機動戦士ガンダム鉄血のオルフェンズ外伝 鉄屑の彼岸   作:ミニトレール

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設定書いてたら23時過ぎちゃってたってのは内緒です。それでは番外編どうぞ。


番外編:厄祭の欠片

あの一連から三日後。

 

ウィロウの格納庫は静かだった。

 

整備用のライトに照らされ、黒鉄と灰銀の巨体が影を落としている。

 

ガンダム・マルファス

 

その足元で、セドリックはタブレットを操作していた。

 

セドリック「……整備ログ、やっぱりひどいな」

 

淡々とした声。

 

だが、眉間にははっきりと皺が寄っている。

 

エヴォルは両手をポケットに突っ込んだまま機体を見上げて言った。

 

エヴォル「そんなに難しいのか?こいつの整備」

 

視線の先には、黙して動かぬマルファス。

 

セドリック「ああ」

 

セドリックは即答した。

 

セドリック「難しい上にパーツがない……スパロディの方がいくらかマシだ」

 

そう言ってタブレットを傾ける。

 

マルファスと隣で待機しているスパロディ。

 

二機を見比べるような仕草だった。

 

ナルドが肩をすくめる。

 

ナルド「そりゃそうだろ。あんときは海賊の野郎も来てたしよ」

 

少し苦い笑い。

 

ナルド「こいつの予備パーツなんて、探してる暇なかったしな」

 

エヴォルが鼻で笑った。

 

エヴォル「探すっつってもな。周りは――」

 

軽く両手を上げ首を振る。

 

エヴォル「溶けた鉄塊しか、なかったがな」

 

セドリック「……まったく」

 

セドリックがタブレットを下ろす。

 

セドリック「こいつが、たまたま“ほぼ無傷”で残ってたからよかったものの……」

 

エヴォル「まぁいいじゃねぇかよ!」

 

エヴォルが軽くセドリックの背中を叩いた。

 

エヴォル「もしもの話なんてよ!考えてると目が回るだけだぜ!」

 

不意を突かれ、セドリックは少しよろめく。

 

だが、すぐに姿勢を立て直し低く言った。

 

セドリック「……それだけじゃない」

 

視線がマルファスに戻る。

 

セドリック「こいつには――まだ、わからないところが多すぎる」

 

ナルド「あ~……」

 

ナルドが、わざとらしく頭を掻く。

 

ナルド「なんとか弾、だよな?」

 

エヴォル「γナノラミネート弾か」

 

エヴォルの声が急に冷たくなった。

 

一瞬、格納庫の空気が変わる。

 

エヴォルは目を伏せたまま続けた。

 

エヴォル「あれは……MSが出していい威力じゃない」

 

脳裏に焼き付いた光景。

 

一撃で戦艦が――“消えた”瞬間。

 

セドリック「まったく……」

 

セドリックが叱るように言う。

 

セドリック「今のところ“威力のおかしい弾丸だった”で済んでるからいい」

 

一拍

 

セドリック「だがな、エヴォル。それで――お前が死んだらどうするつもりだったんだ」

 

エヴォル「まぁ~まぁ~!」

 

エヴォルは露骨に話を切り替える。

 

エヴォル「なんとかなったし、いいじゃねぇか!」

 

踵を返し、手を振る。

 

エヴォル「ほら!それより飯だ、飯!今日の飯は何かな~?」

 

逃げるように、食堂の方へ歩き出した。

 

セドリック「おい!話は終わってないぞ!」

 

セドリックがその背中を追う。

 

二人の声が遠ざかっていく。

 

ナルドは少し離れた場所でそれを聞きながら、ひとりマルファスを見上げていた。

 

ナルド(エヴォルなぁ……)

 

心の中で苦笑する。

 

ナルド(あんときお前らにさんざん叱られたし、もういいだろ~って顔しやがって)

 

ナルド(……でもな、エヴォル。お前が“わかってなさそう”だからセドが言ってんだろ)

 

ナルドの視線がゆっくりと機体をなぞる。

 

ナルド(でも、お前の話が本当なんだったら……)

 

喉がわずかに鳴った。

 

ナルド(厄祭戦は――こいつは、一体どんな戦場に行ってたんだ……?)

