もう一人のホワイトルーム生です   作:パクチーダンス

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第12話 一日目〜ニ日目

 俺たちAクラスは、真嶋先生から受け取ったマニュアルから、いくつかの日用品を買ったのち、森の中へと入って行った。先頭は葛城が進み、後ろをその他の生徒が付いていく形になっている。俺はというと、皆から離れた最後尾で歩いている。それは何故か、もしそう問われたら、俺はすぐに横にいる人物へと視線を落とす事になるだろう。

 

「森下、まだ歩けるか?」

 

「ハァハァ、何を言っているんですか狡噛慎也。私は元気百倍、藍ちゃんです」

 

「そんなに元気があれば、俺に分けてもらえると嬉しいがな」

 

「………少し黙ってもらえませんか?喋ると余計な体力を消耗します」

 

森下は、余裕がなさそうに肩で息をしている。体力がない事は前から分かっていたが、まさかこれ程とはな。

 

「森下、皆んなからだいぶ離れてしまった。もう少しペースを早める事はできないか?」

 

「鬼畜ですか狡噛慎也。今の私の状態を見て、そんな言葉が出て来るなんて、貴方は人の温かさが欠落しています」

 

白石が後ろを振り返りながら、俺たちの事を心配そうに見ていたが、俺は「気にするな」と手を挙げた。だが、このままでは逸れてしまう。

 

「仕方ない、森下、俺の背に乗れ」

 

俺は森下の前で片膝を地面につけて、森下を背負う姿勢をとった。

 

「いいのですか……?」

 

「このまま逸れそうなら、俺はお前を置いていくぞ」

 

「そうですか、それはいけませんね。私を背負う事を許可しましょう、狡噛慎也」

 

「さっさと乗れ」

 

全体重を掛けてきた森下を俺は背負い、立ち上がり、前を歩く集団に追いつくためにペースを早めて歩いて行く。

 

「すぐにバテますよ」

 

先程よりもペースが早い事を思ってか、森下は俺の体力がなくなる事を懸念している。

 

「やわな鍛え方はしていない」

 

舐めてもらっては困る。森下は知るわけもないが、あの地獄のカリキュラムをこなした俺にとっては、森下を背負って不安定な足場の森を歩くなど朝飯前だ。

 

「おい森下、お前だけズルいぞ」

 

俺の前を歩いていた吉田の所まで追い付く。吉田は、背負われてリラックスしている森下に文句を吐く。

 

「いけませんね、吉田健太。この乗り物は一人専用なんですよ」

 

吉田に対してVサインする森下。乗り物とは言ってくれるな。

 

「……なんかムカつくな。狡噛、お前腹立たないのかよ?」

 

「もう慣れた」

 

いつもなら無視して置いていくことは簡単だが、今回はそうはいかないからな。

 

「それにしても、俺たちは何処のスポットを占有するんだろうな」

 

吉田が言う『スポット』というのは、この特別試験の特殊ルールの一つ。俺たちがいるこの島の各所には『スポット』と呼ばれる箇所がいくつか設けられている。その『スポット』は、占有したクラスのみ使用できる権利が与えられる。

 

「何処を占有するのかは葛城次第だ」

 

「狡噛慎也、私は日陰がある場所がいいです」

 

「それは俺にではなく葛城に言え」

 

他にもルールがいくつかある。俺が葛城からマニュアルを借りて、一通り目を通した時に大まかなルールを記憶した。今一度、振り返ってみるか。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

・スポットを占有するためには専用の

          カードキーが必要である

 

・一度の占有につき1ポイントを得る。

    占有したスポットは自由に使用できる

 

・他のクラスが占有しているスポットを許可無く使用

 した場合、50ポイントのペナルティを受ける

 

・キーカードを使用する事が出来るのは

     リーダーとなった人物に限定させる

 

・正当な理由無くリーダーを変更することは出来ない

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

大体こんな所。だが俺が一番気になったのは、マニュアルの一番最後に書かれていた内容。

 

最終日、点呼のタイミングで他クラスのリーダーを当てることが出来れば、的中させたクラスには50ポイントが与えられる。逆に、リーダーを当てられたクラスには、50ポイントを支払わなければならない

 

「皆んな、止まってくれ」

 

森の中、俺たちは少しひらけた場所に辿り着いた。俺たちAクラスの目の前に現れたのは大きな洞窟。葛城の声で、歩いていた俺たちの足は止まった。

 

「俺たちAクラスは、この洞窟のスポットを占有する事にする。ここが俺たちの生活拠点となる」

 

