機動戦士ガンダム鉄血のオルフェンズ外伝 鉄屑の彼岸 作:ミニトレール
それでは第五話をお楽しみください!
暗い格納庫に籠った空気を裂くように、鋭い警告音が鳴った。
――ピピッ、ピピピッ!!
マルファスのレーダーが、船の外から接近するスパロディ五機の反応を捉える。
セドリック「……エヴォル。敵、接近中だ。五機……全部スパロディだ。」
ナルド「クソ……あいつら、俺たちを襲った海賊だ……!」
セドリック「こっちは格納庫の中だ……!まだ“姿”はバレちゃいねぇ……!でも三機分の反応は敵にも見られてる!」
ナルド「ヤベぇ……ここに来る気かよ……!」
外壁の向こう側に散開する影。
ショットガン持ち
ハルバード持ちの重装型
二刀
大型シールド
狙撃機
ショットガン「……あの海賊ども。まだ生き残ってやがったかよ」
二刀「いいじゃねぇか。今度はちゃんと“潰す側”だろ?」
重装「ははっ。“助けて”って言った順にな。録音でもして売るか?」
狙撃「抵抗?構わねぇよ。逃げた背中撃つ方が楽だ」
盾持ち「ビビらせてからだ。壊す前が一番うめぇんだよなァ」
通信越しに流れ込む、笑い声と下劣な声。
それを聞いた瞬間――
ナルドが歯を食いしばった。
ナルド「……クソッ……ッ!あいつら……俺たちをなんだと思ってやがる……!」
セドリックはすぐに通信を切る。
一瞬だけ、目を伏せた。
セドリック「……聞く価値もない。あれは交渉相手じゃない」
その声は冷静だった。
だが、操縦席の手袋が軋むほど強く握られている。
エヴォルは――
何も言わなかった。
ただ、操縦桿に手をかけ静かに息を吸う。
一秒。
エヴォル「――いくぞセド。遅れんなよ」
短い。
命令に近い一言。
セドリック「……了解。援護は任せろ」
ナルド「っ……!言ってる場合かよ、もう出るぞ!!」
――ガギン!!
エヴォルのガンダム・マルファスが動く。
スラスターが咆哮し、固定ラックを強引に引き剥がす。
金属が悲鳴を上げ、格納庫のハッチが半壊したまま開く。
エヴォル「それじゃあ――先行くぜ」
一気に、加速。
――流星のような光を残し、宇宙へ飛び出した。
セドリック「早い………!!!…クソッ!追いついてみせる!!」
セドリックは歯を食いしばり、自機スパロディへ飛び乗り、船体を押し出すように両脚スラスターを最大噴射する。
エネルギー警告灯が次々に赤へ変わり損傷したスラスターが悲鳴を上げる。
セドリック「追いつけ……追いつけ!!」
傷だらけのスパロディがマルファスの後を追い、廃船の外へ飛び出していく。
損傷スラスターが煙を吐きながら、必死にマルファスを追いかける。
エヴォル「お前ら!聞こえるか!」
セドリック「ああ……!お前の尻を追っかけてるところだ!!」
ナルド「大丈夫だ!聞こえてる!」
二人が返事をする。
廃船の船殻が弾け、二機のMSは眩い星海へと放り出された。
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――幽霊船外縁。
破壊されたハッチの隙間から、黒い機影が滑り出る。
マルファス。
装甲に走る傷も構わずスラスターが一斉に噴射される。
エヴォル「――クッ!」
船体を蹴るように加速。
機体は一気に宙域へ躍り出た。
その直後――
半壊した外壁を押し抜くようにセドリックのスパロディが続く。
セドリック「……クソッ、無茶しやがって……!」
二機が外へ出た瞬間、レーダーに赤い反応が弾けた。
――敵影、複数。
散開するスパロディ編隊。
狙撃《……待て。反応が二つ……?》
二刀《もう一機いるだろ。反応は三機だったはずだ》
盾持ち《囮だな。後ろか、下だ。気を抜くんじゃねぇぞ》
エヴォル「……勝手に警戒してろ」
通信が割り込む。
敵ショットガン《来やがったァ!!真正面とは度胸あるじゃねぇか!!》
エヴォル「……お前らなんざまとめて来いや!」
セドリック「正面ショットガン!続いて右側、重装型接近中!!牽制する!!」
ショートカービンの火線が飛び、敵の重装型が体勢を崩す。
正面のショットガン持ちのスパロディが突っ込む。
敵ショットガンが距離を詰め、撃つより早くトリガーに指がかかった瞬間――
エヴォル「――ッらああ!!」
エヴォルが急接近、懐に潜り込みバスターリッパーを振り下ろす。
だが――
ガゴォォン!!!