 

エヴォル「ナルド~!早く来いよ~!」

 

遠くからエヴォルの声。

 

エヴォル「飯、ほかの奴らに取られちまうぞ~!」

 

ナルド「わりぃ!すぐ行く!」

 

返事をしナルドはもう一度だけマルファスを見る。

 

そして背を向けた。

 

格納庫には誰もいなくなる。

 

静寂の中マルファスに接続されたままの状態でコンテナの上に一枚のタブレットが置き去りにされていた。

 

画面はスリープしていない。

 

そこには――

 

とあるカメラログ。

 

映像が切り替わる。

 

視点は人の目ではない。

 

揺れ、振動、無数の敵影が、赤くマーキングされていく。

 

時代は遡る。

 

――厄祭戦。

 

ガンダム・マルファスの戦場の記録の一部へ。

 

 

 

 

起動

 

左右ツインアイ同期完了

 

視界が開く

 

格納庫内。

照度 低。

粉塵 浮遊。

 

眼前に映るのは静止した構造物群と――自機の影。

 

ガンダム・マルファスはそこに立っている。

 

視界下方

 

人影 2

距離 近接

 

解析開始。

 

赤髪の男

心拍数 高

声量 上昇

 

赤髪「やっとこっちにも回ってきたぜ!新兵器――ガンダムさんがよぉ!」

 

金髪の男

姿勢 崩れ気味

声調 低

 

金髪「あ~あ……俺も欲しかったぜ、新型」

 

一拍

 

金髪「なんでお前なんだよ」

 

赤髪の男が笑う。

 

赤髪「しょうがねぇだろ。この船で一番、MS動かすの上手いのは俺なんだからよ」

 

金髪の男が肩をすくめる。

 

金髪「さらっと言ってくれんね。隊長様は?」

 

短い溜め息。

 

金髪「……同じ阿頼耶識のはずなのにな。なんでこうも違うかねぇ……」

 

赤髪の男は、気に留めない。

 

赤髪「そりゃ才能だろ。副隊長さん?」

 

一歩、前へ。

 

視界に映る赤髪がマルファスを見上げる。

 

赤髪「それよりさ――ガンダムだぜ? ガンダム」

 

声に純粋な高揚。

 

赤髪「新型はやっぱ、テンション上がるだろ!」

 

金髪の男が、静かに呟く。

 

金髪「……マルファス、ねぇ」

 

金髪の男が少しだけ真面目な顔になる。

 

金髪「……悪魔の名前、だろ。縁起いいとは言えねぇよな」

 

赤髪の男は、鼻で笑った。

 

赤髪「戦争に縁起もクソもあるかよ」

 

一瞬、言葉を切り――

 

次の瞬間、表情が歪むほどの笑みを浮かべる。

 

赤髪「……いや、むしろ縁起がいいじゃねぇか?」

 

拳を強く鳴らす。

 

赤髪「あいつらを狩る名としては――完璧だろ!」

 

金髪の男が少し引いたように肩をすくめる。

 

金髪「……それは、そうかもしんねぇけどよ……」

 

赤髪の男はもう止まらない。

 

視線は完全にマルファスへ。

 

赤髪「圧倒的な近接破壊力と機動力を武器に短時間で敵を無力化する――」

 

言葉に熱がこもる。

 

赤髪「強襲特化型のガンダムフレーム……」

 

笑う

 

赤髪「まさに――俺好みだ」

 

金髪の男はタブレットに視線を落とす。

 

送られてきたデータを、流し読みしながら口を開いた。

 

金髪「武装は――」

 

指で画面をなぞる。

 

金髪「腕部100mmライフル ×2」

 

金髪「前腕下部固定マウント装備。両腕に固定」

 

視線がさらに下がる。

 

金髪「通常弾倉に加えて、特殊弾倉スロット内蔵」

 

小さく鼻を鳴らす。

 

金髪「……構造むき出しの工業兵装デザインか」

 

金髪の男は、少し感心したように続ける。

 

金髪「反動制御は、前腕と直結させて補助」

 

タブレットを傾ける。

 

「回転マウント機構――ここ、重要だな」

 

金髪「マウント基部が回転可動」

 

金髪「バスターリッパーの可動干渉を防ぐ」

 

金髪「死角からの射撃も柔軟に対応」

 

一息

 

金髪「背後射撃も、素早く可能」

 

赤髪の男が、低く笑う。

 

赤髪「いいねぇ……」

 

金髪「反動吸収ダンパーと固定ロック内蔵」

 

