機動戦士ガンダムの世界へ転生したオッサン3人組の奮闘記 TTI隊「紺藍の四つ星」潜入と暗躍の軌跡〜 作:かりかりもふもふメロンパン
優秀なパプル
宇宙世紀 0080 年 9 月下旬。
木星圏アクシズ。
地球圏から遠く離れた木星の衛星軌道上、小惑星を改造して作られたジオン残党の巨大な拠点、アクシズ。
この場所こそ、シュテルン・アズールが掲げる『ザク復権計画』の核となる技術、資源、そして優秀な人材を調達するための最重要目的地だった。
ゲネフェア・ガンガンが率いる先行隊の艦艇は、幾度かの連邦軍哨戒部隊との小競り合いはあったものの、その度に連邦のシステムを巧妙に欺き、予想以上の速度で航行し、ディート率いるシュペーア・シルト隊の「茨の園」到着とほぼ同時期に、アクシズ宙域に到達していた。
艦のブリッジには、ゲネフェア・ガンガン、ネイブル・ローゼ、そしてネイブルの義姉となった、パプル・ローゼの三人が立っていた。
ゲネフェア・ガンガン「パプル、お見事だ。艦艇の操縦、航路、通信、そして戦闘までも全てお前が担って、ここまで我々を連れてきてくれた。シゲハルさんのいる『グワラン』経由で、ディートたちも茨の園に無事着いたと聞いている。これで、フィッラたちの地上での作業に、より早く技術フィードバックを送る準備が整った。」
ネイブル・ローゼ「本当だよ、パプル姉の技術は本当に凄い。これほどの長距離航行で全くミスがないなんて。私には航宙士は無理だよ。」
ネイブルはコンソールから離れた場所で、パプルの手腕に感嘆した表情を見せた。
その後ろに控えるパプル・ローゼは、ブリッジの窓から見えるアクシズの巨大な構造物を、複雑な感情で見上げていた。
アクシズへの到着は、彼女が離別した主君たちと関わりのある場所へ戻ることを意味しており、その胸中には期待と不安が交錯していた。
パプル・ローゼ「ゲネフェア。アクシズ、すごいね。でも、入港手続きは慎重にしないと。ここはデラーズ・フリートとは違って、中立を建前にしているから、私たちが来たことが公になってはマズイんでしょう?」
ゲネフェア・ガンガン「その通りだ、パプル。さあ、最終通信の準備だ。ネイブルは、私と一緒に合言葉の確認だ。我々の目的は、アクシズの技術者たちを仲間に引き入れ、『ザク復権計画』を具体的に進めることだ。そして、我々が設立を計画しているダミー会社を通じて、技術を売り込むルートを確立する。」
ネイブル・ローゼ「了解、ゲネ兄。私も極秘の合言葉は完璧だよ。」
ネイブルはゲネフェアの隣へ移動し、ゲネフェアと二人で事前に取り決めた合言葉を小声で確認した。
パプル・ローゼ「了解しました。アクシズ側の認証コードと、ゲネフェアが準備した極秘の合言葉を組み合わせます。通信の秘匿性を最高レベルに維持します。」
パプルは、艦の通信コンソールに慎重に手を伸ばした。
パプル・ローゼ「こちら認証コード・ベータ・テンより、アクシズ管制塔へ。入港許可を求める信号を発信します。」
パプルが信号を発信すると、地球圏とは比べ物にならないほど冷たく、広大な宇宙の静寂の中、アクシズからの返信を待つ時間が流れた。
アクシズ、秘密の扉が開く
パプルが信号を送ってから、およそ一分。
長距離通信特有のノイズと共に、クリアではないが確かな音声が艦のブリッジに響いた。
通信士(アクシズ)「…識別コード確認。合言葉も確認しました。こちら側からの発信は、当面、一切行いません。入港を許可します。当艦隊が使用する非公開ドックへ誘導します。外部ドックからの情報収集や連邦への通報を避けるため、極秘ルートでの入港となります。操艦には細心の注意を。」
ゲネフェアの顔に、交渉の第一段階を突破した安堵と、緊張感が入り混じった表情が浮かんだ。
ゲネフェア・ガンガン「よし。向こうも秘密主義を徹底しているな。パプル、そのまま誘導に従え。ネイブル、緊急時の戦闘配置を警戒レベル2で継続。ここからが本番だ。」
