あれは俺が小3の時だった。俺には幼稚園の時から仲良かった蓮っていう親友が居たんだよ。俺と蓮は基本ずっと2人で行動してた。どっか行くのも一緒。学校行くのも一緒。遊ぶのも一緒。蓮は学校が大好きだったけど、俺は正直そこまで好きじゃなかった。まぁそんな感じで小学校生活を送ってたんだけどね、、、。
小3の頃俺と蓮はクラスが別れてさ、俺が1組で蓮が3組になったんだけど、……蓮がさ3組でいじめられてたの。いじめの発端なんて些細な事だった。蓮はなんでもそつなくこなす完璧人間だったから、その蓮に嫉妬したやつらがいじめてたんだ。
最初は無視から始まったんだけど、その時蓮は良く俺のクラスで喋ってたから、そこまでダメージはなかった。…でも、その後どんどんエスカレートして、二学期の始まったあたりから机に落書きされたり、暴力振るわれるようになったんだよ。
……あいつさ、俺がなんかいつもと様子が違ったから心配して聞いたのに、いっつもさ「大丈夫やで!なんもないから!」って。
本当はずっとしんどかったのに。
俺が蓮がいじめられてるって言うのを知ったのは二学期が始まって大体11月あたり。俺がその日出す宿題を忘れてそれやってたら3組の教室からなんかでかい音が聞こえてさ、行ってみたんよ。
俺がドアを開けた時、教室は静まり返ってて、椅子が倒れたまま転がってた。でも倒れたのは椅子だけじゃない。蓮もだ。そんでそれをしてた坂上っていう奴らはさ、、笑ってた。
「……ごめ、んな、彩人……」
涙と鼻血でぐしゃぐしゃになった顔で、蓮はそれだけ言った。その言葉は、謝罪というより、助けを求めてるかのようだった。助けを求めるように、消えていく声。
でも——俺は助けられなかった。
気づけるとこなんていっぱいあった。無理矢理にでも蓮から聞いたら良かった。蓮は3年生が始まってからずっとおかしかったから、何度も助けれるチャンスはあった。俺がもっとちゃんと蓮を見てれば、、、。俺が、、。俺が、、。俺、が、、、。
その時、気づけば俺の手は、いじめっ子のリーダー格であろう坂上を床へ叩きつけていた。そっからはあいつのマウントをとってボコボコに殴りまくった。途中であいつがやめろって懇願してきたけど、無視して殴った。
…そんでしばらくして、俺が教室に居ないのを不審がったのか、それとも音が思ったよりデカかったのか、俺の担任が教室に入ってきて、
「お前、なにをしてる!!」っていきなり怒鳴ってきた。
そっからさ、職員室連れてかれて、ずっと正座させられていた。向かいの椅子には担任。その向こうには教頭が渋い顔をして腕を組んでいる。ほんで、横には母親。
「—-いじめた坂上にも悪いところはあるが、暴力は暴力だ!理由が何であれ、手を出した時点で九条!お前が悪者だ!しかもお前は坂上たちに何もされていないのに手を出しただろ!それは立派な犯罪だ!今回は子供の喧嘩として見逃すが…分かったらちゃんと反省しろ!」
「……でも蓮は——」
「今はお前の話をしているんだ!そんな事今は関係ない!」
なんなねんその言い方。俺は思わず笑いそうになった。なんだよ『そんな事』って。蓮にとっては、俺にとっては『そんな事』じゃねぇのに。
あれほど教室で騒ぎが起きていたのに、教師は誰も気づかない。蓮が倒れているのに、誰も何も言わない。でも俺が声を荒げ、いじめっ子を殴れば全員が一斉に俺を責める。
「お前みたいな行動は“模範にならない”んだよ!分かるよな!?」
「……分かりません」
担任は大げさにため息をついた。
「はぁ、、、もういい」
もういいってなんだよ。お前らは蓮がいじめられてるのに気づかずにずっと放置してたくせに。
……いや、それは俺もか、、。俺はずっと蓮の近くに居たんだ。気づけなかった自分が情けない。俺が弱いから、あいつを助けられなかったんだ。
その時、職員室の扉が勢いよく開いた。
入ってきたのはいじめっ子の坂上の母親だった。
「うちの隼人が“暴力事件の被害者”だと聞いたんですけど!?まさか——この子にやられたの!?」
そう言いながら俺の方までズカズカと歩いてきた。…横には坂上本人を置きながら。
「ええ、、、、そうです」
「は?」
その時の担任は暴力事件と言われ、それを肯定した。
「彼には厳しい指導を致します。なので、、、、」