金髪の男は、次の項目を開いた。

 

そして一瞬だけ言葉に詰まる。

 

金髪「……で、極めつけがこれだ」

 

画面に表示された文字列。

 

γナノラミネート弾(特殊弾)

 

金髪の男は、読み上げる。

 

金髪「弾内に――圧縮エイハブ粒子を封入」

 

喉が鳴る。

 

金髪「弾丸自体がγナノラミネート反応を発生することにより、接触した装甲のナノラミネート構造を破壊」

 

金髪「MA、プルーマ――ナノラミネートアーマー全部に特効」

 

だが、次の行で声が低くなる。

 

金髪「……ただし」

 

短く、息を吐く。

 

金髪「粒子圧縮は、極端に不安定で暴走時――自爆リスクあり」

 

タブレットを持つ手が、わずかに止まる。

 

金髪「“最強だが、使うだけで命を賭ける試作兵器”……か」

 

赤髪の男は、楽しそうだ。

 

赤髪「最高じゃねぇか」

 

金髪はため息をつき、続きを開く。

 

金髪「破砕機複合大剣兵器――《バスターリッパー》」

 

金髪「チェーンソーがついた大剣で装甲破砕と内部切断を同時に実行」

 

言葉が少し重くなる。

 

金髪「……“斬る剣”じゃねぇな…まさに粉砕して殺す処刑具ってとこか」

 

金髪「防御にも使える。チェーンソー機構で盾ごと削る」

 

金髪「腰部装備――アンカークロー ×2」

 

画面をスクロール。

 

金髪「伸縮ケーブルとアンカー」

 

用途一覧

 

拘束

移動補助

機体固定

武装封殺

対艦取り付き

 

金髪の男は、ぽつりと呟いた。

 

金髪「……逃がさないための牙、か」

 

一瞬、言葉を探す。

 

金髪「すげぇな……こりゃ」

 

赤髪の男がタブレットを指で弾いた。

 

赤髪「そういやその試作兵器――γナノラミネート弾、よ」

 

口角を上げる。

 

赤髪「ファルクの野郎が乗ってるガンダム。ガミジン?だっけ?が持ってる斧、あるだろ?」

 

金髪の方を見る。

 

赤髪「あれと、ほぼ同じか――下手すりゃ、それ以上の威力が出せるっぽいぜ?」

 

金髪の男が、目を細めた。

 

金髪「……それ、マジかよ」

 

一拍

 

金髪「一回、至近距離で見たことあるが……あれと同じってことか?」

 

声に、わずかな引きが混じる。

 

赤髪は楽しそうに笑った。

 

赤髪「そうらしいぜ」

 

拳を握り、軽く鳴らす。

 

赤髪「これで俺もさ――あいつの討伐数、抜かせたりしてな~」

 

ニヤついた顔。

 

金髪「いや無理だろ」

 

金髪が即答する。

 

赤髪「……」

 

赤髪の男が少しだけ黙る。

 

そして拗ねたように言った。

 

赤髪「……言うぐらい、いいだろ。言うぐらい」

 

金髪は視線を逸らしたまま呟く。

 

金髪「いや……あれを超えるのは……人間じゃねぇ」

 

赤髪も同意するように小さく息を吐く。

 

赤髪「……だよな」

 

遠くを見るような目。

 

赤髪「あいつの動き明らかにやべぇしな……」

 

金髪は何も言わない。

 

ただ心の中で思う。

 

金髪(俺からしたら……お前も大概だと思うがな)

 

二人は同時にマルファスを見上げた。

 

視界に映る機体色。

 

黒鉄――主色。

灰銀――副色。

赤のライン――最小限のアクセント。

 

胸部装甲 増厚。

 

他のガンダムフレームと比較し明確に厚い。

 

理由は複数。

 

近接戦特化による致命部保護。

γナノラミネート弾使用時の二次被害対策。

衝撃吸収層。

粒子干渉緩和材。

多層装甲構造。

 

背部スラスター。

 

形状――

 

蝙蝠の翼に類似。

 

展開時:立体高機動。

 

収納時:影のように締まりコンパクトなシルエットになる。

 

赤髪の男が満足そうに言った。

 

赤髪「いやぁ……」

 

顎を上げる。

 

赤髪「自分の専用機ってのもあってさ」

 

赤髪「余計に――カッコよく見えるぜ!」

 

