超次元サッカーTS転生者の便乗ヴィクトリーロード   作:アマシロ

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襲来!? 北陽が来た!

 

 

 

 と、いうわけで。

 強敵北陽を下した南雲原には一時の平穏が――戻らなかった。

 

 

 

 

 

 

「――――学校合併だと!?」

「正確には、南雲原中の経営権を持つ千乃グループに、公立である北陽学園の運営が任された」

 

 

 

 うーん、流石桜咲先輩。いいリアクション。

 四川堂先輩は解説ポジションがすっかり板についてきてる。

 

 

 

「そんなことってあるの?」

「今は少子化で全国的に学校経営は厳しい。どの地域でも学校の民営化は進んでいるんだ」

 

 

 

 

 というか雲明も、よくそんなこと調べてるよね。中学生なのに。

 ……あー、それも自分がサッカーに復帰できないか足掻いた証だと思ったら何か悲しくなってきた。切り替えよう。

 

 

 

 

「ということは、北陽学園のサッカー部も仲間になるってこと?」

「じゃあレギュラー選手枠も取り合わないといけなくなるってことだな」

 

 

 

 

 仲間になる、うん。

 良い表現。さすが忍原先輩。根っから優しい。

 

 柳生先輩はさすが元リーダー。冷静である。

 

 

 

 

「それはなんか怖いですね…」

 

 

 

 

 私が怖いのは古道飼君の謎の機敏さなんだけど。

 君、痩せたらもっと速いよね?

 

 と、そこでタイミングよくやってきた千乃会長の解説が。なんでいつもタイミングよく現れるんです? いやまあ忙しいから遅れてくるんでしょうけど。

 

 

 

 

「今まで黙っていてごめんなさい。北陽学園運営陣からの強い要望で、ギリギリまで公表しないことになっていたのよ」

 

「南雲原はどうなるんですか?」

 

 

 

「実質、分解されるのは北陽学園の方なの。環境的に優れている南雲原の方に北陽学園の生徒が集められる」

「これまでの南雲原高等部は、新設される南育英高校としてお引越しとなる」

 

 

 

 

 いやそれをギリギリまで隠せてたってどういうこと!?

 人の口に戸は立てられぬ、って言うよね!? 普通、間違いなく生徒とその家族に情報くらい伝わると思うんだけど!?

 

 

 

 

「これまでは、中高一貫校だった南雲原ですが、中学として大きな学校になる方がいろんな面で利点が多い」

 

 

 

 

 あの、雲明。君ほんとに中学生だよね…? 私? 私はさっぱり分からない。

 と、そこで扉が開いてお客様――――空宮君率いる元北陽学園のメンバーが現れた。

 

 

 

 

「来たよ! 雲明、真理!」

「空宮君……」

「噂をすれば、ってヤツかな」

 

 

 

 

 

「正式には来週からなんだけど、一刻も早く挨拶しておきたくてね。早々に寄らせてもらったんだ」

 

 

 

 

 うそでしょ。なんで来週に来るのに隠せてたの……?

 

 

 

 

「なるほど、この間来たのも学校の下見だったわけか」

「そうそう。スパイ行為なんかじゃないって!」

 

 

 

 

 いやまあ、結果的にやったのはスパイ行為では……?

 ま、いっか。

 

 

 

 

 

「しかし、わざわざ事前に挨拶に来るとは。ご丁寧なこったな」

「当然だ。学校が1つになるとすれば、サッカー部も1つになる。恐らく、レギュラーの座は大半を北陽メンバーがいただくことになる。挨拶ナシでは忍びなくてな」

 

 

 

「ぷっ」

 

 

 

 

 

 

 あ、ダメだ我慢できない。

 確かに南雲原は素人集団だ―――――素人集団、だった。それが、地力だけで北陽と渡り合って、勝利するのにどれだけ血の滲むような特訓をしてきたと思っているのか。

 

 鬼、鬼畜、雲明だぞ。

 今の雲明は魔法使いじゃない。勝機に導くことができるのは、ついて来れる仲間がいるからだ。

 

 そしてそれは、南雲原のチームの力だ。

 まるで本当は自分たちの方が強いなんて、思い上がりも甚だしい。

 

 

 

 

 

「――――あっはっは! 負けたチームが『大半は頂くことになる』って! じゃあ何で負けたの? そういう言い訳させないために、私は前回大人しくしてたんだけど?」

 

 

 

 

 思わず言っちゃったが、まあ変にぎくしゃくするくらいなら私がヘイトを買った方が早いでしょ。強いし。

 

 

 

 

 あれぇ、眉間にしわが寄っちゃってますけどぉ?

