機動戦士ガンダムの世界へ転生したオッサン3人組の奮闘記 TTI隊「紺藍の四つ星」潜入と暗躍の軌跡〜 作:かりかりもふもふメロンパン
宇宙世紀0080 年 5 月 5 日。
宇宙・暗礁宙域 グワラン艦内。
TTI 隊の母艦である戦艦グワランは、地球の監視の目を逃れた暗礁宙域に潜んでいた。
現在、グワランは本格的な大規模作戦に向けて、地球の重力下でも行動可能な特殊な改装の途上にあり、宇宙世紀 0083 年頭の完了を目指して改修作業が急ピッチで進められていた。
これが、母艦グワランが大規模な動きを取れない最大の理由だった。
ブリッジでは、フィッラから託された艦長代理を務める戦術士長シゲハル・ヨシタカが、作業の進捗と航路計画を確認していた。
シゲハル・ヨシタカ「(通信士シェリンカ・リームへ)地球への通信回線に異常はないか?フィッラ隊長からのキンバライト基地への帰還報告は明日未明の予定だな。リーゼ・ブラウニング技師の確保は完了した模様だ。」
シェリンカ・リーム「はい、艦長代理。改装作業は予定通りですが、資材の供給ルートの確保が急務です。」
シゲハル・ヨシタカ「デラーズ紛争が始まる前に、我々の基盤を固めねばならん。トリアイナ作戦開始の 10 月 10 日に全てを集中させるため、二つの長期計画を滞りなく進めろ。」
グワランが動けない間に、TTI 隊の戦力を確立するための二つの長期任務が同時進行していた。
一つはゲネフェアとネイブルによるアクシズへの潜入長征、もう一つは、ディートが率いる傭兵部隊によるデラーズ・フリート内部への潜入長征だった。
デラーズ・フリートの『茨の園』への旅路
グワランから発って約二週間。ディート率いるシュペーア・シルト隊の小規模艦隊は、デラーズ・フリートの秘密拠点、『茨の園』を目指して航行していた。
彼らの任務は、TTI 隊の真の姿である『シュテルン・アズール』を隠し、シュペーア・シルト隊という単なる有能な傭兵部隊としてデラーズ・フリート内部へ潜入し、情報収集とパイプ作りを行うことだった。
艦艇は、地球圏を離れつつある宙域で、頻繁に襲撃を受けていた。
ディート・ボン「くそ、また連邦の孤立艦か!しつこい!」
ブリッジで苛立ちを隠せないのは、シュペーア・シルト隊隊長だった。
彼の小隊は、ヴァール、ユーリ・ブルック、ルカ・ブルックの優秀なパイロットたちで構成されていたが、補給を狙った残党や、敵味方構わず攻撃してくる孤立部隊との交戦が増えていた。
ディート・ボン「ヴァール!主砲を牽制に使え!ユーリとルカは敵機の動きを封じろ。絶対に深追いはするな。我々の目的は茨の園だ。弾薬と燃料の無駄は許さん!」
ヴァール・レーベン「了解!」
ユーリ・ブルック「OK、隊長!」
ルカ・ブルック「すぐ片付けます!」
ディートは、戦闘を指揮しながら、もう一方の旅を思っていた。
ディート(独り言)「我々も茨の園への旅で戦闘続きだが、ゲネフェアとネイブルのアクシズへの潜入長征はもっと過酷だろうな……。あちらは何年かかるかわからない。その間にどれだけのデータと情報とオマケを持ち帰れるか……。」
シュテルン・アズールの未来は、この二つの長期計画の成功にもかかっていた。
ディートは、自分たちがデラーズ・フリート内部に確固たる足場を築き成果を上げることで、自分たちのせいで作戦が崩れるという最悪な結果にしないとする決意を新たにした。
旅路の途中での会話
宇宙世紀 0080 年 5 月上旬頃。
激しい戦闘が一段落し、艦隊が静穏な宙域を航行していたある日のこと。
ディートは、隊員たちの生い立ちについて何気なく尋ねてみた。
戦闘を通じて彼らの実力は把握していたが、そのルーツには興味があった。
まず、ヴァールが口を開いた。
ヴァール・レーベン「僕は、シン・マツナガに拾われました。物心つく頃には、衣食住の全てを彼に与えてもらい、生きていくための心得や戦闘術を叩き込まれました。特に戦闘機やモビルアーマーへの適性を見出され、パイロットを目指すことになったんです。もちろんモビルスーツも普通に乗れます。」
次に、双子のユーリ・ブルックとルカ・ブルックが語り始めた。
ユーリ・ブルック「私たちは、孤児でした。施設に居たのですが、周りの子達と馴染めず、施設を出て路頭に迷って木星船団の中に紛れ込んでいたのを、シャリア・ブル少佐に見出されて育てられました。彼からは、ニュータイプとしての可能性と、宇宙での生き方を教わりました。」
ルカ・ブルック「ユーリが話した通りです。僕とユーリは、シャリア・ブル少佐の教えを具現化し、それをそのまま戦闘スタイルに反映しています。いつの間にかブル少佐より上手く操れるようになり、それから船団の警護の仕事を引き受けるようになりました。ユーリは女性ならではの、しなやかで美しい動きをする矛。そして僕は男ならではの力強いブロックをしながらも俊敏な動きをする楯、それが僕たちの戦い方です。」
ディートは彼らの話を聞き終え、静かに頷いた。
ディート・ボン「なるほどな。『ソロモンの白狼』と、そして「木星帰りの男」に見出された英才たちか。お前たちの突出した実力と戦場での連携、これで合点がいった。」
その直後、ヴァールがディートに向かって尋ねた。
ヴァール・レーベン「ディートさん、俺たちばかり話しましたが、ディートさんはなぜ『シュテルン・アズール』に?キンバライト基地に流れ着いたと聞きましたが、ディートさんほどの腕の方が、あんな辺境の基地にいた理由が知りたいです。」
ディートは一瞬遠い目をした後、静かに自分の経歴を語り始めた。
ディート・ボン「俺は元々、ジオン公国軍突撃機動軍に所属していた。階級は中尉だった。あの『真紅の稲妻』、ジョニー・ライデンとも共に戦場で活躍していた時期もある。」
ディートは苦々しい顔で続けた。
ディート・ボン「だが、俺はキシリア・ザビの苛烈なやり方、特にニュータイプを道具のように扱う冷酷さに反発した。上層部の謀略と汚いやり方に嫌気がさし、上官の命令に反した結果…」
彼は肩をすくめた。
ディート・ボン「当然、左遷だ。軍部に見限られ、ドズル・ザビ中将に拾われ流刑同然で地球のキンバライト基地へ送られた。そこで、フィッラや TTI 隊の連中と出会った。彼らの持つ『地球圏全体を救う』という、スケールの大きな理想と、その実現に必要な先取りした技術に惹かれた。そこでスカウトに応じ、今に至るというわけだ。」
ヴァール、ユーリ、ルカは、ディートがジオン軍突撃機動軍のエリートであり、キシリアという巨大な権力に反発した末に TTI 隊へ合流したという経緯を知り、改めて隊長に対する信頼と敬意を深めた。
シュペーア・シルト隊の四人は、結束を強め、デラーズ・フリートの秘密拠点へ向けて、静かに旅を続けた。