敵スパロディの左腕シールドが、火花を散らして受け止めた。
バスターリッパー起動。
刃が高速回転し、金属を噛み砕く音が宇宙に震える。
ギギギギギギギィィィィン!!
ショットガン《なッ……!? どうなってやがる……!?》
バスターリッパーは盾も左腕も関係なく、まるで“削り込む”ようにコックピットへ到達。
ショットガン《ぐぎああああああッッ!!?》
ドォン!!!
敵機が内部から爆ぜた。
セドリック「す……すげぇ……!エヴォル……本当に……!」
だが敵は慌てない。
狙撃《複数から囲め!!一機ずつ殺られるな!!》
残る四機が一斉に突撃してきた。
エヴォル「来いよ……!」
重装《死ねやぁぁぁ!!!》
盾持ち《援護に入るッ!!そいつを止めろ!!》
セドリック「エヴォル!右の重装が来る!!」
セドリック「やらせねぇよ!!」
セドリックは回り込み、ショートカービンで牽制射撃。
重装《チッ!宇宙ねずみが!!》
敵の重装スパロディはエヴォルからセドリックに標的を変えハルバードを構え直し突進する。
セドリック「そうだ……こっちに来い……!」
陽動のためセドリック機は重装を引き連れ船の後方部壁際に移動する。
重装《追い詰めたぞ……終わりだぁ!》
セドリック機に目掛けハルバードを振り倒す。
セドリック「バカが!追い詰められたのはお前だよ!」
スラスターを急稼働し紙一重でかわす。
重装《クッ!!》
重装型スパロディは盾を構える。
セドリックの腕が動きチェーンアレイが唸りを上げて跳ね上がった。
セドリック「うおおおおおおお!!!!」
――ガシャアアアアアン!!!
鉄球が盾を歪ませ、鎖が蛇のように敵の首部フレームへ巻き付く。
重装《う――!? クソッ!離れ――》
セドリック「……これで堕ちろッ!!」
全出力で引き千切り――チェーンアレイの鉄球がコックピット部を真上から叩きつけられる。
――バギィッ……!!
内部フレームが破砕し、コックピットを押しつぶす。
重装《あッ!!》
重装スパロディが沈黙した。
セドリック「……撃破ッ!!」
エヴォル「助かった、セド!!」
セドリック「まだ三機いるぞ!!油断すんな!!」
二刀《死ねやガキィ!!》
盾持ち《前塞ぐ!!押さえ込め!!》
狙撃《撃ち抜く……!!》
エヴォル「ちっ……!!」
セドリック「エヴォル、囲まれ――!」
エヴォル「わかってんだよ!!」
マルファスが急制動――
だが盾機が右腕をがっちり掴む。
盾持ち《捕まえたァ!!逃がさねぇぞォ!!》
二刀が一直線にマルファスへ迫る。
エヴォル「くそッ――!」
セドリック「エヴォル!!援護に――!」
スラスター点火。
スパロディのスラスターが、まるで悲鳴のように**バチバチッ!**と火花を散らし動きが止まる。
セドリック「頼む……頼むから……ッ!!いま止まるなよ……ッ!!」
だが――
――ボフッ!!