金髪が、苦笑混じりに返す。

 

金髪「……自慢か?」

 

一拍

 

金髪「腹立つぜ」

 

しばらくして赤髪の男がふと思い出したように口を開いた。

 

赤髪「そういやよ……」

 

金髪を見る。

 

赤髪「アスタロトの話、聞いたことあるか?」

 

金髪が一瞬だけ眉を上げた。

 

金髪「あぁ……あの赤いガンダムだろ」

 

少し間を置く。

 

金髪「γナノラミネートソード……だったか」

 

赤髪がニヤッとする。

 

赤髪「さすが。知ってんじゃねぇか」

 

金髪「知ってるも何も……」

 

金髪は肩をすくめる。

 

金髪「一回だけ資料で見た」

 

金髪「真紅の刀身にエイハブ粒子ぶち込んで刀そのものにγ反応起こすとかいう――」

 

鼻で笑う。

 

金髪「正気とは思えねぇ発想だ」

 

赤髪は楽しそうだ。

 

赤髪「でもよ」

 

マルファスに視線を戻す。

 

赤髪「理論上は最強クラスだろ?」

 

金髪「理論上はな」

 

金髪は即答する。

 

金髪「エイハブ粒子の圧縮が不安定すぎる」

 

金髪「今の技術じゃ成功例がほぼ無い」

 

一拍

 

金髪「だから一般採用は見送りになってたってわけだ」

 

赤髪が口笛を吹く。

 

赤髪「へぇ……」

 

赤髪「しかも使ってない時は打撃武器になるんだろ?」

 

赤髪「センスありすぎだろ」

 

金髪「笑えねぇよ」

 

金髪は苦い顔だ。

 

金髪「刀としても強力、ハンマーとしても強力」

 

金髪「敵にはしたくねぇMSだな」

 

赤髪はそこでふと真顔になる。

 

赤髪「……まてよ?」

 

低く言う。

 

赤髪「マルファスのγナノラミネート弾」

 

赤髪「――あれ」

 

金髪が嫌な予感を察したように黙る。

 

赤髪「製造できる場所限られてるんだろ?」

 

赤髪は続ける。

 

赤髪「専用施設――それともう一つ」

 

視線が鋭くなる。

 

赤髪「アスタロトから」

 

金髪がゆっくり息を吐いた。

 

金髪「……そうだ」

 

金髪「あの刀と同じ原理を使ってる」

 

金髪「だから同時運用すれば」

 

赤髪が言葉を奪う。

 

金髪「その場で弾を“作れる”」

 

沈黙

 

金髪が低い声で言った。

 

金髪「……鳥肌が立つな」

 

金髪「ナノラミネートアーマーを無視するガンダム二機だぞ」

 

金髪「戦場で――どこまで殺れると思ってる」

 

赤髪は静かに笑った。

 

赤髪「だよな」

 

マルファスを見上げる。

 

赤髪「狩り場が尽きるまで終わらねぇ」

 

金髪は冗談めかして言う。

 

金髪「そんなの実現したら……」

 

一瞬、言葉を探す。

 

金髪「戦争が先に壊れちまうかもな」

 

赤髪は肩をすくめた。

 

赤髪「それでもよ」

 

赤髪「終わるんなら早いほうがいいだろ?」

 

赤髪の男が続けるように言った。

 

赤髪「そういやさ……アスタロトのパイロット」

 

金髪が視線だけ向ける。

 

金髪「……あぁ?」

 

赤髪「月にいるらしいぜ」

 

さらっと。

 

金髪の眉がわずかに動く。

 

金髪「月、かよ……」

 

小さく息を吐く。

 

金髪「今、あそこ激戦区だろ」

 

赤髪は肩をすくめる。

 

赤髪「らしいな」

 

赤髪「MAもわんさか出てるし地形も大きく変わっちまったって話だ」

 

金髪は苦笑した。

 

金髪「まぁ……あの性能なら前線送りも当然か」

 

赤髪がニヤッとする。

 

赤髪「だよな」

 

赤髪「γナノラミネートソードだぜ?」

 

赤髪「安全圏で振るわせる武装じゃねぇ」

 

赤髪「むしろ――」

 

金髪が続ける。

 

赤髪「一番危ねぇ場所に放り込んで生き残るかどうかを見る」

 

