ハイスクールO×O ~目指せ!おっぱいドラゴン!~ 作:貴司崎
冥界の悪魔領地の存在する空中都市『アグレアス』、最大規模のレーティングゲーム用スタジアムがある事から“レーティングゲームの聖地”とも呼ばれるその都市は未だかつてない程の熱狂に包まれていた。
『さあとうとう始まりました『皇帝ベリアル10番勝負』最終戦! これまで9戦全勝を達成している
その理由は年末恒例の皇帝『ディハウザー・ベリアル』による10番勝負の最終戦であるからであり、その相手が嘗て一世を風靡してからあっさりゲームを引退した伝説のチーム『ダンタリオンチーム』であるからであった。
『遅れましたが実況は私、元七十二柱のナウド・ガミジンがお送りします! そして今夜のゲームを取り仕切る
『ははは、リュティガー・ローゼンクロイツです。今夜はよろしくお願いします。……あの2人の試合を間近に見られるなら解説や審判をやっても良いと言うランカーは数多いでしょうからね』
『成る程! ……では余り皆さんをお待たせする訳にもいきませんからここで両チームの入場です!』
そうして入場した両チームはスタジアムの中央で向かい合って整列し、代表である『
「久しぶりのレーティングゲームだから普段のアレコレは忘れて楽しませてもらうよ。そちらも“細かい事は気にせずに“本気で来るといい」
「……分かりました。私も『皇帝』と呼ばれる身、ゲームに於いては“余計な事は気にせずに”誰が相手でも本気で戦います」
「ふふふ、お手柔らかに」
実家と家族の事で目の前の相手に色々と迷惑を掛けた自覚があったディハウザーだったが、ジークレド側の含みがある発言を受けて気を取り直して『皇帝』としてレーティングゲームを戦う事に決めた。
……実際には駒王町で起きた“事件”をジークレド達は既に知っているのだが、その辺りの事情を一切表情には出さずに皇帝との対面を終えて両チーム共に戦闘フィールドへと転移した。
『今回の試合形式は特殊なルールのないプレーンな方式! そして戦闘フィールドはこのアグレアスのスタジアム周辺を丸ごとコピーしたモノとなっております! ベリアルチームの本陣はレーティングゲーム運営本部、ダンタリオンチームの本陣はスタジアムを挟んでその反対側にあるサーゼクスホテルアグレアス支店です!』
それぞれ大きなビルの屋上に転移した両チームは試合開始前の準備時間で周囲の地形を把握したり、アグレアス周辺の地図を出して戦闘フィールドとの差異を確認しながら作戦を練っていく。
『……それでは! 試合開始です!!!』
そうして実況によって試合開始を告げられた直後、ダンタリオン眷属の本陣から多数の小型機械──O×Oとジークレド機関の協力で開発された機械・魔力複合駆動の偵察用ドローンが空へと舞い上がった。
このドローンはジークレドの神器『
『おおっと、早速ダンタリオンチームがいるホテルから何かが飛び出しました! 使い魔ではなく機械の様に見えますがアレは?』
『あれは確かドローンという人間界で開発され始めた小型の飛行機械ですね。ダンタリオンチームの『王』であるジークレド氏が運営している研究機関では悪魔の魔力技術と人間界の科学技術を合わせた複合技術の研究をしていますから、おそらくそこ由来の新装備ではないでしょうか』
『成る程! ダンタリオン領の最新科学技術は冥界でも一二を争う品揃えですからね! しかし偵察なら使い魔でも良いのでは?』
『機械製である以上は生物を探知する術や魔力を探る術には引っかかりずらいと思われます。使い魔による偵察はゲームでも常套手段ですから対抗策も多いですし。……それにドローン以外にも複数の索敵手段を使っていますね』
解説のリュティガーの言う通りダンタリオンチームの本陣であるホテルを丸ごと覆う強固な結界が展開され、更に「
