超次元サッカーTS転生者の便乗ヴィクトリーロード   作:アマシロ

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2話目です。





 


決着! VS西ノ宮!

 

 

 

 

 

 

『さあ、後半に入ってすぐの西ノ宮の反撃、その直後の南雲原の速攻! 得点は3-1で南雲原がリードしています!』

『西ノ宮の動きが良くありませんね。普段とは違うメンバー、その連携の隙を突かれている形でしょうか』

 

 

 

 

 

 月影蓮は、すっかり楽しそうに敵陣を―――白い髪の少女を見据えるハルを意識の端に入れておきつつも再開までの僅かな時間で状況を整理しようとしていた。

 

 

 

 

(まさかあの選手――――DF専門ではないとは)

 

 

 

 

 突破力はあの最初のFW二人の連携のみ―――そうタカをくくってしまったが、実際は圧倒的な速さで抜かれてしまいこのザマである。攻撃と守備の両面どちらもハルに匹敵する相手がそういるはずがないという先入観もあったか。

 残り時間は減ってきているが、まだ戦える。

 

 次はカウンターを諦めてハルと共に守備に入り、速攻を封じてから動く。もし向こうが時間稼ぎに徹したら―――――厳しくなるが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ハルが蹴ったボールを受け取り、キックオフ。

 その瞬間、視界に入ったのは。

 

 

 

 

「……何だと」

 

 

 

 前線に上がろうとするハルと、マークにつく南雲原の選手たち。5人。

 そして眼前に立ちはだかる、先ほどまでハルと渡り合っていた白い妖精。

 

 

 

 

 

『な、なんと南雲原! ここで円堂ハルを5人でマークだぁああ!』

『これは……かなり思い切りましたね。西ノ宮の選手たちはほぼフリー、月影君に対しては南雲原のエース、星空君が相対する構えです』

 

 

 

 

 

『さあこの作戦は吉と出るのか!? 雷門のキャプテンと南雲原の超新星の対決にも注目です!』

「くっ」

 

 

 

 

 

 

 いくらなんでも思い切りが良すぎる――――!

 GKを除いて10人、エース星空を除いて9人、半数以上をハルのマークに!?

 

 これ見よがしに、眼前の星空さえ抜ければゴールまでほぼガラ空き。その代わりに、最低限の人数で最大効率のゾーンディフェンス! 雷門の選手なら容易くパスを通し、得点できるだろう。

 

 

 

 だが、西ノ宮の選手の実力、いや動きの癖やパスを受け取れる範囲をこちらが全く把握できていないのも事実! 有機的に動くゾーンディフェンスの前に、下手なパスを出せば奪われると直感する。それどころかオフサイドを誘うような挙動もある。自分がこの1対1で抜ければほぼ得点は確実ではある。あるのだが。

 そして自分は、ハルでも抜けない相手に、勝てるのか……?

 

 

 

 

(っ、雷門のキャプテンともあろうものが!)

 

 

 

 

 歯を食いしばり、技を繰り出す。

 プレストターンはハルのフェイントにも引っかからない相手に通じるとは思えない。

 

 

 

――――ならば!

 

 

 

 

――――――アクロバットキープ!

 

 

 

 ボールを蹴り上げ、自らも空中に――――。

 

 

 

 

 

 

「――――ハイアングル・トランスファー!」

「なっ!?」

 

 

 

 

 瞬時に向こうも跳躍。衝突―――は、しない、のか!?

 

 驚くほど軽い感触とともにボールが奪われそうになり、咄嗟に身体を捻って意地でボールを離れた場所に蹴り飛ばす。そのせいで着地に失敗し、無様に芝に転がるが―――少なくともボールを奪われはしなかった。

 

 

 

 

「やるね」

 

 

 

 軽い口調で呟く相手は、余裕をもって着地しており。

 即座に走り出す。

 

 

 

「くっ」

 

 

 

 こぼれ球――――星村、赤袖――――くっ!

 

 雷門なら間違いなくあるフォロー。

 しかし西ノ宮の選手はいない――――いない!? なんだ、あまりにも、動きが―――しまった!

 

 

 

 

(南雲原の狙いは、これか――――!?)

 

 

 

 

 あんなあからさまなマーク、見た目にはパスコースがガラ空きなことで西ノ宮の中盤はガラ空きに見える敵陣に上がってしまっている。自分の目からすると、少ない人数ながら嫌らしいゾーンディフェンスが組まれているのだが。

 結果的に、西ノ宮の中盤は上がりすぎてしまっている!

