超次元サッカーTS転生者の便乗ヴィクトリーロード 作:アマシロ
『さあ本日は、フットボールフロンティア九州地区予選・第2回戦。南雲原中 対 北陽学園の試合となっております。九州ではトップクラスの北陽学園ですが、対する南雲原中も前の試合では素晴らしいプレーを見せてくれました。角馬さん、どう御覧になっていますか?』
『前回、あの円堂ハルと五分に渡り合った星空選手に加えてレベルの高い戦術の組み立てもある南雲原です。どういう試合になるか楽しみですね。とはいえ、ポイントになるとすればやはりキーパーでしょうか』
『と、いいますと?』
『前回はシュートをほとんど見せなかった星空選手、そして南雲原FW陣が絶対的な壁、北陽キーパー陣内選手のグラビティデザートを打ち破れるかどうかがポイントになりそうです』
試合開始直前――――北陽学園の主力である品乃と空宮は、南雲原ベンチに立つキャプテンマークをつけた笹波雲明を見ながら話していた。
「――――この前戦ってみた限り、ブランク明けの南雲原はチーム全体としては未完成と言わざるを得ない状況だった」
「でも彼らは、笹波雲明が作ったチーム。やられると分かっている勝負はしない―――いや、どんな状況でも勝利をもぎ取ってきた」
「ほう。お前にとって笹波雲明はそんなに評価が高いのか? あの星空真理より?」
「昔は油断できない奴でした。小さい体で周りを出し抜いていましたね。フィジカルでは明らかに他の選手に劣ってましたし、真理はまた別枠だと思いますが――――真理と雲明、どちらが怖いかと言われれば、雲明だと思います」
「サッカーの眼か……」
「はい。あいつには見えていました。フィールドの全てが…。的確なパスを出し、プレイによってチームを、フィールド全てをコントロールしてどんな時も勝機を見出す。そんな奴でした」
「ほう……」
「あいつらとは因縁のように当たっていましたから、よく知ってます。全部見透かされているような――――もっと違う何かを見ているような」
「その感じ、円堂ハルに似ているな」
「さあ。でもこの前戦った通りですよ、けどあれでも真理にとっては『遊び』でしかない。真理は雲明の策を叶える翼――――本当の恐ろしさは、雲明の策にある」
「だが、奴はベンチのようだが」
「雲明は病気でサッカーができなくなったんです。あんときの雲明は抜け殻のようだったな――――でも、そんなんで終わる奴じゃないって信じてました。あいつは今、チームを纏める存在としてサッカーに戻ってきたんだと思います」
「サッカーが直接プレイできなくても、サッカーに復帰したというのか。大した覚悟だな」
「はい…。なんてったって、あいつは俺の永遠のライバルですから」
「ライバル、か」
「品乃さん…敵は雲明が作ったチームなんです。うちが負けてもおかしくない。いや、真理がいる以上は雷門と戦うくらいの心持ちで臨んだ方が良い」
「お前、敵の事なのに何だか嬉しそうだな」
「あれ? そんなに出ちゃってますか?」
「ああ、駄々洩れだ」
「へへっ」
―――――――――――――
「――――あのさ、真理」
「んー、何?」
「多分雲明の作戦なんだろうけど――――」
「うん」
空宮がなんとかマークを外そうと動く、が。無駄。
こっちの方が早く、速く、そして
根本的なスピードが違うので、例え円堂ハルだろうと――――まあハルなら何とかして外してくるのかもしれないけど、そう簡単にマークを外せやしない。
ちなみにハルはもう帰った。
おまけで訪問した円堂さんには『子どもに形ないものだけなんてナンセンス形あるものがいいんですもとい誕生日は親からプレゼントが欲しいんだファイアトルネードォッ!』をブチかましてきたのだが。どうだろう。これで何か変わるといいのだが。
ガチの本気で撃ったので、あらかじめPKを頼んでいたとはいえ流石の円堂さんも不意打ちすぎて吹っ飛んでいた。
まあ円堂さんだし平気平気。
「マークきつすぎじゃない?」
「マンツーマンだし、普通だよ。普通」
と、いうわけで『ブロック・ザ・キーマン』である。
今回は私、星空真理による完全ブロックでお送りしております。
「ぐっ、というかここまでマークする必要ないじゃん!? 真理なら外して攻めにも参加でき――――まさか、そういうこと?」
「そういうこと」
故意に攻めに参加しない。舐めプ……縛りプレイである。
空宮はこれでもパーフェクトサッカーなんて言われる北陽のタクティクスの要。雲明がちょっと…かなりおかしいだけで、普通よりサッカーIQは高い。
これくらいの試練は乗り越えられないなら、この先勝ち残れない。
北陽と合併する以上、その北陽に自力で勝てることを証明しなくては。
まあ私とハルというちょっとおかしい面子が特訓に参加している分、多分能力的には本来よりも強化されていると思うのだが――――問題は実戦経験だ。
と、思ってたんだけど。
雨が降ったことで春雷はまだ禁止。私も攻撃参加しない。
その両方が重なったことで、意外にも雲明に対する疑問は割と少ない。『自力で勝て』というメッセージだと思われているっぽい。なかなかの奮戦具合だ。
まあ最悪私がなんとかできるから、精神的な余裕があるんだよね……。
もっとギリギリになって欲しいんだけど。
「……今の南雲原じゃ、グラビティデザートは破れないんじゃない?」
「まあ、そこはおいおいね」
ここで一発、先取点でも取られればいいんだけどなー。
まあさすがに故意に失点するのは憚られる。
あ、上手い。
必殺技を連打させて疲労したところを柳生先輩から繋いで忍原先輩のぐるぐるシュートがグラビティデザートの領域風圧に留められたところを桜咲先輩が強引に捻じ込んだ。
実はこれ、ハルのゴッドハンドをなんとか抜こうとゾンビアタックを仕掛けた時にやってたんだけど。まさか実戦で成功させるとは……やっぱり南雲原は潜在能力高いのでは?
