ハイスクールO×O ~目指せ!おっぱいドラゴン!~   作:貴司崎

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蒼月くんの夏休み

「………………はぁ、もう明日から夏休みか……」

「どうしたんだよ蒼月、せっかくの夏休みなのに」

「そうよ! 学校がお休みだからいっぱい遊べるじゃない!」

 

 放課後の駒王学園小等部、どの“旧校舎の一室”で俺こと『土御門蒼月』は迫り来る絶望を予感して机に突っ伏しており、友人である『兵藤一誠』と『紫藤イリナ』はそんな俺を胡乱げな表情で見ていた。

 まあ、普通は小学校の夏休みと言えば2人の様にワクワクするのが普通ではあるのだろうが、残念な事に俺にとっては定められた絶望へのカウントダウンに過ぎないのだ。

 

「夏休みには母さんの実家に帰る予定になっていてな」

「へーよかったじゃない」

「俺も夏休みにはじいちゃんばあちゃんの家に行くって父ちゃんが言ってた。あそこにはデカいカブトムシがいるんだぜ」

「……俺の場合は実家の近くにある霊山でサバイバル(強制)だけどな。カブトムシどころか怪異がいっぱいいるらしいぜハハハ」

「「えぇ……」」

 

 前から言われていたし改めて強くなる為に頑張ろうと誓ったので修行はするつもりだが、それはそれとして小学生の身で霊山でのサバイバルに不安を感じない訳じゃないんだよなぁ。

 ご先祖様である『鈴鹿御前』に由来する霊山なので神通力を磨くにはうってつけの場所だと母さんは言ってたけど、悪霊とか妖怪とかが住まう現世から半分ぐらい外れた『裏の鈴鹿山』って情報からして怖いんだけど。

 

「う、うーん、私も夏休みにはパパと一緒にエクソシストのお勉強をするから蒼月も頑張って!」

「おーう」

「え、えーっと、じゃあ俺も何か修行とかした方がいいのかな?」

「イッセーの場合は身体を鍛えるとかした方がいいんじゃないか?」

 

 ちなみに2人は以前の狗神モドキの一件で裏の話について知ってしまったのだが、小学生である今は『ファンタジー的な事もこの世界にはあるよ』程度の事しか教えておらず裏の深い部分に関してはまだ教えない方針だ。

 表向きは一般人家庭生まれで偶々裏の事を知ってしまった扱いのイッセーには裏の事は余り言いふらさない様に言うだけで、父親である紫藤さんがエクソシストだと知って『将来はお父さんの手伝いをする!』と言うイリナにももう少し成長してしてから自分の進路を改めて決めて貰う為に今はさわりしか教えない方針だそうだ。

 

「え、そんなんでいいのか? 蒼月とかイリナはなんか修行とかするのに」

「家業を継ぐ予定がある俺とかと違ってイッセーはオカルトの事を知ってまだどうするか決めてないだろ? 後は俺もイリナも今出来る訓練なんて無理のない範疇の勉強と運動ぐらいだしな。それなら身体を鍛えればどうなろうとも無駄にはならん。別にオカルトな存在と積極的に戦いたいとかでもないんだろ?」

「それはそうだけど。ただちょっとイリナと蒼月だけ修行するって言うから……」

「それなら時間のある日は一緒に修行(と言う名目で外で遊ぶ)でもするか。……それにこの世界のオカルトは大体鍛え上げた物理的なパワーがあればどうにかなるしな」

 

 やはりパワー、パワーこそが全てを解決する……って訳でもないが、いざと言う時に動ける体力があるかないかでも大きく違うしな。オカルト関係の事件に巻き込まれた時に普通の人間が取るべき手段は逃げる事で、その為に走れる体力は重要だからな。

 

「確かにそれなら身体を鍛える事は重要だけど、オカルト修行って言うともっとこう漫画に出て来るファンタジー的な術とかを想像してた」

「術とかを迂闊に教えるのは色々と危ないしな。俺とかはちゃんと昔から厳しい修行を積んで方術とかを使える様になってるけど、聞き齧っただけで使うと術者自身に危険が及ぶから。前に会った狗神モドキの術者はネットでマジックアイテム的な物を買ってあの狗神を使ってたけど、制御しきれずに生命力を吸われて死に掛けてたみたいだしな」

