ギターヒーロー 作:右から左へ
そして、その黒い霧から、
大量のヴィランが現れた。
「ッ!?」
「何だありゃ? 試験の時みたいに、もう始まってるパターン?」
「お前ら、ひとかたまりに集まれ! 13号、生徒を守れッ!!」
「はいっ!」
「動くなッ! あれはヴィランだ!!」
ぞろぞろと黒霧から出現したヴィラン達は異形型が多い。その中でも特に目を引いたのが、顔や全身に人の手を取り付けているヴィラン。
一際、不吉なオーラを撒き散らしていた。
そして、その隣に控えていた黒い霧のようなヴィランが口を開く。
「13号に……イレイザーヘッドですか。先日頂いた教師側のカリキュラムではオールマイトもいるハズなのですが……」
「やはり、あのマスコミが入り込んだのは
前に昼休みに警報が鳴った時かな?
食堂から避難しようとした生徒たちが押し合いになって大変だったみたいだけど、私は
ホームルームで知らされてびっくりした。
「オールマイトは何処だ…… せっかくこんな大衆引き連れてきたってのにさ…… 平和の象徴がいないなんて……」
ぶつぶつと怨嗟を呟く手だらけのヴィランが、狂ったように自分の喉を掻きむしる。そしてその手を止めると、
「そういえば、先生からギターヒーローも殺せと言われてたな…… ギター持ってる、お前か?」
「ひぃ!?」
顔の手の指の隙間から目が合う。
この世の全てを憎んでいるかのような澱んだ眼に、ギターを演奏することも忘れて身がすくんでしまう。
そして、私の隣に黒い靄が出現したかと思うと、そこから手が伸びてきた。
「後藤ッ!?」
先生の捕縛布に間一髪で引き寄せられてギリギリで手をかわせたが、構えていたギターを捕まれ、ボロボロと崩れ去ってしまった。
あぁ! 愛用のギターがッ!!
「クソ…… イレイザーヘッドがやっかいだな。とりあえずギターは潰したし、先にイレイザーを殺るか。黒霧、分断しろ」
「はい…… では、初めまして我々ヴィラン連合です。僭越ながらこの度、ヒーローの巣窟雄英高校に入らせて頂いたのは、平和の象徴オールマイト……そしてギターヒーローに息絶えて頂きたいと思ってのことでして……」
何で名指し!?
生徒たちの視線が私に集まる中、13号先生がヴィランとの間に割って入った。
「させませんよ! と、君たち!?」
13号先生がブラックホールを発動させようとするが、その前に爆豪と硬化の個性の子がヴィランに攻撃を仕掛けてしまう。
「その前に俺たちにヤラれるってことは、考えてなかったのかッ!!」
むっちゃ決めてるけど、13号先生や相澤先生の邪魔にしかなってない。
爆煙で視界が塞がったと同時に、
黒い靄が、私とクラスメイト達を包む。
そして、気が付くと私は手のヴィランの真隣にいた。
同じく黒い霧に包まれた、他の生徒たちの姿は見当たらない。
「なんてな。先にギターヒーローから始末しろと言われてんだ」
手のヴィランの手が私の頭に触れる。
ひぃっ、と目を瞑って頭が崩れる覚悟をするが、ヴィランの気持ち悪い手の感触がしたままだ。
「チッ、やっぱりそうは簡単にいかないか…… なら、このまま人質に……」
相澤先生の"抹消"のお陰か、手のヴィランの個性が発動しないようだ。しかし、相澤先生の抹消は瞬きをすると効果が消えてしまう。掴まれたままは不味い。
相手の腕を掴み、ぐるりと捻ると、体重をかけて関節を決める。
「がああああああッ!?」
