ハイスクールO×O ~目指せ!おっぱいドラゴン!~ 作:貴司崎
人と異形が暮らす町駒王町にある駒王神社の本殿、特注の情報を遮断する結界を敷いた一室で神社の神主である私こと『土御門月下』は妻の『土御門花蓮』と共に神父服の男性『紫藤トウジ』と内密の話をしていた。
「………………つまり、表向きは正臣くんとクレーリアさんは我々が説得して関係を諦めさせた事にして、裏では後で教会から出た正臣くんをあなた方『Outsiders×Organization』が保護。同じく保護したクレーリアさんと数年後を目処に再会させると?」
「そういう準備を我々であれば出来ます」
話の内容は現在彼ら駒王町管理者を悩ませている『八重垣正臣』と『クレーリア・ベリアル』の関係についてであり、先日O×O側で話し合わせた解決策を教会側の管理者である彼に伝えた訳である。
「我々O×Oにとっては異種族同士が恋愛関係になる事は珍しくもないから彼等を保護する上で特に支障はない。まあ“駒王町の管理者”という立場が面倒ではあるから、その立場から外れた後に暫く時間を置いてからという事になるが。……それに彼等に互いの事を諦めさせる説得は上手くいっていない様だからな」
「その様子だと正臣くんを説得しようとして色々と考えてあんまり眠れてない見たいね。私も2人に互いの立場や現状含めて説明して説得してみたけど、自分達の考えが甘かった事は自覚しても互いへの想いを諦める様子は微塵もなかったからねぇ。若いわねー」
「………………」
隠してるみたいだが分かりやすい憔悴した雰囲気に加えて、紫藤氏の顔には隠しきれないクマがあるから相当に現状を気に病んでるみたいだな。まあ最悪自分の部下を自分で処理しなければならないから仕方ないが。
「だからこその折衷案だ。表向きは駒王町に何も問題なかったとしながら裏では関係を認めるという話にしてくれ、そういう風に話を合わせてくれとなれば彼等も納得してこちらの説得に応じる可能性が高いからな。これ以上話が拗れて管理者に死人が出るなどと言う事になるのは正直困る」
「貴方達はこの一件で死人が出ると?」
「今の悪魔とエクソシストの関係的にそうなってもおかしくないでしょ。それに紫藤さんの表情からして『これ以上問題が大きくなる前に正臣くんを消してしまえば……』的な事も考えているでしょうし」
「ッ!?」
まあ一番手っ取り早くこの問題を解決する方法はそれだからな。禁忌を犯した者への粛清として教会が八重垣正臣を処理、最愛の相手を失ったクレーリア・ベリアルは失意のままに駒王町を去るって展開で。
「貴族悪魔であり『ディハウザー・ベリアル』を身内に持つクレーリアに危害が加わる、或いは教会のエクソシストが彼女に手を出したと知って魔王級の悪魔である
「だが、秘密裏に2人を保護するには悪魔側の協力も必要でしょう。それに教会も悪魔と通じたエクソシストを見逃す事はありません」
確かにこの案の最大の懸念点はそこではある。件の『王の駒』の一件がなくとも教会は悪魔と通じたエクソシストを裏切り者として狙うし、悪魔側もエクソシストを愛した貴族悪魔を始末しようとする。
……それがこの世界に於ける今の時代の“常識”であり“普通”だから紫藤氏が懸念している事は決して間違いではない。
「まずベリアル家に関しては我々O×Oのスポンサーであるダンタリオン家の最上級悪魔『ジークレド・ダンタリオン』殿が秘密裏に交渉して協力を要請している。ベリアル家は貴族悪魔でありながら貧乏になっても領民を優先して生活の質を落とす事も出来る身内に優しい一族である様だから、この交渉が成立する可能性はあるでしょう」
「まあエクソシストとの関係が認められるかはクレーリアちゃんが家族を説得出来るかどうかだけど、クレーリアちゃんの為ならこれ以上騒ぎが大きくならない様に話を合わせるぐらいの協力は飲ませられると見てるわ」
「貴族悪魔が領民の為に生活の質を……?」
信じられない話を聞いた様な反応を見せる紫藤氏だが、エクソシスト的には悪魔側というのは基本的に不倶戴天の異形でありそんな“人間らしい行動”を取るなど信じられない方が普通なのだ。
それにクレーリア・ベリアルと言う善良な貴族悪魔を見てきたのもあるが、彼はこちらの情報を頭から否定せずに考える素振りを見せている辺り教会の信徒としては非常に柔軟な思考をしている。