――ボフボフッ……ッパチン!!
推進剤噴出口が黒煙を吐き、内部シリンダーが**ガギンッ!!**と折れ込む音がコックピット内に響く。
セドリック「ッ!?やめろ!?折れるな!!まだいける……まだ……ッ!!」
機体はわずかに揺れるだけで前へ進まない。
計器に《THRUSTER FAILURE》《右脚制御不能》などが一斉に点滅し、赤い警告灯がコックピット内を染めた。
セドリック「ッあああああッ!!ふざけんなッ!!ここで止まるなッ!!!」
ハンドルを叩き、スロットルを限界まで押し込む。
それでも機体は――“微動だに”しない。
セドリック「エヴォルが……!アイツが殺される!!動け……ッ動けよォォォォォッッ!!!!」
拳が震え、歯を食いしばりすぎて唇が切れる。
だが、破損したスラスターは無慈悲な沈黙を返すだけ。
セドリック「お願いだ……!頼むから……一瞬でいい……ほんの一瞬でいいから……!!」
必死の懇願は空しく、推進系統は完全に沈黙した。
その間にも――
盾持ち《動くんじゃねぇよ黒色ぉ!!》
別方向から二刀スパロディがエヴォルの左腕を捕らえた。
二刀《両腕押さえた! トドメ刺せッ!!》
マルファスのコックピットを真正面にとらえ、狙撃スパロディが距離を詰めてくる。
狙撃《──確実に撃ち抜く!!》
エヴォル(……やべぇ……このまま腕を押さえられたまま撃たれたら……)
背中が冷たくなる。
喉が震える。
心臓が少しだけ変なリズムを刻む。
エヴォル(終わる……ここで……?こんな、名前も知らねぇ雑魚どもに……?マルファスを手に入れて……命懸けで繋いで……それが全部、ここで台無し……?)
瞬間、胸の奥が燃えるように熱くなった。
エヴォル(……ふざけんな……!)
歯を食いしばり、力任せに腕を振ろうとするが――
ギッ……ギギッ……!
敵二機の拘束がきつく、びくともしない。
狙撃が銃身を向ける。
狙撃《終わりだ、“黒いMS”!──》
エヴォルの脳に、マルファスの“無機質な圧”が流れ込む。
まるでこう言っているような――
『終わらないよな?』
エヴォル(……そうだよな……まだ……折れねぇよな……!俺らは……ここで終われねぇんだよ!!)
そして叫ぶ。
エヴォル「――こんな所じゃ終われねぇ!!!だろ? お前らァ!!!」
その叫びが通信越しに響く――直後、セドリックが吠える。
セドリック「……ッ!!あたりまえだぁッ!!」
セドリック「いまっ!!いましかねぇッ!!!」
セドリック「――ナルドォォォ!!!!」
その瞬間、廃船内部の闇を突き破るように、強烈なスラスター音が轟いた。
ナルド「うおおおおおおおおおッ!!!」
ナルドの頭の中で、作戦会議の記憶が甦る。
◆回想・格納庫
薄暗い空気の中、エヴォルがマルファスの足元に立ち、静かに言った。
エヴォル「まず、俺がマルファスで正面から突っ込む。敵を全部引きつける。」
セドリック「正面……!?無謀すぎ――」
エヴォル「マルファスならできる。……いや、マルファス“がやりたがってる”。」
──その言葉に呼応するように、黒いMSのツインアイが不気味に明滅した。……ように見えた。
ナルド「……悪魔かよ……」
エヴォルの声が続く。
エヴォル「セド、お前は援護。俺の後ろで俺に迫る敵を堕とせ。」
セドリック「了解だ。ショートカービンでも……牽制くらいはできる。」
エヴォルはゆっくりとナルドの方へ向き直る。
エヴォル「そして――ナルド。」
ナルド「お、俺か?」
エヴォル「お前は……“切り札”だ。」
ナルド「……は?」
エヴォル「俺のポンコツ、まだ残ってるよな。」
エヴォルは横たわった自分のスパロディを指さす。
エヴォル「脚も腕も飛んでるが、スラスターの燃料はまだ残ってる。」
