ギターヒーロー   作:右から左へ

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鬱くしき人々のうた

 

 

 ── 翌日

 

 雄英にほど近い、大型ショッピングモール。

 

 個性の影響で前世よりも服には豊富な種類があり、様々なファッションに溢れている。

 

 3メートル超えの巨体も普通にいるし、異形型だと手足が複数ある人も珍しくもない。そういう多様なニーズに合わせたショップが多数あるので、見ていて飽きない。

 

 そんな若者が集まるおしゃれなショッピングモールに、雄英ヒーロー科A組で揃って買い物に来ていた。

 

「おっ! アレ、雄英の一年じゃん! 体育祭ウェーイ!!」

「マジ!? ギターヒーローもいるのか!!?」

「え? ギターヒーローいるの??」

「ウラビティいた!」

「フロッピーも!」

「ピンキー!」

 

「うお、まだ覚えている人いるんだ……」

「女子は人気あるな……まだ学生なのに」

「UAレディオの影響だろ、裏山」

「体育祭優勝者より女子のが人気でウケる」

「あ"あ"ッ!! ウケてんじゃねえぞ、ぶっ殺すぞッ!!」

 

 買い物客が私達を見て遠巻きに騒いで手を振っている。その中でもギターヒーローを探す声が大きいようで、そっと距離をとろうと離れようとしたらデク君に声をかけられた。

 

「あれ? 後藤さんどこ行くの?」

 

「いやぁ……み、みんなの近くにいたらバレそうだと思いまして」

 

 体育祭が全国放送されていた上に、UAレディオの影響か、かなり注目を集めている。そんな目立つ集団の中、唯一ギターケースを持ってる女子が私だ。

 

 変装していても、近くにいたら見破られる可能性が高くなる。

 

「あぁ、そうだね……じゃあ僕がギターケース持つよ」

 

「い、いいんですか?」

 

「男の僕ならギターヒーローに間違われることは無いと思うしね」

 

「あ、ありがとうございます……助かります」

 

 そう言って手を差し出してくるデク君にギターケースを預けた。荷物持ちさせているようで悪いけど、変装がバレたら買い物どころではなくなってしまう。

 

「別にこれくらい大したことは……って、重ッ!?」

 

「が、ガンヘッドさんからアドバイスで、盾にも使えるように鉄板入りなんです」

 

 職場体験でお世話になったバトルヒーローのガンヘッドさんから、ギターケースを常に持ち歩く必要があるなら、鉄板を仕込んで盾や鈍器として使えるようにしたらどうかとアドバイスを受けた。

 その戦闘訓練の指南もされたお陰で、脳無の攻撃も受け流せたし、これが無かったらこの前の襲撃で死んでたかもしれない。

 

 難点は重くて機動力が落ちることだけど、ギターケースだけなら最悪捨てて逃げても問題ないし、普段は負荷トレーニングアイテムにもなる優れ物だ。ドラゴンボールで悟空が修行で亀の甲羅を背負っていた気分になれる。

 

「うん、いい重さだねこれ」

 

「で、ですよね。暇な時に筋トレするのに丁度よい重さなんですよ」

 

 デク君がバーベル代わりにギターケースを上下させて、負荷具合を満喫している。そのまま効果的なトレーニングの話をしていると、クラスメイト達がどの店に行くかで相談を始めた。

 

「俺、アウトドア系の靴が無いから買いたいんだけど」

「あー、私もー!」

「ウチは大きめのキャリーバッグを買わなきゃ」

「あら、私もですわ。ご一緒しましょうか」

「ピッキング用品と小型ドリルって、どこに売ってるんだ?」

「目的バラけてるし、時間決めて自由行動するか?」

「そうすっか。流石にこの人数で団体行動は無理だしなー」

 

 流石に大人数すぎたので、目的に合わせて小グループにバラけることになったけど、クラスで買い物に来た意味はいったい……。

 

 三々五々とグループで分かれていくなか、何となく流れでデク君とお茶子ちゃん、そして梅雨ちゃんと耳郎ちゃんとヤオモモさんの6人で回ることになった。

 

 けど、

 

「僕は新しいウェイトリストが欲しいんだけど……」

「私は虫よけ……む、虫ィーーーー!!」

 

 何故かデクと話していたお茶子ちゃんが挙動不審になって、顔を真っ赤にしながら奇声をあげて走り去ってしまった。

 

「虫ッ!? 僕、何かしたかな……」

 

「あら……私、追いかけてきますわ」

「じゃあ、ウチも。麗日捕まえたら後で合流するよ」

 

 そんなお茶子ちゃんを、ヤオモモさんと耳郎ちゃんが追いかけていく。

 

 うーん、いつも朗らかなお茶子ちゃんがあんな風に取り乱すのは珍しい……ははぁん、フラグが立ったのか?

