機動戦士ガンダム鉄血のオルフェンズ外伝 鉄屑の彼岸   作:ミニトレール

11 / 28
皆様あけましておめでとうございます。
今年も頑張って書いていきますので是非見てってください。
それでは第十一話どうぞ!


第十一話:選択

ブリッジ前区画。

 

制圧はほぼ完了していた。

 

床に伏せるクルー

 

だが――

 

セドリックの意識はそこにはなかった。

 

視線は即席で立ち上げた戦術モニターに釘付けだった。

 

セドリック「……これは……」

 

表示されているのは、艦外戦闘の簡易トラッキング。

 

黒い機影、随伴する軽量機、それを取り囲む、三機のゲイレール。

 

数値だけを見れば不利という言葉では足りない。

 

セドリック(三対二……いや、実質三対一だ)

 

ガルのスパロディは善戦している。

 

だが、火力も装甲も、明らかに格が違う。

 

それでも――

 

セドリック「……墜ちない……?」

 

回避。

 

割り込み。

 

射線遮断。

 

それらが反射的すぎる。

 

演算でも、勘でもない。

 

もっと生理的な速さ。

 

セドリック(……阿頼耶識)

 

額に冷たいものが流れる。

 

ギャラルホルンは、それを禁忌としている。

 

つまり――

 

相手はそれを前提に戦術を組んでくる。

 

セドリック「……厄介だな」

 

ギャラルホルン側の動きも異様だった。

 

突っ込まない。

 

包囲を急がない。

 

決定打を狙わない。

 

ただ削る。

 

セドリック(牽制射主体……110mmか)

 

命中しても、即死はしない。

 

だが、確実に動きを制限する。

 

しかも――

 

シールドの位置が、交代している。

 

一機が前に出れば、残り二機が射線を組む。

 

隊列が、崩れない。

 

セドリック「……海賊相手の戦い方じゃない」

 

あれは、鎮圧用だ。

 

暴れさせず、時間を奪い、疲弊させる。

 

セドリック(エヴォル……)

 

マルファスが一瞬、被弾する。

 

致命ではない。

 

だが――装甲の一部が確実に削られた。

 

セドリックの指が無意識に強く握られる。

 

セドリック(焦るな)

 

ギャラルホルンは阿頼耶識を恐れてはいない。

 

理解した上で警戒している。

 

だからこそ危険だ。

 

セドリック(エヴォルは……分かってるはずだ)

 

囮にしない。

 

ガルを切らない。

 

それは感情ではない。

 

戦術的判断だ。

 

二機が連携している限り相手は“決め”に出られない。

 

だが――

 

時間は味方ではない。

 

セドリック「……クルーの拘束を急げ」

 

自分に言い聞かせるように。

 

セドリック(こっちが終わらせるまで、――持ちこたえろ)

 

戦場は二つ。

 

艦内と宙域。

 

どちらかが崩れればすべてが崩れる。

 

セドリックは、もう一度スクリーンを見る。

 

そこには、禁忌を背負って戦う黒い機体と、規律でそれを削る青と緑の三機。

 

思想のぶつかり合いが無言のまま進行していた。

 

ブリッジ。

 

制圧は終わったはずだった。

 

床には拘束されたクルー。

 

武装した十九人のデブリ。

 

中央制御席の前に立つ、セドリック。

 

セドリック「……通信遮断、完了。 航路制御、こちらに移行する」

 

静かな声。

 

淡々とした作業。

 

それを見つめながら――

 

ロブ・コッペルは立ち尽くしていた。

 

ロブ「……ま、待て……。こんな……はずじゃ……」

 

視線が泳ぐ。

 

手は、上げたまま。

 

判断できない。

 

逃げることも、抗うことも。

 

その背後で。

 

副長メイル・ラウズの指がわずかに動いた。

 

メイルは、ロブの肩越しにセドリックを見ている。

 

その目にあるのは――

 

恐怖ではない。

 

計算。

 

メイル(……このままじゃ、終わる)

 

ゆっくりと、腰の内側に隠していた小型拳銃を引き抜く。

 

その動きに、ナルドの“嫌な予感”が炸裂した。

 

ナルド「お前ら!――伏せろ!!」

 

反射的だった。

 

セドリックの肩を突き飛ばす。

 

次の瞬間――

 

パンッ!!