 敗因の振り返りもしてないんですかぁ? なんで負けたか、次来るまでに考えておいてね?

 

 

 

 

「真理」

 

 

 

 雲明はまあ、監督のことを心配してるんだろうけど。

 うん、難しいところだ。正直なところ、雲明が指揮に集中できるように大人の監督を置いておいた方が楽だ。下鶴監督なら、適任には思える。しかし船頭多くして船山に上るとも言う。

 

 

 

 

「……まあいい。すべては監督が決めることだ――――南雲原の新監督には、元北陽の下鶴改監督が就任されるのだからな」

「でもまあ、公平に判断する人だから。しっかりと個人能力をチェックして決めてくれると思うよ」

 

 

 

 

「じゃあ今日はこの辺で帰るね」

 

 

「ケッ。何気に上目線だな」

「このままじゃサッカー部が乗っ取られそう。みんなで作戦会議しない?」

 

 

 

 

 

 

 ファイアトルネードぶち込んでやろうかな、と思ったら雲明に目で制された。いや、しないよ? 冗談だよ?

 円堂さんにかましてから「こいつ誰にでもファイアトルネード撃つんじゃ…?」と疑われている節があるけど。本気で怒った時くらいにしかしないから。ほんとだよ?

 

 

 

 

 

 

 

………

……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「南雲原の監督は、雲明以外に考えられないと思うんだけどな」

「でも普通は、中学サッカーの監督は大人が努めなきゃいけないんだと思う」

 

 

 

 

 木曾路、いいこと言うよね。

 とはいえ雲明が言うのも正論で。というか、正しい。

 

 私としては、正直に言ってしまえば――――。

 

 

 

 

 

「別にいいと思うんだよね」

「「「えっ」」」

 

 

 

 

 

「香澄崎監督から下鶴監督になる分には。雲明の負担が減るし。というか、北陽のメンバーが増えたら雲明の手が足りない。無駄に人数多いし」

 

 

 

 

 ほんと、無駄に人数だけは多い。全員を雲明が見るなんて冗談じゃないし、ゲームじゃないので完全に放置するわけにもいかない。とんだ不良債権である。

 当初の通り、最低限の11人だけ雲明が鍛え上げるのが最適解―――と、ちょっと裏切られたような顔をしていた雲明に微笑む。

 

 

 

 

「私、雲明以外とサッカーする気ないけど?」

「……つまり、面倒ごとだけ押し付けると」

 

 

 

 そうそう、四川堂先輩さすが理解が早い。

 

 

 

 

「そう。今までは総大将と軍師と雑務を全部雲明がやってくれてたけど、軍師に専念した方が負担も少ないし効率もいいでしょ」

「それは、まあ」

 

 

 

「香澄崎先生がやる気なら、監督じゃなくコーチとして雇ってもらうとか。千乃会長、その辺はどうなんですか?」

 

「え、ええ。まあ下鶴監督に異論がなければ問題ありません」

 

 

 

 

 

 

 

 

――――よし、じゃあ後は下鶴監督を『説得』するだけか。

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 というわけで、次の週。

 遂に元北陽メンバーがやってきたのだが―――――。

 

 

 

 

 

「さあて、練習するんで場所を譲ってもらおうか」

 

 

 

 はぁー?

 ここは野球部のグラウンドだったのを色々あって友情パワーで柳生先輩と野球部たちと業者さんが一晩(?)でサッカーコートにしてくれたんですけど?

 

 やっぱ合併やめない?

 

 

 

 

「ぬかせ。公式試合では俺たちが勝ったんだ。強い奴がよりよい環境でやるのが当然だろうがよ」

 

 

 

 

 うんうん、もっと言ってやれ桜咲先輩!

 ド正論だ! なんで不良やれてたんだ桜咲先輩!