赤髪「そんな扱いだろ」

 

赤髪は少し楽しそうだ。

 

赤髪「生き残ってるってことはさ」

 

一拍

 

赤髪「使いこなしてるってことだ」

 

金髪は視線を逸らしたまま言う。

 

金髪「……どんな奴だよ」

 

赤髪は、マルファスを見上げながら答えた。

 

赤髪「さぁな」

 

赤髪「少なくとも――」

 

赤髪「まともじゃねぇだろ」

 

金髪が乾いた笑いを漏らす。

 

金髪「……だろうな」

 

赤髪の男がマルファスを見上げたまま言った。

 

赤髪「いやぁ~……楽しみだな、次の出撃が!」

 

拳を鳴らし、笑う。

 

赤髪「こいつで――暴れ回ってやるぜ!」

 

金髪の男がすぐに噛みつく。

 

金髪「はっ!別に新型だろうが、なんだろうが――」

 

一歩、前に出る。

 

金髪「次は俺のほうが活躍してやんよ!」

 

赤髪が、横目で見る。

 

赤髪「お前それ――いつも言ってねぇか?」

 

金髪「うるせぇ!」

 

金髪が即座に返す。

 

金髪「次の出撃、討伐数が少ないほうが酒奢れよ!」

 

赤髪は肩をすくめる。

 

赤髪「いいぜ?」

 

にやりと笑う。

 

赤髪「じゃあ――無駄遣いすんなよ?」

 

金髪「……は?」

 

金髪の男が眉をひそめる。

 

金髪「どういう意味だ!」

 

二人の声が重なる。

 

笑い声

言い争い

軽口

 

音声入力が乱れ始める。

 

ノイズレベル上昇

 

映像が僅かに揺れる。

 

光が瞬断する。

 

音声データ断続。

 

「――酒――」

「――だから――」

「――奢――」

 

視界が跳ねる。

 

座標が書き換えられる。

 

《ログ切替》

 

――戦闘記録開始――

 

視界 赤。

 

警報最大。

 

敵影捕捉。

 

識別:MA、プルーマ

 

対象:プルーマ

 

敵影、複数。

 

脅威度、中。

 

腕部100mmライフル、発砲。

 

一発

二発

三発

 

《音声ログ/搭乗者》「くらえっ!」

 

命中精度、不要

 

目的は破壊ではない。

 

圧力をかけ続けること。

 

プルーマが散開する。

 

だが――

 

“動かされている”のは敵のほうだ。

 

距離を詰める。

 

《音声ログ/搭乗者》「逃げんなよ!」

 

バスターリッパー起動。

 

回転音が戦場に響く。

 

敵の攻撃。

 

刃で受ける。

 

《音声ログ/搭乗者》「当たるかよ!」

 

弾き、削り、そのまま振り抜く。

 

一撃

 

装甲が崩れる。

 

《音声ログ/搭乗者》「よしっ!」

 

当たれば致命。

 

逃走個体、確認。

 

腰部、アンカークロー射出。

 

《音声ログ/搭乗者》「逃がすか!」

 

拘束

 

引き寄せない。

 

逃がさない。

 

沈黙

 

プルーマ群殲滅、完了。

 

処理時間、短。

 

――ログ更新

 

対象:大型機動兵器(MA)

 

脅威度、極高。

 

想定:対MA専用殺害戦法

 

回避

回避

回避

 

直線的な接近は、存在しない。

 

《音声ログ/搭乗者》「ははっ……いい動きだ!」

 

背部スラスター展開。

 

蝙蝠の翼が、影を切る。

 

高機動で翻弄。

 

100mmライフル発砲。

 

狙いは破壊ではない。

 

視界

姿勢

攻撃軌道

 

《音声ログ/搭乗者》「ほら、こっち見ろ!」

 

“考える余裕”を奪う。

 

距離、急接近。

 

アンカークロー射出。

 

《音声ログ/搭乗者》「捕まえた!」

 

命中

固定

 

マルファスはMAに貼り付く。

 

引き離されない。

逃げられない。

 

《音声ログ/搭乗者》「もう終わりだ!」

 

至近距離

 

γナノラミネート弾装填。

 

警告、無視

 

《音声ログ/搭乗者》「一発で沈めてやる!」

 

発射

 

反応

 

装甲内部から防御構造が崩壊。

 

爆発ではない。

 