探知系を得意とする大魔女である彼女であれば結界に加えて大規模な探知術式を展開する事も容易く、探知術式自体にもドローンと合わせてゲームフィールドの状態を効率良く把握できる様に改造と効率化が図られている。
『……今の所はダンタリオンチームの基本的な戦術は現役時代と同じに見えますね。ドローンには驚かされましたが記録にあるあのチームの初動通りの動きです』
『ダンタリオンチームの基本的な戦術……ですか?』
『ええ、レーティングゲーム黎明期の歴史はあのチームが現れる前と後で分かれるとも言われていますが、その理由はシンプルに“彼等の個々の実力が圧倒的に高かった”からです。当時上級悪魔同士のちょっとした娯楽でしかなかったゲームをしていた者達では歯が立たない程に』
今とは違い『
転生悪魔の眷属など上級の貴族悪魔であれば容易く倒せると思っていた当時のプレイヤー達を文字通り一掃し、そんな彼等の躍進を止める為に運営は純粋なパワーだけでは戦えない新ルールを作り出して今のレーティングゲームの基礎が出来上がった。
『ある意味では今のレーティングゲームの環境が出来上がるきっかけとなったのがダンタリオンチームとも言えます。悪魔社会での転生悪魔の地位向上に及ぼした影響も大きいですしね。……まあその話は置いておいて彼等が現役時代に得意としていた戦術は眷属の質を活かした正攻法が多い』
『つまり複雑なゲームメイクは行わないと?』
『いえ、むしろ相手の奇策や搦手の類いを徹底的に潰した上で個々の眷属の質を生かした正攻法を取るタイプなので、むしろダンタリオン氏のゲームメイクは今のランカーと比べても上手い方です。全員が
当時の戦術や選手の質が未成熟だった時代のレーティングゲーム環境では圧倒的な実力がある彼等を止める術はほぼなく、数少ない戦術が出来るチームやパワーがあるチーム相手でも神器による特殊な異能も駆使して撃破する事で立場的にはハーフ悪魔の転生悪魔でありながら頂点に限りなく近い場所にいたのがジークレド・ダンタリオンと言う男だった。
『少し余計な話をしてしまいましたが、ダンタリオンチームは今回のゲームでも今の所はベリアルチーム相手に正面から戦おうとしている様に見えますね』
『絶対王者たるディハウザー・ベリアル率いるチーム相手にですか?』
『ええ、まあ搦手を使わないかどうかはまだ分かりませんが、少なくとも“ベリアルチームが相手でも自分達なら正面から戦える”と判断した上でのゲームメイクに見えますね。……それにどうやら戦局が動く様です』
『え? ……フィールド中央のスタジアムに選手の姿が見えました! アレはダンタリオンチームの『
実況の言葉通りフィールド中央に設置された今ゲームが行われているスタジアムのコピーの中央に3人の男女──ダンタリオンチームの剛腕戦車ニキこと『グレイヴ・ランパード』、放火戦車ニキこと『ウルガ・バーン』、そして姫騎士ネキこと『リリィ・オルコット』の姿があった。
「さぁて! せっかくのお祭りなんだから楽しもうぜぇ!!! 今回の俺は『王』じゃないから最初から存分に殴り合えるしなぁ!!! 皇帝の眷属共さっさと出て来いやぁ! 何だったらエンペラー自らでもいいぜぇ!!!」
「いきなりフィールド中央に来て何を言ってるんだコイツ」
「『俺に良いアイデアがある』と言ったから任せてみたら……現役のランカーだからってこの脳筋を信じた私が馬鹿でしたわ」
チームの中でも唯一の現役ゲーム参加者である筈のグレイヴの行動を見て他の2人は呆れた様な雰囲気になるが、彼にとっては『現役レーティングゲームプレイヤー』としての視点から見た作戦であるのだ。
「いやレーティングゲームは興行だからな、それに今回はエキシビジョンマッチってヤツだからこうして挑発すれば皇帝も乗ってくるだろ。せっかくのお祭りにちまちま隠れながら戦うんじゃ観客の不満も溜まるだろうし、何より『皇帝』のブランドに傷が付くだろ? それに周りは監視網が敷かれてるから奇襲を仕掛けて来たら位置を逆算出来るし、何よりそこのくっ殺姫騎士がいれば奇襲ぐらいどうとでもなる」