「隼人はそんな子じゃありません!クラス委員だし、成績もいいし、先生にも褒められてるんですよ!?それが、どうして暴力だのいじめだの言われなきゃならないの!」
まるで自分の子供が“良い成績”だから、人格まで保証されていると言わんばかりだった。
「隼人は、今日あなたに床へ押し倒されて、殴られて泣いてたのよ?怪我だってしてるじゃないの!見てよ、この擦り傷と打撲!!」
坂上を前に出しながら傷の部分に貼られた絆創膏やガーゼをこれでもかと見せびらかしてくる。
「ちょっといいですか」
俺の母が口を挟んだ。
「蓮君は……もっとひどい状態なんですよ。だから、彩人だけを責めるのは——」
「あら?隼人が犯人だって言いたいんですか?」
刺すような声が返ってきた。
「言ってません。ただ、この子が全部悪いわけじゃ——」
「じゃあ誰が悪いっていうんですか?」
坂上の母は、ぐっと距離を詰めた。
「うちの隼人がこんな怪我してるのに?その子は弱いから怪我しただけじゃないんですか?そんなの、うちの子のせいにしないでくださいよ」
母の顔色が変わる。
「弱い?あなた、自分が何を言って——」
「事実じゃないですか。普通の子ならやり返すのよ?やられっぱなしなのは本人にも問題があるの!」
言葉が刃物みたいに廊下の空気を裂いた。
担任はこの状況を収める気はなかった。それに坂上の母親も自分が正しいと思い込んでるからずっと俺の母親と口論をしてた。そしたらさ、
蓮の母親も来た。…俺はこれで味方が2人になるって思ってた。でも蓮の母親は、、、
「彩人くん!ちょっと待ちなさい!……どうして……どうしてもっと早く止めなかったの……?」
蓮の母親も立場で言えば、坂上側だった。…俺を責めてきた、。
「え……?」
「あなた、近くにいたんでしょう?なのになんで蓮を守らなかったの?それどころか、あなたが暴力を振るったって聞いたわよ!?」
「ち、違います。俺は蓮が……」
「違わないわよ!教師から全部聞いたわ。あなたが手を出した側だって!」
「…うちの蓮がこんなになるまで、、、」
「…母さん、、彩人は、、」
「蓮は黙ってなさい!」
「…はい」
「もう金輪際うちの息子と関わらないで!そして、早くどっかに行ってちょうだい!」
「え、、?」
「あの、それは流石に、、」
「そうよ!それがいいわ!それなら私の隼人もこんな事にこれからならないし!」
「…先生、、」
「………」
担任は終始無言だった。目の前で生徒が引っ越しになりそうって時にも、何一つ言ってこなかった。
それで、俺は小3の1月に転校して関東の方に来た。家族、、特に妹には申し訳なかった。あいつは俺よりも友達は多いから。
…蓮とは最後少しだけ話した。蓮はあれのせいでPTSDを発症して今も学校が怖いとのこと。それと、あれは自分が相談しなかったのが悪くて、お前は何も悪くないって言ってきた。…でも、俺が気付けてたら今も蓮は学校に行けたんだと思う。
転校した学校で、新しい友達がいっぱいできた。でも、心のどこかにずっとこのことが引っかかってた。…実はさ皆んなに言う前に一回これ言ったことある奴いるんだよね。……そいつは俺が転校先でまだ馴染めてなかった時によく話しかけてくれて、仲良くしてくれた。…あいつに一回話してスッキリしたと思ってた。…それ以降はいじめとかにも合わなかったから。
でもこの世界でレッドプレイヤーを見て、そいつらが命乞いをしてきた時、坂上の奴が止めろって言ってきたのと重なってあの光景がフラッシュバックしてきた。だから、あんなことになった。……でも、今はみんなのおかげで大分落ち着いた。思い出したよ、人に話すって言うのはこんなにも楽になるってこと。
これが俺の過去の全部。…なんか聞きたいこととかある?」
「「「「「………」」」」」
全員、黙っていた。…そりゃそうだ。俺がしんどくないとはいえ、蓮のしんどさは測り知れないんだから。
「お前、自分にとっては辛くないとか言うなよ、、、!」
そう静かに声を荒げたのはキリトだった。
「アークはその友達を助けたんだろ、じゃあ、褒められるのが普通でお前が責められるのは全然違うだろ……」
次に声を上げたのはアスナだった。
「……そんなの、酷すぎるわ」
膝の上で拳を握りしめ、俺を見る瞳は真っ直ぐだった。
「あなたは悪くない。悪いのは、何も見ようとしなかった大人たちよ。“正しく怒れる人”が責められるなんて……本当におかしい」