「お父さんもエクソシストの術とかはまだ早い今は勉強しようねって言ってた」

「後は家伝の術を他者に教えるのも色々問題あるしな。例えば一神教のエクソシストが他の宗教の術を使う事をよく思わないから、俺が法術をイリナに教えたりすると異端扱いされたりとかな」

 

 O×Oだと術を教え合う事は普通にやってるんだが組織に所属してない人に教えるのはアウトだし、イッセーの将来的な事を考えると体力付けさせる方が良いだろうしな。

 ……そんな事を話していると廊下から誰かが歩いて来る気配がしたので、そちら側を見ると教室の扉が勢い良く開かれて3人の女子小学生が部屋の中に入って来た。

 

「待たせたわね蒼月! ここで会ったが百年目、今日こそ術比べで勝ってみせるわ!」

「昨日も会ったと思うけどな忠美。それと翼紗と清芽先輩もこんにちは」

「こんにちはですわ。それとミチル先生は今日会議があって遅れるそうですの」

「こんにちはー、何話してたの?」

 

 教室に入って来るなり俺に指刺して来た少女は隣のクラスの『加茂忠美』で、後から入って来たボーイッシュな少女は『由良翼紗』、もう一人の金髪ドリルヘアーな少し年上の少女は一年上の先輩である『安倍清芽』さんである。

 忠美と翼紗に関してはこの前の狗神モドキ事件で知り合って以来友達になって、清芽先輩に関してはこの駒王学園小等部旧校舎の教室のクラブ活動『放課後オカルトクラブ』を設立するにあたって以前から親交のあったオカルト家系の先輩として加わってくれた人である。

 

 ちなみにこの『放課後オカルトクラブ』とは駒王学園小等部のクラブ活動の1つで、駒王町にある色々なオカルト的な話題を調べて発表するクラブ……という体で異能に関わる小学生を集める必要がある場合に設立されるクラブである。

 今回は原作主人公であるイッセーをそれとなく裏に関わらせて、かつ危険な事に首を突っ込まない様に行動を自然に制限する目的で異能に関わる小等部の人間を集めて顧問に色々と事情を知っている転生者である『朝日奈ミチル』先生を据えて活動している。

 

「俺達のオカルト修行に関して話してたな。とりあえずイッセーは体力強化で良いだろって。万一危険なオカルトに遭遇してしたら全力ダッシュで逃げなければならないのもあるから体力は必須だろ」

「確かにちょっとした悪霊ぐらいなら殴ればいけるよね。でも相手のレベルが上がると殴っただけじゃ倒しきれない事もあるよ」

「お父様も優れた魔物使いになるには自分自分の体力も重要だと言ってましたわ。魔物と共に戦うには魔物使いにも相応の実力を求められると。なので私もテニスを嗜んでおりますの」

「いや体力がいらないとは言わないけどさ、悪霊も物理攻撃で全部どうにか出来るとかは流石に……」

「ミルたんはマジカルパンチで悪霊をワンパンしてたが」

「アレを魔法とは認めたくないんだけど!」

 

 まあクラブ活動と言っても殆どが旧校舎の教室で駄弁るだけであり、偶にオカルト勉強として裏の一般的な常識について学んだり修行と称して外で遊んだりする程度なのだが、この前は町を守る異能者の紹介としてミルたんの見回りの仕事に同行する事があったのだ。

 ミルたんと面識のあるイッセーやイリナは問題なく、その辺り割と寛容な翼紗と清芽先輩も特に驚かなかったのだが、基本普通の異能者であり法術の勉強に熱心な忠美はミルたんの見た目のインパクトや魔法(物理)にかなりの衝撃を受けた様だった。

 

「うんうん、ミルたんさんの正拳突きはあれだけ強大な悪霊を一発で粉砕する惚れ惚れする様な一撃だったね。やっぱりパワーこそが一番重要だと思うんだ」

「様々な魔物や異能者が集う駒王町の治安を日夜守っている魔法少女がいると噂には聞いておりましたが、あの一撃はお爺様の相棒である最上級雪女の『ジャスリーン』にも匹敵しますわ」

「お父さん達エクソシストもミルたんと一緒に戦った事もあるみたい。この前『本当に実力と活躍には文句が付けられないんだよなぁ……』ってお腹を抑えながら言ってたわ!」

「いや魔法少女のコスプレをしたマッチョが拳で悪霊を殴り倒すとかおかしいと思わないの!?」

「この業界は変人率が割と高いからその辺りを一々気にしてたらメンタルが保たないぞ?」

「え、オカルト業界ってそんなんなの……?」

 

