超次元サッカーTS転生者の便乗ヴィクトリーロード   作:アマシロ

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なんなんだぁ……今の(高評価)はぁ……?

もうちょっと手加減しろぉ!(ありがとうございます!)
というわけで(今日)初投稿です。



恐怖! 死のサッカーダンス!?

 

 

 

 

 

 

 

――――雲明が、ダンスバトルを挑んだ。

 

 

 いやまあ、真意は分かっている。

 忍原先輩を引き込むためには、忍原先輩が既にダンスに見切りをつけていること――――それを知っていてなお、ダンス部の人たちが純粋に忍原先輩を心配していること。

 

 ダンス部の協力を得て、ダンスで挑む。

 それが最も忍原先輩の心に響くと、確信しているが故の行動。

 

 

 

「あのさ、真理」

 

 

 

 でもさ、思うんだよ。 

 桜咲先輩と、木曾路はわかるよ? 初心者二人にダンス練習させる暇があるなら、雲明なら自分でやるよね? 

 

 でもさ―――私がいるじゃん!?

 『ダンスバトルか、いつ開催する? 私も同行しよう』とか考えて後方腕組み待機していた私の気持ちはどうなるの!? 次回『踊れ雲明、死のサッカーダンス!』デュエルスタンバイ!

 

 

 

「なに」

「……さすがに、そんなに睨まれると気になる」

 

 

 

 睨む? 睨んでないけど?

 サッカーの見過ぎでついに目が悪くなった?

 

 

 

「はぁ?」

「……というか、特訓は? サッカーしてきていいよ」

 

 

 

 何なのこの馬鹿は。

 確かにサッカーは大好きだけど、目の前で命懸けで踊ってる馬鹿を見捨てられるものか。仲間のため、サッカーのためなら簡単に命を懸ける馬鹿だぞ。私が見張っていなくて、一体誰に任せられるというのか。

 

 

 

「サッカーって言えば何でも従うと思わないでよ、雲明じゃないんだから」

「風評被害」

 

 

 

 

 本当は分かっている。

 自分が挑んだんだから、自分がやる。それが誠意だと思ってるし、その方がより「響く」と確信しているからだって。

 でもさ、なんでいつだって苦しみ続けているのを、私は見ているだけなんだ?

 

 結局私はサッカーができるだけで。目の前のサッカー馬鹿一人、私は救えない。

 呼吸が乱れて、脚が乱れる。前の雲明なら絶対になかった。あんな動き、あんな苦しそうな顔、しなかったのに。

 

 

 

 

「……泣かないでよ、真理」

「は? 泣いてないけど? おバカなの? 死ぬの? 死んだら許さない」

 

 

 

 

 

「どっちなのさ」

 

 

 

 

 あきれ顔の雲明だが、疲れているのかやけに滲んで見える。

 多分これは雲明がアホほど汗をかいてるせい。そうに違いない。あるいは汗を飛ばして目をつぶす必殺技だ。ひどすぎる。子ども向けコンテンツにあるまじき所業。

 

 

 

 雲明がハンカチを渡してきた。

 ほら、やっぱり目つぶししたんじゃないか。

 

 

 

 

「………ぐすっ、ずずっ……」

「ところで……その、真理?」

 

 

 

「なに」

「どうせ挑むなら、やっぱり勝ち目が少しでも高い方が良いかなって思って。……いやもちろん、今回は勝敗はどうでもいいんだけど……」

 

 

 

 

 

 ん? それはつまり?

 

 

 

 

「負ける気で挑むのは、やっぱりちょっと違うかなって」

「…………うん」

 

 

 

 

「……手伝ってくれる?」

「……うんっ!」

 

 

 

 

 

 まったく仕方ないなぁこのサッカー馬鹿はぁ!

 さっさと頼ればいいのに無駄に意地張っちゃって!

 

 私がいないと忍原先輩にさくっと負けちゃうくせに。病気のせいでクソ雑魚になっちゃったんだから大人しく手伝っての一言が言えればいいんだ!

