Project Moon RPG とある男が実況プレイ   作:下手好き

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上層編ラストと言うことで少しチーフたちの掘り下げ行いたいと思います。
あ、新規幻想体はしっかり来ます。安心してください。


対話

 

20日目。上層部門が全て開放され、私は明日中層に配属されることになる。

 

知らない人たちばかりの場所だろうし緊張するけど、何も上層の人たちと関わらなくなるわけじゃないし、きっと大丈夫だよね。

 

「よう、アローニィ。」

 

「おはようございます、ユルゲンさん!」

 

すでに作業に取り掛かっていたユルゲンさんが、こちらに気づいて挨拶をしてくれた。本当に人って変わるんだと思う。4日前に収容室で酒に入り浸っていたダメ人間はもういないみたい。

 

『職員アローニィ。『T-06-a00』に洞察作業。』

 

私も作業が入ったし、さっさと向かおう。それにしてもシリアルナンバー『00』って不思議。

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「こんにちはー…?」

 

私が収容室の扉を開いた先には、何も無かった。

本当に、何も無かった。

 

「え、何これ空じゃん、…!?」

 

突然、私は頭痛に襲われた。いや、頭痛と言うよりは記憶の本流…?

ここ、L社に入社してからの出来事が一瞬にしてフラッシュバックする。まるで走馬灯だ。慣れてくると頭痛はしなくなってきた。

 

あれ?

 

しばらくして、私の脳内に流れる記憶に不可解な点があることに気づいた。ところどころ黒塗りになっているのもだが、もう一つ明らかに施設に異変が起こったと思われるところがあった。

 

すぐに誰かチーフに相談したいと思ったが、どうやら記憶の奔流が流れきるまで私の身体は動いてくれそうに無かった。

 

 

 

 


 

「ねぇジュンソン。あれ何?」

 

「ジョンソンです。僕に聞かれても答えかねますね。」

 

『T-06-a00』の収容室を出た私は、ユルゲンさん経由で水差し野郎に直訴し、今日一日で幻想体の管理指示をどんどん出すようにしてもらった。理由は、エネルギーノルマをすぐに達成するためだ。またその理由は…、

 

[本日のエネルギーノルマが達成されました。職員の皆さんは帰寮してください。]

 

何とか、午前中だけで終わらせることに成功したみたい。

あとは水差し管理人に掛け合ってるように…。

 

「アロちゃん、管理人がメインルームに集まってくれって…。」

 

ちゃんと指示は行ってるみたいだね。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「ねぇ、アーちゃん。これは一体どういうことでしょう?」

 

シータさんがそう問いかけてくる。

メインルームには、各部門のチーフが集まっていた。

 

「私、上層は今日で最後だから、一度みんなで話したいと思ったの。」

 

私が死に物狂いで作業を行った理由。それはこの対話の時間を設けるためだ。『T-06-a00』で見たものがきっかけだが、よくよく考えると私はここのチーフのことをあまり知らない気がするし。

 

「最後って言っても、別に関わりがなくなるってことじゃないでしょうに。」

 

「中央本部が開放されたくらいだったら、こっちの手伝いに来ることだってザラにあるだろうしね〜。」

 

「まあまあ、そう言わないで…。折角だからここに来た経緯とか話そうよ。」

 

「…そう言えば、私たちチーフ間でもそういうことは話したことなかったですね。いい機会ですし、私から話しましょうか。」

 

何とか納得してくれたみたい。

てか億を超えるループの中でそういう話がでなかったことにも驚きだけど、よくよく考えたらこの人たちは働いてしかない道具扱いだったんだろうな。

 

「私は元々別の翼出身だったの。ずっと前の話だから、恐らくもう没落してるでしょうけど。」

 

「へぇ?どうしてL社にきたのかしら。」

 

「追われたの。翼の禁忌を破ってしまったから。」

 

「…よく生きてたな。」

 

「私の母がL社に私を融通して入社させてくれたんです。一応、あちこちの翼と取引する腕の立つ職員でしたから、信用があったんでしょうね。…もうこの世にはいないでしょうけど。」

 

「はいはーい、次は私ね!」

 

シータさんの話が終わったと見て、次はノアちゃんが手を挙げた。

 

「私、ノアちゃんは元々巣に住んでた一般ピーポーだったの。」

 

「嘘ですね。」

 

「嘘だろ。」

 

「流石にノアちゃん、無理あるよ。」

 

「酷い!?」

 

巣に住んでたにしては教養がいくらなんでも足りなくない?