 まあこの世界の裏業界は物凄くバカバカしいギャグ展開があったり、逆に真っ黒なドシリアス展開があったりと割と両極端だからなぁ。具体的には『ハイスクールD×D』の本編と短編を参照。

 それからも俺らはたわいもないお喋りを続けイッセーが清芽先輩が話した『雪女』に興味を持ったり、忠美が術比べリベンジとか言うので室内でも出来る式神バトルで盛り上がったりしてクラブ活動の時間は過ぎていった。

 

「この世界には雪女も本当にいるのか……きっと色白美女なんだろうなぁグヘヘ……」

「それ程気になるなら今度の夏休みにお父様に頼んで見せてもらいましょうか? 雪女は魔物使いが契約する魔物の中でも高位の存在で扱いも難しいので、雪女と契約出来た魔物使いは周りから一目置かれる程の人物なのです。私もいつかはお父様の様に雪女と契約するのが夢ですわ」

「へー雪女ってそんなに凄い魔物なのね」

「それはもう、雪女はその圧倒的なパワーに加えて強力な冷気を操る能力を持ち、しかも麗しい毛並みの外見な魔物使いにとって憧れの生き物なのですわ」

「そこまで言うなら一回見てみたいかも」

「(まあ外見は雪ゴリラなんだがイッセーには黙っとくか)」

「油断したわね! さあいけ製作時間3日の私の式神8号!」

「油断? これは余裕と言うやつだ」

 

 なんか変な期待をして地獄に行きそうなイッセーが居たがこの業界ではよくある事なのでスルーしつつ、隙を見て殴り掛かって来た忠美の式神の攻撃を避けさせつつ自分の式神を操って回し蹴りを叩き込む。

 ちなみにこの式神バトルのルールは文具店で買った折り紙を指定枚数素材にして作った式神を使い、小学校の机を幾つか並べて作った一定のエリア内で戦う感じで、相手の式神を操作不能にするか場外に落とすかで勝利になるという無駄に凝った紙相撲である。

 

「グワアアアぁぁぁ!!! 場外!」

「はい蒼月くんの勝ちー」

「見事なローリングソバットでしたわね。折り紙で作った式神をそこまで動かせるとは」

「折り方にも拘っているんでな」

 

 陰陽術に関しても親父から叩き込まれているんでな。体術や神通力程に習熟してないからまだ実戦で使えるレベルじゃないけど、それでも式神を操るぐらいの技術はある。

 その後は式神バトルの感想戦をしつつ自分の式神にキレッキレの勝利のダンスを踊らせて拍手を貰ったりしてたが、そろそろ旧校舎の利用時間が終わろうとしていた所で教室に巨乳を揺らしながらミチル先生が入って来た。

 

「皆さんこんにちは……と言っても、もうクラブ活動を終えなければならない時間ですが。予想以上に職員会議が長引いてしまって」

「こんにちはミチル先生! 今日も最後に先生のおっぱいが見れたので大丈夫です」

「ありがとうございますイッセーくん。ですけど女性に正面からおっぱいと言うのはセクハラになるので公共の場では避けた方が良いですよ。……今日はもう遅いので最後に夏休みの予定や注意事項だけ伝えてクラブ活動は終わりにしますね」

 

 イッセーのセクハラ発言を軽く嗜めてからミチル先生は夏休みにおける注意事項や夏休み中のオカルトクラブの活動予定などを話していく。まあ各々予定があるしまだ小学生だから夏休み中に一日ぐらい集まってクラブ活動しようって話だが。

 

「後、皆さんは“オカルト”に関わってしまったので特に気を付けてほしいのですけど、夏休み中にはしゃぎたくなる気持ちは分かりますが決して危ない事はしない様に。特に子供だけで話題の心霊スポットに行ってみたり古い祠とかを壊したりはしてはいけませんよ。もし何かあったら事情を知ってる大人に相談して下さいね、勿論先生でも良いですよ」

「心霊スポットどころか霊山に叩き込まれる予定の俺はどうすれば良いんでしょうか?」

「蒼月くんの場合はオカルト関係の最上級のプロが付き添った上での修行ですので、良い子のみんなは絶対に真似してはいけないヤツです。他の人達も同じ修行がしたいとかで一人で深い山に入ったりとかは普通に危ないので、霊山とかでなくても野生動物と遭遇するだけでも普通に危険ですからね。修行は良いですけどちゃんと事情を知ってる大人の付き添いが必要ですから、オカルトに関わる場合には決して子供だけで行動してはいけませんよ」