「教会に関しても我々O×Oは教会から異端認定された
「そもそも神器は一つ残らず『聖書の神』が作った物なんだから異端扱いする方が間違ってるんじゃないかしらね。まあ空の上のエンジェルにも色々と事情があるんでしょうけど」
「……その辺りについては一介の神父でしかない私には何も言えませんが、不本意な理由で追放された信徒と教会の視点では大罪を犯した者をそちらでは同じ扱いに出来るのですか。表向きは悪魔とエクソシストとの恋愛などなかったとするにしても、後に再会させる為に保護など本当に出来るのですか?」
……やっぱりこの人は“良い人”だな。表向きの話で正臣くんを説得して後の事はこっちで適当に処理としても教会側からすれば問題ないのに、彼の“保護された後”について気にしている。
本心としては彼等をどうにかしてやりたいと思っているが教会のエクソシストと言う立場、そして今の悪魔と教会の関係から2人が行く道は茨の道と言う言葉では済まない過酷になるからどうにかして引き留めたいと考えてるのかな。
「まず2人の関係については表向き諦めてもらう話を受けるなら身柄の保護と後でキチンと再会させる事は確約するが、その関係を他の者達に認めさせられるかは2人の努力次第としか言えん。まあ婚約を家族や身内に認めて貰うのは本人達がやるべき事だからな」
「私達に出来るのは“貴族悪魔とエクソシスト”って立場から来る面倒事をどうにかするぐらいって事ね。クレーリアちゃんがベリアル家に自分達の事を認めて貰うか、そして正臣くんが貴方に自分の想いを認めさせられるかに関しては直接どうこうしないわよ。前に2人にも言ったけど厳しい道であるのは事実だから、そのぐらい自分達でどうにか出来ないなら諦めた方がいいだろうし」
「……本当に貴方達は悪魔と信徒と言う立場、遥か昔から殺し合ってきた二勢力の関係をどうにか出来るのですか?」
そう言った紫藤氏の表情には他の勢力である管理者の自分達の前ですら隠しきれない苦悩が垣間見えた。どうもこちらの想像以上に今回の一件で心を痛めていた様だな。
「本当は私も分かってはいるのです、正臣君が一時の感情ではなく本気でクレーリア・ベリアルの事を愛しているのだと。教会に預けられてから一人前のエクソシストとなるまでずっと面倒を見て来た、もう1人の子供とすら思っている彼の本心を私が見間違える筈がない。クレーリアさんに関しても彼女がエクソシストを籠絡する様な悪魔ではない事は分かっていますし、2人が本気で愛し合ってただお互いの事を認めてほしいと思っているだけなのだと。……だが、この世界では悪魔とエクソシストが結ばれるには余りにも敵が多過ぎる。私自身悪魔に籠絡された信徒を裏切り者として手に掛けたことすらある。そんな世界であの2人が結ばれても私が見逃そうとも直ぐにその命は絶たれるでしょう」
「「………………」」
まるで懺悔する様に自分の想いを吐き出す紫藤氏に対して私も花蓮も何も言わなかった。彼の言っている事に間違いはなく、この世界が綺麗事で成り立たないと言う事は理解する程度には私達も色々と経験を積んできたからだ。
……はぐれ者となる異能や異形を掬い上げる事を命題とするO×Oだからこそ、人道を外れて魔道に堕ちた事で表の人達との共存を成せなくなった者に対処する業務もあるし私も幾度となく悪行を成した異能者を始末してきた。
「貴方達が異能者や異形とのハーフなどが当たり前に暮らせる場所を作る事に本気で取り組んでいる、その事はこの町で管理者をしながら多くの他宗派の異能者や普通に暮らす異形を見て分かっているつもりです。そうした者達が暮らせる場所が出来た事でこの国での異能や異形による犯罪率が少なくなっている事も実際の数値として現れています。……だからこそ貴方達の行いを良く思わない者や危険視する者達も多く、教会や悪魔勢力も利益があるから協力しているだけであり不利益を齎す様な結果となれば掌を返すでしょう。そしてそれを齎した者には責任が来る」
「2人を保護する事で私達が不利益を負わされ、そこからその原因となった2人を切り捨てるのではないかと?」
