機動戦士ガンダムの世界へ転生したオッサン3人組の奮闘記 TTI隊「紺藍の四つ星」潜入と暗躍の軌跡〜 作:かりかりもふもふメロンパン
宇宙世紀 0081 年 8 月 15 日。
月面軌道宙域。
地球でフィッラたちが「トリアイナ・ザク・プロトタイプ」の実戦テストを開始した日、デラーズ・フリートは「ジオン公国国慶節」(8 月 15日)を機に、世界各地でゲリラ活動を扇動していた。
デラーズ総帥から月面軌道上の警備任務を拝命しているディート・ボン大尉は、この喧騒に乗じ、ガトー大尉への交渉準備を進めていた。
『ミョルニル』の艦長室で、ディートはヴァール・レーベン少尉を呼び出した。
ディート・ボン「ヴァール。各地でゲリラ活動が始まっている。総帥は我々が月面で連邦の工作を防いでいると信じているが、我々が動くべきは連邦ではない。ガトー大尉の動向だ。」
ヴァール・レーベン「その通りです、ディートさん。(内心:復帰予定の 9 月まで、もはや猶予はない)横流しルートの動きが、この数週間で加速しています。ガトー大尉が、私的な戦力増強の準備を最終段階に入れていると見るべきです。」
ディート・ボン「ガトー大尉の準備が整う『今』、我々が接触を図るべきか。あるいは、彼の地位が固まった『復帰後』に接触を図るべきか。シュペーア・シルト隊のメンバーには、この議論の前提は伏せている。お前の意見を聞かせろ。」
ヴァール・レーベン「(沈思黙考し)『今』こそが最大のチャンスです。ガトー大尉が最も物資と技術を必要とし、焦っているのは、私的な戦力を完成させる直前の今です。復帰後になれば、総帥の指示のもとで正規のルートが動き出し、我々の『横流しルートの情報』というカードの価値が薄れます。」
ディート・ボン「つまり、ガトー大尉が『私的な戦力』を完成させるために、我々シュテルン・アズールの(トリアイナ・アセット重工業)『トリアイナ・ザク・プロトタイプ』技術を喉から手が出るほど欲しがっている、このタイミングを突くべきだと。」
ヴァール・レーベン「はい。月面の小型ドックの情報を使い、我々が『最高の技術協力者』であることを示し、総帥の指揮系統を介さずに、ガトー大尉と対等な立場で協定を結ぶ準備をするべきです。」
忠誠を示すための模擬戦の継続
ディートはヴァールの意見を受け入れ、ガトー大尉への接触を復帰前と決断した。
ディート・ボン「よし。ならば、まずは総帥の目を完全に欺かなければならん。ユーリとルカには、月面宙域での連邦の偵察部隊の掃討を強化させろ。この期間中、我々は総帥に『月面防衛の英雄』という印象を植え付け続ける。」
ディートの指令により、シュペーア・シルト隊は、連邦の偵察機や小規模なゲリラ部隊との戦闘を継続した。その成果は、デラーズ総帥へ逐一報告され、ディートたちの功績は揺るぎないものとなっていった。
ディートは、総帥への忠誠を完璧に演じきり、裏ではシュテルン・アズールの使命である「ガトー大尉への介入」という、最大の目標達成に向けた最終準備に着手した。
英雄との交渉、月の暗がりで
宇宙世紀 0081 年 9 月 1 日。
月面軌道宙域。
デラーズ・フリートの「ジオン公国国慶節」による一連のゲリラ活動の喧騒が収まり、デラーズ艦隊がガトー大尉の復帰に向けた最終調整に入っていた。
ディート・ボン大尉は、ガトー大尉との極秘交渉を決行した。
ディート、ヴァールが各自 MS と MA に乗り(ディート専用ゲルググのトュルム・コマンドとヴァール専用ビグロのトュルム・イェーガー)月面宙域の警備任務という公式のカモフラージュのもと、横流しルートの終着点である月面の小型ドックへ静かに向かっていた。
小型ドック周辺のデブリフィールドには、シュペーア・シルト隊が追跡していた輸送船団の残骸がわずかに残されており、警戒態勢が敷かれていた。
ディート・ボン「ヴァール。ガトー大尉は、総帥の指示を待たず、俺たちが横流しルートを掴んだことを知っているはずだ。この場所で会うのは、ガトー大尉自身にとっても、大きなリスクを伴う『密約』の証だ。」
ヴァール・レーベン「ディートさん。ガトー大尉は忠臣ですが、それ以上に勝利を渇望しています。私的な戦力、特に特殊な MS・MA を完成させるためには、連邦の新型 MSに対抗できる技術が不可欠です。俺たちの『トリアイナ・ザク・プロトタイプ』の技術こそが、彼を動かす最大の交渉カードです。」
ディートとヴァールは、偵察機を出し、ガトー大尉の乗機と、彼に随伴する MS の存在を確認した。
ガトー大尉は、ディートの予想通り、単独で現れることはなく、一機の護衛MS を伴っていた。
英雄との接触
ディートとヴァールは、機体を小型ドックの近くに着艦させ、武装を解除してドック内部へ入った。
ドックの静寂の中、アナベル・ガトー大尉が、護衛の士官と共に立っていた。
ガトー大尉は、ディートの鋭い眼光と、その背後に控えるヴァールの異形な機体(トゥルム・イェーガー)の存在に、静かな警戒心を向けていた。