 

 お茶子ちゃんはメインヒロインのはずだし、主人公のデク君とくっ付いてもおかしくない。そして二人の恋路を応援するのは吝かでない。

 

「ケロ……青春ね」

「で、ですね……今度ラブソングでも歌いましょうか」

「うーん、暖かく見守りましょう」

 

「どうかしたのかな……?」

 

「な、何でもないですよ」

「ケロ」

 

 何も分かってないデク君が、不安そうに聞いてくるけど本人に言うのは野暮だ。梅雨ちゃんの言うとおり、そっと見守ろう。

 

 とりあえず次のライブで「世界はそれを愛と呼ぶんだぜ」を演奏しよ。

 

 

「ケロ、買い物を済ませちゃいましょう。ひとりちゃんは何が買いたいの?」

 

「と、トレッキング用の丈夫な靴と、大きめのリュックサックと……あ、ウェイトリストも見てみたいですね」

 

「ケロ、私も似たようなものを買いたいから、先ずはアウトドア系のお店から見て回りましょうか。次にスポーツ用品店かしらね」

 

 私と梅雨ちゃんが並んで歩いてると、後ろからデク君がついてくる。

 

 そんなデク君に、真っ黒なパーカーを着た人が絡んできた。

 

「おー、雄英の人だ。すげー、サインくれよ」

「へ?」

「お前、体育祭でボロボロになってたヤツだよな」

「わああ……は、はい……」

 

 ガラの悪い態度で、黒パーカーの男が馴れ馴れしくデク君と肩を組んでくる。フードを被っているので顔がよく見えないが、デク君より頭一つ背が高く、いかにもチンピラ風の男だ。

 

 ファンというより、ヴィランのお仲間なんじゃないかと警戒していると、

 

「いやぁ、奇遇だな……お前、襲撃した時に脳無と戦ってた奴だろ? その見覚えのあるギターケース、ギターヒーローが持っていたモノだ……ヤツは何処にいる?」

 

 そう黒パーカーの男がドスを効かせた声で言うと、肩を組みながらデク君の首を鷲掴みにしてきた。

 

「……ッ!?」

「デク君!?」

「緑谷ちゃん!?」

 

「おっと騒ぐなよ。俺の五指が全てコイツの首に触れた瞬間、こいつは首から塵と化すぞ」

 

 色めき立つ私たちに見せつけるように、デク君の首を握りしめている。

 

 そのフードから覗く凶貌は、USJを襲撃してきたヴィラン連合の親玉。前の相棒のギターを塵に変えやがった糞ヴィランの死柄木だ。

 

 アピールするように指を一本だけ立てているのは、あれが喉に触れたら、前のギター同様にデク君は塵となるんだろう。

 

「ケロ……そんな事をしたら、すぐヒーローが駆けつけて捕まるわよ」

 

「だろうな……今は大人しく言うことを聞けば危害は加えない。ギターヒーローは何処だ?」

 

 この大型ショッピングモールには、若者や家族連れなど沢山の買い物客が押し寄せてかなり混雑している。当然ヒーローの巡回スポットになっているし、騒ぎを起こせばすぐにヒーローが駆けつけるだろう。

 

 だけどデク君が死んだら意味がない。

 

「わ、私です」

 

「後藤さんッ!?」

「ひとりちゃん!!」

 

 着けていた地味なウィッグを取ると、アホみたいに目立つピンクの地毛が露わになった。

 

「やっぱり変装していたか。お前に用がある……とりあえずそこのベンチに座れ。自然に、旧知の友人のように振る舞え」

 

 死柄木に先導されてショッピングモールの広場、街路樹の周りに設置されているベンチに腰をおろす。

 

「ここでお前らをぶっ壊すのは簡単だが……単刀直入に言う。ギターヒーロー、何か演奏しろ」

 

「「「……え?」」」

 

「演奏すればコイツは解放してやる……だが、糞みたいなヒーローの歌や、反吐がでそうな愛やら友情やらの歌は無しだ……演れ」

 

「えーと……」

 

 何だ? 単身襲撃しに来たのかと思ったら違うのか? オフの日にぶらぶらしてたら、たまたま遭遇しただけなの?