『はーい』

 

 うん、感覚がちょっと麻痺してたけど普通に考えて小学生一人に山籠りサバイバルをさせるのは危険極まりない行為だよなぁ。まあ俺がどう思おうが山籠りは強制イベントなので回避不可能なのですが(泣)

 

 

 ──────◇◇◇──────

 

 

 それから夏休みが始まりまず山籠りの為にさっさと宿題を終わらせたり、オカルトクラブのメンバーって修行と称して一緒に遊んだり、イッセーが雪女の真実を知って底知れぬ絶望の淵に沈んだりしてお盆に差し掛かった頃、とうとう山籠りによる修行の時間がやって来てしまった。

 

「蒼月ー準備出来たー。それじゃあ実家に帰るわよ」

「ちょっと待って、サバイバル用具よし、呪符よし、法具よし。……多分準備出来た」

「荷物を持ち過ぎても邪魔になるだけよー。基本は現地調達でよくない? 貴方も創造系神器持ちなんだからそれで作って代替できる荷物は要らないわよ」

 

 母さん『土御門花蓮』がそんな事を言うけど、やっぱり初めての山籠りだからちゃんと準備していないと不安になるんだよ。霊山相手では気休め程度かも知れないけど。

 そうして準備を終えた俺と母さんは転移魔法陣の準備をしている父さん『土御門月下』の元へと向かった。今日は転移によって母さんの実家である『坂上家』へ挨拶に向かい、そこで管理している霊山の一つを山籠りに使わせてもらう予定らしい。

 

「去年は父さんの実家である土御門家に挨拶に行ったけどその時は車を使ったよな。今回は転移で行くのか」

「坂上家は『鈴鹿山脈』の一般には知られてない山奥にあるから車で行けないのよ。車道ぐらい通すべきだと思うんだけど。後は駒王町から土御門家は車でも問題ない距離だったしね」

「転移は一瞬で着くが事前に彼方さんと話を合わせておかないと面倒なことになる。何処の縄張りにも転移を感知する結界ぐらいは仕掛けてあるから、特に家近辺への無断の転移とか最悪宣戦布告と取られる恐れもある。公共交通機関で行ける距離ならそっちの方が面倒ごとが少ない」

「まあ今回は実家に帰るだけだからそんな面倒な事にはならないけどね。それでも家に直接転移せずに決められた近場の儀式場に一旦転移して、そこから実家がある山まで歩かないと行けないけど。……やっぱ車道は必要だと思う」

 

 この世界だと当たり前に使われている転移魔法ではあるが色々と誓約があるんだそう。他にも普通は準備に手間が掛かったり、転移そのものを探知・妨害される事も多いので基本的には非戦闘時の移動用なのだとか。

 今回の転移魔法陣も坂上家の血縁者である事を鍵とする転移術式なので、準備は父さんが行ったが起動は母さんがやらねばならないセキュリティがあるのだとか。

 

「……はい、そういう訳で転移したわ。全員無事ね、身体がバラバラになったりしてない?」

「するの!?」

「流石にそこまで派手な失敗が起きる前に転移術式は強制停止するぞ。……ここから30分程歩けば坂上家に着く、行くぞ」

 

 そうして転移によって小さな神社に着いた俺は両親の後に着いていく形で山登りを始めた。一応人間が通れる道があるが傾斜が厳しく、鍛えている事もありどうにか登る事が出来ているが思ったよりもキツかった。

 尚、俺が思ったより疲れてるのは荷物が重かったのと、両親は涼しい顔でスイスイと登っていくのでそれに着いていくのが大変だったのが主な理由である。

 

「やっぱもうちょっと道は整備するべきじゃないかしら。我が実家ながら車が通れる様にして欲しいわよね」

「仕方あるまい、坂上家は“霊山としての鈴鹿山脈”の管理者なのだからな。表の鈴鹿山脈に来る普通の観光客が入り込まない様に普通は来れない道の先に住んでいる訳で。そもそもその霊山を使わせて貰う立場なのだから文句は言えまい」

 

 鈴鹿山脈は三重県から滋賀県の県境に連なる山脈であり登山やアウトドアエリアとしても有名なのだが、今俺達がいる場所はそういった表の一般人には入れない様になっている特殊な場所の一つなのだそうだ。