「………………驚きましたわね、あの脳筋がここまでモノを考える様になるとは。レーティングゲームの『王』としての経験は類人猿を人間に進化させる程のパラダイムシフトを齎したのかしら」
「まあ策があるなら別に良いだろう。どの道『とりあえず正面戦闘に持ち込め』と言うオーダーなのだからな」
お互い微妙に言葉でチクチクと刺し合うグレイヴとリリィを頭を抱えながら宥めるウルガだったが、直後にこちらを見る気配を察知して自身の神器たる炎の様に赤い剣『
同時にリリィも自らの神器たる山羊の首があしらわれた大盾『
「……随分と熱烈な申し出だなランパード殿」
「今日の俺は『王』じゃなくて『戦車』だから鉄砲玉みたいなもんよ。……ほーん、戦車2人に騎士1人とこっちに合わせて来たかね? まあ他の連中は別に動いているんだろうが」
「ただでさえ面倒な探知網を敷かれている以上、貴方方を無視して本陣に向かっても直ぐに追われて最悪挟み撃ちでしょうからね」
「だからこそ態々フィールド中央のスタジアムに移動した訳ですし」
ダンタリオン眷属としてはフィールド中央のスタジアムに3人を配置して敵チームと交戦させる、それが無理なら3人を遊撃として使い発見した敵を襲わせる目的での初手であった。
これは例え皇帝相手に戦力を分散させたとしても各個撃破はされないと言う個々の実力あり気の手であり、ベリアル眷属も相手がそれだけの実力がある事は認めた上で3人を相手取れる戦力を派遣した訳である。
「じゃ、これ以上観客を待たせても仕方ないし……やるかぁ!!!」
「来るか!」
そう言ったグレイヴが凄絶な笑みを浮かべながら拳を握って突っ込んで来たのに対し、ベリアル眷属は彼相手に接近戦に持ち込まれる危険を知っている事もあって魔力砲撃による迎撃を試みる。
レーティングゲームの頂点の眷属だけあって軽く練り上げただけの魔力でも並の上級悪魔を撃破出来るだけの圧縮がなされていたが、それらの魔力は放たれるよりも一手早く後ろに居たウルガが魔剣を振るい入っているグレイヴごとベリアル眷属を覆い尽くす火炎を放った。
「ッ! 味方ごと!?」
「残念、ただの目眩しさ」
中級のドラゴンのブレスに迫る火炎に対して咄嗟に対火炎の防御魔法を展開して防ぐベリアル眷属だったが、そこに同じく対火炎の防御魔法を身に纏ったグレイヴが急加速しながら炎に紛れて距離を詰める。
それに気付いた『戦車』の1人が防御魔法を物理防御に切り替えながら両手をクロスさせて防御姿勢を取った直後、彼の拳がガードに突き刺さり凄まじい激突音を響かせながら『戦車』をスタジアムの壁まで吹き飛ばした。
「クッ! 相変わらず出鱈目なパワーだな……!」
「障壁に加えて咄嗟に後ろに飛んで威力を殺したか。全力の拳って訳じゃなかったが流石はチャンピオンの眷属って所か。……ま、今回は俺よりも“火力”があるやつがいるんだが」
そう言ったグレイヴが横に飛んだ直後、後方にいたウルガが先程とは比べ物にならない熱量を発生させながら紅蓮に輝く『業火の魔刃』を振り抜いて超高温の“炎の斬撃”をベリアル眷属に向けて放つ。
狙われた3人は攻撃の気配を読んで咄嗟に斬撃の範囲外へと離脱したが、その炎の斬撃はそのままスタジアムの壁を溶断しながら突き進んで奥に在った大型のビルを真っ二つに焼き切って倒壊させた。
「ッ!? なんて火力だ!!!」
「アレも普通に避けるのか。やはり俺達が現役時代のプレイヤーとは比べ物にならない練度だな。雑に炎を撃っても当たらんか」
「……では、接近戦を挑むとしましょう」