ナルド「おいまさか……!」
セドリック「エヴォル……それを使う気か……?」
エヴォル「使える物は何でも使う。だろ?」
エヴォル「敵が俺に集中して、俺がピンチになる瞬間が必ず来る。セドも助けに来れねぇかも知れない。そのとき――」
ニヤリと笑う。
エヴォル「“敵の真ん中にぶん投げて爆散させる”んだよ。」
ナルド「うおおおおおおおおお!!!」
損傷だらけのナルド機がスパロディの残骸――“エヴォルの旧機体”を担ぎ、全スラスターを点火して敵陣へ突っ込む。
敵海賊たち《な、なんだ!?もう一機――!?》
ナルド「エヴォルの相棒だ!!せいぜい派手に散れやァ!!死ぬんじゃねぇぞエヴォルぅぅぅぅ!!!!」
投げつけられたエヴォルのスパロディの燃料タンクが三機のMSにぶつかることで亀裂が入り――
敵海賊たち《……は?》《なに飛んでき――》《お前ら避けろ――!!》
――ズガァァァァン!!!
凄まじい爆風が敵の陣形を一気に崩した。
衝撃で三機が吹き飛び、残りも姿勢を崩す。
エヴォル「……ナルド……お前……!!」
ナルド「勘違いすんなよ!!俺だけ活躍無しで終わるってのはごめんってだけだ!!」
セドリック「後は……任せたぞ……エヴォル……!」
ナルド「ぶっ殺してやれェ!!あいつら!!」
エヴォル「……ああ!行くぞ、マルファス!」
背部スラスターが黒い尾を引き、悪魔のような機影を描いて爆炎を突き抜ける。
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二刀スパロディのパイロットは、信じられないものを見るように震えた。
爆炎が宇宙にゆっくり散り、赤い光が影となって揺れる。
その中心に――“黒い影”だけが立っていた。
二刀《……おい……嘘だろ……?今の至近爆発……コックピット、かすってんだぞ……!?》
破片がふわりと漂い、その隙間から、マルファスのツインアイが淡く――“確かに”光っている。
まるで、――爆炎の向こうから“こっち”を見ている。
盾持ち《おいおい……さすがに死んだと思っ……!?なんで立ってんだよ……なんで……!》
喉がつぶれそうなほど乾く。
ハンドルを握る手だけが、震えながらも離れない。
二刀《……落ち着け……怯むな……!どんなMSでも、直撃喰らえば内部フレームは歪む……!絶対ガタついてる……絶対……!次の一瞬……叩けばいい……叩ける……はずだ……!!》
息が荒い。
視界の端では、マルファスがゆっくりと頭部を動かし――
“自分ひとり”を正確に見据えていた。
まるで、獲物を固定した狩人の目。
二刀《……来いよ……来いよ来いよ来いよ……!まだやれる……やれる……ッ!!》
二刀スパロディは震えながらも、自分に言い聞かせるように刃を構えた。
二刀《……やれる……まだ俺は……!この黒いのも……“ただのMS”だ……!!》
二刀《来いよ!! 来いって言ってんだろ黒色ォ!!この距離なら……俺の方が早い……!!》
二刀スパロディは、震えながらも次の一撃へ備える。
だが――その“覚悟”など、黒い悪魔には些細なことだった。
エヴォル「じゃあお望み通り……」
バスターリッパーのチェーンが、悪魔の笑い声のように高速回転を始める。
ギャギャギャギャギャギャ!!!!
エヴォル「いってやるよ!」
二刀「うおおおおおお!!!!!」
二刀は己を鼓舞し、一気に踏み込む。
加速。
姿勢制御。
両腕の二振りの刀が、正面からマルファスの胸部に突き立つはずだった。
だが――
マルファスは避けなかった。
そのまま受け殺すつもりのように、真正面から迫る刃を見つめていた。
二刀《……ッ!? な、なんで動かねぇコイツ!!?》
次の瞬間、
ガキィンッ!!!