 

 他に仲間のヴィランも見当たらないし、ここは大人しく従った方がいいかな……だけど、こんな人混みの中で路上ライブなんてしたら、また怒られ……ないな。

 

 デク君を人質に取られて演奏を強要されてるんだし、ライブしても怒られる訳がない。むしろ、ここで渋ってデク君が死んだら一大事だ。

 

 だから、また前みたいな騒動になっても私は悪くねぇ。

 

「あ、じゃあリクエストあるなら弾きますよ」

 

 デク君が持っていたケースを受け取ると、ギターを取り出し、いそいそと準備を始める。小型のアンプを取りだしてギターに繋ぎ、ヘッドセット型のマイクを装着した。

 

「……ケロ、何かひとりちゃん乗り気じゃない?」

 

「い、いやぁ、久しぶりに路上ライブしたかったなんて事はないですよ? 脅迫されて仕方なくなんで……という訳で、リクエストあります?」

 

「……テメェが弾ける曲なんて知らねぇ。さっき言った通り、ヒーローの歌や、愛やら友情やらの浮ついた曲以外、俺が気に入りそうな曲を弾け。気に入らなかったら……」

 

 そこまで言うと、またデク君の首を握り締めている指を見せつけてくる。

 

 浮ついた曲が嫌いとか、原作ぼっちちゃんみたいなことを言い出すなコイツ。邦楽は何だかんだでその手の曲が多いから、そう言われるとレパートリーが狭まるんだけど……。シルエットなんて弾いたら憤死しながらデク君が塵になりそうだ。

 

 とりあえず、アジカンか米津でいいかなぁ……あの辺弾いとけば間違いないやろ。

 

 いや、せっかくだし日ごろ禁止されてる曲が弾きてえなぁ……。

 

 うん、コイツ(死柄木)が気に入る曲じゃないとデク君が危ないんだし、配慮してる場合じゃないよね。ちゃんと気に入りそうな曲を弾かないと。

 

 ピンチはチャンスだ。

 

「あ、あの……ネットでも配信してない曲があるんですけど、それでいいですかね……絶対に弾くなと言われてて」

 

「……何で止められてるんだ?」

 

「か、歌詞が下品過ぎて……昔、ネットで配信しようと家で練習してたら、絶対にやめろと親からマジギレされて……」

 

「下品?」

 

「え、えと……ダメち〇ぽ握れッ! とか、スペルマと連呼したりとか、(女性器の伏字)を繰り返しコーラスしたりとか、メス豚のケツにビンタ(キックも)とか……あ、メス豚といっても人間のメスのことで……。そういった本当にクソ最低な歌詞の曲が多いバンドなんですけど、曲自体は無茶苦茶カッコよくて、超オススメなんです!」

 

「後藤さん!?」

「ひとりちゃん!?」

 

「テメェ、巫山戯てんのか……」

 

 お勧めのバンドの魅力を力説したら、キレられてキチ〇イを見る目でみられたんだけど。

 

 小学生の頃に「マキシマム ザ ホルモン」のカバー曲を配信しようと練習していたら、日頃は滅多に怒らない母親からマジギレされた思い出が蘇る。

 

 ホルモンの魅力を語ったら何故か全面的に禁止されてしまったバンドだ。下品じゃない曲も沢山あるのに。

 

「う、うーん……なら、ホルモン初心者向けにマイルドな歌詞の曲にしましょうか。普通な歌詞の名曲も沢山あるので……」

 

「いいから早く弾け……クソみたいな曲だったら分かってるよな?」

 

 ホルモンはアニメの主題歌もやってる。デスノートのOPとED曲、チェンソーマンのED曲とかが有名だ。

 

 だから、地上波で流せるような普通の名曲は多い……流せない曲も多いけど。

 

 それに、DBのフリーザを題材とした曲を無許可で作ってCDまで販売して、それを聞いた鳥山明御大がライブまで足を運び、曲からインスピレーションを得た御大がフリーザが復活する映画を作って、その曲が作中歌として逆輸入されて公式曲になったという逸話は有名だ。

 

 前情報調べずに「復活のF」を観てびっくりした思い出。

 

 そんなバンド、なかなか無い。

 

 それと、ホルモンはメタル寄りのロック……色々なジャンルが混ざったミクスチャーロックと言われている、暴れ倒すような重音とポップなメロが交互に織りなす、ジェットコースターのような疾走感と快楽がたまらないバンドである。

 

 そういうの、コイツ(死柄木)は絶対好きそう。

 

 私はむっちゃ好き。

 

 

「ご、後藤さん、弾いちゃ駄目だッ!」

 

「お前は黙ってろ」

 

「うぐっ……」

 

 何故かデク君が焦った様子で止めてくると、死柄木が首を絞めて黙らせた。

 