原作の三大勢力が和平後に色々と問題を噴出させた事からわかる通り、共存や和平といった言葉は聞こえよく映るが実際の所はそれが成せない現在の勢力均衡や損得利益の破壊とイコールであり良く思わない者も当然出る。
実際O×Oでも悪魔側もスポンサーなのと神器関係で同業他社の堕天使勢力とは関係が悪いし、五大宗家など異形との共存を良く思わない国内の異能者組織とは仲が良い筈もなく、悪魔や教会にもこちらを敵視する派閥もあるから政治的な小競り合いや軽い武力衝突は結構ある。
「貴方達の人間性を疑う訳ではありませんが勢力間の均衡は個人の意思ではどうにもならない事ぐらいは私も理解しているつもりです。貴方達が多大な労苦でもって異形との共存を成している事も。……その上で“悪魔とエクソシストとの恋愛”の為に貴方達は何故そこまで手を尽くそうとしているのですか。そしてどうしてそこまで出来るのですか?」
……エクソシストとして活動してきた紫藤氏にとっては我々O×Oの事が完全には信用しきれない、と言うか今の裏の世界からすれば我々の行いの方が異常なのだから理解しきれないのは仕方ないんだが。
それでも私達やクレーリア氏の人柄はちゃんと見ていて、本当に正臣君を任せて大丈夫なのかやこの一件で私達が勢力間の均衡を崩さないのかを気にしている辺り本当にエクソシストとしては柔軟で得難い思考をしているよな。
「やっぱり紫藤さんは“善い人”だな。やっぱ今後の
「ええそうね。……それで、私達が追放されたエクソシストを保護出来るかどうかと何故そうするのかが知りたいと言う話だけど、とりあえずエクソシストを保護出来る“確証”を連れて来てるわ」
「……はい! 呼ばれて来ましたよ!」
「私まで来る必要あったかしら?」
そう花蓮が言った直後に勢いよく襖が開かれて金髪碧眼でゴスロリ風味の改造シスター服を着たロリっ子と、それよりは頭ひとつ分ぐらい背が高い小柄でトンガリ帽子と魔女っぽい服装の女性が部屋の中に入って来た。
「げ、月下殿? この娘達は一体……!?」
「今回の事情説明に必要だと事前に呼んでおいたO×Oのメンバーだ。内密に隣の部屋で待機させていた事は謝罪しておく」
「どうも初めまして紫藤トウジさん、私はジークレド・ダンタリオン眷属の
「話に聞いていた通り“善い人”ですね信徒紫藤! 私はO×Oにて保護したキリスト教信徒達の纏め役のレイラ・ブランシャールです。今日は以前に呪いを解いた子達の定期検診ついでに呼ばれました。後ハーフ天使の『奇跡の子』です」
「ブッフォォッ!?」
ロリっ子もといレイラが五対十枚の天使の翼と頭上の光輪を展開したのを見た紫藤氏は飲んでいたお茶を勢いよく噴き出したので、素早く水分操作系の結界を敷いてこっちに掛からない様にしつつお茶を蒸発させる。
まあ奇跡の子とか数えるぐらいしかいない希少な存在だろうし、翼十枚とか大天使クラスの証明だから教会の信徒的には驚愕の光景だろうな。そんな存在がO×Oなんて言う教会以外の組織に所属している事含めて。
「な、なぁ!? き、奇跡の子が何故こんな所に……!?」
「第二次世界大戦時に色々あってね。ちょっとミカエルの顎にアッパーをかましたり、宿した神器の影響で教会に居られない事情が出来たから追放されてO×Oに所属する事になったの。ああ詳しい事情は一介の信徒である貴方は知らない方が良いよ。教会の暗部に消されるから」
「セ、セラフの顎にアッパー???」
ちなみにレイラは見た目はロリっ子だが半分天使な事もあって実年齢は70超えてる、まあ長命な超常の存在の見た目なんて幾らでも変えられるから当てにならないんだが。
本人曰く『教団』と第三帝国と教会及び天界の過激派が起こした『
「まあそう言う訳で教会の上とか天界とかには多少の伝手があるからエクソシスト1人ぐらいなら面倒見れるよ。と言うか、私がいるから天界も追放された神器所有者の信徒を預かる事を許してる感じ。私が色々とあちらにとっても触れ難いからある種の黙認に近いけど」
「うーん、紫藤さん目が白黒してるわね」
「いきなり一般信徒に奇跡の子をドーンは流石に刺激が強過ぎるでしょ。気付けの魔法でも使うか」
エリスタが精神を安定させる軽い精神干渉を使い、花蓮がこんな事もあろうかと準備していた気分が落ち着く漢方茶を振る舞った結果ようやく紫藤氏は落ち着きを取り戻した。