“死”が内部から広がる。

 

それでもまだ動く。

 

《音声ログ/搭乗者》「しぶといな……!」

 

バスターリッパーを振り下ろす。

 

削る

 

砕く

 

内部を引き裂く

 

《音声ログ/搭乗者》「砕けろッ!」

 

――再度γナノラミネートアーマー弾を装填。

 

完全沈黙を確認。

 

赤髪の男の声がログに記録される。

 

《音声ログ/搭乗者》「……すげぇ……」

 

一拍

 

《音声ログ/搭乗者》「これが――ガンダムフレーム……!!」

 

その瞬間

 

映像、乱れる。

 

音声、歪曲。

 

《警告》

《エイハブ粒子干渉、急上昇》

《センサー同期率、低下》

 

ノイズ

 

視界が白く焼ける。

 

音声が途切れ、重なり――

 

《ログ破損》

 

 

 

静寂

 

格納庫内

 

戦闘は終わっている

 

マルファスが戻されている

 

装甲各部 中破

胸部装甲 一部破損

バスターリッパー 停止状態

 

作業灯の白い光が黒鉄と灰銀の装甲を照らす。

 

赤いラインだけがやけに鮮明だった。

 

周囲に人影は少ない。

 

整備兵が距離を保って動いている。

 

誰も積極的に近づこうとはしない。

 

コンソールに戦闘結果が表示される。

 

《出撃時間:長》

《撃破数:規定値超過》

《γナノラミネート弾:使用》

《搭乗者、生存》

 

マルファスは何も語らない。

 

戦場で起きたことを、ただすべて記録している。

 

先ほどまであった声。

 

興奮

 

笑い

 

それらはもうログには存在しない。

 

格納庫に残るのは冷え始めた機体と戦闘の“結果”だけ。

 

この記録は後にこう分類される。

 

――***・初期戦闘ログ

――ガンダム・マルファス

 

油圧音

 

コックピット開放

 

赤髪の男がマルファスから降りる。

 

床に着地

 

すぐ近くで待っていた金髪の男と――拳を合わせる。

 

軽い音

 

金髪が笑いながら言った。

 

金髪「すげぇな、新型!」

 

肩を叩く。

 

金髪「まさに悪魔的な活躍だったぜ!」

 

赤髪はドリンクの容器を一口あおる。

 

そしてジト目で金髪を見る。

 

赤髪「……そんなこと言ってもな」

 

少し間を置いて。

 

赤髪「おごりは確実だかんな~」

 

金髪「くそっ!」

 

金髪が悔しそうに声を上げる。

 

だがすぐに表情が変わる。

 

視線がマルファスへ戻る。

 

金髪「……でもさ」

 

少し真面目な声。

 

金髪「ほんとにすげぇんだな、新型って」

 

金髪は自分の手を見下ろす。

 

金髪「俺のロディなんか……マジで比べ物にならねぇわ」

 

赤髪は黙ってマルファスを見上げる。

 

しばらくしてぽつりと呟いた。

 

赤髪「……マルファス」

 

名前を確かめるように。

 

赤髪「こいつとならさ」

 

視線はまだ上。

 

赤髪「MAも……この戦争も……終わらせられる」

 

一瞬笑う。

 

赤髪「……そんな気がする」

 

金髪が静かに頷く。

 

金髪「ああ……俺も、そう思う」

 

二人は並んでマルファスを見上げている。

 

黒鉄と灰銀。

 

赤いライン。

 

動かない巨体。

 

赤髪がふと思い出したように言った。

 

赤髪「そういや……なんだけどよ」

 

金髪が、首を傾げる。

 

金髪「ん?」

 

赤髪が続けようとしたその瞬間。

 

映像、微細な揺れ。

 

赤髪「こいつのリミッターを解除したときさ――」

 

ノイズ混入。

 

音声、歪曲。

 

金髪の声が途中で割り込む。

 

金髪「……でもそんな仕様――」

 

ノイズ、急激に増大。

 

映像が引き延ばされる。

 

《警告》

《記録干渉レベル上昇》

《センサー同期率、低下》

 

音声、断裂。

 

「――リミ――」

「――それは――」

 

《ログ破損》

《カメラログ強制終了》

 

記録はここで途切れている。

 

それ以降の会話は――

 

残っていない。

 

 

画面が暗転する。

 