 曲を弾けば解放すると言ってるんだから、大人しく従った方がいいと思うんだけど。

 

 ゲリラライブが騒ぎになると言っても、前は路上だったから人集りと渋滞が起きて迷惑をかけただけで、このショッピングモールの広場ならそんな迷惑もかからないし。

 

「あ、全然いい曲なので大丈夫ですよ。じゃあ、弾きますね。ギターソロアレンジで、マキシマムザホルモンの『鬱くしき人々のうた』、です」

 

 

 コイツ(死柄木)を……いや、この広場にいる全員、

 

 腹ペコ*1にしてやんよ。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 ──緑谷side

 

「ご、後藤さん、弾いちゃ駄目だッ!」

 

 死柄木に強要されて、後藤さんが演奏をしようとしている。

 

 想起するのは後藤さんの実技期末テストの時に、ゲロまみれになりながら地面に突っ伏すセメントス先生の姿。

 

 そして、後藤さんの親がマジギレしたというほどの下品な曲。

 

 話を聞いているだけで嫌な予感しかしない。

 

「お前は黙ってろ」

 

「うぐっ……」

 

 死柄木に喉を締められて声が出せない。そして、後指一歩を触れられたら塵と化して崩れてしまうという恐怖に、竦んで身動きが取れなくなってしまう。

 

「あ、全然いい曲なので大丈夫ですよ。じゃあ、弾きますね。ギターソロアレンジでマキシマムザホルモンの『鬱くしき人々のうた』、です」

 

 何故か嬉々としてギターを弾こうとする後藤さん。

 

 どう見ても脅されて仕方なくといった風ではなく、日頃弾けない好きな曲をライブで演奏できる喜びが透けて見えている。

 

 そして後藤さんは、ギターを弾くと同時に、

 

 声を張りあげて歌いだした。

 

 

 

『ここから 一歩も通さない

 理屈も 法律も 通さない

 

 誰の声も 届かない

 友達も 恋人も 入れない』

 

 

 

 思っていたより大人しいイントロに少し安心していると、演奏に気がついた買い物客があっという間に周囲を取り囲んでしまった。

 

「何? 路上ライブ?」

「おい、あれギターヒーローだろ!」

「マジでッ!? 」

「ギターヒーローがゲリラライブしてるぞ!!」

 

 そしてイントロが終わると、一気にギターの旋律が加速する。

 

 

 

『さらば 俺 地球 宇宙 月 海!

 恨み・怨み・憾み・どんくらい LOW?

 

 うなだれ 鬱 焦燥 スクリーム!

 痛み・怒り・病み・崩壊モード!

 

 裏に潜んだ命

 

 ツライ! ツライ! CRY!!』

 

 

 

 後藤さんが髪を振り乱しながら絶叫して歌うと、広場を取り囲んでいる聴衆も、それにノるように一気に加熱した。

 

 けど、心配していたような下品な曲じゃないし、気分も悪くなるどころか、妙な高揚感に包まれてアガッてくる。

 

 僕と肩を組んでいた死柄木も曲にのって身体を揺らしはじめたけど、首を掴んでいる指でリズムをとるのは心臓に悪いからやめて欲しい。

 

 

 

『ふくれっ面腫らし くるまって布団で暮らす

 手が痙攣 懸念が消えん 出かけれん!

 

 無論 シャバに戻すリハビリなんて無駄

 憎しみすら燃えカスとして湿気る!

 

 日々ギリギリ 生きる気デンジャー!

 下着 シミ・シミ・シミ こげ茶ッ!

 

 吐く息息 溜めて飲んじゃ!!

 来る死ね死ね死ねの幻聴ッ!!』

 

 

 

 すごい早口で、歌詞の内容はあまり聞き取れないけど、少し不穏なワードが聞こえるだけでいつものロックな曲の範疇……だと思う。

 

 試しにOFAを発動させても、個性の効果も上がっていないから、ちゃんと制御もしているようで一安心だ。

 

 それに、後藤さんの言う通りすごく良い曲だし、このまま何事もなく演奏が終われば、死柄木も満足して解放してくれることを祈りつつ、僕も後藤さんの……ギターヒーローの演奏に耳を傾ける。

 

 

 

『LOVE & LOVE! 鬱 PEOPLE!

 ぶちまけろ PEOPLE!!

 

 怨み波打つ NIPPON!

 報道せよ 民放ッ!!

 

 LOVE & LOVE! 鬱 PEOPLE!

 ばらまけ リビドーッ!!

 

 不安に波打つ NIPPON!!