マルファスの左手が、刀を “掴んだ”。
金属が悲鳴を上げる。
ギギギギギギ……ッ!!
二刀《は……?なん……で掴めるんだよ……!? なんで……!?》
その手は、押し返すでもなく、防ぐでもない。
ただ“握っているだけ”なのに。
刀の刃が逆に曲がり始める。
エヴォル「なんで?知らねぇよ。こいつは最初から……“そういう造り”なんだよ!」
その言葉と同時、
ボギィッッ!!!
二刀スパロディの右腕が、刀ごとへし折られた。
そして反対の右腕。
バスターリッパーが唸りを上げて振り下ろされる。
ギャリャリャリャリャリャリャリャ!!!!
切断ではない。
粉砕。
装甲が“削り込まれ”、内部フレームが“えぐられ”、
コックピットブロックが“分解”されていく。
二刀《やめ――あ……やめっ……いやだああああああああああ!!》
最後にチェーンソーの噛み込みがコックピットにモニターを潰し、
ボンッ!!!
二刀スパロディは内部から破裂するように爆発した。
爆炎の向こうで、マルファスは再び――ただこちらを見ている。
揺らぎひとつない光。
そこには怒りも喜びもない。
“ただの狩人”の、退屈そうな視線。
まるでこう言っている。
――次はどっちだ
残るは狙撃と盾の二機。
二刀スパロディが爆炎となって散った瞬間――
ただ一機、逃げようと背を向けた影があった。
狙撃スパロディだ。
狙撃《ダメだ……勝てねぇ……!距離を取る……!距離さえ取れば……!》
震えた声。
その足は完全に“逃走”の速度。
しかし――
それは、マルファスにとっては**「背中を向けた獲物」**というだけだった。
エヴォル「……逃げるのが……遅かったなぁ!」
マルファスのサイドスカートがわずかに傾く。
カチリ。
アンカークローが射出位置に固定され、
次の瞬間――
ズバァッ!!!!
ワイヤーが光跡を引き、狙撃スパロディの背部スラスターを貫いた。
狙撃《ッ!? ――がっ!?い……痛ッて……!な、なにが――!?》
ワイヤーが背中を引き千切る勢いで巻き戻る。
狙撃《や、やめろ……やめ……っ!!》
その悲鳴ごと、敵機は廃船外壁へ叩きつけられた。
ゴシャアアッ!!!
船体パネルがえぐれ、狙撃機のフレームが半壊したまま、固定される。
マルファスはゆっくりと向かう。
急ぐ必要がない。
逃げられる可能性もない。
ただ“確実に殺す距離”へ行くだけ。
狙撃《く、来るな……来るなぁ……ッ!!俺はもう戦えねぇ……!降伏……するから……!》
エヴォル「知るかよ」
バスターリッパーがゆっくりと持ち上がる。
次の瞬間――
……キィ……キキ……キ、キ……
その回転音は明らかに機械のはずなのにどこか 人を嘲るようなリズム で鳴りはじめた。
狙撃《や、やめ……!その音……なんだよ……!?》
キキキ……キィィ……それは笑っているようだった。
“助けを乞う声を楽しんでいる”かのように。
――ガガガガガガッ!!!
