超次元サッカーTS転生者の便乗ヴィクトリーロード 作:アマシロ
「―――――っし、これで俺の5勝!」
「むぐぐ……どこまでギアが上がるのさ」
南雲原、長崎への滞在最終日。
はぁ、と息を吐いた妖精のような少女はしかし、悔し気に唇を尖らせて。
5本先取でのPK戦は、5対3でこちらに軍配があがった。
―――――ああ、そうか。サッカーってこんなに楽しかったのか。
どんなボールを蹴っても対応してくる相手。予測もつかない駆け引き。ぶつかり合う意地と意地。戦術と戦術。魂の籠った必殺技。
かつてない強敵に勝利した喜びと、ほんの少しの寂寥感――――どこかに、これほどの強敵がいるだろうか? 次に戦えるのは、いつになるのか――――そんな考えのハルに対して、真理はどこか上の空で。
「え、やるの? ………うーん。ねえ、ハル。最後一本、一応受けてみない?」
5本先取で、ハルが先行だったから勝利は確定している。
でも、断る理由もない。
「いいよ。でも、また止めて見せるけどね」
その瞬間――――『変わった』。
得体の知れない『何か』が。化身が出現するときのような、蒼いオーラが爆発的に真理から噴き出し――――囁く。
『■■■■■■■』
ジリ、と肌を焼き焦がすのは何だろう。
興奮、あるいは――――恐怖? 口角が上がる。身体が、かつてない脅威を感じ取って自然に最も力を発揮できる体勢を整える。
――――――閃光が奔った。
シュート自体はごく単純な、フェイントもなく、コースを狙うわけでもなかった。ただ、速い。無駄な動きが一切ないかのように滑らかに、鋭い槍のように放たれた一撃は、雷鳴のように光ったと思った次の瞬間にはゴールに突き刺さろうとしていた。
ゴッドハンドでは間に合わない。
考える間もなく、勝手に動いた身体がパンチングを選択。
そして―――――グローブごと吹き飛んだ。
………
……
…
怪我は、無い。
それでも雷門に戻ってからも、あの一撃が忘れられなかった。
―――――勝てるか?
冷静な思考が、即座に『無理だ』と結論づける。
とっちゃんに頼んで、GKの必殺技を教わってもみた。けど、止められる気がしない。
他の誰のシュートを受けてみても、あの時のシュートほど速くなかった。強くなかった。強烈じゃなかった。俺のシュートよりも、強かった。
「―――――サッカー、したいなぁ」
もっと、もっと強い相手と。
真理と。まだ見ぬ強敵と。
今日は誕生日で、試合が終わったら。とっちゃんがスパイクを一緒に買いに行ってくれる約束もある。
頬を叩いて、気合を入れなおす。
もし万が一、こんなところで負けたりしたら真理とも戦えない。
「よし!」
いざ試合――――。
ということでコート横のベンチまで来たのだが。
「あれ、蓮さん? 監督は?」
「……監督は、来れなくなった」
???
何故か神妙な表情の蓮さん。なんだかよく分からないけど、雲明と違って乙女監督は特段普段から何かしてくれるわけでもない。まあ、いなくても何とかなる。
「じゃあ、いつも通り蓮さんの指揮でいいですよね。ちょっと試したいことがあるので、最初ボール貰っていいですか」
「珍しく積極的だな」
「今、すげぇサッカーしたいんです。――――俺よりずっと、サッカー強いヤツがいる。負けてられないじゃないですか」
「……ああ、この前の」
「そうだけど、そうじゃないというか……まあとにかく! 今のままじゃ勝てないって分かったので。この前練習した連携、試しましょう!」
「いきなりか? まだ練度に不安があるが」
「――――失敗しなきゃ、改善点も見えてこないじゃないですか」
失敗した。負けた。シュートを止められなかった。
それが今、こんなにも熱い。こんなにも心を震わせている。こんなにも悔しい。こんなにも、楽しい――――!
「蓮さん、俺が目指したいのは『国内無敵』じゃない―――――『世界一』です」
「……ハル」
伝説のイナズマイレブン以降、世界での戦績は決して芳しいものではない。
国内の怪物が、海外では一流止まり。国内のエース級は二流止まり。それでも特に興味はなかったけれど、今は違う。強い相手とサッカーをすることは、サッカーが上手くなることは、サッカーをすることは、楽しい!
「―――――もっと、強くなりたい。もっと、サッカーがしたいんです!」
「わかった。やろう」
どこか嬉しそうな蓮さんに、雷門の皆はどこか困惑した様子だけれど構わない。
なんとなく、惰性でやっていたのとは違う。
勝つため――――超えるため――――目標がある。
(――――…次は、絶対に勝つ!)
あとがき
匿名のタレコミがあり、細工されたスパイクを仕込もうとした監督が逮捕されました。
いったいだれのしわざなんだ(棒読み)