「はぁぁぁぁ……。ありがとうございます、落ちつきました。……それはそうとどうして堕天した訳でもない天使、しかも奇跡の子が天界や教会ではない組織に……?」
「まあ昔色々あったのはさっき言ったけど、今私がO×Oに所属しているのは私自身の“信仰”に基づいて主の手から溢れてしまった人達に手を差し伸べる為。数多の神話が存在するこの世界では主も全知全能では足り得ず、その使徒である天使や教会は言わずもがな。結果として本意ではないにも関わらず信仰を許されなず教会を追い出される者も出てしまうのが現実だよ」
先程までとは雰囲気がガラリと変わって御告げを降す天使の様になっているレイラだが、彼女は前世からのクリスチャンであり根っから聖書の教えを信仰している信仰者なのだ。
「聖書の解釈には人によって色々とあるけど『右の頬を打たれれば、左も向けなさい』『汝の敵を愛せよ』『裁くな、裁かれないためである』『人からしてもらいたいとあなたが望むことを、人々にしなさい』と言われてる通り、私は人が人に優しくなれる様にする教えだと思ってる。今よりも人にとって厳しい時代に生まれた少しでも人が暮らす世界を善くする為、人が未来に希望を見出せる様に前を向いて生きて行ける教えとして主が齎してくれたのだと。……だから私も手を差し伸べられなかった人へと手を差し伸べて、そうして出来た“人の和”によって主だけでは救いきれないこの世界を少しでも善い未来へ迎える様に努力する事にしたの」
原作知識と過去の事件からこの世界の真実と聖書の神の死を知って、その上で前世の超常の存在が居ない世界での信仰を基盤に持つ彼女の信仰は実に独特なのだが、そんな真摯に己の信仰を貫く姿に教会を追放された信徒からは絶大な信頼を向けられている。
敬虔な信徒程に教会を追放されて自らの全てを否定された様な気持ちになってる所で、そこに自らの信仰を揺るぎなく持つ彼女を見せるのはぶっちゃけ劇薬みたいなもんって感じでもあるんだが。
「……貴女が強固な信仰心を持っている事は分かりました。ですが教会の信徒が悪魔と結ばれる事は……」
「それが本当に愛し合った結果ならば悪魔と信徒が結ばれても別に構わないと私は思いますよ。悪い悪魔もいるけど善い悪魔もいるのがこの世界ですからそういう事もあるでしょう。私はそれを許します。……ほら、この翼も光輪にも一切翳りがない事から主が私の信仰を認めて下さっている何よりの証拠です」
「お、おお、確かに……」
彼女が堕天しないのは聖書の神の死によるシステムの変調及び有する神器の効果もあると思うんだが、どうあれ信仰心そのものは本物なのは事実だからな。
……それはそれとして翼と光輪を証拠に自らの信仰の正しさを証明できるやり口が説得には強すぎる。
「とりあえず追放されたエクソシストの保護に関しては納得頂けた事にしておいて、何故我々がこの一件に関して全力で手を尽くそうとしているのかに関しては、まず管理者として今回の件人早急に解決した方が良いと判断したからです。……ベリアル家をこの地の管理者に推挙したバアル家が妙な動きをしている様なので」
「あそこはプライドが高い古き悪魔達の巣窟だからね。スポンサーのジークレドとは仲悪いんで街に何らかの干渉を行う可能性もあるから、面倒事にならない様に表向きだけでもさっさと片付けたって事にしておきたいのよ」
「我が主人とバアル家は政治的には敵対していますから、今回の一件でこちらへ何か謀略を仕掛けてくる可能性もありますからなるべく速やかに解決した方が良いと言われています」
実際には『王の駒』の一件で動いている事は分かってるんだが此処では言えないので、とりあえず明かしても問題ない範囲でバアル家側に関して警告を入れて紫藤氏が悪魔の囁きに惑わされない様にしておく為の話だ。
「古き悪魔の大王の家が動いているんですか!?」
「スポンサーとの仲の悪さから失点狙いの謀略を仕掛けてくる恐れがあるという話ですから。……まあ街で力付くに問題を起こすなんて愚行をするなら、そのまま古き上級悪魔を叩き潰せば良いだけなので問題ありませんよ。この街に物質的な損害が来る可能性は低いでしょう」
「まあ
「ッ!?」
大王が関わっていると聞いて動揺する紫藤氏だったが、その後の私と花蓮の言葉と共に放たれた威圧感を受けて別の意味で絶句していた……少し脅し過ぎたかね?