本来ならこのまま決めて制圧するのだが、触られただけで崩壊する個性の手の届く範囲にいるのは危険だ。
敵わないと判断したら、即逃げること。
そう相澤先生から耳にタコが出来るくらい厳命され、逃げるための体力作りを徹底的にやらされている。
うひぃ、と叫びながら脇目も振らずに近くで戦っていた相澤先生の元へダッシュする。
しかし、先生は複数の雑魚ヴィラン相手に大立ち回りをしている真っ最中だ。
13号先生は入口付近で、飛ばされずにいた数名の生徒たちを守るように他のヴィランに立ち塞がっている。
出来れば私も入口の方へ逃げたいが、ヴィランに囲まれているのでそれは難しい。
「13号! さっきから外と連絡がつかない! そいつらだけでも施設の外へ逃がせッ! 応援を呼んでくれ!!」
「……ッ、分かりました!」
一瞬逡巡した13号先生は、すぐさま他の生徒を連れて施設の外へ逃げ出す。私も連れて行って欲しいけど、雑魚ヴィランが邪魔だし、他に飛ばされていった生徒の安否もある。
さっさと生徒を脱出させて応援を呼ばないと詰むだけだ。
「チィッ! 黒霧、追え!」
「……はい」
黒い靄のヴィランが、黒靄の中に溶け込むと姿を消す。逃げた13号先生と生徒たちを追ったようだ。
相澤先生は多数のヴィランに囲まれながらも、抹消で個性を消しつつ、捕縛布を使って相手を拘束しながら撃退している。
しかし、抹消以外は無個性と変わらない。
抹消で消せない多数の異形型や、死角からの遠距離攻撃、それに私という最大のお荷物を護りながらなので、次第に被弾が増えている。
私に攻撃が当たりそうになると、身を挺して盾になる。
私も戦いたいが、いくら相澤先生から対人訓練を受けているといっても、まだ1ヶ月も経たない付け焼き刃。
雑魚とはいえ、大人のヴィラン相手にガチバトル出来るとは自惚れていない。
せめて邪魔にならないようにと、避けることに専念する。
そして傷だらけになりながらも、相澤先生はヴィランを徐々に制圧していく。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッ!!!」
それを見ていた手のヴィランが、苛ついた絶叫をあげた。
「テメェら、たった一人のヒーロー相手に何やってんだ…… オールマイト相手にとっておこうかと思ってたがやめだ…… 脳無、殺れ」
ずっと後ろに控えていた、脳みそが剥き出しの異形型のヴィランが動き出す。体長3メートルほどの巨体だ。
他のヴィランと戦っていた相澤先生に見向きもせず、
私の方に一瞬で接近すると、
右拳を大きく振りかぶる。
(あっ、死んだ)
死を覚悟したからか、全てがスローモーションで流れる。
そして脳無の拳が私に突き刺さる直前に、
相澤先生が割って入ってきて、
岩盤に叩きつけられた。
「ガハッ!」
「先生!?」
そして、ふらふらな足取りのまま、相澤先生は再び私を護るように脳無に立ち塞がった。
間違いなく重傷だ。
肋骨が折れたのか、口から血が溢れている。
「生徒には…… 手を出させん……」
「やっぱり、イレイザーヘッド邪魔だなぁ…… 脳無、イレイザーを捕まえろ」
手のヴィランの命令で脳無が相澤先生の頭を鷲掴みにすると、
アイアンクローのまま宙に持ち上げ、
地面に叩きつけようとしたところで、
「スマッシュッ!!!」
デク君が跳んできて、脳無を吹き飛ばした。
「後藤さん、これ!!」
そして反対の手に持っていたエレキギターを私に手渡してきた。
ギターだ! これで勝つる!!