 

 あくまで客人、助っ人でしかない自分に指揮権はない。その必要もないと思っていた。そして、

 こぼれ球に真っ先に飛びついていた金髪のMF、柳生が思い切りボールを蹴り飛ばす。

 

 

 

 

「―――――桜咲ィッ!」

 

 

 

 

 

『おおっと、これは大きなクリア――――いや、桜咲選手が走り込んでいる!? 超ロングパス! 西ノ宮DFの動きが鈍いかぁ!?』

 

 

 

 

 

 さすがにダイレクトで決められる角度ではないものの、DFは一人のみ。

 それでも即座にシュートの構えに入った南雲原のFW、桜咲に対してGKは一瞬反応が遅れた。

 

 

 

 

――――直前にフェイントであっさりと決められたこと。DFがいること。それが判断を僅かに躊躇わせた。

 

 

 

 

 

「―――――――オラァッ!」

 

 

 

 

 

―――――剛の一閃

 

 

 

 

 

 並のシュートであれば、反応できただろう。

 しかしその強烈なシュートはDFを吹き飛ばしてゴール端に凄まじい勢いで突き刺さり――――躊躇った影響で一拍遅れて飛び込んだGKの手は、僅かに届かなかった。

 

 

 

 

 

「―――――やられた」

「蓮さん?」

 

 

 

「アイツらの狙いは、俺たちじゃない」

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

「みんな、動きが――――どうして……」

 

 

 

 

 

 西ノ宮ベンチで愕然としている千乃会長の妹さんを見ながら、雲明は冷めた目で戦局を見据えていた。

 

 

 

 

 

 

「……なんでもこなせてしまう、千乃会長の妹さんには恐らく分からない。急に来た強豪選手に居場所を奪われる辛さも、その仲間の気持ちも――――」

 

 

 

 

 まあ、雷門のキャプテンが自分たちのエース、サッカーモンスター円堂ハルより西ノ宮の選手を優先する理由も、道理もないのだけれど。

 

 

 前半に出番はなく、わざと開けられたパスコースにもパスはなく、円堂ハルへの5人マークという、西ノ宮の選手を完全に無視したタクティクスで、それでもなお点を入れられて。

 

 

 

 西ノ宮の選手のテンション、士気はどん底を通り越している。

 あれでは自分たちの技術も、必殺技も、十全に扱えないだろう。

 

 

 

 

 

 対して南雲原の士気は高い。これは、ただ単に優勢だからというだけではない。

 1人に対して5人でマークするのはこちらの士気を下げるリスクも高い。少ない人数で守備をなんとか回すことも当然ながら困難。

 

 

 

 

 

「けれど、僕たち南雲原は5人でのミニゲームに慣れている。それは、千乃会長が呼びかけて他の部活が協力してくれたから。柳生先輩が作ってくれた広いサッカーコートがあった。千乃会長の呼びかけで、なんとしても勝つ意識があった」

 

 

 

 

 

 これでもう西ノ宮は地盤沈下を起こしたも同然。

 これが、流星落とし。星を封じ、星を落とし、士気を落としてチームの基盤を崩壊させる――――かなり悪辣だが、正直相手が悪すぎて選べる手段が無かった。

 

 

 

 

「薬は、強すぎれば毒になる――――雷門中のエース、そしてキャプテンという劇薬は、西ノ宮にはあまりにも強すぎた」

 

 

 

 

 

 

「…………士気が高いのは、リーダーが優秀だからじゃないかしら」

「そうですね、それはあるかと」

 

 

 

「ぷっ。貴方のことよ――――サッカー部のリーダー、笹波君」

「え゛っ!?」

 

 

 

 

 振り返った千乃会長の目には、光るものがあって。

 憑き物が落ちたように、微笑んだ。

 

 

 

 

「――――そっか。こういうことだったのね―――――こんなに、簡単なことだったなんて」

「あの、会長?」

 

 

 

 

 完全にボロボロの西ノ宮では、いかに雷門中の二人が奮闘しようとどうにもならない。

 それでも諦めずになんとかしようとする姿は立派だと思うが、なまじエリートだけに弱小校の指揮に根本的に向いていないのかもしれない。

 

 

 

 

 