更にリリィは虚空から一本の馬上槍──同じチームの鍛治師謹製、自身の神器と共鳴する事で電撃を発生させるランス『霹靂の魔槍』を取り出して構え、閃電を迸らせながら『騎士』のスピードを活かして突貫する。
回避直後を狙われた相手の『騎士』も瞬時に反応して手に持った剣で突進を受け流そうとするが、ランスを受け流せても彼女の全身を覆う電撃までは完全には防げずに電撃を浴びせられてしまう。
「では追撃……とは行きませんわね」
「……圧縮を重ねた魔力をこうも容易く防ぐか」
相手が電撃で動きを止めた隙に大盾によるシールドバッシュを叩き込もうとするリリィだったが、もう1人の『戦車』が圧縮魔力弾を放って来たので盾を構えて電磁シールドを展開して防ぐが、その間に『騎士』が反撃に転じようとしたので一旦距離を取って仕切り直す。
……今の魔力弾は圧縮を重ねて貫通性を引き上げており『戦車』の攻撃力上昇を加えれば上級悪魔が作る障壁も容易く貫通する代物だったのだが、回避ではなく当然の様に防いで見せたリリィを含めたダンタリオン眷属の実力にベリアル眷属は内心で舌を巻いていた。
「……現役のランカーであるグレイヴは兎も角、他の眷属も嘗ての記録映像よりも強くなっているのか?」
「私達が現役プレイヤーだった時から何十年経っていると思ってますの? 当然昔よりも強くなっているに決まっているでしょう」
「レーティングゲームは辞めたが研鑽と修練を欠かした事は今まで一度もないが」
「ま、俺らはレーティングゲームの為に強くなってる訳じゃねぇしなぁ」
元より“絶対の絶望”に抗う為に集った彼等は強くなるモチベーションが高く、加えて原作知識による“この世界では修行すればする程に強くなれる”と言う思い込みもあって転生者達の多くは常に修行と鍛錬を続けている。
まあ、その辺りの事情を知らない外側の者達から見れば“今の立場や目的の為には必要でないレベルの修行をしまくってる連中”となるので、O×Oやダンタリオン眷属が奇妙な目で見られる一因となっているのだが。
「じゃあ戦いを続けるか!!!」
「チッ! 来るぞ!」
それは兎も角として再び激突する両チームだったがダンタリオン眷属が余波でスタジアムが倒壊していくレベルに苛烈な攻撃を繰り出すも、レーティングゲーム内であれば最上級悪魔に迫るとまで言われるベリアル眷属は攻撃を凌いでいく。
更にベリアル眷属の連携を駆使した反撃によってダンタリオン眷属側もダメージを受けていくが、こちらも上級悪魔詐欺と言える実力者なので致命傷を負う事はなくスタジアムが半壊した辺りでお互いに距離を取った。
「……強い。個々の実力であれば最上級悪魔にも届き得るか」
「さて、そちらも“まだ本気は出していない”とは言え似た様なモノだろ? ……ま、このまま削り合うならこっちが勝つが」
グレイヴがそう言った直後、いきなりオーラで出来た矢の様なモノが3本上空から現れて彼等3人に命中、そのオーラに包まれたと思ったら彼等が負った傷が瞬く間に回復してしまったのだ。
『おおっと!? 突如としてダンタリオンチームの傷が治ってしまったぁ!!! これは一体……!』
『ダンタリオンチームの1人『マリヤ・ガーフィールド』氏の神器『
そのオーラの正体はダンタリオン眷属の『
ただしマリヤは治療者として冥界でも有名であるのでベリアル眷属も何が起こったかは当然把握しており、目の前の敵から注意を外さないままに周囲を索敵して回復役を探すがマリヤの姿は見つからない。
『フェニックスの不死身の特性はレーティングゲームでも猛威を振るっていますからね! つまりダンタリオンチームはどんな怪我を負っても治せると?』
『流石に回復能力はフェニックスの不死身の特性と比べれば劣るでしょうが、そもそもマリヤ氏の恐るべき所は特に何の制限もなく他者を回復出来る事、そして