フリーゲルの格納庫に静かな機械音だけが戻ってきた。

 

扉が開きエヴォル、ナルド、セドリックの三人が入ってくる。

 

先頭はエヴォル。

 

いつも通り、軽い足取りだ。

 

セドリックは真っ先にマルファスの足元へ向かった。

 

コンテナの上。

 

置き去りにされたままのタブレットを手に取る。

 

エヴォル「おいおい~」

 

後ろからエヴォルの声。

 

エヴォル「いくら飯が楽しみだったからってよ、自分の分身みたいなもん置いてくなよ~」

 

からかうように笑う。

 

ナルド「いや、絶対お前のせいだろ」

 

ナルドが即座に突っ込む。

 

二人のやり取りを横目にセドリックは小さく笑った。

 

……が

 

すぐにその表情が固まる。

 

セドリック「……?」

 

タブレットの画面を見つめる。

 

眉がわずかに寄る。

 

二人「どうしたセド?」

 

エヴォルとナルドが同時に近づく。

 

画面いっぱいに広がっていたのは――

 

意味を成さない文字の羅列。

 

文字化け

 

断片

 

重なり合う記号

 

ナルド「うげぇ……」

 

ナルドが顔をしかめる。

 

ナルド「なんかキモっ!」

 

エヴォル「すっげぇな、これ」

 

エヴォルが感心したように言う。

 

エヴォル「何のデータなんだ?」

 

セドリックはしばらく黙って画面を見つめてから答えた。

 

セドリック「……わからん」

 

一拍

 

セドリック「あの弾と同じだ」

 

視線を上げる。

 

セドリック「今の技術じゃ解読できないものの一つだろうな」

 

エヴォル「ったく……」

 

エヴォルは肩をすくめマルファスの足元へ歩く。

 

そして軽く――ほんの軽く蹴った。

 

エヴォル「ちったぁ教えてくれてもいいじゃないか、マルファス~?」

 

セドリック「それで答えたら、苦労しない」

 

セドリックが即座に返す。

 

ナルド「そりゃそうだな!」

 

ナルドが笑う。

 

ナルド「こんな奴が乗り手じゃ、教える気もなくすわな!」

 

エヴォル「んだとぉ!?」

 

エヴォルが振り返りナルドに詰め寄る。

 

エヴォル「てめぇ今、何つった!」

 

ナルド「聞こえたまんまだよ!」

 

エヴォル「もう一遍言ってみろや!」

 

ぎゃーぎゃーと騒ぎ始める二人。

 

格納庫にいつもの喧噪が戻る。

 

セドリックはその様子を見て小さく息を吐いた。

 

セドリック「……やれやれ」

 

二人の間に入り軽く手を上げる。

 

セドリック「落ち着け。ここでやるな」

 

その光景を――

 

マルファスのツインアイが捉えている。

 

動かないまま。

 

黙ったまま。

 

そしてその瞬間。

 

セドリックのタブレットが小さく振動した。

 

《ログ更新》

 

セドリックがふと画面を見る。

 

そこには新しい一行。

 

《観測対象:船搭乗員》

《行動:非戦闘》

《脅威度:なし》

 

セドリックはその文字を見て、一瞬だけ首を傾げる。

 

だが深くは考えなかった。

 

騒ぐ二人の声

 

仲裁の声

 

人の気配

 

格納庫は今日も平和だ。

 

だがマルファスはすべてを記録している。

 

過去も

 

今も

 

そして――

 

まだ語られていない“先”も。




やっと紹介ができる!!マルファスの設定はこの小説を投稿する前から考えていたので感慨深いものがあります。当初はいつもみたいに設定を書いていこうと思ったのですがそれじゃつまんないなと思ったのでデータログによって厄祭戦の一部と共に明かされるという流れにしました。だってロマンあるじゃないですか。厄祭戦って。マルファスはなるべく本編に被りがないようにしたかったので「外側からでなく内部から破壊していくガンダム」をコンセプトに作っていきました。内部から破壊するためにナノラミネートアーマーを無効化するための武器。と内部に一番ダメージを与える武器。この二点からγナノラミネート弾とバスターソードの刃にチェーンソーがついた武器バスターリッパーが誕生しました。γナノラミネート弾の威力はMSや船に対する破壊力のみダインスレイブと同等と考えてください。地形やナノラミネートアーマーを持っていない相手に対する破壊力はダインスレイブには圧倒的に劣ります。また弾速に関してもダインスレイブには圧倒的に劣ります。あくまでMSなどに対する威力のみダインスレイブ同等と言った感じです。それらをMAに使うための一番の型は強襲型しかないなと思ったのでマルファスは強襲戦特化のガンダムとなりました。この小説では全然強襲っぽさは出していませんが正規運用されないってのも鉄血らしくないですか?見た目は武骨な兵器しかし得体のしれない悪魔感を出したく黒主体、副色に灰銀で赤黒いラインが入っている。背中は蝙蝠の翼を模したスラスターがあるという感じにしました。マルファスにはまだ明かされていない設定があるのですがそれはまた先のお話で……
それでは次回もお楽しみに!

