Project Moon RPG とある男が実況プレイ 作:下手好き
ということで(?)if作ってみました。
クオリティに関しては察してください()
描写が相変わらずセルマァなのも予めご了承ください(生命保険)
if√:『愛への渇望』
「チィッ、列車が混んでたから走ってきたが…悪手だったか……!?」
フィクサーらしき男が、9区の何かを目当てにして駆け抜けている。
細身の身体ではあるものの、その線は力強く、腰に納めている剣はかなり上等なものと見える。
走り回ること数分、ついに彼は目標の地点に辿り着いた…はずだった。
「おいおいおいおい…ハナはいつから悪徳協会になれ果てたんだぁ?」
勿論、彼は本気で言っているわけではない。
ただ、ハナ協会が相当数の手練れ相手への直々の依頼が出るほどの相手が、その場所にいなかったことが、あまりにも現実離れしていることだと感じられたのだ。
彼は別に戦闘狂ではないので、危険な相手の戦り合いを避けれて安心している一方、身構えていたことへの肩透かし、そしてターゲットがどこに消えたのかという少しの好奇心を抱いていた。
「……ん?あそこ、誰かいるな?」
荒涼とした広場に目を凝らすと、中央の方に力なく座り込んでいる少女がいた。
白色が印象的な、まだ10歳ほどの。
死の台地と化して一切の人がいない中では、存在が際立って異質に思えた。
「おい、そこの君!ここの辺りで、大きな化け物を見なかったかい?」
「……。」
少女は答えない。
涙の跡を残した顔で、虚空を見つめている。
ふと、傍にキラリと光る物が落ちているのに気が付いた。
白色を基調とした銃剣。しかし、彼が視たことのある親指が持っているものとは大きく特徴が異なっていた。何か特別なものであると彼の中のフィクサーとしての勘が告げていたが、特にそれは重要ではないと見切りを付け、持ち主を探そうと辺りを見渡した。
当然、目の前の少女以外に姿は無い。
「……マジか。」
少女の親しい間柄の者が化け物と相打ちになった可能性だって十二分に考えられた。
だが、何故か彼にはこの銃剣が少女の物だという確信が芽生えた。むしろ、つい先ほどまで幼気な少女がこんな物騒で上等なものをもっているはずがないと思っていた自分が愚かにすら思えるほどに。
「なあ、君には家族か誰かいないかい?」
何が起こったかを把握するために話題を振って、すぐに自分の失言に気付いてあっと声を漏らした。
幼い顔に似つかわしくない、この世の絶望を知ったかのような放心状態の彼女の身に何が起こったかなど想像に難くない。
「悪ぃ、忘れてく…」
「良いの。」
頭を振って発言を訂正しようとした時、初めて少女が口を開いた。
蚊の鳴くようなか細く、弱弱しい声だった。
「良いって、何が?」
「良いの。この世界が悪いの。私は悪くないの。都市は私の家族を奪ったの。私は悪くないの。私は家族の命を奪ったの、見殺しにしたの。私は悪くないの。私は、私、は。わた、わた――」
「ちょっ、おい!大丈夫か!?」
意味を成しているのか分からない言葉を呟き続ける少女の様子が段々とおかしくなるのを見て、思わず男は声を荒げる。
「わた、し、わた、わた、私が悪、い?止めて。チガ、ウ。嫌だ、嫌。嫌。イヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤ…」
「……っ!しゃーねぇなぁ!」
生気を失った顔から、更に色が失われていく様に見かねた男は何を思ったのか、銃剣を拾い、少女をおぶって走り出した。
「止め、て。私は、やりかえさ、ないと、いけないの。」
「喋ってると舌噛むぞ!」
「……。」
背中でもがくのを止めて、黙り込んだ少女と共にどこかに向かう。
ふと、自分の友人が今の自分の様子を見ていたら何というだろうかと想像してみた。
「お前…とうとう手ぇ出しちまったか。」
「ロリコンって、行動に移したら犯罪に当たるんですよ?あ、ロリコンって言うのは「ロリータ・コンプレックス」の略で性犯罪者予備軍のことを言うんです。あなたのようなおつむの弱い人に、どんな説明をしたら良いか私には見当も尽きませんが、第一あなたは―――」
……考えるべきでは無かったかもしれない。
何で突然友人のことを考えたのかは分からない。ただ、大量の死者を出した化け物が暴れて更地となった跡を駆けている中で、温かい繋がりを感じたいと無意識に思ったのかもしれない。そんなことを思う自分を気持ち悪く思いながら、目的地まで走り続けた。
「よし、着いたぞ。」
「…。」
「おい、もう喋っていいっての。」
「…すぅ、すぅ……。」
「……はぁ。」
あの速度下でよく寝れるなと呆れ、それと同時にそのくらい衰弱していたのではと思い立ちノンデリな自分に腹が立った。