私は受け取ったギターを急いで肩にかけ、スーツのプラグに繋ぐと、
ピックを構えて、ギターをかき鳴らし、
心の底から、
シャウトした。
◇
緑谷side
─── ギターを手渡す少し前。
「皆、無事だった!?」
入口付近に到着した僕たちは、フロアの様子を窺うように隠れていた八百万さん達と合流した。他にも別な場所に飛ばされた生徒も一緒にいる。
「えぇ、私たちの方は大したヴィランは居ませんでしたけど、先生たちの方が……」
僕たちが飛ばされた先とは比較にならないほどのヴィランが入口付近のフロアにいる。そして、そこに取り残された後藤さんを護るように、相澤先生が孤軍奮闘してヴィランを蹴散らしている。
その2人を取り囲むヴィランの群れの後ろで、敵の首領のさらに後ろに控えている、脳が剥き出しの異形型のヴィランから嫌な気配がしていた。
そして、ヴィランに囲まれて、逃げるに逃げられない後藤さんの手には、壊れたエレキギターが握られている。
「八百万さん、エレキギター作れる!?」
「えっ? えぇ…… 作れますけど、なぜ今エレキギターを……?」
「いいから! ギターさえあれば一気に状況をひっくり返せる!!」
「わ、分かりました…… フンッ」
僕のオーダーに、八百万さんは怪訝な表情をしていたが、必死さが伝わったのかすぐさまエレキギターを作るのに集中してくれた。
その間に広間の方を観察すると、脳剥き出しの薄気味悪いヴィランが後藤さんに襲いかかった。
相澤先生が間一髪で割って入ったけど、代わりに先生が岩盤まで吹き飛ばされている。
「出来ましたわ!」
八百万さんから出来たエレキギターを受け取り、後藤さんに向かってダッシュする。
まだOFAの調整が上手くいかないけど、入試の時の後藤さんの演奏を思い出して、壊れない程度の出力を足に流すイメージ。
そして相澤先生が、後藤さんの盾になってアイアンクローで宙吊りにされているのを目撃して、右拳でスマッシュを打った。
「スマッシュッ!!!」
相澤先生から何度も注意されたので、右腕を壊さないように細心の注意を払っての一発。
なので入試の時と比べて大分威力は落ちて、数メートルほどしか吹き飛ばせていない。
脳剥き出しのヴィランに大してダメージは与えられてないが、相澤先生から手を離させることは出来た。
その間に、後藤さんにエレキギターを手渡す。
「後藤さん、これ!!」
後藤さんが目を輝かせてギターを受け取ると、いそいそとギターを肩にかけ、コードをスーツに繋ぐ。
そして、空気を切り裂くエレキギターの音が響き渡ると、
後藤さんのシャウトがこだました。
「ONE PUNCH ーーッ!!!」
そのギターと歌声を聞いた瞬間、
身体中に力が満ち、
入試の時のように、"個性"を十全に扱えるような全能感が溢れた。
◇
─── ひとり side
「参上! 必勝!
至上最強!!
なんだってんだ!?
フラストレーション!
俺は止まらないッ!!」
最強のヒーローの歌。
どんなに傷付いても、立ち上がって私を護ってくれた相澤先生の背中は、真のヒーローだった。
だから負けないでくれという想いを込めて、
喉が枯れそうなほどシャウトする。
「ONE PUNCH!
完了! 連戦連勝ッ!!
俺は喝ッ! 常に勝つ!!
圧勝ーーッ!!!」
フラフラだった相澤先生は、急に元気を取り戻したように捕縛布で脳無を拘束する。
そして、そこにデク君がラッシュを仕掛け、脳無に豪快な連打を浴びせる。
しかし、脳無には全く効いていないようだ。
「ハハッ! そいつは対オールマイト用に調整した脳無だ! "ショック吸収"があるから生半可な打撃じゃ効かねぇよ!!」
「Power! Get Power!!
ギリギリ限界まで
HERO!!!