アナベル・ガトー「ディート・ボン大尉。貴官が、我が艦隊の補給ルートを脅かしていた残党を掃討したと報告を受けている。そして、貴官がなぜ、ここに来たのかも察している。」
ガトー大尉の眼差しは、ディートの心の内を見透かすように鋭かった。
ディート・ボン「ガトー大尉。単刀直入に申し上げます。貴方がこの月面宙域で、総帥の指揮系統を介さずに『私的な戦力』を増強していること、そしてその物資が、我々シュペーア・シルト隊が追跡していた横流しルートを通じて運ばれていたことを、我々は知っています。」
ガトー大尉の護衛が、即座に武器に手をかけた。
アナベル・ガトー「(手で護衛を制し)…それで? 貴官は、総帥にそれを報告し、手柄と忠誠を示すためにここに来たのか?」
ディート・ボン「いいえ。私は、総帥の悲願達成のためにここに来ました。貴方の目的は、『星の屑作戦』を勝利に導くこと。我々の目的も同じです。我々シュペーア・シルト隊は、貴方が必要としている連邦の新型 MS に対抗できる技術を提供できます。」
ディート・ボン「貴方が極秘に準備している『特殊な MS・MA』には、我々が持つEXAM 応用 OS と、高機動型ザク II の設計技術が不可欠です。我々は、横流しの件を総帥に報告しません。その代わり、貴方の私的な戦力増強に、技術協力させてほしい。」
ディートは、ガトー大尉に、横流しルートを維持するという『盾』と、勝利を掴むための技術という『矛』を同時に提示した。
ガトー大尉はディートの要求の真意を探るように、しばらく沈黙した後、ディートの正面に立ち、その瞳を見つめた。
彼の忠誠心と勝利への渇望が、ディートの申し出を受け入れさせるのか、それとも排除させるのか、この一瞬に未来が懸かっていた。
英雄の決断と密約の成立
デラーズ・フリートの「ジオン公国国慶節」による一連のゲリラ活動の喧騒が収まり、デラーズ艦隊がガトー大尉の復帰に向けた最終調整に入る、まさにその日。
月面軌道上の極秘の小型ドックにて、ディート・ボン大尉とヴァール・レーベン少尉は、アナベル・ガトー大尉との緊張に満ちた交渉を続けていた。
ディートは、横流しルートの全容を握る『切り札』と、トリアイナ・アセット重工業が誇る『トリアイナ・ザク』の技術力を同時に提示していた。
アナベル・ガトー「(沈黙を破り)ディート大尉。貴官は、我がデラーズ・フリートの物資横領を把握し、総帥への報告を控える代わりに、私的な戦力増強への『技術協力』とシュペーア・シルト隊が極秘に私との協力関係を求めている…そう理解してよろしいか?」
ガトー大尉の視線は鋭く、ディートの目から一瞬たりとも逸らされなかった。
ディート・ボン「その通りです、ガトー大尉。我々の目的は、総帥の悲願である『星の屑作戦』の確実な成功です。貴方の目的は勝利。我々の目的も勝利です。我々は、貴方が極秘に準備されている特殊な MS・MA が、連邦の新型 MS に力負けしないための技術的な優位性を提供できます。」
ディートは、ヴァールからの情報を基に、ガトーの勝利への渇望を煽った。
ディート・ボン「我々には、連邦の EXAM 応用技術と、高機動型ザク II の設計技術を融合させた、新企業のトリアイナ・アセット重工業の『トリアイナ OS』の理論があります。これを貴方の機体に組み込めば、その機体は連邦の最新鋭機を凌駕する反応速度を得るでしょう。」
ヴァールは、ディートの背後で、技術的な裏付けと証拠となるデータを記したチップを静かに示した。
密約の成立
ガトー大尉は、ディートが横流しの事実を知りながら、それを『脅し』ではなく『技術提供』という言い方の『データ収集』の形で利用しようとしている点に、ディートの軍事的な慧眼と、その裏にある確固たる信念を感じ取った。
そして何より、彼が今、最も求めている「高性能な MS 技術」を、ディートが提供できるという事実に抗えなかった。
アナベル・ガトー「…よかろう、ディート大尉。貴官の申し出を受け入れる。」
ガトー大尉は、静かに頷いた。
アナベル・ガトー「貴官たちは、私の私的な戦力増強に技術協力する。シュペーア・シルト隊がデラーズ総帥へ私の横領を報告しない代わりに、我々は極秘に、デラーズ・フリートには内密な協力関係を結ぶ。その代わり、貴官たちが提供する技術は、私が目指す勝利を確実なものとするものでなければならない。」
ディート・ボン「感謝いたします、ガトー大尉。我々の技術が、貴方の『信念』を必ず実現させます。我々、シュペーア・シルト隊は、今日この瞬間から、貴方の影の技術協力者となります。」
こうして、ディート・ボン大尉は、総帥への忠誠という『盾』を保ちながら、デラーズ・フリート内部で最も危険で強力な『矛』であるガトー大尉との密約を成立させた。
この協定により、シュテルン・アズールは月面の裏社会、そして連邦の GP 計画に最も近いガトーの私兵ルートへ、直接介入する足場を固めたのだった。