自宅に辿り着いた彼は、とりあえず背負っていた少女をベッドに寝かせ、夜の支度を始めた。
料理を始めたきっかけは自分の両親が掃除屋共に『掃除』されたことだった。
子供の2人だけを家に放り込み、掃除屋の波に飲み込まれた両親の姿は夜が明けると跡形も無くなっていた。当時16だった彼は都市という世界がどういうものかをある程度理解していた。だから、受け入れ難い事実も無理やり飲み込むことができた。
妹は、できなかったが。
こんなに感傷的な気分になったのはいつぶりだろうか。
フィクサーとして一人立ちしてから、人の生き死にに関しての倫理観は矯正されていった。親しい者の死でさえも、今の彼の心には波風一つ立てることはできないだろう。
自分も、誰かの大切な人の命を奪っているという自責にも似た自覚を持っていたから。
「ああ止め止め、辛気臭いことを考えながら作る飯なんて美味いわけがない。」
昔の回想から帰ってきて、これからどうするかの構想を建て始める。
何をするにしても、まずは少女から話を聞かない事にはどうにもならないだろう。だが不用意に刺激したら、きっと彼女は再び狂気に陥ってしまう。
「……ん。んぅ……?」
寝息がぼやけた声音になったのに気づいて、彼は隣の部屋を開けた。
「おう、目が覚めたか。どうだ?俺のマイホームは。」
「……。」
問いかけには全く応じず、少女はただ虚空を見つめるのみだった。
「ちょっと待ってろよ、今夕飯持ってくるからよ。」
尤も、彼も返事は期待していなかった。
厨房に戻って皿に料理をよそおって、少女の前に差し出した。
「ほらよ、久しぶりに作ったから出来が悪いかもしれないが、味見をした限りは大丈夫だった。俺の舌を信じて食べなよ。」
「……。」
少女は全く動かず、目の前の炒飯を凝視している。
「どうした、冷めちまうぞ?」
「……何を仕掛けているつもり。」
「はぁ?」
思いがけないことを言われて、情けない声が漏れ出た。
「いや何も無いって……都市じゃロクデナシしかいないから気持ちも分かるけどさ。」
「……。」
「俺に裏が無いってわけじゃないぜ?お前に元気を出してもらって何があったのか聞き出そうって魂胆があるからな。でも、それなら君を殺しちゃ元も子もないだろ?」
「………。」
「それに。君を見ていると妹を思い出して、ほっとけないって感じるんだ。こうして家にまで連れてきたのもそれが理由なのかもしれないな。あいつ、自分のわがままが親を殺したってずっと苦しんでてな。立ち直らせようと色々料理をふるまってやったりしたんだが……ある日、自ら裏路地の夜に巻き込まれて死んじまった。丹精込めた料理も、俺の必死の励ましも、あいつの罪悪感を殺すには至らなかった。……スマン、こんな話されても困るよな。」
バツが悪そうに頭を掻く男を横目に、納得したのかどうかは分からないが、少女は料理に手を伸ばして口に運んだ。
数回咀嚼して、飲み込む。
「……どうだ?」
「……う。」
「う?」
「うぅ……。」
「ど、どうした!?まさかアレルギーでも……」
「うわぁぁぁぁぁぁん…………。」
「う、うわぁ!?大丈夫か!?」
堰き止めていた感情の糸が切れたように、少女の目から涙があふれた。家庭の味。それは母を探し求め、その最中で仲間を失い、殺めた彼女の心を溶かし、包み込んだ。
予想外の反応に彼はたじろぎ、ただ彼女が落ち着くまで背中をさすり続けた。
涙が枯れるまで泣き続け、炒飯を脇目もふらずに食べ終えた彼女は、ポツリ、ポツリと自分の身に起こったことを話し始めた。
少女の名はアローニィ。
11歳にして一級フィクサーにまで上り詰めた。
あの日、たまたま9区に居合わせてねじれ『子守歌』に遭遇した。
そのねじれは自分の元先輩で、その事実に気付いた時に無防備になって、後輩2人が庇って犠牲となり、狂乱状態で結局ねじれも討伐した。
私が悪いのだ、と。
「俺が掛けてやれる言葉は少ない。都市では、別に珍しくもなんともないからな。」
「……ッ、あんたに何が……!」
「でも、人のことなんかどうだっていい。俺が悲しいんだから悲しいんだよ、人の感情にケチをつけるなよ、ってかつての俺も思った。君も、そうなんだろう?」
「……。」
「だから、俺だけでも君に心から同情してやる。それが、君にとって救いになるのならな。」
「………。」
やはり返事は帰ってこない。
ただ、ほんの少しだけ、アローニィの顔に生気が戻ってきたような気がした。
それから、アローニィの心のケアをする日が続いた。
心の傷というのは直接癒せるものではなく、じっくり時間をかけないと治らないので苦労はしたが、それでも妹の時とは違って少しずつアローニィが元気を取り戻すのが見て取れた。