「駒王町には若手の上級悪魔が派遣されるのでね。万が一にも教会との間に諍いが起きた場合の為に調停者である我々O×O側からは、最低でも上級悪魔と教会のエクソシストを不殺で制圧出来るだけの実力が求められるのですよ。とりあえず魔王相手でも戦える人材として我々が派遣されています」
「な、成る程……いやいやいや何故対魔王を想定してるんですか」
「不殺で制圧するには圧倒的な実力差が必要でしょう。悪魔と教会どっちにも死人が出ると異能者や異形との共存という目的に支障が出るし。それとO×Oの戦闘系幹部クラスは最上級悪魔レベルと戦闘になる程度の実力者なのが最低条件よ」
実際には
「貴方達の実力は私を超えているとは思っていましたが、いや嘘や虚勢でない事ぐらいは分かりますけど……」
「幸いこれまで本気で戦う機会には恵まれませんでしたからね。……そして管理者の責務ではないもう一つの理由としては親として次の世代の未来の為、出来るだけ“負債”を減らしておきたいから全力を尽くそうとしているだけです」
「蒼月……ウチの子は坂上の血が濃いのか私と同じ様に異形としての血を強く受け継いでいるから。……私の実家である『坂上家』は鬼神殺しの英雄『坂上田村麻呂』と鈴鹿山の天女にして第六天魔王の娘『鈴鹿御前』の子である『小りん』の末裔でね。そういう家だからか超常の血を取り入れることに積極的な異類婚姻譚・異常誕生譚バンザイな家風で、私みたいに超常の存在の血が濃く出る子がよく生まれるのよね」
坂上家の太祖である坂上田村麻呂は祖父が妖星の加護を得た“星の御子”、祖母が龍神の娘と言われる龍女で、その息子であり星と龍の力を持つ父親と山の神の娘である母親から生まれた“星と龍と神の力を併せ持つ大英雄”だからな。
前世では御伽話だった設定がこの世界だとリアルだからね、私の先祖『安倍晴明』も母親が『葛の葉狐』だったからか末裔である土御門家や安倍家には狐憑きが偶に生まれるし。
「私は鈴鹿御前様由来の天魔の血が濃く出てるから神通力とかが得意になってるし、蒼月は田村麻呂の系譜から龍と神の血を濃く受け継いでいるみたいね。……その血の運命からは逃れられない以上あの子の道行には過酷が待ち受けているでしょう。だからこそも私達の代の問題ぐらいは次の世代に押し付けない様にしたいのよね」
「異能者や異形の血を引く者が本人の意思に関わらぬ世の理不尽に踏み潰される事がない世界、様々なしがらみから完全にそんな世界にするのは無理難題であれ、少しでも異能者や他種族との共存の意思を持てる様な世の中にする。……それが我々O×Oの理念であり、そんな綺麗事が言える未来を実現する為に私達は此処に所属しています」
「土御門殿……」
我々転生者が原作知識から来る『絶対の絶望』対策に動いているのは事実だが、O×Oの『異能者や異形の血を引く者が生きられる世の中を作る』と言う表向きの目標を目指しているのも決して嘘ではない。
……と言うか、インフレ異世界と戦うなら原作の様に地球上の各種神話勢力や異能者組織が協力関係にあるのが大前提だからな。裏の目的の為に表の目標も叶えなければならないのだ。
「……そうですね、蒼月くんとはウチのイリナちゃんもイッセーくん共々仲良くしていますし、彼等がごく普通に仲良く日々を送れる未来が来て欲しいと私も思います」
「やっぱり貴方は“善い人”ですね信徒紫藤。キチンと厳しい現実を見ながらも善性を捨てていない」
「エクソシストとしては確かに思考が柔軟ね。貴方達が高く買う理由が分かる」
レイラとエリスタが言うが紫藤氏には教会側で今後の和平展開を担うポジションに着いてほしい狙いもある。原作だと今回の一件が傷になって昇進とか出来なかっただろうし、何より本人が心の傷を負ってエクソシストとしての働きに消極的になったのだろうからな。
「まあ今回の話の答えをいきなり出せとは言いません、そちらにも色々と考えること時間が必要でしょうからね。……ただ、この一件はまだ死者を出さず誰も不幸にせずに話を収める事が出来るという事は覚えておいて下さい」