クラインは空中を見ながら言った。
「……おめー、よく折れなかったな」
普段の軽さが嘘のように、真剣な声だった。
「そんな理不尽な環境で……普通、心が壊れるぞ。俺だったら……誰も信用できなくなってたかもしれねぇ」
「おめーさんはめっちゃ頑張ったんだな。……そんな中で今俺たちを信じてくれて、話してくれて、ありがとな」
エギルは静かに頷いた。
「理不尽は……放っておけば、被害者が増えるだけだ」
「お前はその場で孤独に戦ったんだろう。親以外味方してくれない中で……親友を守ろうと。…しまいにはその親友とは絶縁させられたが」
エギルはゆっくりと笑う。
「なら今は、俺たちがお前の味方になる番だ。アーク……“仲間”を”俺たち”を頼れ」
ハルは目に涙を溜めながら、
「俺と幹部長は、部隊に入ってからの付き合いです。他の皆さんみたく1層の頃からってわけじゃない」
「…でも、これだけは分かります。幹部長は、間違ってないです。絶対。間違ってるのはその親友といじめっ子の母親、後担任です」
正直、ここまで言ってくれるとは思ってなかった。…皆んな優しいから肯定してくれるとは思ってた。でも、これは、、
「アーク、泣いてんのか?」
そうキリトに言われて気づいた。俺の頬に涙が流れてることに。
「あれ?なんでやろ、止まらへん、いつもは流れてもすぐ止まんのに…」
エギルが俺に優しく諭してくる。
「いいんだよ、アーク。我慢しなくても。泣きたい時は泣いとけ」
俺はその後しばらく膝を抱えてみんなに見えないように泣き続けた。
「どう?落ち着いた?」
「ああ、なんとか。…ありがとな、皆んな。こんな話わざわざ聞いてくれて」
「全然いいよ」
「そうだな、アスナの言う通りだ。さっきも言ったが何かあれば俺たちを頼れよ」
「そうだぜ!このクライン、おめーが辛い時はなゆでもしてやんよ!」
「そうか、なら辛い時はお前にKoBの仕事押し付けるわ」
「ちょ、、そういう事じゃねぇよ!」
「ははっ。冗談だよクライン」
こんなにしっかりと笑えたのはいつ振りだ?…ああ、あいつといる時は基本ちゃんと笑えてたか。…でも、何人かいる前じゃ本当に久しぶりかも。…こいつらには感謝だな。特にエギルとクラインには。…俺はあの日以来、あまり大人を信用しなくなったから。この2人のおかげで少しは信頼できるかも。
「そういや幹部長」
「どしたんやハル」
「いや、あのー、幹部長にこの事を話させた子。どんな子なのかなーって」
「そう言えばそれ、俺も気になるな」
「私も」
「俺も、俺も」
「確かに、まだその事件から日が浅かったのに話させたのはどんな奴なのか気になるな」
「……一言で言うなら、、、うーん、女子版のジ◯イアン?」
「は?」
「え?」
「ん?」
「あ?」
「ん?」
うん。あいつは女子版のジ◯イアンっていう表現が1番あってるな。俺のもんすぐ取ろうとしてくるし、ジャイアニズムすごいし。
「えーと、その子?がアーク君に話をさせたの?」
「え?うん。そうやけど、、なんか変?」
(((((変にも程があるだろ!!)))))
この場にいる5人の心境が一致した瞬間である。
「まぁ流石に女子版ジ◯イアンは言いすぎたけど、、、でも、普通にいい奴やで。…馴染めてなかった俺に話しかけに来てくれて、よく遊んでくれるくらいには。…そん時の俺さ、捻くれてたからあんまし友達とか要らんって思ってたのに、そいつ俺の話しかけんなオーラガン無視で喋りかけてくるからさ、最初はなんやこいつ。みたいな感じやったけど、話してくうちになんか友達?親友?くらいになってた」
「マジかよ、、」
「すごいね、、」
まぁ、最初はほんまにウザかったけど話してくうちに落ち着くようになったんよな。…そういや、あいつにこれ話した時も皆んなと同じような反応やったっけ、、、。…俺の周りには0か100しか集まらんのか?まあ周り100しかおらんからええけど、、。
あいつ元気にやってんかな、、、。『紅葉』
はい!主人公の過去回でした。作者的には重い過去にしたんですけど、、、。こんなんあったらもっと人間不信なってるやろ!!っていうツッコミはやめてください。頑張って考えた結果なんで。
さぁ最後に出てきたのは誰なんでしょうね。まぁ勘が良い読者の皆さんなら分かってると思いますけど。
ここまで読んでくれてサンキューやで!良かったら感想、評価頼むわ。