機動戦士ガンダムの世界へ転生したオッサン3人組の奮闘記 TTI隊「紺藍の四つ星」潜入と暗躍の軌跡〜 作:かりかりもふもふメロンパン
宇宙世紀 0081 年 12 月 12 日。
アクシズ秘密拠点執務室。
ジオン残党の掃討が進む宙域を遥か離れた小惑星アクシズの秘密拠点。
トリアイナ・アセット重工業の会長であるカリモフ・サンライズ(ゲネフェア)は、執務室の大型ホロスクリーンを睨んでいた。
画面の向こうには、秘密艦隊旗艦グワランの艦橋。
そこに立つのは、人材スカウト役を担うオービット・クルーグだ。
グワランから送られてくる報告に、ゲネフェアは静かに頷いた。
オービットはゲネフェアのカリスマを認めつつも、トリアイナの計画の初期から関わる協力者として、常に冷静で形式張らない報告スタイルを貫いている。
カリモフ・サンライズ「お疲れ様です、オービットさん。結果を聞かせてください」
オービットは淡々と、しかし確かな手応えをもって報告を続けた。
オービット・クルーグ「はい。まず工場長(現場責任者)には、ジオニック社出身のクレイブ・ホフマンを引き抜いた。終戦で宙に浮いたところを、『ザク復権』というエサで釣った。彼の現場統率力と旧ジオン技術への理解は、地球組の新型フレーム技術を量産に乗せる上で不可欠だ」
ゲネフェアは画面越しに、アクシズの拠点にいながら、地球圏の掌握を着実に進めている感覚を味わった。
オービット・クルーグ「次に副工場長。アナハイム・エレクトロニクス社(AE)の若手、ドミニク・エリスだ。AE の硬直化に嫌気がさしており、トリアイナの『スピード感ある開発体制』に魅力を感じている。彼の持つ GP 計画周辺の情報と連邦寄りのコネクションは、今後必ず役に立つ」
ジオニックの伝統と、AE の最新鋭技術のブレンド。これこそが TTI 隊が目指す、未来を見据えた技術開発の中枢となる。オービットの報告に、ゲネフェアは特に重要な人物について問いかけた。
カリモフ・サンライズ「システム開発の責任者はどうだ? リーゼ・ブラウニングのIMPULSE システムを支える、最も重要なピースだ」
オービット・クルーグ「問題ありません」
オービットは答えた。
オービット・クルーグ「システム開発副責任者には、木星船団出身のレノックス・ウェストだ。彼はヘリウム 3 輸送船団の管制システムを扱っており、『長距離・高信頼性の管制』に特化したノウハウを持っている。今後、我々が遠隔操作や、より大規模な宇宙拠点を運用する上で、彼の知識は金を積んでも手に入らない」
オービットは少し間を置き、引き抜きの苦労をにじませた。
オービット・クルーグ「船団のツテを最大限に使い、連邦のしがらみや派閥争いのない『自由な技術開発』を謳って口説いた。全員、現在グワランの秘密ドックへ向かっている。彼らの安全確保は万全だ」
カリモフは、アクシズの重力の向こう側、地球圏の裏側で進行する計画に、満足の笑みを浮かべた。
カリモフ・サンライズ「オービット、君の功績は大きい。トリアイナは、製造とシステム、両方の要を手に入れた。彼らに最高の環境を与え、存分に力を発揮させろ。我々が歴史を改変する第一歩は、この人材の獲得から始まる」
通信が切断されると、執務室には静寂が戻った。
ゲネフェアは、ホロスクリーンに浮かぶ、地球と木星を結ぶ線の交差点――トリアイナ・アセット重工業のロゴを静かに見つめていた。
トリアイナの血肉を決める重役会議
宇宙世紀 0081 年 12 月 13 日。
トリアイナ・アセット重工業の裏の最高首脳陣と、表の経営幹部が一堂に会する「臨時重役会議」が、厳重な通信回線を通じて開催された。
議題は、オービット・クルーグがスカウトした三名の人材の本採用の可否である。
<参加者リスト>
区分 所在地 役割
【裏幹部】
カリモフ・サンライズ会長(ゲネフェア・ガンガン)
アクシズ秘密拠点 議長、最高戦略責任者。
ヘヴィ・メタ相談役(フィッラ・ガンガン)
地上工場地下 地上技術開発統括。
セツナ・ダークタクト監査役(ネオガバン・ガンガン)
地上物資調達ライン 監査、地上運用統括。
テラー・スタチバナ参与(ヴァール・レーベン)
偽装潜伏拠点 諜報・セキュリティ統括。
リーゼ・ブラウニング技術開発センター責任者
技術開発センター IMPULSE システム開発責任者。
