超次元サッカーTS転生者の便乗ヴィクトリーロード 作:アマシロ
ちょうど読ませていただいてるヴィクトリーロード二次が同じところだったので、本日3話目の投稿です。
「キャプテンは雲明でいいんじゃねぇか?」
監督が香澄崎先生になり、後はキャプテンを決めるのみ。
というわけで集められた私たちだったが――――開口一番、桜咲先輩の一言に皆で頷きつつ視線が雲明に集中する。
「え……でも僕は試合には……」
「たとえフィールドの外にいようと、お前が『柱』であることに変わりはない」
うんうん。桜咲先輩ってほんとにいいこと言うよね…。
本当に、なんでそれで不良やれてたの?
「控え選手に登録されていれば、キャプテンになれる――――それともお前は、サッカー部の一員じゃないとでも言いたいのか」
「俺たちと一緒にやるんだろ? サッカーを」
「先輩……」
ヒューッ、流石桜咲先輩! イケメン! 私が男だったら惚れてたかもしれない。……ん? なんか変だな?
「笹波! これだけのメンツを巻き込んでサッカー部を立ち上げたやつに、覚悟はないのか!?」
「あります! ……でも」
「でも、なんだ?」
このへんの訊き方とか、声のトーンに柳生先輩の優しさが滲んでるよね。隠せない優しさ。
固唾をのむ周囲と裏腹に、オチを知っているのでニヤニヤしていると雲明に肘でドつかれた。ひどい。
「でも僕は……『一年生』ですよ」
「「「「……っはははは!」」」」
「おお! 忘れてたわ! あまりに態度でかいからな!」
「雲明は器もデカイ」
「ええ!?」
本人はいたって真面目なんだろうけど……。
私たちは、雲明の想いに惹かれて集まった。そのギャップがあんまりに面白かったので、皆でひとしきり笑って。
「やれよ、雲明! 実際、お前しかいないだろ?」
木曾路君の言葉に雲明がみんなの顔を見渡す。みんな笑顔だ。
これこそが、雲明がみんなのために頑張ってきた成果。私たちの誇り。
それが本当に嬉しくて渾身の笑顔を向けると、何故か目を逸らされた。え、ひどい。
「……うん!」
「よし、決まりだな! よろしく頼んますよ、コーチ兼、監督兼、キャプテン!」
「じゃあさ、新キャプテンからのひとこととか、ないの~!」
さすが忍原先輩。ノリがいい。
こういうのがモテる秘訣なんだろうなぁ。私もちょっとくらいは気にした方がいいのか…? いや男にモテたいわけじゃないんだけど。
「え?」
「ここはいっとかないと、笹波君」
四川堂先輩も割と悪ノリ側だった。演台代わりの机が用意される。
雲明に最早逃げ場はない。いや助けを求められたら応えるよ~! と心の準備だけしていたのだが。
皆が笑顔で見守る中、雲明は演台に立った。
「み、みんな! どこまでできるかわからにゃい!」
「「「にゃ…?」」」
「どうしたにゃ、雲明。しっかりするにゃ」
「ちょっ、真理ちゃんまで」
「こほん! どこまでやれるか分からないけど――――このサッカー部を! 日本一にしてみせます!」
「「「おおおーーーー!!!」」」
さすが雲明。いいこと言う。
まあ、実際日本一になるけどね!
「桜咲、アレ。冗談に聞こえるか?」
「間違いなくマジだろうな…アイツは」
「おもしれぇやつ!」
「だろ。だが言っとくぞ、あいつに付いていくのは……かなり骨が折れる」
「ああ。それは、なんとなく分かる」
「私と雲明なら――――この皆なら、できるよ。日本一」
だからどうか――――。
勝ち抜かなくてはいけない、初戦の相手――――西宮中を。
サッカーモンスター、円堂ハル。彼らが後半に下がるという不確定要素に賭けるのか、あるいは――――。
―――――――――――――――――――――
――――南雲原と並ぶ九州屈指の進学校。西ノ宮中学。
かつては西ノ宮と南雲原は、サッカーにおいてもライバルだったが、南雲原の事件の影響で直近5年のデータはない。
更に5年を遡ると12勝11敗1分け。学業とスポーツを両立するという校風が似ているというのもあって、サッカーの強さにおいても大差はなかった。
フットボールフロンティアでは、この5年は常に1回線で敗退。サッカーにおいては決して強いとはいえない――――けれど、最近の練習試合では3連勝している。
噂では優秀なマネージャーが入って、選手の弱いところを徹底的にフォローしているとのことだけれど……基本に忠実なサッカーをするチームであり、弱点という弱点はない。
注意するとしたら、中盤からFWにつなぐゲームメイカー金星やつる。3人のFWを自在に使い、守りの隙をついて得点する――――それはタクティクス、ブロック・ザ・キーマンでなんとかなる。
故に、問題は―――――。
「西ノ宮のキーパー技スウェットスティルネスは、通常のシュートで破ることは困難。こちらも、それを打ち破れる『必殺技』を習得する必要がある」
「必殺技だと?」