それもその筈、マリヤはスタジアムから2キロ近く離れた場所からジークレドの思念通信とエリスタの索敵魔法で前衛のいる位置を把握して、ジークレドの幻術による隠蔽を加えた上で回復のオーラを飛ばして味方を回復させたのだ。
流石にここまで距離が離れた状態で味方にピンポイントで当てるにはジークレドやエリスタが魔法で補正を掛けるサポートが必要だったが、効果は流石に落ちるとは言えこの超遠距離でも回復効果を維持しているのはマリヤ本人の実力である。
『ルールで制限される事も多い『フェニックスの涙』と違って自由に他者を回復させられる、しかも距離が離れた相手にもと言うのは凄いですね!』
『そもそもレーティングゲームにおいて“恒常的な回復役”が存在する事自体がダンタリオンチーム最大の武器と言っても過言ではないでしょう。……彼女がいる限り単純なダメージレースでは王者のチームであっても不利は否めません』
解説であるリュティガーがそう言っているのは選手には聞こえていないが、その事は当然ベリアル眷属も分かっているのでダメージを回復された時点でこれ以上戦闘を続けずにスタジアムから撤退する。
「……ここで追撃と言いたくなるがあっちの狙いはなんだと思うグレイヴ? 現役レーティングゲームプレイヤーのお前の意見を聞きたい」
「俺らを罠に嵌めて回復の暇を与えずに一網打尽、或いは俺らを本拠から離して回復役狙いって所じゃないか? ぶっちゃけエリスタが盤上に居る限り普通に殴り合ったら向こうだけが消耗し続けるし」
「そんな所ですわね、彼等は初めから本気で私達を落とす気はなかった様ですし。足止めと回復役を狙う為に敢えて回復を使わせてエリスタの位置を探る目的の様にも見えましたが」
しかし、最初からベリアル眷属が消耗を抑えつつこちらと戦っていたと気付いていたダンタリオン眷属達はそれを追う事はせず、辺りへの警戒を続けながらも一旦立ち止まって相手の狙いを考えていく。
「回復の矢は隠してはいたが探知に長けた相手なら発射地点を導き出す事は出来るだろう。ただ俺達が追わなければ彼等を遊撃に使って奇襲とかして来そうだが」
「ここで追ったら罠か分断で追わないなら逃げた上で別の手を打つって感じの手筋だよなぁ。あんまり離れ過ぎると流石に回復が届かなくなるし、俺としては此処で全力追撃が好みなんだが」
「回復出来ないならそれを前提に戦えば良いだけですしね。……ああ、主人からの連絡ですわね。『こちらは何とかするから罠ごと食い破れ』との事で」
少し面倒な状況に悩んでいた3人だったが『王』であるジークレドからの念話による指示で行動方針を決定、即座に逃げたベリアル眷属を“全力”で追撃する事にした。
「ハーン、どうやらウチの『王』は派手な戦いがお望みらしい。まあコレはお祭りだからな」
「まあ長期戦はそれはそれで不利な点もありますし、業腹ですが“あの女”が本陣にいる以上は戦力的にも問題はないでしょう。例え皇帝が来たとしても」
「拠点の防衛なぞ俺には元より向いていないからな。……ではやるか」
そんな会話をしつつも彼等の気配とオーラは鋭く研ぎ澄まされていき、更に周囲にそれを悟らせない程に静かかつ速やかにオーラを高めて神器所有者ってしての“切り札”を発動する準備を瞬時かつごく自然に完了させる。
「「「
……そうして各々の切り札を使って全力を発揮した彼等はベリアル眷属を追撃して戦闘、スタジアム及び周辺のビルを含めた幾つもの建物が流れ弾で倒壊する程の戦いを繰り広げる事によってゲームを盛り上げると共に、ダンタリオン眷属の力が未だに健在であると広く知らしめる事になったのだった。
──────◇◇◇──────
『おおおお!!! ダンタリオンチームの怒涛の攻撃が王者のチームを襲う! アレが神器の
『その様ですね。神器の使い手が一定の領域に至った時に発揮される最終到達点、世界の流れすらも歪める禁じられた手段。現在のランカーにも神器を持つ元人間のプレイヤーは居ますが使えるのは僅かと言う程に希少な能力……の筈なんですが、ダンタリオンチームは殆どが使えるみたいなんですよね』