「私達O×Oの理念的にもその為であれば多少の労苦は問題にならないから余り心配しなくても大丈夫よ。……まずはもう一度正臣くんと良く話し合った方が良いわ。彼も貴方に迷惑を掛けてしまう事に関しては気に病んでいたし、孤児である自分にとっては貴方の事は本当の父親の様に思ってるとも言ってたから」
「正臣君……分かりました、もう少し彼と話し合ってみます。それに今回の一件にもっと何か出来る事がないかも含めてもう少し考えさせて下さい」
そういう紫藤氏の顔には当初の憔悴した雰囲気はなくなり、代わりに何か決意を秘めた様な表情になっていたので恐らく説得は上手くいっているのだろうと期待しつつ今日の話は此処でお開きとなったのだった。
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「……さてと、紫藤さんは教会に帰っていって早速正臣くんと話をするみたいね。あなた謹製の教会側の監視用隠密式神の調子は上々って所かしら?」
「駒王町に張った土御門式陰陽術の結界、及び街の整備段階で仕込まれた風水系のギミックと連動して隠行・監視・情報共有を行う特注品だ。余り数は使えんから教会とベリアル眷属側の監視しか出来んが、少なくとも上位エクソシストや上級悪魔程度で気付かれるモノではない」
「今回の話し合いで私が来た意味はあんまり無かった気がするけどなー。奇跡の子インパクトで信徒紫藤にお茶を吹かせたぐらいじゃない?」
「O×O側の組織規模をアピールするぐらいには役に立ったと思うけど。転生悪魔と奇跡の子が一緒にいるなら他種族との共存を本気で考えてる様に見えるしね。……それよりバアル側の悪魔の様子は?」
紫藤氏が帰った後で私達は監視用の式神から送られてくる情報を見ながら転生者同士でしか出来ない会話を行なっていた。
「今は街には居らんな。定期的に結界を潜り抜けてO×Oや教会、ベリアル眷属に探りを入れている。それと正規のルートでもバアル家が今回の問題について言及して来たから『現在穏便に問題を起こさぬ様に解決するしている所です。2人の説得は順調です』と言っておいた」
「ダンタリオン側でも同じ。明日辺りに主人が皇帝に会いにいって事情を話しつつ、近くベリアル本家の方にも話を通しておくって感じ。……上級悪魔同士の邂逅は色々と準備が必要だから手間が掛かる」
「私はこれ以上出来る事はないからね。まあ怪我人が出たら死んでいない限りは治すけど。今日はこれから巡さん家の解呪案件の経過観察と予約があった治療が3件で終わりかな。それが終わったらこの街で暫く休暇を貰う事になってる」
「今日は忙しい所を本当に悪かったわねレイラ。後はクレーリアちゃんの方にも話を通しておかないといけないんだけど、クラスメイトやってる元櫛橋家の転生者に伝えておく様に頼んでるわ」
五大宗家は霊獣を操る血統を維持する為に霊獣への適正がある者を優遇し、適正がない者を冷遇するか追放するスタンスだからな。そうして追放された者をこっちでスカウトしたりもしてその中には転生者もいるのだ。
……家伝の秘術を扱える資質を持つ人間を次の世代まで維持するのは良いんだが、それ以外の人間への扱いがお座なり過ぎると言うかもう少し上手くやって欲しいとは思うが。
「……おっと、ちょうどそこから掲示板に連絡があったぞ。『クレーリアは表向き話を合わせる事に同意したよ。まずはご家族に自分達の関係を認めて貰うのが筋だからね』だそうだ」
「まあそれはそうって話ね、家の紹介で留学した先で結婚を前提のお付き合いする相手が出来たなら実家をまず説得しないと。とりあえず表向きの話は穏便な形での解決に向かっているって体に出来るわね」
「バアル家も管理者同士の話し合いで決着が付くならどうこう言い難いでしょうが、それでも『駒』の情報を隠滅する為に動くとは思うわよ。特にクレーリア・ベリアルがディハウザー・ベリアルに接触するのを危険視してるだろうしね」
「監視はあるしこの夫婦とキツねーさんが居れば大丈夫じゃない? 他にもこの街には戦力は置いてあるんでしょ、転生者非転生者問わず」
