超次元サッカーTS転生者の便乗ヴィクトリーロード   作:アマシロ

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炸裂、必殺タクティクス! ブロック・ザ・キーマン!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 というわけで、海カモメサッカークラブとの練習試合も終え。

 忍原先輩とのダンスバトルから野球部との勝負までの残り少ない時間は雲明考案の特訓で少しでも能力向上に努めつつ、同時に必要なタクティクス――――今回は単純だから問題なさそう――――を叩き込んで。

 

 

 

 その間、私はというと――――暇だった。

 正確には、一々全員の特訓を監督するべくあちこち移動する雲明の見張りで忙しいのだけれど。

 

 

 

 

「雲明、やっぱり自転車にでも乗せてあげようか?」

「流石に恥ずい」

 

 

 

 まあね。見た目女の子の運転する自転車に相乗りするのは自分でもちょっと嫌だ。

 

 

 

「はい、水」

「……ありがと」

 

 

 

 

 大量の海坊主に襲われながらのドリブル練習とか、タイヤ引き+海坊主襲撃とか、我が幼馴染ながら本当に恐ろしい特訓を考えるものである。

 

 どっかの修練場みたいにレーザーで攻撃してきたりしないだけマシかもだけど……ガトリング海坊主は見覚えしかないんだよねぇ…。

 

 

 

 

「……で、天空サンダーだっけ。いいキックだったよね」

「そうだね。……柳生先輩は、元々サッカーをしていた。けれどある時から野球に移った――――元々のチームメイトに話を聞いたところ『頼りすぎてしまった』なんて話もあったけど、『親のプレッシャーに晒されている柳生先輩に活躍してほしかった』なんて声も多い」

 

 

 

 

 ふーん。普段は仲間想いで気配りもできてたのに、親が来た時だけはそんな余裕もなくなっていて? つい皆で気を遣って活躍してもらおうとしてた?

 

 

 

 

「つまり、柳生先輩視点だと親への忖度?」

「たぶん。まあ実際は先輩の人徳っぽいけどね」

 

 

 

 

 そうするとあのサッカーアピールも、単純にこき下ろしているのではなく未練たらたらなのだと意味が変わってくる。

 

 

 

 

 うわぁ、雲明の目がガチだ。

 ……サッカーを侮辱するのも許せないだろうけど、やりたいのにやらないのも結構地雷っぽい――――もしかしなくても私、やっぱり雲明に嫌われてるのでは?

 

 

 

 

 

「とりあえず柳生先輩には忖度ゼロで自分の無力を思い知ってもらおう。そうすれば純粋な闘争心を思い出してくれると思う」

 

 

 

 

 

 サッカーは、仲間への忖度なんかしてたらできないスポーツ。

 11人全員の力を合わせるもの―――特に雲明のサッカーはそうだ。

 

 

 

 

 

 

「勝とうが負けようがどうでもいい――――そう言うつもりだったけど。真理」

「うん、いいよ」

 

 

 

 サッカーの楽しさを思い出してもらうのに、柳生先輩を徹底マークする。

 で、やる気になったら行かせる。

 

 正直暇だけど、マークもまたサッカー。

 雲明が仲間にしたいと思ったなら、それに従う。―――――雲明の描くサッカーは、本当に綺麗で――――今でも鮮明に思い出せるから。

 

 

 ああ、また見たいな。

 ……そこに私が含まれていたら、いいんだけれど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――と、いうわけでまずは柳生先輩に一発撃たせてから徹底マークするタクティクス――――ブロック・ザ・キーマンを使います」

 

「わざわざ撃たせるの!?」

「……正直、まだ止められる自信はないんだが……」

 

 

 

 

 驚く木曽路君、自信なさげな四川堂先輩だけどまあ点を取られる前提なので気にしなくていいよ、とは流石に言えない。

 

 

 

 

「今日の試合、勝敗はどうでもいいんです」

「えええ~!?」

 

 

 

 

「柳生先輩を徹底マークする都合上、途中までは攻撃は桜咲先輩と木曾路のコンビで、真理と古道飼君は柳生先輩を徹底マーク。相手ボールになったら桜咲先輩に粘ってもらって、木曾路も柳生先輩をマークしてください」

 

 

 

「俺一人かよ!?」

「大丈夫です、四川堂先輩もいます」

 

「……しょ、正直期待が重いんだが……」

 

 

 

「私! 私は!?」

「試合半ばで柳生先輩が強引にマークを振り切ると思うので、そうしたら古道飼君と交代で忍原先輩に入ってもらいます。柳生先輩は基本的に桜咲先輩がタイマンで相手して下さい。適当なところで忍原先輩にパスしてもらって二人で攻めつつ、木曽路はフォロー」

 

 

 

 

「で、星空はどうすんだ?」

「真理は、まあ柳生先輩がパスしたり桜咲先輩が突破されたら潰してもらいます」

 

 

 

 おっけー。潰す。

 

 

 

「潰すって……」

「こわ」

「うわぁ、これ桜咲くんの責任重大だね」

 

 

 

 

 いや物理的には潰さないが!?