『何か禁手に至れる様な技術や秘密をダンタリオンチームは握っているという事でしょうか?』
『さあそこまでは。ただ昔のインタビューで禁手に至る方法を聞かれた時には『弛まぬ鍛錬と本人の強い意志次第』とだけ言っていましたが。……とは言え、ベリアルチームも負けてはいません。上手く相手の異常な攻撃力を凌いでいます』
実況解説の2人の言葉通りフィールドでは禁手に至ったグレイヴは更に上がったパワーによって怒涛の打撃を繰り出し、ウルガが振るう魔剣は触れた物体を瞬時に溶解・蒸発させる程の熱量を刀身に圧縮させ、リリィは神器に封じられていたギリシャ由来の聖獣『アマルテイア』を一時的に具現化・騎乗しての高速戦闘を行っていた。
それぞれの禁手により攻撃力を跳ね上げたダンタリオン眷属の火力は上級悪魔の集団でさえ容易く薙ぎ払えるモノなのだが、そんな魔王クラスに迫る攻撃をベリアル眷属はそれぞれの特技を活かして連携しつつ回避と防御を行う事で未だに誰1人としてリタイアを許しておらず、そんな凄まじい戦闘を目の当たりにして会場は大いに盛り上がっていた。
『禁手は非常に強力ですがその分オーラや体力の消費は激しいですからね。そして回復能力の多くは傷を治せても体力やオーラまでは元に戻せないのが普通です』
『つまり相手の攻撃を凌ぎつつ体力切れを狙うのがベリアル眷属の作戦だと?』
『いえ、流石にそこまでではなくオーラや体力の低下で相手の隙を作れれば良いぐらいの考えだと思いますが。ダンタリオン眷属も禁手に至ったばかりではなく長年の修行で使いこなしていますからペース配分もしていますし、体力切れよりも先に致命傷を負う可能性の方が高いでしょう』
実際ダンタリオン眷属は転生悪魔としての寿命を活かして禁手に至ってから数十年以上研鑽を積んでいるので単に維持するだけなら一カ月以上、全力戦闘でも相手やペース配分にもよるが丸一日ぐらいは余裕で禁手を継続出来る。
だからこそジークレドも今回のルールのゲーム時間内であれば早期に禁手を使っても問題ないと判断しており、これだけの攻撃を行なっていたとしても体力やオーラ切れに関してはほぼ期待出来ない。
『ですのでベリアル眷属が長期戦を選んでいるのは時間稼ぎと戦力の引き付けの様に見えます。それにお互い今戦っている眷属以外は『王』を含めて姿を見せていませんし、まだ此処から中盤にかけて状況が動く要素は残っています』
『成る程、今戦っている選手だけでなく他の選手の動向に注目と言う訳ですね!』
今戦っている所もどちらかのチームの仲間が援軍に来るなりすれ一気に戦局が傾く可能性がある程度には戦力が拮抗しており、そこはダンタリオン眷属も理解しているので派手に戦いつつも援軍や罠を警戒して周囲の状況には気を配っていた。
しかし、少なくとも『レーティングゲームでの立ち回り』に関してはベリアル眷属の方に分があり、ダンタリオン眷属の攻撃を凌ぎつつも徐々に当初の作戦通り指定された場所へと誘導していった。
「……あー、やっぱ誘導されてんなコレ。狙いは罠……じゃなくて伏兵か」
「もう遅い!」
誘導された場所の地面に仕込んでいた拘束術式をベリアル眷属が発動させるも看破していたウルガが魔剣を突き付けて術式ごと地面を焼き尽くすが、それを囮にして潜んでいたベリアル眷属の『僧侶』と『
防御能力に長けたリリィを予め離した上でアタッカーであるグレイヴとウルガを狙った一手であり、野生的な直感と経験で直前にグレイヴは気付くもそれに対応するより早く伏兵による攻撃が放たれてその一帯ごと吹き飛ばした。
「流石にコレだけでは倒しきれんだろうが相応にダメージを与えてくれれば……」
「……残念、伏兵に関しては予想済みでござるよ」