コックピットは“抉られ”、悲鳴は途中で潰れた。
金属片が散り、狙撃スパロディは沈黙した。
そのとき――
残った最後の一機、盾持ちが震えた。
盾持ち《バ、バケモンだ……!なんだよアイツ……!!なんで……なんで全部真正面から……!!》
盾を構えて退いた。
距離を取るためでも、守るためでもない。
――ただの“恐怖反応”。
だが、マルファスは止まらない。
ゆっくりと。
一定の速度で。
まるで――**“残りの作業を淡々と処理する”**ように。
盾持ち《くるな……くるな……くるなよぉ!!この盾なら……!この大盾なら守れる……!!》
震える声だけが虚空に残る。
エヴォル「終わりだ」
一歩。
二歩。
そして――
バスターリッパーが盾の中心に触れた。
次の瞬間。
削り音。
それだけだった。
金属が“割れる”のではなく、削り粉になって飛び散っていく。
盾持ち《あ……あ……!?嘘……だろ……!?なんで……!盾が……砕け……ッ!?》
バスターリッパーは盾を“紙のように吸い込みながら”前進し――
左腕部、そしてコックピットへ到達した。
盾持ち《いや、いやだ、やめ――》
ズドンッ!!!
爆煙だけが残った。
宇宙に散った破片の中で、黒い機体だけが静かに立つ。
ツインアイの淡い光が揺れた。
退屈そうに。
飽きた狩人のように。
まるでこう言っている。
――終わりか。……次は?
爆散した盾機の残骸が、静かに宇宙へ散っていく。
破片が消え、炎も収まり――
戦場は“音だけが死んだように”静かだった。
その沈黙の中で、
――ハァ……ハァッ……ハァ……
エヴォルの荒い呼吸だけが、コックピットにこだました。
エヴォル「……ッ……はぁ……終わった、よな……?」
声は震えていたが、さっきまで漂っていた“獣じみた気配”は徐々に薄れていた。
いつものエヴォルに戻りつつある――そんな印象だった。
廃船の外へ遅れて到着したセドリックのスパロディが、ボロボロの体を引きずりながら停止する。
セドリック「エヴォル……ッ!!無事……無事か……!」
その声には安堵があった。
だが同時に、胸の奥にどうしようもない違和感が刺さってくる。
セドリック(……なんだ……さっきの戦い方……いつものエヴォルじゃねぇ……でも……“別の誰か”でもない……ただ……どこか……おかしかった……)
スラスター切れで倒れ込むように到着したナルドも、息を荒げて叫ぶ。
ナルド「っは……!エヴォル!!……生きて……た……!」
近づいた瞬間、マルファスのツインアイがふっと明滅する。
無機質な緑が、一瞬だけナルドを“観測”する。
ナルド「……ッ……!」
背筋に氷の指を這わせたような感覚が走る。
ナルド「……なぁ……エヴォル……お前……さっき……なんか……いつもと違ってたぞ……気のせいかもしれねぇけど……」
エヴォル「……ん? そうか?まあ……ちょっとムキになってたかもな……悪ぃ」
軽く笑う。
その笑顔は確かに“いつものエヴォル”だった。
――だが、それでもセドリックの胸の奥には引っかかる。
セドリック「エヴォル……その……戦ってる時……なんか……集中しすぎてたというか……反応が……速すぎた気がするんだよ」
エヴォル「……そうか? 自分じゃよくわかんねぇな……焦ってただけだと思うけど……」
セドリックは一度口を閉じる。
セドリック(……別に“間違っている”わけじゃねぇ……でも……ほんの一瞬だけ……エヴォルがどこか遠くにいたように感じた……説明できねぇ……ただの気のせいかもしれねぇが……)
ナルドも呟く。
ナルド「……なんかよ……エヴォルが戦ってる間……俺たちの声が、届いてるんだか届いてないんだか……微妙で……」
エヴォル「ははっ、悪い悪い。必死だったんだよ。ほら、俺だって死にたくねぇしな!」
その明るさは普段と変わらない。
しかしその裏側に、うっすらと影のようなものを感じてしまう。
三人の間を、言葉にならない沈黙が流れた。
誰も、はっきりとは言えない。
言うほどの根拠もない。
ただ――
マルファスのツインアイだけが、かすかに揺れながら三人を見下ろしていた。
その光は、
・敵意でもなく
・警告でもなく
・感情でもない
ただ、そこに“在るだけ”の冷たい監視だった。
これがガンダム!悪魔の力よ!