 ただちょっとボールを持った瞬間に奪われる悲しい展開が待っているだけだ。

 

 

 

「なんで俺が柳生のために頑張らないといけねぇんだよ……」

「まあ理由は試合の途中で柳生先輩が話してくれると思うので」

 

 

 

 

 そんなどっかの名探偵のアニメじゃないんだから……。

 と、言いたいところだけど柳生先輩は大好きなサッカーをこき下ろすくらいにはメンタル限界なのである。

 

 

 

 

 

 

…………

……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――サッカー部? サッカーを侮辱するヤツは許さない?

 

 

 

 笹波雲明。その言葉は、妙に癪に障った。

 サッカー部なんてない、サッカーが最底辺のこの南雲原で、桜咲と、寄せ集めのメンバーで、サッカーで挑むだと?

 

 

 例えどんなにサッカーが息苦しかろうと、初心者に負けるつもりは欠片もない。

 

 

 

 

―――――それが、親父の力で。権力で得た仮初の栄光だとしてもだ。

 

 

 

 

 

 そう、思っていた。

 事実、開始早々にシュート一本決めてやった時は最高の気分だった。桜咲たちの動きが予想外に良く一点取り返されたが、すぐにまた点を取ればいい―――――そう、思っていたのに。

 

 

 動けるデブとチャラい後輩にマークされている間に、白い小柄な女がボールを掻っ攫い、桜咲がゴールに叩き込む。逆転された。

 そして、何食わぬ顔でこちらに歩いてくる白い女。

 

 

 

 

 

 

『おおっと、これはサッカー部なんと柳生選手を3人でマーク! GKと桜咲選手を残して全員でマークする形だあああ!』

 

 

 

 

 

 5人のミニゲームで、3人のマークだと!?

 GKと桜咲に全ての負担が集中するが――――そんなことで、本当に抑えられると――――。

 

 

 

 

 

 だが、現実には攻撃は完全に止まっていた。

 サッカー経験なんて、野球部にはない。ただ、俺にボールを集めればそれで終わり。そのはずだった――――とはいえ、あんなのが長く続くとは思えねぇ。

 

 

 

 

「笹波、お前……何が狙いだ」

「先輩には、一人の無力さを思い知ってもらいます」

 

 

 

 

 

―――――どんな選手だって、チャンスがもらえなければ活躍できない。

 

 

 そして、常にチャンスを与えらえることは結果を求められ続けるということ――――。

 

 

 

 

 

―――――先輩は、常にチャンスを差し出されて結果を求められる。拷問のようなスポーツをさせられているんじゃないですか? もう降りたらいいんじゃないですか、ガキ大将の座。

 

 

 

 

 

 

 笹波の言葉は、俺の心に突き刺さった。

 「お前に何が分かるんだ」と返してはみたものの、笹波の目にあったのは深い悲しみと――――決意だった。

 

 

 

 

「………僕にはわかりません。でも、羨ましいです。普通にサッカーをするチャンスも与えて貰えなかった。諦めきれなくて、こんな僕じゃないとダメだと言ってくれた幼馴染から、サッカーをするチャンスを奪ってきた―――――でも神様はチャンスをくれた。ここにいる仲間たちと、サッカーをやるチャンスを」

 

 

 

 

 

 

「笹波雲明――――俺が無力かどうか……やらせろ、サッカーを! いや! 誰がなんと言おうと――――俺はやる! サッカーを!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺は――――俺だって、サッカーがやりたかったんだぁあああ!」

 

 

 

 

 

 

 

 激しい奪い合いで空中に上がったボールを求め、桜咲とシュートが交錯する。

 威力は――――互角! 

 

 コイツ、ただの不良かと思っていたのに―――――。

 

 

 

 

 伝わってくる。

 一発のシュートに込められた、これまでの努力が!

 

 サッカーのために、欠かさず練習してきたのだろう。

 目の前の思わぬ強敵に目を見開くと、相手もどこか驚いたような間抜け面をしていて――――多分、自分も似たような面をしてるんだろうな、と思うと笑えてきた。

 

 

 

 

 

「チィッ!」

「負けるかぁぁぁ!」

 

 

 

 

 

 

 零れたボールに駆け寄る。これを取れば、まだ同点に追いつける。

 ブランクが祟ったのか、桜咲に若干威力が負けていたのは癪だが――――その影響でボールは自陣側! 取れる――――!

 

 

 

 

「遅い」

「んな―――っ!?」

 

 

 

 

 

 ボールが、消えた!?

 気が付けば何食わぬ顔で、白い女が前線の忍原に向かってゆるいパスを出していた。

 

 絶妙――――オフサイドもミニゲームなのでなし。

 完璧なアシスト。緩いボールのくせに、こっちのチームでは絶妙に反応できない位置。初心者なのが逆に幸いしたのか、「決めなくては」なんて妙な緊張感もなく、「やったーチャンス!」とでもいいたげに、忍原は楽し気にゴールを決めた。

 

 

 

 

 

「――――お前、何者だ」

「星空、真理――――サッカー少年さ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 いやなんだその台詞。

 そんなツッコミが脳裏を通り過ぎている間に、試合終了のホイッスルが鳴った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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