俺を讃える声や 喝采なんて
欲しくはないさッ!!」
何故か自慢気に脳無の個性をバラす手のヴィラン。
相澤先生の拘束と、デク君のラッシュで足止めは出来ているけど、このままではジリ貧だ。
そう思っていた時に、
「どけやッ! クソデクッ!!」
爆豪が空からエントリーしてくると、特大の爆破でクレーターを作り、脳無を地面に沈めた。
クレーターの真ん中では、脳無が地面にめり込み上半身が焼け爛れている。
しかし、みるみるうちに治っていく。
「ざぁんねん。"超再生"も持ってるから、お前らじゃどう足掻いても倒せねぇよ。こいつはオールマイト対策に用意した特別な脳無だ」
「なら治るより早く爆死させればいいだけだろうがァ!!」
爆豪が脳無に地面が揺れるほどの大爆破の連打を浴びせるが、超回復を上回ることは出来ずに拮抗していた。
「HERO!!!
だから人知れず 悪と戦う!
覆い押し寄せる敵!
俺は背を向けはしないッ!!!」
「クソッ、耳障りな歌を止めろォ! おいお前ら! そのギターを殺せ! ソイツが元凶だッ!!」
手のヴィランがまた狂ったように喉を掻き毟りながら私を名指しして絶叫する。
まだ残っていた雑魚ヴィランが、私に一斉に向かってくるが、
「させないッ!!」
「ケロ、やっぱりひとりちゃん、ギターヒーローじゃない」
「オイラもいるぜ! この曲すげー滾るッ! って、もぎもぎがデッカくなってる!?」
デク君が、梅雨ちゃんが、糞ブドウや他のクラスメイトの皆が集まって、ヴィランの前に立ち塞がった。
なんか糞ブドウのもぎもぎが、ソフトボール大からバレーボールくらいの大きさになってるな。
「HERO!!!
ならばッ! 揺るぎなき覚悟をしたため
繰り出せ 鉄拳ーーッ!!!
Three! Two! One! Fight back!
参上! Go on! 正々堂々!!」
硬化の個性持ちの子が、私を守るようにヴィランの攻撃を防ぎ、その間にデク君がヴィランをぶん殴り、梅雨ちゃんの舌や糞ブドウがもぎもぎで拘束する。
他のクラスメイトとも連携して、あっという間に雑魚ヴィランを制圧すると、後は脳無だけになったところで巨大な氷柱に包まれた。
「倒せないなら動かないようにすればいいだろう…… て、何だこの威力は」
半冷半燃の子の個性か。
しかし、氷で拘束出来たのも数秒だけで、いくら氷に包んでも脳無は力ずくで抜け出してきた。
「どうなってんだ!?
なにも感じねぇ もはや敵いねえー!
JUSTICE! 執行! 問答無用ッ!!
俺が断つ! 悪を断つ!! 合掌ッ!!!
Power! Get Power!
アドレナリン溢れ出すぜッ!!
Power! Get Power!
鍛えた技をぶちかませッ!!」
相澤先生の捕縛布が、
デク君の拳が、
爆豪の爆破が、
半冷半燃の氷漬けが、
脳無を捉えるが、その全てをはねのけて反撃してくる。
その脳無の攻撃を、硬化の子が受け止めているお陰でこちらも被害は無いが、互いに決定打を与えられずに状況は拮抗している。
「HERO!!!
どんなに 強いヤツも
ちっぽけなガキだったんだ!
HERO!!!
弱き 己乗り越え 強くなる
神宿る 拳掲げて
俺は 突き進むだけさッ!
HERO!!!
いつか敗北に汚泥なめるまで
闘う HEROーーーッ!!!」
「どんなに攻撃しても回復される…… 回復を上回る攻撃を一気に与えるか、動けないように拘束しないと駄目だ……どうすれば……。 そうだ! 峰田くん、次に足止めしたら目いっぱいアイツにもぎもぎ投げて! 八百万さんも拘束出来るアイテムを!」
「分かった!」
「分かりましたわ!」
そして爆豪が再び爆破して一瞬動きが止まった所に、糞ブドウのもぎもぎラッシュで、脳無は瞬く間にバレーボール大のもぎもぎ塗れになり、それを取ろうとした手が張り付き動けなくなっていた。
しかし、それも皮膚ごと剥がされると意味がない。
「HERO!!!
俺を讃える声や
喝采なんて 欲しくはないさ
HERO!!!