 

乾いた銃声。

 

弾丸はセドリックの頭があったはずの空間を貫き、天井の配線を弾き飛ばす。

 

火花。

 

警報音。

 

床に転がるセドリック。

 

視界の端で、メイルが銃を構え直しているのが見えた。

 

メイル「……船長。悪いが、もう“話し合い”の段階じゃない」

 

ロブ「メ、メイル……?な、何を……」

 

メイル「生き残る為に賭けるだ

 

その言葉が終わる前に――

 

デブリたちが、動いた。

 

一人が撃つ。

 

二人目が続く。

 

三人目が確実に止めを刺す。

 

連続する銃声。

 

メイル・ラウズは言葉を続けることなく、その場に崩れ落ちた。

 

沈黙。

 

ロブは、呆然とその光景を見下ろしている。

 

ロブ「……ち、違う……。私は……私は……」

 

だが、誰も聞いていなかった。

 

セドリックが、ゆっくりと立ち上がる。

 

セドリック「……撃ったのは、副長だ」

 

事実確認のような声。

 

ナルド「船長は……動けなかっただけだな」

 

ロブは、崩れ落ちるように椅子に座った。

 

――そのとき。

 

ブリッジの扉が音もなく開く。

 

全員が振り向く。

 

拳銃を構えた男が立っていた。

 

ルカ・グレイ。

 

軽い調子で口を開く。

 

ルカ「……おっと。来るのがちょっと遅かったか?」

 

ロブの顔に一瞬だけ希望が灯る。

 

ロブ「ルカ……!助けてくれ……!私は……!」

 

その瞬間。

 

セドリック以外の全員が、一斉にルカへ銃口を向けた。

 

だが、ルカは止まらない。

 

軽い足取りで歩きながら、肩をすくめる。

 

ルカ「悪いな、船長」

 

数歩。

 

ルカ「俺はもう――あんたらのクルーじゃない」

 

ロブ「……ル、ルカ?」

 

ルカは拳銃を構え直す。

 

銃口は、まっすぐ船長へ。

 

ルカ「判断できない船長と、先に撃つ副長」

 

ルカ「どっちも信用できねぇ」

 

静かな声。

 

だが、決定的だった。

 

セドリックは理解する。

 

――この船は内部から完全に崩れた。

 

 

 

ブリッジには、まだ火薬の匂いが残っていた。

 

床に伏せた副長メイルの亡骸。

 

銃を下ろしたデブリたち。

 

そして、拳銃を構えたままのルカ

 

ナルドが、視線を外さずに口を開く。

 

ナルド「……なぁ、ルカ」

 

ナルド「お前、俺たちの“仲間”になる気か?」

 

空気が少し張り詰める。

 

ルカはあっさりと肩をすくめた。

 

ルカ「なるつもりじゃなきゃ、ここには立ってねぇよ」

 

即答だった。

 

迷いも、言い訳もない。

 

ナルド「……だよな」

 

小さく笑う。

 

セドリックは、別の点に目を向けていた。

 

セドリック「だが、格納庫にもクルーはいたはずだ」

 

視線が、ルカに向く。

 

セドリック「抵抗がなかったのは、不自然だ」

 

ルカは、少しだけ口角を上げた。

 

ルカ「あいつらか」

 

ルカ「空調機に細工した」

 

ナルド「……細工?」

 

ルカ「睡眠ガスだ。医療用を薄めて局所循環に流した」

 

淡々とした説明。

 

ルカ「死なねぇし、目も覚める。ただ――今は、夢の中だ」

 

セドリック「……用意が良すぎるな」

 

ルカ「この船、長くいる場所じゃないって言っただろ?」

 

セドリックはしばらく黙っていた。

 

そして、静かに問いを重ねる。

 

セドリック「前にも忠告したな」

 

ルカ「ああ」

 

セドリック「……なぜ、そこまで俺たちに肩入れする?」

 

真正面からの質問だった。

 

打算か。

 

同情か。

 

それとも、別の理由か。

 

ルカはすぐには答えなかった。

 

拳銃を下ろし、天井を見上げる。

 

ほんの数秒。

 

