機動戦士ガンダムの世界へ転生したオッサン3人組の奮闘記 TTI隊「紺藍の四つ星」潜入と暗躍の軌跡〜 作:かりかりもふもふメロンパン
髭面の中佐ドライゼ
宇宙世紀 0080 年 9 月下旬。
小惑星帯に潜むデラーズ・フリートの軍事拠点、「茨の園」。
かつてジオン公国軍の宇宙要塞だったこの基地は、現在、エギーユ・デラーズ総帥率いる艦隊の秘密の根城となっていた。
ディート・ボンが艦長を務めるシュペーア・シルト隊の艦艇は、厳重な識別コードの照合を経て、茨の園内部のドックへ無事に入港し着艦した。
ディートが艦橋から指示を出すと、シュペーア・シルト隊の隊員たちが、慣れた手つきで艦艇から降りる準備を始めた。
ディートは、グワランのシゲハル・ヨシタカと最終通信を終えたばかりだった。シゲハルは、ゲネフェアがアクシズに入り、ダミー会社設立の準備に入ったことを伝えてきていた。
ディート・ボン(内心)「フィッラとゲネフェアが、それぞれ地上と経済基盤の整備を始めた。俺はここで、デラーズ総帥の懐に入り込み、戦略レベルの情報を得なければならない。」
艦艇のタラップが金属音を立ててドックフロアに降りると、ディートを先頭に、数名のシュペーア・シルト隊メンバーが整列して外へと踏み出した。
そして、隊列の最後を締めくくるように、ロード・バルトが降り立ち、隊の背後に控えた。
迎えの中佐
彼らを出迎えてくれたのは、ドックの照明の下に立つ、一人の男だった。
その男は、ジオン軍の軍服をかなり使い込まれた状態でラフに着こなし、袖は肩のあたりまで豪快に捲り上げ、精悍な顔には整えられた濃い髭を生やしていた。
デラーズ・フリートというストイックな集団には珍しい、どこか職人然とした雰囲気を漂わせている。ディートはその男の階級章に目を向けた。
それは中佐を示すものだった。
男はディートたちに近寄っていき、声をかけたが、最後に降りてきたロード・バルトの風貌を見て、一瞬、驚きに目を見開いた。
ロード・バルトは、体が大きくガッシリとしており、何よりも目を引いたのは、その顔を覆う青い毛色の狼のマスクだった。
その異様な姿は、デラーズ・フリートのドックでは、異彩を放っていた。
ドライゼはすぐに表情を取り繕ったが、一瞬の動揺は隠せなかった。
彼は気を取り直し、強い眼差しでシュペーア・シルト隊のメンバーを一人一人見渡し、声をかけた。
ドライゼ「よく来てくれた。ディート・ボン大尉と、シュペーア・シルト隊の諸君だな。」
ディートは、中佐が自分の階級を把握していることに軽く驚きつつ、すぐに厳粛な敬礼をした。他のメンバーもそれに続いた。
ディート・ボン「シュペーア・シルト隊、ディート・ボンであります!お出迎えありがとうございます!」
男はディートの敬礼を受けながら、笑みを浮かべ、自己紹介をした。
ドライゼ「俺はドライゼという。たまたまこのドックにいたが、総帥はお前たちの到着を心待ちにしておられた。まずは総帥への謁見の手続きを済ませよう。」
ディートは、このドライゼ中佐がただの一般の軍人ではないことを直感した。総帥の近しい人物であることは間違いない。
ディートは、シュペーア・シルト隊の代表として、改めて敬意を表して挨拶を交わした。
ドライゼ「…挨拶は済んだな。ディート大尉、本当なら、すぐにもデラーズ総帥のところへ案内をしたいところだが、生憎と総帥は目下取り込み中でな。今日の謁見は難しい。明日にしてもらうことになった。」
ディートは一瞬、眉をひそめたが、すぐに恭順の意を示した。
ディート・ボン「承知いたしました。総帥のご都合を優先させていただきます。」
ドライゼ「そうか。お前たちも長旅で疲れているだろう。まずはゆっくり休養できるところへ案内しよう。道中、お前たちの話でも聞かせてもらおうか。」
ドライゼはそう言うと、ディートたちを先導するようにドックの奥へと歩き始めた。
ディートは隊員たちに目で指示を送り、ドライゼ中佐の後に続いた。
茨の園・総帥執務室
宇宙世紀 0080 年 10 月 1 日、デラーズ・フリートの拠点「茨の園」内部。