 

 

 

 

「……ぐすっ、まったく仕方ないなぁ雲明は!」

「はいはい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 自分よりも慌てている人がいると冷静になる――――それを、雲明はよく知っていた。

 辛くて、辛くて、泣いて、喚いて、もがいている時でも。

 

 自分より泣きながら、何言ってるのか分からないくらい泣きながら、それでも自分もいると伝えるかのように抱きしめてきた幼馴染は、まあ、それなりに大切な存在だ。

 

 

 

 

 サッカーしたいんだから、すればいいのに。

 「雲明とじゃないと楽しくない」と言って。小学校の体育の、男女別のサッカーでも死んだ目でロングシュートだけしていた。

 

 

 

 

 

―――――『僕じゃないとダメなんだ』

 

 

 

 

 自分がこれまで見た中で、最高の選手が――――自分だけを求めている。

 先の見えない暗闇の中で、その事実は一筋の光だった。握りしめられた、確かなぬくもりだった。

 

 

 

 

 

 それはそれとして、目の前の光景はちょっと尋常じゃなかった。

 

 

 

 

 

 ボールが空を舞う。一つ、二つ、三つ。

 くるくると、白い妖精が舞うとボールはまるで虹を描くように空にアーチを描く。

 

 

 

 

「――――イリュージョンボール、三倍!」

 

 

 

 3つのボールが全て足元に集まり、それを真理が踏むと――――増えた。

 9つのボールがそれぞれ別の色に輝いて、今度こそ虹を描く。

 

 

 

 

 

 そしてその間に、指笛が鳴った

 現れるペンギンもまた、9色。

 

 

 

 

 

「―――――ナインイリュージョンペンギン!」

 

 

 

 

 

 

 輝くペンギンたちが、オーロラを描くように縦横無尽に駆け巡る。

 その中心で、舞う妖精。――――綺麗だ。

 

 そんな凡庸な感想とともに、この動きをサッカーに活かせないか考えている自分に心のどこかで苦笑する。

 

 

 

 

「……本当に、勝てちゃうかもしれませんね」

「――――私と雲明がいて、負けるわけない。でしょう? サッカーならね」

 

 

 

 

 サッカーかな……まあサッカーかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 ダンスバトル会場は、騒然となっていた。

 

 ダンス大会で優勝した学校の人気者の忍原来夏と、野球部に喧嘩を売った命知らずの新入生。結果の見えた勝負――――そのはずだった。

 

 とはいえ、新入生の始めたサッカーダンスは観客の度肝を抜いた。

 未知の領分。傍目に見ても洗練されていると分かるボールコントロール技術。それは純粋に、観客を賞賛させ、歓声を上げさせるに足りるものだった。

 

 

 実際、来夏としても新入生がただの大言壮語で「どん底から最高へ」と言っているわけではないと――――それに見合う努力と、戦略があるのは分かった。

 

 

 

 

 まあ「なかなかやるじゃん」と見直したわけである。

 だから、本気で応える。久々にボルテージが上がる。楽しくなってきた――――サッカーダンス? いいじゃん!

 

 

 

「――――さあ、これならどう?」

 

 

 

 

 事前に決められた3ターン制。

 先行2ターン目を終えて、対戦相手を見た来夏の目に飛び込んできたのは――――白い妖精だった。

 

 

 

 

 

『おおっと、ここでサッカー部の星空真理が乱入だぁ!』

 

 

 

 

 軽やかにボールを蹴り上げる対戦相手の後輩の動きに――――指揮に従うように、妖精が舞い踊る。

 

 

 一つ目のボールを踵で高く蹴り上げ、二つ目のボールをつま先で受け止めたまま、飛び上がって前転。もう片方の脚で一つ目のボールを更に高く蹴り上げると、もう一回転してから二つ目のボールも蹴り上げてそれにぶつけ。図ったように後輩がパスした3つ目のボールを頭の上に載せると、着地。その上に先ほど蹴り上げていた2つのボールがスッと音もなく『着陸』した。

 

 そのまま回転しつつ、ボールを一つずつ後輩君に向かって蹴り返し。

 二人で交差するようにボールを入れ替えた。

 

 

 

 

「―――――な゛っ」

 

 

 

 

――――――何それ!?

