機動戦士ガンダムの世界へ転生したオッサン3人組の奮闘記 TTI隊「紺藍の四つ星」〜潜入と暗躍の軌跡〜 作:かりかりもふもふメロンパン
宇宙世紀 0088 年 3 月上旬。
サイド1・1番地コロニー、シャングリラ。
グリプス戦役で大きく傷ついたエゥーゴの強襲揚陸艦アーガマは、修理と補給のため、このジャンクの街に寄港していた。
コロニーの片隅で、少年ジュドー・アーシタは妹リィナの学費を稼ぐため、仲間たちとジャンク屋稼業に精を出していた。
その日も、宇宙を浮遊する脱出カプセルを回収した彼らは、結果的にティターンズの士官・ヤザン・ゲーブルを救い出してしまう。
ヤザンは、荒んだ笑みを浮かべてジュドーたちに囁いた。
ヤザン・ゲーブル「おい、小僧。あそこの艦からΖガンダムを盗み出せ。一儲けできるぜ」
口車に乗せられたジュドーは、Ζガンダムを狙ってアーガマに潜り込む。
しかし、そこで彼が出会ったのは、放心状態で廃人同様となった元パイロット、カミーユ・ビダンだった。
裏側からの視線
同じ頃。
シャングリラ近傍の暗部で、三機の機体が識別信号を偽装したまま待機していた。
アルセド・ゼニス――通称カワセミ。
ゲネフェア・ガンガンの駆るギャプランを中心に、マルティナ・ハルシオンのMk-II(10号機)、エレン・モルゲンのMk-II(9号機)が静かに哨戒している。
ゲネフェア・ガンガン「……アーガマが寄港した。予定通りだ」
マルティナ・ハルシオン「隊長、内部の情報は?」
ゲネフェア・ガンガン「カミーユ・ビダンが、まだあそこにいる。歴史通りなら、廃人同様の状態だ。……俺たちは、彼を『回収』するつもりはない。だが、周辺で使い捨てられそうな命があれば、拾う」
エレン・モルゲン「ジュドー・アーシタたちも、動き出しますね」
ゲネフェアは短く息を吐いた。
ゲネフェア・ガンガン(内心)「プロイも、あそこにいる。ジュドーたちと一緒に、歴史の表側へ踏み出そうとしている。……今は、まだ声をかけない」
プロイの視点
シャングリラのジャンク置き場。
マゼンタの髪を逆立てた少年、プロイ・ブロタンは、工具を手に立ち止まっていた。
ジュドーがヤザンの誘いに乗ってアーガマへ向かうのを、遠目に見ていたのだ。
プロイ・ブロタン(内心)「……行ってしまった。Ζガンダムを盗むって。……歴史通りだ。このままジュドーはカミーユと出会って、Ζに乗ることになる」
胸の奥で、前世の知識が冷たく疼く。
第一次ネオ・ジオン抗争が本格化し、多くの命が失われていく未来が、脳裏をよぎる。
そのとき、通信が入ったわけでもないのに、プロイはふと空を見上げた。
プロイ・ブロタン(内心)「土田さんたちも、近くにいるのかな。……『生きろ』って言われた。仲間を守れって」
彼は工具を握り直し、ジュドーたちの残した作業を黙々と続けた。
表立って止めはしない。
ただ、戻ってきたときに居場所が残っているように、地味な役割を果たすだけだ。
カワセミの判断
アーガマ内部でジュドーがカミーユと接触している頃。
ゲネフェアは、ギャプランのセンサーで艦周辺の動きを監視していた。
ゲネフェア・ガンガン「ヤザン・ゲーブルが動いている。ジュドーを煽ってΖを狙わせたようだ。……歴史通りだな」
マルティナが静かに問う。
マルティナ・ハルシオン「介入しますか?」
ゲネフェア・ガンガン「しない。ジュドーがΖに乗る流れは、止めない。俺たちが拾うのは、その過程でこぼれ落ちる命だ。……カミーユは、今は触れない。彼の物語は、まだ終わっていない」
エレンが少し寂しそうに呟く。
エレン・モルゲン「……私たちも、かつては『歴史に使い捨てられる側』でしたからね」
ゲネフェアは短く頷いた。
ゲネフェア・ガンガン「だからこそ、俺たちは裏側にいる。表の英雄たちが走り出すその影で、拾えるものを拾う。……アルセド・ラピス、クレスト、哨戒を継続。目立たず、しかし確実に」
三機の機体は、シャングリラの闇に溶けたまま、静かに位置を保った。
アーガマの格納庫では、ジュドーが廃人となったカミーユと対峙し、Ζガンダムとの運命的な出会いを迎えようとしていた。
その裏側で、トリアイナのカワセミは、歴史の教科書には載らない航跡を、静かに刻み始めていた。
プロイは、ジャンクの山の陰で空を見上げたまま、工具を握りしめていた。