 坂上家の分家筋である母さんの実家はこの先にある霊山に一般人が入り込まない様に管理していて、今回は実家への挨拶ついでに山籠りの修行場としてその霊山を使わせて貰うという話なのだが……。

 

「はい着いたわ。ここが私の実家よ。……おーい、帰ったわよー。父さんと母さんまだ生きてるー?」

「お二人には事前に電話しただろう。転移した時先に連絡用の式神も送ったからな。お邪魔します」

「えーっと、お邪魔します」

 

 そうして暫く山登りをすると山の中にある一軒家に到着、そしたら母さんが遠慮なくその家の扉を開けてズカズカと中に入って行ったので父さんと俺もその後に着いていった。

 その家は外から見ても普通の田舎の一軒家といった感じで中も畳とフローリングが敷かれている普通の家の間取りだったが、何処となく懐かしい様な不思議な感じがした。

 

「……あー!? 生きてるに決まってるだろ! やっと挨拶に来たねこのどら娘が!」

「しょうがないじゃない私ら蒼月の子育てとか駒王町の管理人として最近忙しかったんだから。定期的に電話はしてるでしょ」

「申し訳ありませんお義母さん。中々挨拶に来れず」

「ああ月下くんは別に良いんだよ。どうせそこの娘がお家騒動で出てった坂上家に帰るの面倒だなぁって仕事に託けて駄々を捏ねたんだろ」

「父さんったらそんな事は……あんまりないよ」

 

 そう思っていたら家の奥から老年というには若々しく見える女性と男性が姿を現して両親と話し始めた。母さんの砕けた態度から親しい仲である事が伺えたので、恐らくこの2人が母さんの両親であり俺の祖父母なのだろう。

 

「おお! その子が蒼月か! いやぁ大きくなったなぁ!」

「初めましてお爺ちゃんとお婆ちゃん、土御門蒼月です」

「礼儀正しい子だね、月下くんの教育が良かったんだろう。……蒼月は覚えとらんかもしれんが、まだちいちゃい頃に此処に来た事があるんよ」

「蒼月が生まれたばかりの頃に一回連れて来たからね。覚えてないかしら」

 

 母さんへそう言うが流石にそんな小さな時の事は覚えてないな。前世の記憶が蘇った時にそれ以前の『土御門蒼月』としての記憶が少し曖昧になってるのもあるのかもしれんが。

 

「まあ赤ん坊の頃の事なんて覚えとらんだろうさ。それよりも上がっておいき、お菓子もあるでな」

「あのバカ娘からこんな利発な孫が産まれてくれるなんて本当に月下くんには感謝だね。どれお小遣いをあげよう」

「さっきから私と2人の扱いに差がありすぎない?」

「色々面倒だからって自分を当主にしようとする本家の連中をしばいて出ていった娘には当然の対応じゃろ」

「この娘は小さな頃から無駄に優秀だったせいで色々とバカやってたからねぇ。鈴鹿山一体の不良をシメて『鈴鹿山レディース』の大総長とか訳の分からない事をするしのぉ」

 

 とりあえず家に上がってお爺ちゃんとお婆ちゃんがくれるお菓子を食べながら話しを聞いてる俺だったが、母さんの昔の話がチラホラ出て来て正直ちょっと飯能に困った。父さんも苦笑してるし。

 

「いや当時は確かにちょっとやんちゃしてたと言うか、そもそもこの近辺の不良が鬱陶しかったからついね?」

「最近では『真・鈴鹿山レディース』とか『元祖鈴鹿山レディース』とか『ネオ鈴鹿山レディース』とかが現れて抗争してて周辺の住民は迷惑してるんだからなんとかおし!」

「嘗て鈴鹿山一帯を治めた伝説のスケバンの後を継ぐんだとか言っておったのう」

「いやもう十年以上前に鈴鹿山レディース云々は解散してしたんだから今更そんな事を言われても。それに私がトップだった頃は堅気に迷惑を掛けない事を徹底してたんだけどなぁ」

「過去に成した功績は良かれ悪しかれ残って後世に影響を与えてしまうものだな」

 

 常に余裕があって超然としている母さんがここまでタジタジになってるのを見るのは初めてかもしれない。坂上家とは殆ど出奔したみたいなものだと聞いてたので実家に帰るのは少し不安だったのだが、どうもお婆ちゃん達と両親は普通に仲が良い様で安心した。