駒王町には原作の舞台になる事が想定されているから、O×Oが日本に有する異能者共存区域の中で最も上手く行ってるとか理由を付けて結構な戦力を配置してはいる。
我々以外にも元五大宗家の人間とか安倍家の名うての魔物使い、加茂家の術者の家系とか話がある程度分かる妖怪とか魔物とか。後は漢の子な魔法少女が街中の治安を守る為に巡回したり。
「事情を知ってる転生者には私ら神社組とO×Oの支部に元五大宗家含む上級悪魔と戦える戦闘メンバー、後は各種サポート要員が居るぐらいだけどね。トラブルが起きたら事情を知らない非転生者にも手伝いを要求出来るから初動で動かせる戦力としては十分でしょう」
「駒王神社の戦力だけでも魔王を相手に出来るしねー。所で期待のオリ主系新人の蒼月くんはどうなん?」
「まだ肉体が出来上がっていないから本格的な戦闘訓練はしてないが、とりあえず俺が陰陽術、花蓮が神通力を教えつつ裏業界の知識の勉強をさせている所だ。上級の異形を倒せる戦力として数えられる様になるまでは後五年程掛かりそうだが」
「つまり中学生に上がる前後ぐらいで幹部レベルが見えると。やっぱ貴方達の子供だけあって才能すごいわね」
蒼月に関しては転生者特有の早期学習と親の贔屓目抜きでも私や花蓮を上回り得る持ち前の才能もあってスクスク成長している。既に神器の効果で作った石器を神通力で動かしたり陰陽術もそこそこ扱える様にはなってるからな。
「まあそろそろ修験道的な山籠りとかで本格的な訓練をした方が良いわね。そこから実戦もさせていかないと」
「とりあえず簡単な除霊の手伝いや街の異形の調停の経験は積ませた方が良いだろう。……前世の記憶がある転生者相手だから家庭環境がちょっとアレな気もするが」
「それは確かに。家族サービスもちゃんとしときなよお父さん」
「異能者系の家系ならこんな感じじゃないかしらね。まあ家庭環境を気を付けないと家出とかされるわよ、というか私はした」
どうも親子で前世の記憶があるせいか蒼月とは同年代の様に振る舞ってしまう場面があるんだよな。近々クリスマスだから父親として何かプレゼントでも買ってやろうか。
あとがき・各種設定解説
レイラ・ブランシャール:合法ロリハーフ天使
・保有神器は『
・聖槍から滴った神の子の血が癒しを齎した逸話の具現とも言える神器であり、槍から滴る血の様な聖なるオーラによって対象の傷や病の治療、更に解毒や解呪なども可能と『聖母の微笑』を上回る回復効果を持つ。
・ただし聖遺物であり聖なるオーラを解する性質上悪魔など聖なるオーラが弱点になる種族には逆にダメージになってしまうので、回復出来る対象は人間や聖なるオーラが弱点にならない異形に限られる。
・本人の天使としての格が最上級クラスに高いのはその身に禁手に至った聖遺物を宿している部分が大きいが、修行によって並の上級天使を上回る戦闘能力も有している。
・元はミカエルの部下であった真面目な中級天使と敬虔な信徒の女性の間に生まれて聖遺物を宿す奇跡の子であり将来を嘱望されていたが、それ故に天界・教会の一部過激派と当時の第三帝国及び裏で糸を引いていた『教団』が目論んでいた『偽神降臨計画』に要として眼を付けられ誘拐される。
・その際に両親も殺されておりそのまま計画の為の『器』として生贄にされそうになったが、占いで彼女が転生者と知って極秘裏に接触していたダンタリオン眷属含む現O×Oの古参勢が救出に為に動き大戦の裏で三大勢力と第三帝国の暗闘が繰り広げられる事となった。
・最終的に計画は阻止されて彼女は救出されたが生贄にされかけた事で神器が天界のシステムに影響を及ぼす形に亜種変化、それに加えて天界と教会への不信感と聖書の神の意思に触れた事で独自の信仰を目覚めさせた結果O×Oに加入した。
読了ありがとうございます。
第二次世界大戦時にハイスクールO×O−0みたいな原作の文庫本一巻ぐらいの規模であったと思って下さい。表向きは『黄昏の聖槍』を巡るいざこざと言われてるけど裏ではもっとやばい事があった感じ。