だから人知れず 悪と闘う
神宿る 拳掲げて
俺は突き進むだけさ!」
「八百万さんッ!!」
デク君の合図に八百万さんが拘束用の網を投げ、さらに相澤先生がその上から捕縛布でぐるぐる巻きにして固定した。
「轟くん、凍らせて!!」
そして、半冷半燃の子が再び脳無を巨大な氷柱で覆う。
「HERO!!!
いつか敗北に汚泥なめるまで
闘う HEROーーーッ!!!
孤独な HEROーーーッ!!!」
ちょうど歌い終わったところで脳無を完全に封じられたのか、ピクリとも動かなくなった。
そして、次の曲をいつでも弾けるように構えていると、
「クソッ! クソッ! クソッ! クソがッ! 何が対オールマイト用の脳無だッ! こんなヒーロー未満の学生共にやられるなんて聞いてねぇぞ……」
「……死柄木 弔。生徒一名に逃げられました…… ふむ、こちらも状況は悪いようだ」
黒い靄を纏ったヴィランがワープしてきて、手のヴィラン……死柄木と合流した。死柄木はまた苛ついたように喉を掻き毟っている。
「クソが…… 脳無は役に立たねぇし、ずっと不快な歌を聞かされるしで散々だ…… あー、今回はもうゲームオーバーだな……」
「大人しく投降しろ。もう残っているのはお前たちだけだ、俺の"抹消"から逃げられると思うなよ」
相澤先生は投降を呼びかけつつ、離れたところで高みの見物をしていた死柄木ににじり寄る。そして皆も取り囲むように包囲を狭めていく。
戦闘に備えて、次の曲を弾こうと構えた所で、入口の扉が吹き飛び、轟音を立てて破壊された。
すわ新手のヴィランか!?
と思って振り向くと、
「もう大丈夫! 私が来たッ!!」
オールマイトの登場だった。
救援にきてくれたのだろうけど、タイミングが悪すぎる。
皆の気が取られた隙に個性を発動したのか、死柄木と黒い靄のヴィランはワープゲートに消えようとしていた。
「今回は失敗したが次は殺す…… オールマイトより先に殺してやる…… 絶対殺す……絶対殺してやるぞ、ギターヒーローッ!!」
「ひぃ!?」
何でっ!?
そんなにヘイトを買うことした覚えないんだけど!?
そしてワープゲートに消えていくヴィランを見送り、殺気に当てられ、緊張の糸が切れた私はペタンと尻もちをついてしまった。
「すまない、タイミングが悪かったようだ」
「いえ、救援にきて頂いて感謝します。首領のヴィランは取り逃しましたが、他多数のヴィランは捕らえましたし、生徒への被害は軽微です」
そして間もなく、雄英から他の教師陣の救援も駆けつけ、怪我人の救護、捕らえたヴィランの護送などの手続きがされ、怪我の対処が終わったA組のメンツは一足先に校舎に戻された。
◇
─── その帰りのバスで。
「ケロ、やっぱりひとりちゃん、ギターヒーローだったじゃない……どうして違うって言ったのかしら?」
疑問に思ったことを何でも聞いちゃう梅雨ちゃんに、私はまた質問責めされていた。
「えーと、じ、自称でギターヒーローを名乗るのが恥ずかしかったのと、ハンドルネームとはいえ免許もないのにヒーロー名乗ったら不味いのかなと思って……つい……」
「ケロ……そうだったの?」
「は、はい……それに、やっぱりギターヒーローと呼ばれるのも思ったより恥ずかしいので、もうハンドルネームを変えようかなと……ちょっと痛いヤツですよね」
ぼざろ原作で虹夏ちゃんも「ネーミングセンスはちょっと痛い」と言ってたし、もう結束バンドを組んだ今ではギターヒーローの名前にこだわる意味もない。さっさと変えよう。
「あぁ!? 巫山戯んなッ! テメェはギターヒーローだろうがッ!! 勝手に名前変えやがったら殺すぞッ!!」
「ひん!?」
なんか知らんが爆豪から怒鳴られた。理不尽すぎだろ。