 それからお婆ちゃん達と色々と話をして実家には修行に来た事を言ったら感心されたり、母さん殿日々の修行内容を話したら小学生にやらせる内容じゃないだろとまた母さんが怒られたり、それに対して私もこのぐらいの歳にはお婆ちゃんにボコられてたよねと母さんが反論したりと楽しく会話してた。ちなみに父さんはのんびりお茶を啜ってた。

 

「その歳でちゃんと自分の意思で修行をやってるのは偉いな。異能の家で生まれた子供のように“それが当たり前だからやっている”と言う感じでもないしな」

「うーんと、最初は流されるだけだったけど最近になって強くなって大切な人と並び立ちたいと思える様になったので……」

「その年でそこまで考えられるとは偉いな蒼月は。ほれお菓子をあげよう」

「この可愛げのないどら娘からよくこんな素直な子が生まれて来たもんだよ。同い年の頃の花蓮なんて修行もそこそこに好き勝手してたからねぇ」

「修行自体はちゃんとやってたでしょー」

 

 何でも子供の頃の母さんは天才と言える規格外の才能+前世の記憶でかなりやんちゃしていたらしく、お婆ちゃん達の修行も直ぐに技術を身に付けて同年代の子供の中でも頭抜けた実力を無自覚に示し続けてしまったのだとか。

 本人が善人なので修行自体は真面目にやって坂上家の家業も問題なくこなしていたのだが、今の坂上家当主を模擬戦でボコボコにしたり堅気に迷惑をかける不良集団をしばき倒したりしていつの間にか最強のスケバンと呼ばれたりしてお婆ちゃん達は色々と苦労したらしい。

 

「子供の頃から実力が高過ぎると周りに影響を与えるのかな。俺も気を付けた方がいいか」

「蒼月はまだまだ小さいからそんな気にせんでもええよ。そもそも子供の頃に色々とやらかす事や子供が自分がやった事に責任が取れないのは当たり前さ。そういう時に代わりに責任を背負うのも大人の務めだからねぇ」

「代わりに責任を負って子供に正しい責任の取り方を教え導くのも大人の役目よ。そしていずれその子供が大人になった時にまた別の子供に同じ事をしてやれればいいのさ。……あのやんちゃ娘も一端の“親”になれてるみたいだしねぇ」

「悪い事をしたなら叱らねばならんが、子供が失敗や責任について深く考え過ぎて何も出来なくなる事もよくないからな。失敗を糧にするのは必要だが失敗を過度に恐れる必要はない」

「仮に今蒼月が何か失敗しても出来るだけ責任は私達“大人”が取るわよ。少なくとも高校卒業して成人するぐらいまではね」

 

 ……幾ら前世の記憶があるとは言えお婆ちゃんや母さん達の話しを聞くと自分がまだまだ“子供”だと思ってしまう。兎に角今は精一杯頑張って強くなるしかないかな。

 

「確か蒼月は山籠りの修行に来たんだったな。なら山に行っても大丈夫かお婆ちゃんが少し見てやろう」

「花蓮は優秀過ぎてすぐに教える事がなくなってつまらなかったからな」

「お願いしますお婆ちゃん、お爺ちゃん」

 

 そんな訳で実家での祖父母との付き合いは非常に良好な感じになったと言うか、2人とも孫が可愛いのか凄く構ってくれるしお小遣いもくれたので嬉しかったです(小並感)

 ……尚、お婆ちゃん達に少し修行を付けてもらったのだが2人とも家業は引退したと言う話なのにめっちゃ強くて、俺が想像以上にやる様だと分かったらかなり修行が厳しくなった。どうも母さんの修行が厳しいのは祖父母譲りの模様。

 

 

 ──────◇◇◇──────

 

 

 それから祖父母と遊んだり修行を付けて貰ったりして数日が過ぎた頃、これなら霊山に行っても大丈夫だろうとお婆ちゃんに言われて俺は母さんと一緒に山登りをしていた。

 この数日で大分山にも慣れてきたからスイスイ歩いていく母さんに着いていけるんだけど、なんか山の空気が変な感じになっていると言うか虫や動物の気配とかが消えてる……?