だが、その沈黙は長く感じられた。

 

ルカ「それは……」

 

言いかけて、止める。

 

ルカ「……あの二人が帰ってきたら、話す約束なんだわ」

 

軽く笑うがその笑みはどこか苦い。

 

ルカ「今はまだ言えねぇ」

 

セドリックは深追いしなかった。

 

セドリック「……そうか」

 

それだけで、十分だった。

 

セドリックは視線を巡らせ、判断を下す。

 

セドリック「ナルド」

 

ナルド「おう」

 

セドリック「数人、連れて行け。格納庫にいるクルーを拘束する」

 

ナルド「わかった」

 

ナルドは振り返り、デブリの中から数人を指名する。

 

ナルド「行くぞ。今度は俺らが“檻”にぶち込む番だ」

 

短い笑いが、わずかに起きる。

 

武装した数名が、ナルドの後に続いてブリッジを出ていった。

 

その背中を見送りながら、セドリックはゆっくりと息を吐く。

 

セドリック(……船内は、これで終わりだ)

 

視線が戦術スクリーンへ向く。

 

外部カメラ。

 

映るのは黒いガンダムと、随伴する一機。

 

そして、それを囲む三機のゲイレール。

 

セドリック(あとは――)

 

セドリックの思考が静かに切り替わる。

 

セドリック(……お前たちの番だ)

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

三機のゲイレールは、緩やかな弧を描きながら距離を保っていた。

 

無暗に撃たない。

 

突っ込まない。

 

ただ、位置を削る。

 

隊長機のモニターには、二つの反応が映っている。

 

黒いMS。

 

そして――その背後を動く、スパロディ。

 

隊長機「……随伴機の方が、まだ“読める”」

 

僅かな間。

 

隊長機「第三、照準を随伴機に切り替えろ」

 

第三機《了解》

 

艦橋からの指示を待たない。

 

これは、現場判断だった。

 

瞬間

 

110mmライフルの照準が、スパロディへと向く。

 

ガルはそれを感じ取った。

 

MSが阿頼耶識によって“危険”を直接、脳へ叩き込む。

 

ガル「――来るっ!」

 

回避行動。

 

だが、ゲイレールの射撃は当てるためのものではない。

 

空間を塞ぐ。

 

逃げ道を潰す。

 

スパロディの進行方向、一歩先に弾幕が置かれる。

 

ガル「っ……!」

 

姿勢がわずかに乱れる。

 

その瞬間を――

 

隊長機は見逃さなかった。

 

隊長機「第二、前に出ろ。盾役交代」

 

第二機が前へ出る。

 

クロウシールドを構え、射線を限定する。

 

隊長機「このまま削る。黒い方は――まだ来な」

 

割り込む影

 

来た。

 

黒い機体が、常識外の角度で踏み込んでくる。

 

マルファス。

 

エヴォル「……させるかよ!」

 

ガルを“囮”にしない。

 

エヴォルは一瞬の判断で進路を変えた。

 

スパロディとゲイレールの間に割り込む。

 

隊長機「――!」

 

予測より、半拍早い。

 

だが、ギャラルホルンは慌てない。

 

隊長機「撃て」

 

冷静な声。

 

110mmライフルが、今度は“黒”を狙う。

 

牽制ではない。

 

制止の一撃。

 

初被弾

 

――ドンッ!!

 

鈍い衝撃。

 

マルファスの左肩装甲が弾かれるように歪む。

 

エヴォル「……っ」

 

直撃ではない。

 

致命傷でもない。

 

だが――

 

確かに当ててきた。

 

隊長機「命中確認。いくら化け物じみた機体でも――不死身ではない」

 

第二機《了解。距離維持》

 

第三機《随伴機、動揺あり。追いますか》

 

隊長機「いや」

 

隊長機「黒を見ろ。あれが主だ」

 

エヴォルは歯を食いしばる。

 

エヴォル「……ガル、下がれ!」

 

ガル「でも――!」

 

エヴォル「いいから下がれ!!」

 

命令。

 

それは、守るための命令だった。

 

スパロディが後退する。

 

マルファスはゲイレール三機の正面に立つ。

 

装甲は削られた。

 

だが、姿勢は崩れていない。

 

エヴォル「……なるほどな」

 