 

 

 

 

 素人が見ても分かる、超絶技巧。

 しかも妖精のような女の子の方に気を取られるが、後輩君の出すパスが意味不明なくらいに正確で。そして――――二人とも楽しそうで。

 

 

 

 

 

―――――ま、負けない! ダンスで負けるわけには――――いかない!

 

 

 

 

 

 もうこちらが優勢なんて考えは捨てた。

 歓声は互角――――いや、不利まである!

 

 燃え上がる闘志に身を任せ、指先まで神経を集中させる。かつてない集中状態に、世界がゆっくりと動いているようで――――その感覚に身を任せるまま、全身全霊で踊る。

 

 

 

 

―――――私は、勝ちたい! できない自分なんて、嫌だ! もっと、もっと上へ――――。

 

 

 

 

 

 今までにない最高のパフォーマンス。

 今までで最高に思える歓声。

 会心の手応え。

 

 

 

 

「――――これで、どう!?」

 

 

 

 

 

「……すごいダンス。――――でも、サッカーなら」

「「僕たちは、負けない」」

 

 

 

 

 

 

 次の瞬間、3つのボールが9つに増えて虹になって。

 ペンギンが飛び交ってオーロラになって。

 

 その中で白い妖精が踊っていた。

 そして、それを描いているのは後輩君だった。

 

 例えるなら、指揮者と奏者。

 二人が奏でるハーモニーが、踊りとサッカーによって幻想的な光景として叩き込まれる。

 

 

 

 

 

「――――必殺タクティクス、オーロラサッカーダンス」

 

 

 

 

 

 

 歓声は、なかった。

 息をのむ生徒たちの前で、妖精が微笑んで。

 

 

 一拍遅れて爆発する声の波に、来夏はまだ見ぬ世界を知った。

 どうやら――自分はまだまだ、挑戦できるものがあるらしい。

 

 なるほど確かに素晴らしいダンスだ。

 サッカーダンスという真新しいジャンル、技の超次元ぶりに翻弄された。けれど――――まだ甘い。私なら、ダンスとしてなら、もっとやれる――――!

 

 

 

 

 

 投票は、いい。

 もしかしたら、勝ってる可能性もあるけれど。

 

 今はそういう気分だった。

 

 

 

 

「――――私の負け! 素晴らしいダンスだったよ。雲明君と、えっと……星空ちゃん?」

「……ありがとうございます。正直、二人がかりなのはズルい自覚はありましたが――――そうでもしないと、忍原先輩に勝てそうもなかったので」

 

 

 

「へぇー? 雲明君もけっこういい線いってたのに? 独学じゃ、ないよね」

 

 

 

 ちらり、と目線を向けた先にいたのはどこか優しい目をしたダンス部の部長。

 

 

 

「そうね。彼は持病で激しい運動ができない―――だから、静のリフティングダンスを、学びに来たの。体験入部でね」

 

「部長……」

 

 

 

 

「……来夏、貴女が楽しそうに踊る姿が、久々に見れて良かったわ。――――皆、心配していたの。貴女が苦しんでいるのに、何もしてあげられなかったから」

 

 

 

 

「そんな、こと――――」

「だから、いいのよ。離れていたって、皆貴女のことを想ってるわ」

 

 

 

 

 それだけ言って、去っていく部長。

 なんだ、バレバレだったか。……ちょっと恥ずかしい気持ちと、胸に満たされるあったかい気持ち。

 

 

 それをしっかり抱きしめて、改めて後輩――――雲明君に向き直る。

 

 

 

 

 

 

「――――ねぇ。私も、サッカー部に入れてくんない?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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