 

 しかしそこにキメ顔で乱入してくるのは空宮君である。

 

 

 

 

「本当にチームとしてすごかったのか。戦略を立てた監督がすごかったのか…」

 

 

 

 

「なに!?」

「はぁ!?」

 

 

 

 

 変な声でた。いやちょっと待ってほしい。

 ま、まさか敗因を全て下鶴監督のせいに!? そんなひどいこと言ってたっけ!? 言ってたかも!?

 そりゃ下鶴監督も傷心で辞退しちゃうよね! 一流の監督って言われてたくらいだもんね!

 

 

 

 

「ちょっと空宮君。さすがに下鶴監督のせいにするのはどうかと思うよ」

「えっ? あ、いや。雲明が凄いって言いたいだけで……同じ監督の指示を受けたら、僕らの方が上手く立ち回れるだろうし……」

 

 

 

 

 あああああ口がナチュラル畜生だった空宮君!

 敗北はちゃんと認めよう!? 北陽学園は、南雲原に負けたから!

 

 

 

 

「いや監督だけ交代しても間違いなく南雲原が勝つけど」

「それは――――いや、まあ、うん。じゃあ真理と僕は抜きで。それで、個人技選手権をしようよ」

 

 

 

 

 

 くっ、伝わってない!

 下鶴監督、近くにいるんですけど!? 教え子にここまでディスられた下鶴監督の心のライフは多分もうゼロよ!?

 

 というかもう来た。

 

 

 

 

 

「面白いんじゃないかな」

 

 

 

 

 いや下鶴監督……お労しや。

 全くもって面白くないと思うのに、『分かってるから大丈夫だよ』とでも言いたげに肩を竦めた。なんてできた大人なんだ…。

 

 

 

「あ、監督! でしょー? それが一番公平ですよね」

 

 

 

 

 くっ、空宮め。もういいよ心の声では呼び捨てにするぞ空宮。ハルとかちょっと擦れただけで全然いい子だったわ。お前が名誉ナンバーワンナチュラル畜生だ。

 下鶴監督の苦労がしのばれる……。

 

 

 

 

 

「北陽のメンバーは特段、個人技で勝負するタイプではない。南雲原と競い合っても特別に有利というわけでもないだろう。公平な勝負に思えるが、どうかな?」

 

 

 

 

 

 あ、さらっと北陽のメンバーが個人技そんなでもないってやり返してる。これはすごくコーヘイな監督だ。

 

 

 

 

「どうする、雲明」

「分かりました、やりましょう。ですが、一つ提案があります」

 

 

 

「提案?」

「同時に監督勝負もしませんか?」

 

 

 

「ほう、面白い。その監督勝負とやらは、一体何をかけての勝負になるのかな?」

「実質的なチーム指揮権です。例え、下鶴監督が監督であったとしても、チームへの指示は任せていただきます」

 

「いいだろう」

 

 

 

 

 いやいいの!?

 聖人かこの人……なんでこんないい人を放逐してしまうのか。

 

 まあ要はキャプテンの座なわけで、空宮がこの調子なので問題はないんだけど。

 

 正直、監督が土台となる計画を立てて、雲明が必要に応じて特訓を発動するくらいが負担としてはちょうどいいと思う。

 

 

 

 

 

 

「下鶴監督が優秀だと思う人でチームを組んで下さい」

「なるほど……面白い」

 

 

 

 

 この時点で雲明の意図を察しているわけだしね。一流の監督という肩書きに間違いは無かった。

 これは実質南雲原対、北陽の再現では? と盛り上がるメンバーを後目に私はどうやって下鶴監督を口説こうか頭を悩ませるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 







真理(うわあああ下鶴監督がいい大人すぎる! 尊敬する!)
雲明(なんか真理がやけに下鶴監督に尊敬のまなざしを送ってる……なんで?)



真理(大人だ……あまりにも大人! 何の説明もせずに素人集団にサッカーさせたり、ドーピングさせたり、対戦相手を潰させようとしたり、鉄骨落としたり、子どもを放置したりプレゼント皆無だったり逆恨みで選手生命絶とうとしたりサプライズで作戦を黙ったりしない……立派な大人の監督だ!? 絶滅危惧種すぎる!)
 
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