前日にドライゼ中佐に案内された休養所で一夜を明かしたディート・ボン大尉とシュペーア・シルト隊の面々は、身支度を整え、厳かな雰囲気の漂う総帥執務室へと向かった。
ディート、そしてディートに付き添うロード・バルト、ヴァール・レーベン、ユーリ・ブルック、ルカ・ブルックの五名は、デラーズ総帥の前に整然と並び立った。
執務室の玉座には、ギレン・ザビの思想を強く継ぎ、デラーズ・フリートを組織した、エギーユ・デラーズ総帥が厳格な表情で座っていた。
厳粛な空気は一触即発の緊張感をはらんでいた。
デラーズ総帥は、ディートたちの顔を見渡すと、静かに口を開いた。
エギーユ・デラーズ「ディート・ボン大尉と、シュペーア・シルト隊の諸君。遥々、難路を越え、ジオン再興の志のもと、この茨の園へ来てくれたこと、心より感謝する。長旅、ご苦労であった。」
その労いの言葉は、ディートたちの心に響いた。
隊の自己紹介
デラーズ総帥は、ディートたちの背後に立つ、ひときわ異彩を放つロード・バルトの姿に目を留めた。
エギーユ・デラーズ「まず、諸君の隊について聞かせてもらおう。どのような経緯で結成され、そしてここにいる諸君は、一体何者なのか?」
ディートは一歩前に進み出ると、隊の結成経緯と、真実(シュペーア・シルト隊の使命)を隠した表向きの「ジオン残党兵」としての物語を語り始めた。
彼は、ロード・バルトを助けた一件から語り出し、隊結成までの流れを順序立てて説明した。
ディート・ボン「はっ。ディート・ボン大尉であります。私はかつて、キシリア・ザビ様の下で戦っておりましたが、一年戦争末期にその作戦行動が認められず、左遷に近い形で戦線を離脱いたしました。」
ディートはそこで一旦言葉を区切り、背後のロード・バルトを指した。
ディート・ボン「その後、地球に降りた際に、私はこのロード・バルトと出会い、彼を助けました。ロード・バルトはそれ以来、私の付き人となり、行動を共にしています。その風貌は異様ですが、忠誠心と戦闘技術は誰にも劣りません。」
ロード・バルトは、デラーズ総帥に対し、静かに一礼した。
ディート・ボン「そして、一年戦争末期、宇宙を転戦する中で、シン・マツナガ大尉の下にいたヴァール・レーベン少尉と出会い、終結後に合流しました。また、その後、シャリア・ブル少佐の下にいたユーリ・ブルック少尉とルカ・ブルック少尉の二人とも、偶然出会うことができました。」
ディートは、TTI 隊のメンバーがそれぞれ上官の元で訓練を受けていたという事実を、デラーズ総帥への信頼性を高める材料として利用した。
ディート・ボン「彼らは皆、連邦への徹底抗戦を志す優秀な人材です。私が隊長となり、シュペーア・シルト隊を結成し、傭兵として転戦する中で力を蓄えてきました。この度、総帥がジオン再興のために再起されたという噂を聞き及び、馳せ参じた次第であります。」
デラーズ総帥は、ディートの話を終始無言で聞き、その顔には深い思索の表情が浮かんでいた。
エギーユ・デラーズ「…シン・マツナガ、シャリア・ブル…。優秀な者たちが、我が艦隊を支えるために集まってくれたこと、誠に心強い。ディート大尉、お前たちの志、このデラーズ、確かに受け取った。」
デラーズ総帥はそう言うと、ディートたちに、今後の任務に関する指示を出すため、顔色を改めた。
最初の任務:情報と忠誠の試金石
エギーユ・デラーズ「ディート大尉。お前たちの最初の任務はこれだ。近頃、我が艦隊の秘密ルートを通じた資材の横流しが多発している。これが、連邦の工作員によるものか、あるいは内部の裏切りによるものか、判然としない。この裏切り行為は、今後の重大な作戦を大きく遅らせる可能性がある。」
エギーユ・デラーズ「お前たちの持つ『シュペーア・シルト(矛と盾)』の技術力と、ヴァール少尉の異形の機体(ビグロ)の能力を駆使して、速やかに犯人を突き止め、捕縛すること。これが、我がデラーズ・フリートがお前たちに与える、最初の情報と忠誠の試金石だ。」
ディート・ボン「はっ!デラーズ総帥。承知いたしました。シュペーア・シルト隊、総帥の信頼に応えるべく、必ずや任務を完遂いたします。」