「何奴!」
しかし、攻撃地点とは別の所から声がしたのでベリアル眷属がそちらを見ると、そこには忍者装束の男とその影の中から大したダメージもなく出て来るグレイヴとウルガの姿があった。
尚、その忍者の正体は言うまでもなくダンタリオン眷属の『騎士』である『風魔陽炎』であり、事前に念話で近くに潜んでいる事を伝えつつ奇襲を受けた時に神器『
「ドーモ、コンニチハ、ニンジャナイトです。……奇襲を仕掛けるのは警戒されてて無理だったのでこのぐらいはさせて貰うでござる」
「私を離した辺りでそこの2人を狙っているのは気付いておりましたので」
「伏兵と罠を引き摺り出せればまあいいかなって事だな。……さて、コレが本命って訳でもないんだろ?」
「……潜んでいた忍者の居場所を確認出来たなら十分だな」
離れていたリリィも一旦合流した所で戦闘再開と思われたが何かを感じ取ったグレイヴの疑問にベリアル眷属が意味深な事を言った瞬間、街中に張り巡らせていた探知網が本陣へと向かう悪魔の反応を捉えた。
その正体はベリアルチームの『王』であるディハウザーを含めた残りのベリアル眷属であり、彼等はダンタリオンチームの主戦力が本陣から離れた隙を突いて後方支援役の『僧侶』達や敵の『王』を取る為に動き出したのだ。
「そちらの回復役の厄介さは分かっていたからな。支援役を落とす作戦の一つとして敵主戦力を引き離してその隙に奇襲するプランがあったから実行に移したまでの事。『戦車』と『騎士』と言う正面戦力の中心が抜けた今が好機だったからな」
「しかし、奇襲に加えて皇帝自ら出陣とは思い切ったな」
「それだけ貴殿らの事を評価していると思ってくれて結構。私も嘗てのダンタリオンチームの戦いを見てレーティングゲームのプレイヤーの道を志したのでな」
「それは嬉しい言葉だ事で」
そう話している間にも皇帝率いるベリアルチームの本隊がダンタリオンチームの本陣に向かっており、時間稼ぎなどではなく本気で戦おうとしている目の前のベリアル眷属達を無視して援軍に向かうのは不可能だとダンタリオン眷属は判断していた。
……だが、そんな状況であってもダンタリオン眷属には動揺した様子はなく、歴戦の経験からそれがハッタリなどではないと気付いているベリアル眷属達も一切の油断なくむしろ『此処からが本番』だと判断していた。
「……ただ、そちらの様子だとこうなる事も予想の範疇だった様ですかな?」
「まあレーティングゲームで主戦力を引き離して『王』や後衛の戦力を狙うのは良くある戦術だからな。俺ら戦車・騎士組の多くが前のめりだから昔は良く同じ事をされたし」
「ですのでウチの『
「俺達が前のめりなのは護衛が『女王』1人居れば十分だからだ。他のメンバーの支援もあるしな」
皇帝に加えてその『女王』を含めた別働隊に自分達の『王』が狙われていると知ってもダンタリオン眷属がカケラの動揺もない理由こそが『女王』の存在によるモノであり、それを証明するかの如くダンタリオン本陣の方角からフィールド全体に響き渡る爆音が轟いた。
それはダンタリオン眷属『女王』たる『ララ・リデル』の神器『
「なっ!? あそこまでのパワーが……!」
「あー昔のレーティングゲームでアイツが本気を出した事はあんまりなかったかな? ルーキー時代は俺らだけで大体勝負が付いてたし、後半は運営の“ご厚意”で大量破壊が縛られるルールばっかだったからなぁ」
「あの女の本領は見ての通り広域殲滅ですので、そういった時には主人の護衛に回しておりました。確かにレーティングゲームで本気の戦闘を見せたケースは少なかったですわね」
「アレでまだ禁手は使ってないからな。全力ならフィールド全体を更地にするし」
「そこまですると味方との連携が難しくなるのが彼女の難点でござるが」