「……グラビティデザートが、破られた…!」
「そう。今の南雲原なら私抜きでも勝てるよ。さあどうする、空宮君」
「ぐぬぬ……お、面白くなってきたじゃん」
「震えてるよ、声」
とはいえ、マークを外させるつもりはない。
前半はそのまま南雲原が北陽を圧倒――――まあハルと比べれば北陽のドリブル、パスワーク、全部凡庸なんだよね……。
とはいえグラビティデザートはなかなか難敵であり。1-0でハーフタイム。
いつものように雲明のところに皆で集まると、心なしか嬉しそうな雲明が言った。
「皆、ナイスプレー。オフェンス、ディフェンス、どちらもいい流れが作れてる」
「けどよ雲明、せっかくの新必殺技はどうするんだよ」
「あ、そうそう! もうちょっと点入れといた方が安心じゃない?」
そりゃ必殺技の温存を命じられる側からすると難しいところだよね。
雲明はちょっと悩みながら芝の状態を確認。
「いえ、まだダメです」
うーん、サプライズ好きなのは分かるんだけどさ。
「あのさ、雲明。私は分かるからいいけど、ちゃんと説明した方がいいと思うよ? ちなみに作戦上まだ言えない時もそう言うべき」
「え」
「そうそう! 理由があるなら教えてよ~!」
「ああ。正直、攻略法があるのに使えないのは堪えるぜ」
雲明はちょっと考えてから、言った。
「――――必殺技は、常に必殺でなければならないからです」
「「「???」」」
「今の湿った地面の状態だと、春雷の効果の一つである土煙による攪乱がうまく発揮されず、最大の効果が得られません。もちろん、あまりに不利であれば話は別ですが」
「現状だと他校へデータを渡してしまうリスクが高い、ということですね」
補足してくれた百道さんの言うように、まあ必殺技の情報って割とすぐに漏れるからね…。今回、グラビティデザート対策をウチがばっちりしてきたのと同じことである。
「要はここで見せるのはもったいない、ってことだろ」
「使うまでもない、ってヤツ!?」
余裕綽々の柳生先輩と、嬉しそうな木曽路。
まあ実際、この後控えているレギュラー争い対決で初お披露目でも良いと思う。
「でも、北陽学園は決して甘く見ていいチームじゃない。だよね、雲明」
「うん。真理が空宮君を封じている影響で全く本来の良さが出せていない――――主力に頼りすぎると、チームは知らぬ間に脆くなってしまう。そしてそれは、僕たちも同じです」
そう、私がもし封じられた時。
それまでずっと私を頼りに勝ち進んでいたとしたら――――例えは雷門との戦いで、ハルが私を徹底マークした場合、見るも無残なことになるだろう。
ピリッと引き締まった南雲原イレブンに、雲明は叩きつけるように宣言した。
「――――僕たち南雲原のサッカーは、真理に頼らなくても強い。そう証明してきて下さい。後半戦、地面が乾いたタイミングで2点以上リードしていなければ、『春雷』を解禁します」
「へっ、面白ぇ……」
「私たち、もう1点取ってるし! もう一点くらいいけるいける!」
「おう、任せときな」
「では、点を取らせないことも重要ですね」
「が、がんばります!」
「よっしゅあ~~! やるぞ~!」
―――――この後めちゃくちゃ春雷した。
いやぁ、グラビティデザートは強敵だったよね……。