 ぶちまけろ PEOPLEッ!!!』

 

 

 

 ギターヒーローのシャウトに合わせて聴衆の皆がヘッドバンキングをはじめた。

 

 僕も自然とリズムにノッて頭を上下に振る。

 

 興奮した聴衆の歓声がうねりとなって広場を震わせると、呼応するようにギターヒーローのシャウトも激しくなる。

 

 

 

『泣き叫べど何も 変わらぬ日々

 我が存在価値 もはや駄菓子以下

 

 またしても眠れんッ!

 なにしても眠れんッ!

 

 ひたすら真夜中を 無駄遣いッ!!

 

 どうせ 妄想 摩訶摩訶 行動 オドオド

 逃走 コソコソ 嘔吐

 

 今日も 口頭 ボソボソ 労働 モタモタ

 闘争 おおよそ連戦連敗

 

 SHOCKッ!!

 笑われて 重症

 

 DIVEッ!!

 屋上で 躊躇

 

 JUNKッ!!

 邪魔クズの象徴!?

 

 BURNING! BURNING!

 ご臨終ッ!!

 

 

 毒ッ!!!

 犯されて 愁傷

 

 文句ッ!!!

 タラタラで 悠長

 

 弱ッ!!!

 最弱者 ムーチョ

 

 BURNING! BURNING!

 ご臨終ッ!!!』

 

 

 

 広場のボルテージが最高潮になってくると、何処からともなくドラムの様な音が聞こえてきた。

 

 誰がドラムを叩いてるのかと目を向けたら、かっちゃんがリズムにノッて"爆破"を発動させている。

 

 その腹の底まで響く破裂音は、演奏の邪魔にならず、むしろギターの旋律を支えるように、音に一層厚みを生ませていた。

 

 リズムは完璧で、そのビートに聴衆はより盛り上がる。

 

 けど、キミまで公共の場で、個性の無断使用をしたら駄目じゃないか!

 

 僕は素早く全身にOFAを行き渡らせ、ジャンプで聴衆を跳び越えると、

 

「スマッシュッ!!!!」

 

 かっちゃんを止めるために、渾身の右ストレートで殴り飛ばした。

 

 

 

『御覧 我々 やれ 言われ

 やれん! 病み病み中!!

 

 御覧 我々 やれ 言われ

 やれん!病み病み中ッ!!

 

 飲んじゃったら また負け!

 吐いちゃっても また負け!

 

 もうさっぱり頭働かぬ 堪忍ッ!!

 

 飲んじゃったら また言い訳!

 吐いちゃっても また言い訳!

 

 大雑把に言えば

 

 モノノ怪の類ッ!!』

 

 

 

 壁まで吹き飛んで、クレーターにめり込んだかっちゃん。

 

 とりあえず個性を使うことを止められたけど、他にも個性を使って盛り上がっている人や、些細な言い争いから殴り合って喧嘩を始める人たちまでいる。

 

 ただでさえ後藤さんは公共の場での個性の無断使用になっているのに、このまま騒ぎが拡大して、その責任問題で後藤さんが怒られるのは申し訳ない。元々、僕の危機感が足りなくて人質になったせいだ。

 

 騒ぎを止めようと、殴り合いをしている人の所へジャンプしようとしたら、

 

「何しやがんだ、このクソデクッ!!!」

 

 かっちゃんが鬼の形相で飛んできた。

 

 

 

『さらば 俺 地球 宇宙 月 海!

 恨み・怨み・憾み どんくらい LOW?

 

 くたばれ ピース ロマン ドリーム!

 裏切られ 我 惨敗ロード!

 

 黒でくすんだ命

 

 ツライ! ツライ! CRY!!

 

 タランチュラ並みの猛毒潜ます脳で

  m●xi t●itter GR●E モ●ゲー荒らす

 

 ノンカフェイン・ストレス

 敵は冷え性!

 

 電車乗ればやっぱパニックですっ!

 

 日々ギリギリ 生きる気デンジャーッ!

 下着 シミ・シミ・シミ こげ茶ッ!

 

 吐く息息 溜めて飲んじゃ!

 来る死ね死ね死ねの幻聴ッ!!』

 

 

 

 かっちゃんが爆破で攻撃してくるのを、必死で避けながら説得する。

 

「公共の場での個性の無断使用はご法度だよ、かっちゃん!」

「ざけんなッ! テメェも個性使ってンだろがッ!!」

「それはキミを止めるために仕方なく!」

「いきなり殴ってきやがって、イカレてんのかテメェ! 死ねッッ!!!」

 

 すっかり頭に血が昇ったかっちゃんは、聞く耳持たずに攻撃をしてくる。

 

 その爆破に巻き込まれた他の人たちも、怒り心頭になって殴り合いに参加してきた。

 

 

 

『LOVE & LOVE! 鬱 PEOPLE!!