「……僕は、何でも簡単にできる人よりも。努力の大切さを分かってあげられる人が上に立ってくれると安心できる……そう思います」

「………ありがとう、笹波……雲明君」

 

 

 

 

 

 

 

 

 円堂ハルの強引な突破、月影蓮がこぼれ球を押し込んで4-2と差を縮められるものの。

 試合終了のホイッスルが鳴り響く。

 

 

 

 

 

 

『――――フットボールフロンティア地区予選・九州大会第1回戦! 南雲原中 対 西ノ宮中は4-2で南雲原中が見事な勝利!』

『サッカーモンスター円堂ハル君は流石の活躍でしたが、ほとんど互角の戦いを繰り広げた南雲原の超新星、星空真理君の今後の活躍にも期待したいですね』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

「負けたな」

「あーーー…―――――めっっっちゃ悔しい! 蓮さん、なんか途中からめちゃめちゃやりにくかったですよね!?」

 

 

 

「そうだな、恐らく向こうの戦略だろう。……まんまと引っかかってしまい、情けない限りだが」

「へぇ。誰だろ。監督、は違いそうだし――――ベンチのキャプテン?」

 

 

 

「彼は、結局最後まで試合に出なかったな」

「うーん。なんでだろ」

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

「いっただき~~!」

「ふう、初戦突破か……」

「うおおおお!」

 

「やったな、雲明!」

「うん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 うんうん。雲明が嬉しそうで私も嬉しいよ。……敵の士気を壊滅、テンション0にして封殺するとかエグいことするとはちょっと予想外だったけど。

 全部あのサッカーモンスターが悪い。なんで5人マークをぶち抜くの?

 

 

 

 

 

「雲明」

「真理」

 

 

 勝った後は、ハイタッチ。

 いつも通り勝利を祝ったところで、背後に人の気配が。

 

 

 

 

 

 

「真理、今回は俺の負けだね」

 

 

 

 

 

 出たな、円堂ハル!

 絶対「サッカー以外のできることをやれば?」とか言わせないべく、とりあえず雲明と肩を組んでドヤ顔決めておく。

 

 

 

「――――凄かったでしょう、雲明の作戦」

「ちょっ、真理!?」

 

 

 

「あ、やっぱり君が監督だったんだ」

「いいでしょ、私の相棒。あげないけど」

 

 

 

「へぇー……」

 

 

 

 

 あげませんっ!

 ということで半ば抱きつくような形になるが、まあ雲明だし。

 

 

 

 

「雲明は、サッカーやらないの?」

 

 

 

 

 こ、こいつうぅぅ!

 人が気にしていることを! 思わず睨みつけると、思いのほか円堂ハルは動揺したように視線を逸らす。

 

 

 

 

 

「……僕は病気で、サッカーをすることができないんだ」

「……ごめん――――そっか。………それでも、サッカーやってるんだ」

 

 

 

 

「え」

「蓮さん―――あ、雷門(うち)のキャプテンだけど―――が言ってたんだ。南雲原の指揮官に完全にしてやられてしまった、恥ずかしい限りだ――――って」

 

 

 

「ハル、いいこと言うね。そう、雲明のサッカーは凄いんだ!」

「うんうん。めっちゃ楽しかった! ……ってことは、真理とタイマンなら俺が勝つかな?」

 

 

 

 む?

 そうだね、って言えば雲明の実力を認めることになるんだけど。流石にちょっと癪かな。

 

 

 

 

「さあ? 私たちで4-2だったし、半分でちょうどいいくらいかもしれないね」

「――――じゃあさ、真理――――サッカーしない?」

 

 

 

 にっこり円堂スマイル。まぶしい。

 

 

 

「今やったよね」

「やったね」

 

 

 

「………疲れたんだけど」

「じゃあ、明日とかどう?」

 

 

 

 

 

 

――――――こ、こいつ……サッカーに飢えてる…!?

 

 

 サッカーモンスターってそういうこと!? めっちゃサッカーに飢えてるってこと!?

 

 

 

「そういうの、全部雲明に任せてるから」

「えー! じゃあ雲明、お願い!」

 

 

「………急に言われると、流石に困る」

「じゃあ連絡先! 交換しよう! 真理、雲明も!」

 

 

 

 

 雲明と目を見合わせる。

 断る? いや流石にちょっとここまで押しが強いと……。

 

 ちょっと事情を知ってると断りにくくもあるし。

 

 

 

 そんなわけで、連絡先が増えました。まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






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