幸い2級フィクサーの彼には貯蓄にはかなり余裕があり、ある程度の期間依頼を受けなくても問題は無かった。
ただ、どういう訳か外出する際は必ず一緒に連れていけと言う。
買い出しに出かけると言った時、血相を変えて自分に縋りついてきた彼女の姿はどこか狂気じみていた。だから、どこに行くにしてもアローニィは彼の傍を離れなかった。彼も別に煩わしいとは思わなかったが、友人に会った時は少々参った。まさか、想像した通りの反応がそのまま返ってくるとは思わなかった。
それでも、彼にとってもどこか充足感に似た感情が湧いてきたのも事実。
まるで妹が帰ってきたかのような気がして、久しく感じてなかった気持ちを感じて少々恥ずかしく思いながら日々を過ごした。
2月ほど経つと、アローニィの顔にはだいぶ色が戻ってきた。
表情も初めて会った時に比べてずっと豊かになった。
「お兄さん、おはよう!」
「あぁおはよう。」
よく喋るようになり、声に活力が感じられるようになった。
歳不相応の悩みを持っていたかつての彼女の姿はなく、元気を取り戻していた。やはり彼が外出するとき以外は引きこもっているのだが、家事を手伝ってくれるようになったりと心を開いてくれているのが分かった。
ふと、彼女に帰る場所が他にあるのでは無いかという疑念が浮かんだ。
「なあアローニィ。君って、元々フリーのフィクサーだったのか?」
「んー?いや、チャールズ事務所ってとこにいたよ。」
「うわぁ、有名どこじゃん。帰りたいって思わないのか?」
「いや…今は、お兄さんの傍にいたい。」
それなら別に、「ウチのモンに手ぇ出したな?よし死ね。」となる心配は無さそうだ。少なくとも、アローニィが止めてくれるだろう。
ともかく、そんなこんなでアローニィの精神は安定したように思われた。
だから、久しぶりに依頼を受けた。
彼は主にソロで活動しており、大体都市疾病、極まれに都市悪夢の相手をする。
周りからはよく誰かと組むように言われるが、彼の戦い方的にはむしろ危険に晒すだけだと思っているので基本しない。
今のアローニィは精神的に落ち着いている。ならば、少しだけ、日が暮れてから夜が明けるくらいの時間なら大丈夫だろう。
都市では楽観的に考えてはいけない、そう肝に銘じていたはずなのに、彼は油断してしまった。
アローニィの心の傷は、彼の考えている以上に深かった。
「……ねぇ。どこ行くの。」
「!!」
眠ったはずの少女が目の前の扉に立ちはだかっている。夜の暗がりでその表情は読み取れない。
「君に何も言わずにどこかへ行こうとしたのは謝る。だが、そんなに長い時間は出ない。夜が明ける頃には帰ってkグハァッ!?」
分かってもらおうと弁解をした彼だが、突然苦しそうな声を上げてその場に倒れこんだ。
「……駄目。」
アローニィの銃剣が彼の腹部に刺さっていた。
「な、何で……。」
「どうして、私が好いた人は皆いなくなっちゃうの?私は幸せになっちゃいけないの?」
アローニィが身動きのとれない彼の上に四つん這いになる。
「いなく、なんかならなっ、」
「私はもう何人も失った。また1人、孤独に生きないといけないの?そんなの嫌だ。」
「はぁ、はぁ……。」
「もう、嫌なの。一人になりたくないの。これ以上、離れ離れになりたくないの。どこにも行ってほしくないの、私の傍にだけいてほしいの。いなくなってほしくないの。だから――」
「アローニィ、止めてくれっ……!」
刺さっている銃剣の引き金にアローニィが手をかける。
「大丈夫、寂しくないよ。」
アローニィの別の手には、どこから持ち出したのか拳銃があり、銃口を自分の頭に付けていた。
「一緒に逝こ♡」
乾いた2発の銃声が都市の夜に鳴り響き、再び何も無かったかのように静まり返った。
『ほほ、これは中々な見世物。』
『これもある意味人間が本当の姿を見せたと言えるのかしら……。』
『そうそう、ほらポップコーンいる?』
『このまま眺めているのも良いか。』
以上、暗黒老人会アーちゃん支部からでした。
最後駆け足気味になったのはひとえに私の力不足でございます。罰としてボニャテッリ家はヒンドリーから愛とヴァイオリンを取り上げます。
こちらはチャールズ組(+青キチ)が現地に着くのが本編よりさらに遅れた世界線です。
都市では貴重な、心優しい2級フィクサー君に拾われて良かったね!
これ以上苦しむ必要も無いね!(白目)
アーちゃんヤンデレメンヘラ概念、流行れ流行れ……。
次回から図書館に移行しますが、ちょくちょくこの章で幕間的にif√が更新されるかもです。
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