「それを試合までに習得しようって?」
怪訝そうな桜咲先輩と忍原先輩が、真理に目を向ける。
まあその、必殺技使える人材は確かにいるんだけれども。ドヤ顔ピース決めてる真理はスルーして、桜咲先輩たちに頷く。
「はい。FWの桜咲先輩と忍原先輩にはシュート技を習得して、敵のGKを撃ち抜いてもらいます」
「俺はもう使えるしな、頑張れよ桜咲、忍原」
「ぐっ、すぐに習得して見せるぜ」
「仕方ないなあ……ふぁーい!」
「で、真理は?」
「真理はあんまり参考にならないので、放っておきましょう」
「ひどい!?」
――――――――――――――――
「それにしても、よくお前がこの遠征を承諾したな」
「ぶっちゃけ、
「はあ? お前が?」
「いや、とっちゃんだって怖がってますし。とっちゃん曰く、どの家もそうらしいです」
「そうか。じゃあ仕方ないな」
あの伝説の円堂守さんも恐れる、ハルの母さまとは一体…。
蓮の脳裏に疑問が浮かんだが、それはそれとしてどこか浮かない表情のハルの方に意識を向ける。
「最近、サッカーやっててもそこまで楽しくないですし。気分転換には、ちょうどいいですよ」
「ハル……サッカーだが、楽しくなければやめてみてもいいんだぞ? 時には勇気を出してやめてみるのも、自分の本当の居場所を見つけるためには必要なことだ……」
「蓮さん……無理ですよ」
呟くハルの目にあるのは、諦観と――――ほんの少しの、希望だろうか。
ハルは、何かを望んでいる。何かを。
「俺は……サッカーをやるために生まれてきたみたいなもんですから」
サッカー自体が嫌なわけではない、のだろう。
何だ? 何がハルを苦しめているのか――――キャプテンでありながら、分かってやれない自分が不甲斐ない。
それだけ、円堂ハルはあまりにも傑出していた。
それこそ、最強の雷門中でキャプテンを任される自分よりも。
「ハル、新しい土地には出会いがある。お前を驚かす、怪物のようなすごい奴がいるかもしれないぞ」
「蓮さん、前にも言いましたけど。俺、別に強い奴に興味ないですよ」
それは、諦めてしまったのだろうか。
自分より強い相手は――――対等なライバルは、もう現れないと。
何でもできてしまう。
サッカーでできないことなんてない―――――目標を失って、苦しんでいるのだろうか。
(………世界は広い、そのはずなのにな)
円堂ハルという怪物にとって、日本は余りにも狭すぎた。
――――――――――――――――――――
「―――――これは」
生徒会室で、二人が抜けた穴も自分で責任をもって埋めるべく千乃は会長業務をこなしつつもサッカー部のための手続きをしていた。
反省、自省も含めて手配した南雲原サッカー部のユニフォーム。
しかし気になる情報が。
(西ノ宮が、雷門中に生徒の派遣を要請?)
普通であれば、気にするほどの情報でもない。
既存の制度であるし、雷門中ほどの関東の名門が、わざわざ九州にまで生徒を派遣する? それもFF(フットボールフロンティア)初戦負け常連校に?
雷門からすれば、馬鹿にするなと切って捨ててもおかしくない――――その方が「自然」に思える。
「……はぁ。いえ、相手はあの子だもの……少しでも手を抜けば、勝てない」
あらゆる努力を惜しまなくて、それでも勝てなくて――――だから、どうしても勝ちたい。
伝手をたどって、雷門の関係者に問い合わせる。
九州に派遣した生徒がいるかどうか―――――いない、と返ってくると思っていたのだ。
「……なんですって?」
事実上、日本少年サッカー最強の円堂ハル。そして、雷門中キャプテンの月影蓮を派遣?
そんなこと、起こるはずがない。普通なら。もし派遣するにしてもスタメン外に経験を積ませるとか、そういうもののはずだ。
冗談でも最強の二人を送り込むような相手でも、場面でも、タイミングでもない。
(でも、あり得る。あの、運否天賦に愛されたあの子なら――――)
―――――いやだ。
生徒会長になった。理事長になった。
あの子に、妹に負けないために必死で毎日努力してきた。
あの子がサッカー部のマネージャーになったと聞いて、安心していた。サッカー部がない以上、争いようがないと――――。
だからサッカー部なんて認めたくなかった―――――。
『雲明が、サッカーを守るために身体を張って動いたから。仲間のために動いたから。心を砕いてきたから。その『過程と結果』に対して、私たちは誇りを持ってる』
「……―――八つ当たりするくらいなら、少しでも建設的なことをするべきね……」
スマホを取り出し、連絡を入れる。
「百道さん? ……次の西ノ宮戦で問題が発生したの。すぐに資料を纏めてサッカー部に向かうから、笹波君にも伝えて」
できることを、するしかない。
それで、今まで常に敗北し続けてきたとしても。
ちなみにセレクト選手に関してはあえて描写しません。
皆さんの心の中に居ます……。