洞窟内の気温は、年間を通してその土地の年平均気温とほぼ等しいとされている。常に気温が一定に保たれているため、一週間生活するのには最適だろう。

 

「葛城、ここを占有するのに異論はないが、キーカードをもつリーダーは誰にするんだ?」

 

「そうだな………戸塚、お前にやってもらおう」

 

「えっ!?葛城さん、俺ですか?」

 

まさか自分が呼ばれるとは思わなかったのか、戸塚は驚いた表情を浮かべた。

 

「お前なら信用できる。お前はキーカードを持つだけで良い、指揮は変わらず俺がやる」

 

「はいっ!分かりました!」

 

戸塚は葛城にキーカードを受け取ると、洞窟の前にある機械にキーカードをかざした。機械の認証が終わり、これでこの洞窟は俺たちAクラスの占有スポットになった。

 

「森下、そろそろ良いだろう降ろすぞ」

 

「ここまでよく頑張りました、狡噛慎也。褒めてあげましょう……………いえ、ありがとうございます」

 

俺に感謝を伝えたのち、テクテクと洞窟の中へ入って行った。素直じゃない奴だな。

 

「狡噛、お前も物好きだな。あの森下の相手は疲れるだろうに」

 

ケタケタと笑いながら俺の肩に手を置く橋本。

 

「森下は変な奴だが、頭は切れる。いつか、俺たちAクラスの窮地を救ってくれるかもしれない」

 

「アイツが?なんか考えられねぇな」

 

「可能性の話だ、行くぞ」

 

俺と橋本も洞窟の中に足を運んでいく。奥へ進むほど洞窟内は涼しく、暑さを気にせず寝れそうだ。

 

「それじゃあ今から、ここでテントを張るグループと周辺を探索するグループに分けようと思う。俺は探索グループに入るから戸塚、ここは任せたぞ」

 

「はい、葛城さん」

 

俺はこのまま、テントを張るグループに居たいが、

 

「あと少し人数が欲しい。誰か来てくれないか?」

 

外を歩き回るのは体力を使う。率先して行きたいと思う者は少ない。仕方ないから俺も探索グループに加わるか。

 

「狡噛、俺も行くぜ」

 

どうやら橋本も探索グループに加わるようだ。森下はというと、既にテントを張る準備に取り掛かっている。コチラのグループに入っても荷物になるだけだ。

 

「私も良いですか?」

 

「白石、お前も探索グループに入るのかよ?」

 

「えぇ、こっちの方が面白そうなので」

 

面白そう、か。こんな無人島体験、一生のうちに出来るかどうか。俺の勝手な考えだが、こういうのはどっちかと言うと、男性の方が興味があると思うが。

 

「よし、このくらいで良いだろう。今からこの洞窟を中心に、半径50メートル程に何があるのかを探索しようと思う。このグループから、さらに少人数のグループに分けて探索する」

 

俺は、橋本と白石の3人グループを作り、周辺の探索に出掛けた。葛城達は西へ、俺たちは東へ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なぁ狡噛、質問いいか?」

 

「なんだ?」

 

「真嶋先生への質問、あれにどんな意図があったんだ?」

 

探索中、先頭を歩く俺の後ろから橋本が、その後ろには白石がついてくる。

 

「ポイントがマイナスになることは無い。橋本、それを聞いてお前は何を思った?」

 

草木が生い茂る中を、俺は足を止めずに進み続ける。

 

「何をって、マイナスポイントが存在しないなら、この特別試験後には、各クラスのポイントが少なからず上がる事になるだろうな」

 

「確かにその通りだ。だがな、それはあくまでポイントが残っていた時の場合に限った話だ」

 

「……どう言う意味だよ?」

 

俺は足を止め、後方の橋本ではなく白石を見る。今の俺のペースについて来れているか確認するため。

 

「白石、大丈夫か?」

 

「………はい、ご心配ありません。それよりも先程の話、私も聞きたいです」

 

白石は少し疲れが見えているが、俺は頷き、少し進路方向を東から東南に変えて、俺は再び歩き出した。

 

「俺は、クラス全員が一週間も無人島にいる必要はないと思っている」

 

近代文明機器も何もないこの無人島。慣れない環境の中、不安とストレスに体調を崩す人間も少なくないだろう。

 

「それは、リタイアするってことか?だがペナルティでポイントが削られるだろ?勝ちを捨てるってことか?」

 

「俺はクラスポイントがゼロになっても、なんら問題ないと思っている。必要の物資を購入して少数精鋭を残す。そして、この無人島を過ごす」

 