パプル・ローゼ「了解、ゲネフェア。アクシズへ、慎重に進入します。」
パプルは慣れた手つきで艦を操り、アクシズ周辺に浮かぶ岩塊の影から、ゆっくりと基地本体に向かう隠されたルートへと艦艇を滑り込ませた。
巨大な構造物の暗い影が艦体を覆い、ブリッジの窓からは、小惑星の内部へと続く巨大なドックの入り口が見え始めた。
ゲネフェアは、アクシズの深部へと消えていく光景を見つめた。
ゲネフェア・ガンガン「ディートはデラーズ総帥を相手に、フィッラたちは地球で連邦軍を相手にしている。私たちアクシズ組は、未来の技術という名の切り札を手に入れる。これで全ての駒が揃ったな。」
運命の邂逅:シャア・アズナブル
ゲネフェア、パプル、ネイブルの三人が艦艇から降り立ち、入港後の正規の移動ルートへ向かおうとした、その瞬間だった。
巨大なドックの向かい側、別の流線型の美しい艦艇のタラップが降り、一人の人物が姿を現した。
赤い軍服に身を包み、ヘルメットを左脇に抱えたその男は、ジオン公国軍のエース、シャア・アズナブルその人だった。
ゲネフェア、ネイブル、そしてパプルの三人は、そのまさかの出会いに息を呑んだ。
この場で立ち去れば、ただでさえ極秘任務である自分たちが不審に思われる。
ゲネフェアは咄嗟に、冷静な判断を下した。
ゲネフェアは、ジオン軍人として最も適切な敬礼をもって、シャアに向き直った。
ゲネフェア・ガンガン「…失礼いたします。ゲネフェア・ガンガンであります。」
シャアは彼らに向かって歩み寄り、その優雅な顔に笑みを浮かべた。
シャア・アズナブル「君たちを待っていたよ。ゲネフェア・ガンガン君。」
ゲネフェアは、なぜ自分たちが待たれていたのか、と驚きを隠せなかった。
シャア・アズナブル「ドズル閣下が目をかけていた者たちだ。ゼナから私に直接、話があったのだよ。」
シャアはそう言うと、周囲に他の乗員がいないことを確認し、声を落とした。
シャア・アズナブル「ゼナは、君たちフィッラ、ネオガバン、ゲネフェア、そしてネイブルの四人がドズル閣下から直々に目をかけられていたことを覚えておられた。そして、君たちがジオン再興のためにアクシズに来る可能性があるとして、『この名前に当たる人物がアクシズへ来たら優遇してほしい』と、私に伝えてくれていたのだ。」
さらに、シャアはゲネフェアたちが入港できた本当の理由を明かした。
シャア・アズナブル「加えて、君たちがゼナとミネバ様を護衛し、ジオンの残党と共にアクシズへ送り届けていたこと。この事実が、君たちの全ての手続きをすんなりと終わらせ、この秘密ドックへ入る許可を与えたのだ。おかげで君たちは、余計な詮索を受ける必要がなくなった。」
ゲネフェアは、TTI 隊が自ら実行した、ゼナたちをサイド 3 まで護衛したという事実を口にした。
ゲネフェア・ガンガン「あ…ありがとうございます。ですが、我々は… サイド 3 までしか護衛はしておりません。」
シャアはゲネフェアの言葉を聞くと、口元に静かな微笑みを浮かべた。
シャア・アズナブル「ソロモンからサイド 3 まで。いや、ソロモンからそこまでが一番大変だったはずだが? 君たちの貢献は理解している。ご苦労だった。」
その言葉は、ゲネフェアたちがゼナたちを連邦の追手から守り、安全な場所まで送り届けたという行動の本質を理解していることを示唆していた。
ゲネフェアは、シャアの深謀遠慮に恐れすら感じた。
シャア・アズナブル「さぁ、時間が惜しい。まずはアクシズの全権を握るマハラジャ・カーンのところへ行こうか。技術担当の君たちを、彼が心待ちにしている。」
シャアはそう言うと、ゲネフェアたちに背を向け、迷いなくアクシズの核心部へと歩き始めた。
ゲネフェアとネイブル、パプルは顔を見合わせ、この予期せぬ強力な後ろ盾を得た事実に、複雑な緊張感を覚えながらその後に続いた。