長である僕の方が、相応しいのではないか!」

「そのまま自分のモノにする気だろ!」

「職権乱用だ!」

 

「私はすでにチケットは持っています……ですので、このチケットは私には不要」

 

 懐からヤオモモさんに渡してあったチケットを取り出して、男子に見せ付ける。

 

「ず、ずりーぞ、ヤオモモッ!!」

「なっ……見損なったぞ八百万さん!」

「職権乱用だ!!」

 

「……他にも持ってるヤツ、いンのか?」

 

 爆豪がそう言って睨み付けてくると、デク君と女子全員が目を逸らす。そして、その手首には新しく正式にバンドグッズとして販売したリストバンドが巻かれていた。

 

 虹夏ちゃんがデザインを考えて、結束バンドを模したリストバンドは、オシャレでかわいいアイテムだ。結束バンドTシャツも作ったので、今はお揃いのTシャツでライブをしている。

 

「デクゥ! やっぱり持ってやがったのか!」

 

「ごめんね、かっちゃん。でも、コレは譲れないよ」

 

 爆豪に掴みかかれても、デク君は毅然とした態度で拒絶する。

 

「ケロ……私、もう4回行ってるから、行ってない人に譲ってもいいけど……」

 

「し、新曲、ありますよ」

 

「やっぱりダメね。譲れないわ」

 

 梅雨ちゃんがチラリと私を見てくるので、そう答えると、手首を180度回して拒絶した。

 

 ワンマンライブを目標に、バンドで弾ける曲は10曲ほどに増えているので、ライブの度に新曲&新しいカバー曲を披露している。

 

 すでにオリジナル曲を山田が頑張って3曲完成させ、カバー曲も山田が頑張って編曲してくれていた。

 

 だから、最近は毎回新曲祭りが続いている。頑張れ山田!

 

 もうすぐワンマンライブが出来る曲数が揃うから、次のブッキングが終わったらワンマンにしないか皆や店長に相談してみようかな。

 

 

 それに、ライブを重ねるごとに喜多ちゃんのボーカルは格段に上手くなっている。練習にも集中して取り組んでいるけど、ライブだと工程を数段飛ばして上達している感じだ。

 

 ギターは何とか形になってきた程度。だけどギター歴2ヶ月ちょいと考えると、やっぱり上達が早い。

 

 ワンマンライブをするにも、いい頃合いだろう。

 

 

 そして、チャイムと同時に入ってきた相澤先生に騒ぎがばれ、

 

 今日の戦闘訓練の成績優秀者の景品にしろという、合理的な判決が下った。

 

 

 

 そして、爆豪が災害救助レースで優勝して、チケットをゲットしていた。

 

 

 当然、私は最下位……いやぁ、素の身体能力でみんなについてくのはキツいっす。

 

 他にも葉隠さん、切島くん、上鳴くんとか、同じくこの手の授業で個性が全く役に立たない生徒はいるけど、素の身体能力だけで結構いい成績を出していた。

 

 デク君とかはもうOFAを使いこなしているようで、凄い勢いでピョンピョン跳んでいた。

 

 デク君がOFAに慣れるために、たまに演奏でフォローしていたので、原作より習得が早いようだ。

 

 演奏するとOFAが使いこなせるようになり、演奏が終わると数分でその効果は減衰する。しかし、その感覚は残るので、繰り返し演奏で補助輪を付ける感じ。

 

 いずれ補助輪無しでも問題なくなるだろうと思っていたけど、今日の様子を見る限り、結構OFAを使いこなせてきている。

 

 それでも爆豪に勝てずに、2位のタイムで終わっていたけど。

 

 

 私も、四月の個性把握テストの時みたく、断トツのドベでは無くなったし、結構おしいところまで食らいつけるようになってきた。

 

 

 成長を実感できたから良しとしよう。

 

 

 

 






ヒロアカ原作だと、この時点でOFAはフルカウル5%なので、それより上がってる想定

相澤先生は前回の打ち上げで地味にきくり姐さんのファンになってたので、普通にライブを楽しんでいる&おんぶした時に体重軽すぎて「こいつ大丈夫か?」と心配になっていた感じ

原作でも金欠で飯抜き&飯食うより酒なので、かなり痩せている設定

今後、街で見かけたら飯を奢ってるかもしれません
※野良犬を餌付けする感じ

書くスペース無かったので省略してますが、SIDEROSにサイン貰ってるのを見ていた喜多ちゃんの目のハイライトは消えてました
そして内心、より奮起しつつ、ライブ中はずっとくっ付いていた模様


日常回&タメ回を入れる必要があったので、次回動きます

週末に投稿するかも


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