 

「アロちゃんの言葉がさっきから痛い…。ほんとのことなのよ、普通に学校行って、普通に勉強して、普通に生きていくもんだと思ってたわ。」

 

「で、なんでここに来たんだ?」

 

「総当たり。」

 

「へっ?」

 

「どこでもいいから翼に就職したいなーって思って、ダメ元で全翼を受けにいったわ。」

 

私は絶句した。出鱈目すぎる。周りのチーフたちも、目を見開いたまま固まってる。

 

「そしたら唯一ここは通って、今に至るって感じね。」

 

「よくクビにならなかったですね…。」

 

「私の印象そんなに悪いかぁ…。こう見えて、昔は模範職員として社内で有名だったのよ?だから情報部門チーフにまでなったんだし。」

 

「確かに、私が入社した頃のノアさんは、今のユルゲンさん並みに働いてましたね。」

 

「そんな模範職員サマが、どうしてトップ問題児チーフなっちまったんだ。」

 

「そうですよ、なんで幻想体で遊ぶように…。」

 

 

 

 

 

「その話、する?」

 

 

突然、ノアちゃんの纏う空気が変わった。さっきまではあっけらかんとしていたのに、今は暗く重い雰囲気を醸し出している。

 

ノアちゃんに一体何が…?

 

「…いえ、別に言いたくないことを言う必要はありませんよ。誰にだって、色々な過去がありますし。次は僕の番ですね。」

 

「アリス君は元々本社にいたんだよね?入社した頃は私と同じくらいだったのに、どうやったの?」

 

「親の伝手と推薦です。あの頃は天才だの何だの言われてて、落ち着かなかったので相談したら、L社を紹介されました。」

 

「災難だったな。」

 

「まあ今考えればそうですが…。ともかく、本社の方でも僕は優秀な職員でした。」 

 

「自慢?」

 

「違います!」

 

「まあまあ、それよりどうしてここ分社に左遷になったのよ?」

 

「かつてのここの教育部門チーフが死亡したかららしいです。当時は現T社の特異点が不完全で、1周期で使える回数が決まってたらしく、本社から一人チーフとして送り込むことになった際、僕に白羽の矢が立ったわけです。」

 

「…ねぇノアさん、教育部門チーフが死んだことってありました?」

 

「あー、昔のことだから名前とかは思い出せないけどあったわ。確か14億ループ目くらいかしらね、私が入社してから。」

 

「よく覚えてるね…?」

 

「私、記憶力は良いから!なんなら100億ループ前の情報部門の幻想体まで鮮明に覚えてるわ!」

 

何それ怖い。

 

「…。」

 

「あれ、ユルゲンさんどうしたんですか?」

 

「…いや、何でもねぇ。それより次は俺だな。俺はここの最古参チーフの一人だ。」

 

「…え!?ユルゲンあなた最初っからいたの!?私たちって顔合わせたの大分後じゃなかったかしら…。」

 

「…あの時の俺は酒に溺れる毎日だったからな。とは言っても、最初の数ループくらいはまともに働いてたさ。安全部門チーフとして、何ができるかとかな。」

 

「じゃあどうしてあんな社会不適合者になってしまったんですか?」

 

「言葉がいちいちきちぃな…。無意味だったからだよ。何をしようが上は俺等を道具としか思ってねぇ。作業して帰ってこなかった奴がどれだけいるだろうな。そのうち俺は嫌になったんだよ。それに…。」

 

半ば愚痴を零すように話していたユルゲンは、突然言葉を濁らせた。

 

「ユルゲンさん?」

 

「…いや、何でもないさ。どうせ言っても意味は無いだろうし。」

 

「まあいいか。人には言いたくないこともあるよね!それじゃ最後は私が!」

 

口を閉ざしたユルゲンさんそのまま黙りこくってしまったから、私は自分のこれまでの経緯について話した。

お母さんのこと。何者かに襲撃されたこと。いつの間にかここに来ていたこと。短い間に色々なことが起こったなぁ。

 

「アーちゃんのお母さん、特色なの!?」

 

「とんでもねぇな…。」

 

「特色…?そう言えばそれ何?」

 

よくよく考えてみると、私はそれを肩書程度にしか思っていなかった。けどみんなの反応からするに、それは違うみたい。

 