今回は三人の兄貴分セドリック・フェザーズを紹介していきます。
キャラクター紹介②セドリック・フェザーズ
【基本情報】
フルネーム:セドリック・フェザーズ(Cedric Feathers)ニックネームはセド
年齢:19歳
性別:男性
立場:ヒューマンデブリ(メカニック)
役割:三人のリーダー/整備士/戦術判断役
現搭乗機:スパロディ(改修型・射撃/サポート仕様)
【外見・雰囲気】
灰金色の短髪(整えている)
細身だが無駄のない体格
切れ長で冷静な印象の目
両腕に小さな火傷痕(整備作業の名残)
姿勢が良く、動きに無駄がない
【第一印象】
理性的で落ち着いた青年。
「整備ドックに自然と馴染むタイプの兄貴分」。
【性格】
冷静沈着、判断が早い
感情を表に出さないが、内面は熱い
強い責任感を持つ
合理主義だが、人のためなら無茶をする
弱い立場の者を放っておけない
怒ると短く鋭く叱責する(感情的にはならない)
【根本的性質】
「自分が支えなければ、誰かが死ぬ」という思考癖
失うことへの恐怖を理性で抑え込んでいる
【家族・幼少期】
火星系コロニー出身
両親は整備士で商船で働いていた。
父親は特に歴史好きで、資料収集家(古い電子書籍、厄祭戦関連資料、MS開発史など)
幼少期から工具と歴史書に囲まれて育つ
【過去】:喪失とデブリ化
11歳の時、海賊の襲撃で商船が壊滅
両親は目の前で死亡
生き残ったセドリックは「技術者として使える」と判断され回収
ヒューマンデブリとして海賊船へ
以後、整備班と戦闘班に配属
「壊れないから使える」と扱われる
感情を抑え、淡々と作業する癖がつく
【阿頼耶識】
11歳で海賊式の雑な手術
適合率は高め
戦闘特化ではないが、
機体情報の把握
反応補正
制御安定性
に優れる
【特徴】
機体状態を“感覚的に理解”できる
異常や不整合にすぐ気づく
【能力・役割】
整備・技術面、即席改修が得意
資材不足でも工夫で補う
フレーム構造・エネルギー配分への理解が深い
マルファスの異常構造に最初に気づいた
【戦闘面】
射撃支援
仲間の死角を埋める動き
状況整理と指示出し
無駄な動きがなく堅実
【歴史知識】(三人の中で唯一)
父の影響で独学習得。
把握している内容:厄祭戦の概要、ガンダム・フレームの存在と希少性、モビルアーマーの脅威ギャラルホルン成立史、阿頼耶識の歴史的背景 等
【教育者としての顔】
エヴォルとナルドに文字・計算・基礎教養を教えている
教材:廃棄データ、船のマニュアル、古い端末などを流用している。
【教える理由】(本音)
「知識がなければ、生き延びられない」
「名前も書けずに死なせたくない」
失った家族への無意識の贖罪でもある
【夢・目標】
三人で生き残る
正式な整備士になる
もう誰も失わない
個人IDを取得し、「記録に残る人間」になる
【仲間との関係】
エヴォル・ヴァレンティ
危険な才能を持つ弟
一番理解している存在
「止められるのは自分しかいない」と思っている
二度目の阿頼耶識手術を知った時、強い恐怖と怒りを覚えた
ナルド・ヴェイン
守るべき弟
臆病だが重要な存在
ナルドの“死の直感”を最も信頼している
褒めると伸びるタイプだと理解している
【キャラクター総評】
セドリック・フェザーズは、知性、責任、保護者的視点、を一手に担う存在。
彼が折れた瞬間、この三人は“戦える集団”ではなくなる。
セドリックは鉄血のオルフェンズ月鋼に出てくるヴォルコ・ウォーレンと本編に出てくるユージン・セブンスタークを混ぜたのをイメージして作りました。
戦えるメカニックって………カッコいいよね………
それでは次回もお楽しみください!