低く、呟く。

 

エヴォル「こいつら――簡単に倒させる気、ねぇな」

 

対する隊長機。

 

冷静な声が、通信に乗る。

 

隊長機「未知機体。だが、対応可能」

 

三機のゲイレールが、再び、静かに陣形を締める。

 

これは、一方的な蹂躙ではない。

 

測り合いだ。

 

そして――

 

マルファスは、初めてその中に立たされている。

 

ほんの数十秒。

 

だが、体感ではもっと長かった。

 

マルファスのモニターに、警告表示が重なっていく。

 

《装甲応力上昇》

 

《推進剤消費率:想定値超過》

 

《反応遅延:微増》

 

エヴォルは無意識に呼吸を深くしていた。

 

(……削られてる)

 

ゲイレールは、突っ込んでこない。

 

逃げもしない。

 

同じ距離。

 

同じ角度。

 

同じ射線。

 

動くたびに、必ず「次の一手」を潰してくる。

 

エヴォル(同じ動きだからこそ……突破できねぇ)

 

阿頼耶識が最適解を叩き出そうとする。

 

だが、返ってくる答えは一つだけだった。

 

――消耗。

 

エヴォル(このままじゃ、こっちが先に息切れする)

 

視界の端で、スパロディが揺れる。

 

ガルの動きも、わずかに重くなっていた。

 

ガル「……エヴォル」

 

通信。

 

声は落ち着いているが、余裕はない。

 

ガル「どうする。このままじゃ……じり貧だ」

 

エヴォルは即答しなかった。

 

一瞬――

 

モニターの端で警告表示が一つまた一つと増えていく。

 

残弾。

 

推進剤。

 

どれも、長くはもたない数値。

 

エヴォルは視線を艦の進行方向へ流した。

 

距離。

 

速度。

 

そして自分達に張り付く三つの反応。

 

頭の中で、いくつかの“選択肢”が浮かんでは消える。

 

どれも、まともな答えじゃない。

 

――だが。

 

エヴォルの呼吸がわずかに整った。

 

通信を切らずあえて沈黙を保つ。

 

その間に指先だけが静かに動く。

 

スラスター配分。

 

武装の起動状態。

 

ガル機の位置。

 

そして口元に薄い笑みを浮かべた。

 

この場を抜けられなければここで全てが終わる。

 

エヴォルがガルへと通信をする。

 

エヴォル「……ガル」

 

ガル「なんだ」

 

一拍。

 

エヴォル「全員が生きて帰る。そのための動きだ……二機頼めるか?」

 

それ以上は、言わない。

 

ただ、その一言だけを静かに投げる。

 

通信の向こうで呼吸音がわずかに乱れる。

 

スパロディのモニターにはゲイレール二機の反応。

 

距離、速度、配置――

 

どれを見ても、楽な未来は映っていなかった。

 

正直な話。

 

無茶だ。

 

だからこそ。

 

ガルはすぐには答えなかった。

 

沈黙の間に何かを計算する気配がある。

 

数字ではなく、覚悟の方を。

 

やがて。

 

ガル「……なるほどな」

 

短く、息を吐く。

 

ガル「そういう“役”か」

 

否定はなかった。

 

質問もなかった。

 

エヴォルの言葉の裏にあるものを、ガルはもう理解している。

 

ガル「できるか、じゃねぇだろ」

 

声は低く、だが揺れない。

 

ガル「やらなきゃ、全員終わる」

 

一瞬の間。

 

ガル「……俺は、足手まといでは終わらないぜ?」

 

エヴォルはわずかに口角を上げた。

 

エヴォル「上等だ」

 

視線を、前方へ戻す。

 

隊長機。

 

第二機。

 

第三機。

 

完璧な陣形。

 

だからこそ――

 

一度、歪めば、崩れは連鎖する。

 

エヴォル「――合図は、俺が出す」

 

それだけで、十分だった。

 

ガル「了解だ」

 

短い返答。

 

だが、そこに迷いはない。

 

そして――

 

戦場は静かに、次の段階へ踏み込んだ。

 




Gジェネやってたら元旦クなステージ出てきてほほえましくなりました。しかもあれ自軍無視してルのおもろい笑
それでは次回もお楽しみに!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。