「アロちゃん知らないんだ…?特色っていうのは、フィクサーっていうまあ便利屋?的な人たちのなかでもバケモノ級の強さを持った人たちね。」

 

「本社にも、かつて赤い霧だったセフィラがいますね。」

 

「本社凄っ。」

 

「セフィラってなんだ?」

 

「その部門だけの管理人って感じです。」

 

「なるほど…?っと、そんなことよりアロちゃん裏路地出身かぁ…。」

 

「しかも23区、まあ特色の母がいれば余裕でしょうけど。」

 

「どおりで人肉をうまく避けれるわけですね。」

 

「ところで、どうしてアロちゃんはここで働くことになったの?」

 

そう言えば、確かにここに送り込まれたけど流れで働いているようで、目的みたいのは無かったような…

 

 

 

 

待ってるから。

 

 

 

「…ここに、お母さんの手掛かりがあるから。」

 

「襲撃されて離れ離れになったから?それにしても特色を襲撃するなんて一体…。」

 

「いや、ただの直感。」

 

「…。」

 

「でも、確信めいたものもあるんだ。きっと、ここにあるって。」 

 

「そう…。」

 

「じゃあこれで終わりか?俺はじゃあさっさと上がらせてもら…、」

 

「待って!最後に確認しときたいことがあるんだ!」

 

ユルゲンさんを慌てて引き止める。ここからが本題だ。

 

「ユルゲンさんは知らないと思うけど、私のせいで、死んじゃった子いたよね?」

 

「あぁ、うちの部門の子ね。覚えてるわ。」

 

「あの子で遊ぶの楽しかったわ〜。」

 

「真面目な方でしたね。たからノアさんのおもちゃに…。」

 

「じゃあさ、みんな。

 

 

 

 

その子の名前、思い出せる?」

 

 

 

 

「「「…!」」」

 

やっぱりそうだ。あんなの私が忘れるわけない。あれだけ自責にかられたんだから。でも、思い出せない。思い出さないといけないのに。でも、みんなも忘れてるんだ。

 

「…まあ、人が死ぬなんて日常茶飯事だから、いちいち覚えてないかもね?」

 

そんなことあるはずない。はるか昔の幻想体の名前すら思い出せるノアちゃんが、最近のことを忘れるはずない。

 

 

 

 

「そんなわけねぇよ。」 

 

不意にユルゲンさんが口を開いた。

 

「ユルゲンさんは知らないはずですよね?」

 

「あぁ知らねぇ。お前らが忘れたのがそういう理由じゃねぇってことだ。」

 

そして、一つ大きく息を吐き出して、もう一度口を開いた。

 

「俺がさっき言いかけたこと…、それは俺がこの会社をクソだと認識した最たるもんだ。ここにはなぁ、ある幻想体が2日目に必ず収容されるんだ。基本無害だ。邪魔も何もしねぇ。だが…、

 

 

 

あいつは忘却させるんだ。」

 

…え?どういうこと?

 

「あいつは脱走することはめったにねぇ。ただ、一度脱走すると取り返しのつかねぇことをする。施設には関係無いことだが。」

 

「なんですか、それ。」

 

「職員1人の名前をすり替える。」

 

「…は?」

 

「お前らはあいつの名前を最後に正確に呼んだのは何時だったんだろうな。」

 

「で、でも!だったらその間違った名前だけでも思い出せるはずじゃ…!」

 

「あいつは名前がすり替わった職員が死んだ時、特殊能力が発動する。これも施設には関係無い。その名前が記録から消されるんだ。

 

記録を…消す…?

 

「正確には、あいつの中に保管されると言うべきか。あいつは死んだやつの名前を奪い、すり替える名前としてストックするんだろ。…それともう一つ。

 

 

 

 

お前ら、そいつが死んだ次の日の記憶、あるか?」

 

 

 

それは、もう一つ私が気になっていたことだった。記憶の奔流に流されているときに、気づいた。

 

なんで教育部門には4体しか収容されていないんだろうって。

 

「それが、あいつの能力。ここでは、死んだ奴を悼むことすらできねぇし、切り替える時間として1日がスキップされるんだろ。…ほんと、幻想体ってクズばっかだ。」

 

 

そう言って出ていくユルゲンさんの背中からは、途方もない寂寥感を感じた。





超長くなってしまった…。
書きたいことが多すぎたぜ。
追記:方針変更に伴い、上層編の文字を消去。
下手好きに計画性なんて無いよっ!!
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