「かっちゃんはギターヒーローのファンだからね。ただ変えて欲しくないだけだと思うよ」
「は、はぁ……」
「ファンじゃねーわ! 勝手なこと言ってると爆死させんぞクソデクッ!!」
勝手にキレ散らかしているけど、爆豪にファンだと言われても1ミリも嬉しくない。帰ったらこっそり変えとこ。
「ケロ、私もギターヒーローのファンだから、変えられると寂しいわね」
「私もー!」「ぼ、僕も!」
「か、変えませんっ!」
梅雨ちゃんやお茶子ちゃん、デク君とか他のクラスメイトからも変えて欲しくないという声が上がったので、やっぱり変えるのやめます。ファンは大事にしないとね。
「あ、そういえば。このギターありがとうございました」
デク君から手渡されたギター、八百万さんが個性で作ってくれたもののようで、普通に買えば100万円は余裕で超えるやつだ。同じクラスのギターは何本か持っているけど、借りパクしてよいギターではない。
八百万さんにギターを返そうとしたら、
「私には無用の長物ですので、後藤さんが貰ってください」
「いや、でも……これ高いギター……」
「そうですね…… なら、何か弾いてくれません? 日頃クラシックばかり聴いてますので、今日の演奏は新鮮で…… 私、もっと後藤さんの演奏を聞きたいですわ」
ギターの代金として演奏か……100万円超えのギターに見合うとは思わないけど。
「な、何かリクエストありますか?」
「流行りの音楽は分かりませんので、お任せします」
私がギターをかまえると、バス中の皆からワクワクしたような視線を向けられる。爆豪もチラチラこっち見てくるし、相澤先生も前に立ったままじっとこちらを注視している。
相澤先生、リカバリーガールに治療されたとはいえ、結構重傷だったはずなのに同行して大丈夫なのか。
とりあえず、事件が一段落した今なら弾く曲は決まっている。
「じゃあ、『HEROES』で」
私はピックを構え、
みんなお疲れさまの意味を込めて、
ギターを鳴らす。
「冴えない僕と 僕を囲む世界で
描いても 掴んでも まだ遠くて──」
私には、強くならなければならない理由ができた。
今日はギターを壊されただけで、何の役にも立たなくなるというのを思い知らされた。
だから、もっと強くならなければいけない。
ただ護られるだけでなく、
誰かを護れるくらい強く。
私を護ろうとする相澤先生の背中は、とても大きかった。
多数のヴィランや脳無相手に一歩も引かなかった背中は、
どんなヒーローよりもかっこよく、
そんなヒーローになりたいと、憧れてしまう背中だった。
だからこれは、
私が最高のギターヒーローになるまでの物語。
─── そんな想いを込めて、私はギターを弾く。
綺麗に纏まったと思うので一旦ここで完結(2度目)
エンディング曲で〆ました
原作よりエントリーしたヴィランが少なかったので、生徒に回すヴィランが減り、生徒たちが早めに合流&合流出来なかったメンツも合流できたので、相澤先生が重傷を負う前に駆けつけられた設定デス
しかし、中央フロア自体は原作と変わらないくらいヴィランがいた模様。
体育祭はどう足掻いても予選落ちする未来しか見えないので、掲示板形式のエピローグとして追加投稿で済ませようと思っています
基本的に何処で終わらせたら綺麗に纏まるかで書いているので、また続きを書くとしたら次は本当に最後まで目処が立ったらかな……
総力戦時に「私の歌を聞けー!」とかやりたいけど、そこまで書く気力が持たなそう
まぁ、感想からよくネタ拾うので、規約に引っかからない程度に書いて貰えれば続きのネタにするかもしれません
という訳で、次回の掲示板形式は全く手付かずなので、少し時間かかります
追記
評価、感想、誤字報告ありがとうございます