 ぶちまけろ PEOPLEッ!!

 

 怨み波打つ NIPPON!

 報道せよ 民放ッ!!

 

 LOVE & LOVE! 鬱 PEOPLE!!

 ばらまけ リビドーッ!!

 

 不安に波打つ NIPPON!

 ぶちまけろ PEOPLEッ!!

 

 布団敷き 寝ながら

 アパートエレベーター

 ベランダ立つか

 ロープから引っ張るか

 黄ばんだ目してテンパったアンタに問う

 

 ゆめにっき 描いたラストをリメイク!?

 

 白発じゃチャンスさえも蔑ろ BABY!

 益々 慢性の不幸せ気取り BABY!』

 

 

 

「何しやがんだ、この糞モブがッ!!」

「うるせぇ! お前ら曲の邪魔なんだよ! 静かにしやがれッ!」

 

 見知らぬ人に殴られたかっちゃんがそっちに怒りを向けている間に、他で喧嘩をしている人たちを止めるため、フルカウルで殴って鎮圧する。

 

 そして手当り次第に殴り飛ばして気絶させていると、盛り上がってヘッドバンキングしている女性のお尻にしがみついている峰田くんを見つけた。

 

 もう犯罪だし、雄英の名誉のためにも引き剥がして、念入りに地面に叩きつけておく。

 

 

 

『SHOCKッ!!

 笑われて 重症

 

 DIVEッ!!

 屋上で 躊躇

 

 JUNKッ!!

 邪魔クズの象徴!?

 

 BURNING! BURNING!!

 ご臨終ッ!!!

 

 

 毒ッ!!!

 犯されて 愁傷

 

 文句ッ!!!

 タラタラで 悠長

 

 弱ッ!!!

 最弱者 ムーチョ

 

 BURNING! BURNING!!

 ご臨終ッ!!!』

 

 

 

 

 峰田くんを地面に埋めた後、また喧嘩している人たちの仲裁のために殴りつけて気絶させていると、飯田くんが個性の「エンジン」を響かせながら駆けつけてきた。

 

「緑谷くん! キミは一体何をしてるんだッ!?」

 

「いや、何故か皆暴れてるから収めようとして……」

 

「キミから攻撃を仕掛けているように見えたが!? 先ずはキミが大人しくしたまえっ! レプシロ・エクステンドッ!!」

 

「うわっ!?」

 

 飯田くんも、人の話を聞かずに襲いかかってくる。

 

 仕方なく飯田を迎撃していると、他のクラスメイトも何故か騒動に加わりだした。

 

「爆豪、お前なに暴れてんだッ!?」

「うるせぇ! 触んなぶっ殺すぞッ!!」

 

 どんどん被害が大きくなっている。

 

 早く収めないと大変なことになってしまう。

 

 

 

『御覧 我々 やれ 言われ

 やれん! 病み病み中!

 

 御覧 我々 やれ 言われ

 やれん! 病み病み中ッ!!

 

 お医者行ってもまだ効かねえ

 会社行っても働けん

 もうさっぱり頭働かぬ 堪忍ッ!

 

 愛し合っても まだ弱気

 泣いちゃったら また夜明け

 

 大雑把に言えば

 

 もう 感情無き模型ッ!!』

 

 

 

 騒動を止めようと、殴り殴られ、揉みくちゃになっていると、複数人がかりで抑え込まれてしまった。

 

 腕をキメられ、地面に押し付けられている。

 

「さあ! 大人しくしたまえ緑谷くんッ!」

 

「僕は止めようしてるだけだッ! まだ暴れている人達がいるじゃないか!」

 

「僕からはキミが一番暴れているように見えた! 何より公共の場での個性無断使用は厳禁だ。緑谷くん!」

 

 全く聞く耳を持ってくれない飯田くん。その間にもまだ喧嘩は続いていてあちらこちらで殴り合いが発生している。

 

 僕は脚に力を入れると一気に跳び上がり、そのままの勢いで回し蹴りを放った。

 

「スマッシュッ!!!」

 

「なっ!? ガハァ!?」

 

 回し蹴りがキレイに飯田くんのみぞおちに入ると、そのまま吹き飛び崩れ落ちた。

 

 腕でスマッシュを決めた時より、蹴りの方がしっくりくる……オールマイトの影響でOFAはパンチという固定観念があったけど、僕はキックの方が向いているのかもしれない。

 

 それに脚は腕の3倍の筋力があると言われている。オールマイトより力が劣る僕なら、なおさら蹴りの方が最適解だ。

 

 

 

『さらば 俺 地球 宇宙 月 海!