 

「ああ、此処の霊山は少し“幽世”に寄ってるから」

「え、此処は実は冥界とかになってるの?」

「黄泉とか冥界みたいな完全な別世界と言える程に現世からは外れてないわね。……古来より山は現世とは違う神秘的な場所だと言われてきたの。それ故になのか山の中にはあの世とこの世の境界となり、現実から少しズレた“異界”となっている場所もあってね、此処もその内の一つって所かしら」

 

 母さん曰く、今俺達がいるこの山は現実空間には存在しない異界となっており、この霊山の存在が表側に影響を及ぼさない様に管理するのが祖父母の仕事なのだそうだ。

 

「まあ此処はそこまで深度の深い異界じゃないから危険性は低いわね。黄泉比良坂と繋がってるとかでもないから、自生してる木の実とかを食べると現世に戻れなくなるって事もないわ。私も小さい頃はこの霊山で遊んでたし」

「いやそれ“黄泉竈食”じゃん。持って来た携帯食料と水でどうにかします」

「どうにか出来ればいいわね」

 

 なんかニヤニヤ笑ってる母さんを見て嫌な予感が過ぎる……と言うか“危険性ぐらい低い”って母さんの実力基準じゃないだろうな。お爺ちゃんから幼少期の母さんの武勇伝(オブラート)を聞いた俺にはそう思えてならない。

 ……いや、小学生の頃に討伐隊が組まれるぐらいの凶悪な悪霊を聖剣で倒して調服したとか、中学生の頃には坂上家に伝わる四本の神霊剣全てに選ばれたとか色々暴れ回っていたらしいし。

 

「大して危険でない霊山の異界だから霊気とかを感じ取って霊感を研ぎ澄ませる修行には最適なのよね。……ただ“お盆”になるとちょっと事情が変わるんだけど」

「へ?」

「お盆は日本の祖先の霊をお迎えして供養する行事ではあるんだけど、そういう事をするのはこの時期にこの世とあの世が近付いて霊が現世に現れやすくなるからなのよね。だから霊を祀って供養する儀式を全国的に行って現世の安定を保つのが“お盆”の裏の目的だったりするわ。……まあ日本の神仏や異能者の家系が働いてるお陰で現実の表社会に影響が出る事はそこまでないけど」

 

 お盆の時期に怪談とか幽霊による騒動が多いのもそういう理由だとは前に習ったな。地域によって差異はあるがあの世とこの世が近付いてしまう時勢は世界中にあるらしいとも。

 ……そこまで考えて現世から半分ズレているらしいこの霊山はどうなるんだと思い、それと同時に山の中から不気味な気配がこちらを見ている事が感じ取れた。

 

「気付いたみたいね、半分ぐらい幽世によってる此処の霊山はお盆の時期になるとあの世との距離が近くなるのよ。だから“あちら側”の存在が迷い出てしまう事もあるわ。まあ結界が張ってあるから現世にまで出る事はないんだけど、あちら側の存在は現世には早々出られないしね」

「えーっと、つまり今この霊山にはその“あちら側”の存在が沢山いると」

「そうなるわね。……後、この鈴鹿山脈は嘗て日本三大妖怪の一体にして最強の鬼神『大嶽丸』が住んでいた場所でもある。その大嶽丸は昔に坂上家の祖である『坂上田村麻呂』と『鈴鹿御前』が討伐して今は封印されているんだけど、その影響なのかこの山には『鬼』が出やすいのよ」

 

 母さんがそう言うと同時に山の中の木々の影から子供ぐらいの背丈で角と牙を持ち、禍々しいオーラを放ちながら敵意の籠った瞳でこちらを見据える鬼が十匹以上も姿を現した。

 

「まあ此処にいる『鬼』は現世に住む妖怪としての“鬼種”ではなくて、あの世の住人である“幽鬼”や“餓鬼”の類いなんだけどね。それ故に現世の生者に対して敵意を向ける事が多いのだけど」

「あの、なんかめっちゃ数が多いんですけど」

「今年はちょっと数が多いわね、まあどのくらい湧くかはその年によって違うからこういう事もあるでしょ。悪霊も多いみたいだしね」

 

 母さんは平然としているがこうしている間にも山の中から多数の鬼や悪霊が現れて生者である俺達に嫉妬混じりの敵意や悪意を向けており、今にも襲い掛かられそうで俺は気が気ではないんだが。

 

「まああの世の本当にヤバい連中は彼方に縛られている上に黄泉の神仏や地獄の獄卒が見張ってるから現世には来れないわよ。此処に来てるのは縛られない程度に軽い雑兵だから。……という訳で山籠りを始めるわよ。とりあえずこの山の中で24時間生き延びなさい。時間になったら迎えに行くから」

「え?」

「今も蒼月の実力であれば“生き延びる”だけなら問題ないわよ。頑張ってね〜」

 