一応今までと同じ感じの書いておきます。

MS紹介03 ASW-G-39 ガンダム・マルファス

形式番号:ASW-G-39

■ 基本情報

フレーム:ガンダム・フレーム

コンセプト:高機動 強襲近接戦特化機

所属:現行時代=ウィロウ

基本搭乗者:エヴォル・ヴァレンティ

設計コンセプト:「逃がさず、守りを否定し、確実に殺す」

武装 / 装備
腕部100mmライフル ×2
前腕下部固定マウント装備
両腕に固定装備
通常弾倉+特殊弾倉スロット内蔵
構造むき出しの工業兵装デザイン
反動制御は前腕と直結することで補助
回転マウント機構
マウント基部が回転可動

役割:バスターリッパー可動干渉防止
死角射撃柔軟化
背後射撃を素早く行える
反動吸収ダンパー&固定ロック内蔵

γナノラミネート弾(特殊弾)
弾内に圧縮エイハブ粒子封入
弾丸自体がγナノラミネート反応を発生
接触した装甲のナノラミネート構造を破壊
MA・MS・戦艦装甲にも特効
ただし――
粒子圧縮が極端に不安定
暴走 → 自爆リスク
量産が難しく厄祭戦当時でも成功例は極少
現在では完全ロストテクノロジー
“最強だが使うだけで命を賭ける禁忌兵器”

破砕機複合大剣兵器《バスターリッパー》
巨大チェーンソー大剣
装甲破砕+内部切断を同時実行
“斬る剣”ではなく
“粉砕して殺す処刑具”
防御にも使用可能
チェーンソー機構で盾をも削り落とす

アンカークロー ×2(腰部)
伸縮ケーブル+アンカー
用途: 拘束
移動補助
機体固定
武装封殺
対艦取り付き
「逃がさないための牙」

外観 / 機体構造
カラーリング
黒鉄(メイン)
灰銀(サブ)
赤ライン(アクセント)

胸部増厚装甲
他ガンダムより明確に厚い。
理由:近接戦特化の致命部保護
γ弾の二次被害対策
衝撃吸収層
粒子干渉緩和材
多層装甲

背部スラスター
蝙蝠の翼のような形状
展開→立体高機動
収納→影のように締まる
不気味で悪魔的なシルエット

戦闘スタイル
現行時代(小説本編)
腕部100mmライフルで牽制
常時圧力をかけ続ける
相手を“動かされる側”に追い込む

バスターリッパーで防御&近接主攻
防御と破壊を兼ねる主兵装
当たれば致命
剣の可動を邪魔しない回転マウントと連携

逃走阻止・制圧 ― アンカークロー
逃げる敵を捕獲
戦艦に取り付き
逃がさない=勝利の確定させる

厄祭戦時(本来の運用)
対MA専用殺害戦法
高機動で翻弄
100mmライフルで牽制
アンカークローでMAへ固定取り付き
至近距離でγナノラミネート弾撃ち込み → 防御崩壊

まだ動く場合
バスターリッパーで破壊
もしくは再度γナノラミネート弾を発射
完全沈黙まで殺し切る
「貼り付いて、削り、確実に殺すハンター」

機体印象
狂暴
理不尽
だが納得できる合理性を持つ悪魔兵器

弱点
継戦能力が低い
整備性が悪い
γナノラミネート弾が不安定な兵器である
技量依存度が異常に高い

総評
γナノラミネート弾という禁忌の理不尽を携え、胸に命の防壁を抱え、背に悪魔の翼を広げる――
それが黒色の悪魔 ASW-G-39 ガンダム・マルファスであった。
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