 恨み・怨み・憾み どんくらい LOW?

 

 囚われ 苦痛 了承済み

 チラ見 誰? 誰?

 もう帰ろう もう帰ろう

 

 please me... please me...

 

 

 手首 なんの線?

 

 手首 なんの傷?

 

 手首 なんの線?

 

 その手首 なんの傷?

 

 

 世界中の誰もが

 病んでるわけではねえけど

 誰かは今日もうずくまってる!

 

 そして内緒で 明日がラストと

 這いつくばって抜け出そうと生きてるッ!

 

 いつだって癒しなんぞなくても

 リングにあがり ゴング鳴るの待ってろッ!

 

 鬱くしき人々よ!

 

 0.5生懸命にて 勝てッ!!!』

 

 

 

 近場にいた暴漢もついでに蹴り飛ばし、もう周りに暴れている人がいなくなったのを確認すると、少し離れている所で、切島くんとかっちゃんが戦っていた。

 

 けど、すぐに決着がついたようで、切島くんが爆破でやられて崩れ落ちる。

 

「クソが……邪魔すんじゃねぇ……曲に集中出来ねぇだろうが、ガハァッ!!??」

 

「スマッシュッ!!!」

 

 切島くんを倒して油断していたかっちゃんに、隙をついて蹴りを叩き込む。

 

 そのまま錐揉みしながら吹き飛ぶと、地面に叩き付けられながらも、なお起き上がろうとしてきた。

 

「テメェ……クソデク、絶対に許さねぇかんな……覚えてろよ……」

 

 そう言って倒れ込んで、かっちゃんはピクリとも動かなくなった。

 

 

 

『さらば 俺 薬 包丁 二ート!

 涙ギターに吸わして弾こう

 

 膝蹴り KICK START MY 傷

 唾 みなぎらせ あんた色

 

 LOVE イラネ イラネーっちゅうの!

 LOVE イラネ イラネーっちゅうの!

 

 ダーリン? ハニー? 糞だりーし

 嘘臭えぜ Lady

 

 歌に 歌に 歌に入れる

 ギター ギター ギターに入れる

 

 イライラに刻み込んで

 ロックソング目で聴け!

 

 

 ボク 死たがりで!

 

 生きたがりですッ!!!』

 

 

 

 最後まで残っていたかっちゃんを鎮圧すると、しばらくして後藤さんの演奏も終わった。

 

 殴り合いになっていた人は、広場にいた聴衆の一部……だいたい三百人くらい。

 

 その数が地面に突っ伏して倒れていた。

 

 騒動に参加していなかった大多数の人達は、騒ぎそっちのけでライブに集中して盛り上がっている。

 

 これでもう騒ぎにはならないだろうと安堵すると同時に、何で僕は個性を使ってまで必死に止めていたんだと不思議に思った。

 

 いや、不味いでしょコレ。

 

 一気に冷静になると自分の仕出かしたことに気付き、冷や汗が流れる。

 

 公共の場で個性を使っての暴行。

 

 どう見てもヴィランと同等の行いだ。

 

 どうしたらいいのか分からずに、オロオロしていると、

 

「……緑谷、いったいコレはどういう状況なんだ?」

 

 騒ぎに駆けつけたのか、怒髪天を衝いた相澤先生がドスの効いた声でそう訊ねてきた。

 

 目は赤く発光し、髪の毛が逆立っているので「抹消」を発動させているのだろう。

 

「い、い、いえ! えーと、あの、その……」

 

「蛙吹から通報を受けて駆けつけてみれば、何故あの馬鹿はゲリラライブをしてるんだ……そしてこの惨状、何があった?」

 

「えーと、ですね……コレには深い理由がありまして……」

 

 しどろもどろになりながら説明しようとするけど、相澤先生の怒気に気圧されて言葉が出てこない。

 

 そうしていると、広場中の聴衆からアンコールの合唱が湧き起こった。

 

「「「「「アンコール!アンコール!アンコール!!!」」」」」

 

「じゃあ、アンコールに応えて二曲目! 『握れっっっっっっっっ!!!!』いきま……へぶっ!?」

 

 アンコールに応えようとしていた後藤さんを、相澤先生の捕縛布がぐるぐる巻きにすると、そのままミノ虫状態にして地面に転がした。

 

「先ずは事情聴取だ……状況次第じゃ、退学も覚悟しとけよ」

 

「は、はい……」

 

 そのままヒーロー業務として現場を仕切りはじめた相澤先生に、後藤さんが引き摺られていく。

 