 それだけ言い残した母さんは神速通を使ってその場から気配すら残さずに消え去ったのだが、それはつまりこの場に鬼や悪霊もすらも警戒する様な絶対強者が居なくなって大した力のない俺という小学生1人が残されたという事であり……。

 

「「「「「キシャァァァァァッ!!!」」」」」

『『『『『オオオオオオオオオォォォ!!!』』』』』

「やっぱ来たぁぁぁ!?」

 

 そんな存在をあの世から来た鬼と悪霊が見逃す筈もなく、怨嗟よ嫉妬などの負の感情が籠った叫びを上げながら一斉に突撃して来たので俺は叫びながらも迎え撃つべく武器の石器を召喚して構えた。

 ……こうして俺は霊山での山籠りという名の大量に居る鬼と悪霊とのサバイバルデスマッチを行う事になってしまったのだった。




あとがき・各種設定解説

放課後オカルトクラブ:駒王学園小等部のクラブ活動
・元々は表向きはオカルト関係の活動をするクラブだが、裏では生徒会や風紀委員がない駒王学園小等部で生徒によるオカルト問題に対する対処を活動とするクラブとして設立された。
・ただまだ未熟な小等部の時期で学内の問題を解決出来る人材が少ない事、そして裏事情を知ってる小等部教員や用務員が増えて彼等が学内の問題を解決する体制が整った事で必要なくなり自然消滅した。
・そんなクラブをイッセーやイリナ達の受け皿として転生者関係の職員が根回しして復活させたのが今の『放課後オカルトクラブ』であり、彼等特殊な異能者小学生の行動をある程度制限しつつ監視と訓練を行う場として使用されることになった。
・今は部員が小等部低学年な事も考慮してクラブ活動という名で放課後に教室で遊んでるのが殆どだが、一応オカルト関係の裏事情の授業や修行と称して外で遊びながら体力を付ける事もやっている。

土御門花蓮:昔は割とやんちゃしてた
・彼女は才能という点では転生者内でもトップクラスであり既に古参勢と同等の実力を持っているが、幼い頃はその才能と前世の記憶が悪い意味で合わさって裏社会の常識に馴染めず色々と問題を起こしていた時期があった。
・いちおう問題と言っても悪行を成したとかではなく絡んで来た年上の従兄弟(後の坂上家当主)をボコボコにしたり、近所で迷惑行為をしていた野良異能者が率いる不良集団を薙ぎ倒して統一した上でボランティア集団にしたりと悪い事ではないが側迷惑な感じ。
・それから坂上家の凄腕の異能者として活躍していたが占い師ネキからの接触と“とある事件”をきっかけに嫁入りを名目にして坂上家を抜けてO×Oに加入したのだが、結婚してからはちょっと周りの事を考えてなかったかなと思う様になって実家に色々援助をする様になった。
・そんなどら娘(本人談)だったが様々な事を教えてくれた両親との仲は良好であり、色々やらかした自分を育てて周りへの迷惑をフォローしてくれていた両親を見て『子供の責任を代わりに背負い子供が正しく責任を背負える大人になれる様に導くのが大人の役目』という考えを大人になってから得るに至った。

お爺ちゃんとお婆ちゃん:花蓮の両親
・お爺ちゃんが坂上家当主(現在は引退済み)の弟でお婆ちゃんは坂上家に縁がある異能者の家系から嫁いで来ており、二人共若い頃は高位の異形を退治したり後進の育成を行ったりする凄腕の退魔師として有名だった。
・現在では衰えを感じたので現役は引退してしており隠居ついでに霊山の管理人の1人として余生を過ごしているが、現役時代の活躍からの坂上家の中でも世話になった人は多いので影響力は結構ある模様。
・娘である花蓮の事は立派に育って自分達を遥かに上回る退魔師として活躍している事を誇りにも思っているが、同時にやんちゃ過ぎるどら娘なのでそれと比べれば素直な蒼月の事は可愛がっている。
・ちなみに本人達は武闘派なので修行はスパルタでありその辺りは娘の花蓮にも受け継がれていて、蒼月は結構扱かれた上で一日ぐらいなら霊山に1人でも大丈夫だろうと判断されて山籠りとなった。


読了ありがとうございました。
この業界で老人を見たら生き残りと思え的な事が割とあるハイスクールD×D。実際長年人間の身で偉業蔓延る業界を生き残ってる訳だからこの世界の老人は強いと思う。
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