【表幹部】
ナラモ・キブン 社長
本社ビル(地球) 企業経営・対外折衝。
マルクス・ポーロ 副社長
資金調達部門(宇宙) 資金調達・財務統括。
アルフレッド・クルップ 副社長
経営戦略部門(地球) 市場開拓・リスク管理。
【立会人】
シゲハル・ヨシタカ技術開発センター責任者
グワラン級艦橋 連絡・現場情報提供。
会議は、会長であるカリモフの静かな声で始まった。
カリモフ・サンライズ「全員揃ったな。議題は三名の人材の本採用
だ。トリアイナの次のステージへの布石となる。まず、現場の状況と技術的な必要性について、ヘヴィ相談役から意見を」
ヘヴィ・メタ「クレイブ・ホフマン(元ジオニック)は、地上組が推
し進めるヴィシャス・フレームの量産化に不可欠です。彼はジオンの技術者が持つ現場の勘と、高い統率力を併せ持つ。彼の指揮なくして、我々が目指す新型ザクの迅速な実用化はありえません。即時採用を強く推奨する」
セツナ・ダークタクト「ドミニク・エリス(元 AE)の採用は、監査と物資調達の面で大きなメリットがある。彼の持つ AE のコスト構造とサプライチェーンの情報は、連邦政府や AE との取引における価格交渉を極めて有利にする。また、ホフマンの採用は、旧ジオン系の優秀な整備士の確保にも繋がる。二人とも採用に賛成だ」
リーゼ・ブラウニング「技術のコアを担う立場で、レノックス・ウェスト(元木星船団)の採用を強く求めます。彼の長距離・広域管制技術は、私の IMPULSE システムの弱点、すなわち超遠距離での信頼性の高い通信を補完します。彼の技術により、トリアイナの MS はアクシズから地球圏、あるいはさらに遠方まで、効果的に管制可能となる」
テラー・スタチバナ「技術的な利益は計り知れないが、セキュリティ面
も万全に管理可能だ。三名とも、技術者としての探求心をトリアイナに向けさせることで、裏切りリスクは極めて低い。だが、エリスとウェストには厳重な監視体制を敷き、彼らが触れる機密情報を段階的に管理する。セキュリティはクリアだ」
カリモフ・サンライズ「外部役員の意見は一致した。次に、表の経営陣。事業の合法性、財務、そして市場戦略の観点からどう評価するか?」
ナラモ・キブン「会長。三名の採用は、トリアイナの企業イメージを大きく向上させます。ホフマンは『平和利用を掲げる元ジオン技術者』、エリスは『革新を求める元AE の有能な人材』。連邦政府や世間への対外的な顔として、これほど優秀なカードはない。経営戦略的に賛成です」
マルクス・ポーロ「財務的に、採用コストは高いが、エリスがもたらすAE 関連の情報や、ホフマンの効率的な生産体制によって削減されるコストを考えれば、投資対効果は極めて高い。ウェスト氏の技術は、将来的な宇宙開発市場への参入権を買うことになり、これも長期的には莫大な利益を生む」
アルフレッド・クルップ「マルクス副社長の意見に賛同します。噂では特に連邦軍内の強硬な派閥による組織再編が近い今、エリスの採用はその市場に食い込む足がかりとなります。ウェスト氏の管制技術は、今後の連邦軍の新型兵器開発に不可欠なピース。我々が連邦軍事産業の中枢に入り込むための、最良の戦略的人材です」
シゲハル・ヨシタカ(連絡役)「会長、現場の士気にも関わります。オービットのスカウトの手腕は、残党兵たちにも『トリアイナは本気で未来を創る』という意識を植え付けています。この三名を正式に迎えることで、組織全体の結束力がさらに高まるでしょう」
カリモフ・サンライズ会長(ゲネフェア)「全員の意見は出揃った。全ての面で採用はトリアイナの発展に不可欠と認められた。よって、クレイブ・ホフマンを工場長、ドミニク・エリスを副工場長、レノックス・ウェストをシステム開発副責任者として、本日付けで本採用とする」
カリモフ・サンライズ会長(ゲネフェア)「各々、指示に従い行動せよ。テラー参与とリーゼ責任者は、ウェストの技術統合を最優先。ヘヴィ相談役とセツナ監査役は、ホフマンとエリスを最大限に活用し、新型フレームの量産を急げ。我々の計画は、ここから加速する」
通信回線が切断され、アクシズの秘密拠点に残されたゲネフェアは、着々と整っていく体制に満足の笑みを浮かべた。
シュテルン・アズールの歴史改変計画の基盤は、盤石になりつつあった。