 後藤さんは一応、死柄木に脅されて強要されていただけだ。情状酌量の余地は十分にあるはずだから、そこまで酷い罰は受けない……と思いたい。だから、嬉々としてライブをしていたのは黙っておこう。

 

 でも、僕はどうなるか分からない。

 

 いくら止めるためとはいえ、何故かっちゃんをいきなり殴ってしまったのか……まぁ、どうせかっちゃんは人の話を聞かないし、殴って止めた方が早いのは分かりきっていたけど、それでも公共の場で免許が無いのに個性を使って自分から殴りかかったら、それはもうヴィランと変わらない。

 

 それにその後も、喧嘩を止めるためとはいえ個性を使って他の人に殴りかかるなんて……本当にどうかしていたとしか思えない。

 

 そこまで考えて、ふと、気が付いた。

 

 

 これ、後藤さんの"演奏"のせいじゃないかと。

 

 

 特に暴力性が上がった感じはしなかったけど、個性を発動するのに、他人を殴るのに躊躇いがなかった。

 

 かっちゃんもいくら盛り上がっていたとはいえ、公共の場で考え無しにドラム代わりに爆破を使ったりしないはずだ。多分。

 

 暴れていた他の人たちも、タガが外れたように個性を使って盛り上がり、些細なことから殴り合いをしていた。

 

 あの生真面目な飯田くんでさえ、そうなっていた。

 

 

 そこまで考えて、改めて後藤さんの個性の恐ろしさを再確認して、そしてとても残念に思えた。

 

 

 さっきの曲は、ヒーロー系を除けば一、二を争うほど最高に良い曲だったからだ。

 

 

「もう、聴けないのかな……」

 

「ケロ……聴けないでしょうね、残念だわ」

 

 

 いつの間にか蛙吹さんが隣にいて、同じように黄昏れていた。

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 ──ヴィラン連合アジト

 

 寂れた薄暗いBAR。

 

 重く軋むドアを開けて、死柄木がアジトに戻ってきていた。

 

 カウンターに座っていた黒霧が、気が付いて声をかける。

 

「おや、お出掛けでしたか……何か飲まれますか?」

 

「キツイやつ」

 

 死柄木のオーダーにナイフで氷を割って形を整え、ウィスキーのボトルを棚から取り出しグラスに注いだ。

 

 カウンターに座った死柄木にグラスを差しだすと、上機嫌な様子で、舐めるようにウィスキーを口に含んだ。

 

「……何か良いことでもありましたか?」

 

「少しな……次の計画、変更だ」

 

「と、言いますと?」

 

 

「ギターヒーローを殺すのはナシだ……拉致って仲間に引き込む」

 

 

 

*1
ホルモンファンの通称






事情聴取後、お咎めなしになりました

この作中でホルモンの曲を"無意識に演奏"すると、主にモラルの低下、ルールやマナーを守ろうという遵法精神が薄まります

タガが外れる感じです
暴力性が上がったりはしてません

この辺も個性訓練で意識してバフデバフをコントロール出来るようになれば、ホルモン弾いても問題なくなるかもしれません

「my girl」とか、本当に歌詞が下品な曲は無理かもしれませんが


死柄木「俺が気に入りそうな曲を弾け」
偽ぼっち「おかのした」
何故か聴衆の一部が殴り合いの暴動に
死柄木「なにこれ……怖……」


握れ!が収録されてる「耳齧る」は廃盤。そしてホルモンは音楽配信してないので今はMADでしか聞けない悲しみ

【MAD】握れっっっっっっっっ!!!!
https://youtube.com/watch?v=pK62xWTt8lQ&si=QdF7ceGBjF96OILN

■ホルモンを聞く方法
タワレコオンラインでCDを"新品"で買う
個人的なお勧め順
・予襲復讐
・ぶっ生き返す
・ロッキンポ殺し
・糞盤

スマホに直接CDを取り込む機械を買う
https://amzn.asia/d/09eDJrIC

これで貴方も腹ペコ民


ホルモンも出せて、大体書きたいシーンは書いてしまって満足したので、続きは当分先になりそうデス

未消化リスト
・今回の掲示板回の反応
・ホルモン職員会議
 ホルモンの曲を何処まで配信していいか真面目に会議
 「うーん、アナルウィスキーはセーフかな?」
・SIDEROSのその後
・トガちゃんバンド結成?
・心操くんとの絡みを少し書きたいかも?
・赤黒さん「ミクスチャーロック……そういうのもあるのか」


ps.
感想、評価、誤字報告いつもありがとうございます



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