そんな他のダンタリオン眷属からある種の信用を向けられている『女王』は悠然と悪魔の翼をはためかせて宙に浮きながら、眼前の皇帝含めたベリアルチームに次々と音波による衝撃波を放ってフィールドごと敵を消し飛ばそうとする。
ベリアルチームも事前にダンタリオンチームの情報を集めていたのか音波防御用の術式によって苛烈な攻撃を凌ぎつつ反撃していくが、生半可な攻撃は音波振動結界による攻性防御によって吹き散らされ、更に超合金すら紙切れの様に斬り裂く超音波メスや可聴域外の低周波による内部攻撃などによる反撃を見舞われる。
「さて、あっちはあっちでやっているし俺達もやろうか」
「成る程、想定以上に強い。……だが、余り現レーティングゲームのトップチームと我らが『王』を舐めないで貰おうか。あの程度ならばディハウザー様は退ける」
「別に皇帝の事を舐めちゃあいないんだがね。……だから援軍に行く為にもこれから全力でお前らを仕留めに掛かる訳だしな!」
グレイヴのその言葉と同時にダンタリオン眷属全員が全力での戦闘態勢となり、それに応える様にベリアル眷属もこれまで以上のオーラを纏いながら戦いに臨む。
……此処から“現レーティングゲーム王者”と“嘗てのレーティングゲームの伝説”との戦いはお互いの駒を取り合う中盤戦に移行していき、それに伴い会場の盛り上がりは最大限にヒートアップしていくのだった。
あとがき・各種設定解説
グレイヴ・ランパード:管理人の『戦車』その1
・元々はスラムで生まれて神器とセンスによる腕っぷしで日銭を稼いでいたがある日に異形側の世界を知り、そっちのが金を稼げるとして異形ハンター的な異能者をやっていた所で管理人と遭遇、ボコられた上で転生者だと分かって眷属として雇われた。
・異形ハンターは趣味を兼ねてやってたぐらいには戦闘好きの脳筋だが元から野生的な直感力が高いので判断力は低くなく、半独立してから『王』としてゲームに出ている経験から指揮能力や分析力も身に付けているが本人的には前線で殴り合う方が好きな模様。
・戦闘スタイルはパワーを強化する神器『
・禁手はパワーを更に増強させる『
ウルガ・バーン:管理人の戦車その2
・道ならぬ恋をした下級悪魔と人間のハーフとして生まれて両親が死んでからは神器の力で盗賊崩れとして生きていたが、転生者探しをしていた管理人に見つかって保護されて眷属となった。
・基本的に真面目な性格なので維新兵士ニキと共に眷属内では色々と雑用をやらされるポジションであるが、上級悪魔になってからは自分と同じ身分の低いハーフ悪魔の保護なども行っている。
・下級悪魔のハーフなので魔力の才能は低かったが神器『
・禁手は『
リリィ・オルコット:管理人の守護騎士(自称)
・イギリスの円卓の騎士を先祖に持つ家系に生まれた転生者だったが生まれ持った神器と才覚から彼女を中心にお家騒動が起きてしまい、最早騎士としての誇りを失う程に腐ったと判断した実家を見限って出奔して使えるべき主人探しをしていた。
・その時に転生者探しをしていた管理人と出会って一目惚れして眷属に収まったが、同じく管理人に矢印向けてる『女王』と牽制し合って仲が悪く更に今まで色々忙しかったのと管理人自身にそういう願望が薄いので関係はあんまり進展してない。
・戦闘スタイルは実家で覚えた槍術と盾術でオーダーメイドの魔槍と神器『
・禁手は『
・主神の乳母を務めた伝説もあるアマルテイアの知性は高く彼女との関係も良好なので『騎士』の特性と電撃操作を応用する超高速移動や強化された電磁防壁や電撃による範囲攻撃を行い、更に彼女を乗せての騎乗戦闘なども可能。
読了ありがとうございました。
管理人眷属はどいつも上級悪魔詐欺の化け物ばかりです。こんな連中がレーティングゲーム初期環境に殴り込んだので環境は大分ぶっ壊れて今に至ると言う設定。次回は掲示板での実況回って言うか皇帝チームの情報ないから戦闘が書けん。