「……分からねぇな。狡噛、教えてくれよ」

 

橋本はギブアップのようだ。

 

「白石、お前はどうだ?」

 

白石は顎に手を当てて考えている。すると、バッと顔を上げた。何か思いついたようだ。

 

「もしかして狡噛君は、最終日にクラスリーダーを当てることを言っているんですか?」

 

「待てよ狡噛、確かに50ポイントはデカいが現実的じゃないぜ。各クラスに40人の生徒がいるんだぜ?キーカードを持つリーダーを見つけるのは至難の業。加えて、気付かれずに近付くのも難しい」

 

橋本は納得がいってないようだ。

 

「坂柳がいない今、葛城はこの特別試験でクラス全体が認める程の成果を上げて、坂柳派閥の生徒を自分の派閥に組み込もうとするだろう。他クラスと圧倒的な差をつけて勝利する。そんなビジョンを思い浮かべるなら、リーダー当ては必須だ」

 

「ん?今までの会話は葛城の話だったのか?アイツがその選択を取ると?」

 

「かも知れない、というだけだ。どうするかは葛城の自由だ」

 

葛城ではそう考えるのは難しいかもな。話が一区切りついた頃、俺たちは少しひらけた場所に辿り着いた。俺たちの目の前に現れたのは、幅は10メートルほどの立派な川だった。それが下流まで続いている。俺は膝をついて手を川の中に入れた。深さは大体、俺の指先から手首くらいの高さだ。

 

「なぁ狡噛、それ飲めるのか?」

 

「どうだろうな、見た目は透き通って綺麗だが万が一もある。煮沸消毒で細菌を殺せば飲めると思うが」

 

俺の目で判断した限りでは何ら問題なさそうだが、川の水をそのまま飲むのに抵抗がある人間もいるだろう。

 

「狡噛君、橋本君、どうやらこの川は使用してはいけないようですよ」

 

白石が何処か指を差していた。俺と橋本は白石が指差す方向を見つめた。そこにあったのは看板。許可のない利用を禁ずる、そう書かれていた。

 

「この川はスポットとして指定されているのか。なら何処かにキーカードをかざす装置がある筈だが……」

 

俺たちは周辺を確認するが、それらしき装置は見当たらなかった。

 

「見当たらないですね、ひょっとしたら下流の方にあるのかも知れません」

 

「どうする狡噛、そろそろ洞窟から50メートルほど離れただろうが、スポットがあるか探しに行くか?」

 

橋本と白石は俺の判断を待っているようだ。

 

「……いや、ここまでにしよう。まだ体力は残っているかも知れないが、しばらく水分を補給していない。この暑さの中、喉が渇いてなくても定期的な水の補給は必要だ。戻るぞ」

 

「そうだな。今ある情報だけを葛城に伝えるか」

 

「はい、そうしましょう」

 

俺の意見に2人は賛成してくれた。橋本はまだ余裕がありそうだが、白石は先程よりも疲れが出始めている。ここが潮時だ。

 

「私を心配してくれたんですか?」

 

また俺が先頭となり、来た道を戻ろうとした時、通りすがりに白石が声を掛けてきた。

 

「当然だ」

 

「………嬉しいです」

 

クラスメイトの体調を考慮するのは当然だろうに。白石が、少し頬を赤らめているように見えたのは気のせいだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 洞窟へと戻ってきた俺たちは、先に戻っていた葛城に探索結果を伝えたのち、休むために洞窟内へと入っていった。既にテントは張り終えていて、クラスメイト達は休憩をとっていた。

 

「お疲れ様、はいこれ」

 

「あぁ、済まない神室」

 

神室からペットボトル水を受け取り、俺はこの無人島に来てから初めての水分補給をとる。渇いた喉が潤っていくのを感じる。俺は少し大きめで平らな岩の上に乗って腰を下ろした。

 

(本でもあれば良かったんだがな………)

 

俺はは目を瞑って、ただ時が流れるのを待つことにした。しかし、

 

「隣、良いですか?」

 

そんな俺の目の前に立った白石が、そう言って微笑みかけてきた。

 

「あぁ、別に構わない」

 

俺は座っている岩の端に寄る。白石が座る空間を作るために。ただ、なんで俺の横に座って来るのかは疑問だが。

 

「失礼します」

 

白石は俺の横にちょこんと腰を下ろした。

 

「まだ六日間もあるというのは、流石に嫌になるな」

 

「そうですね。クラスの皆んなも、何とかこの環境を受け入れようと頑張っている所です」

 

確かにクラスメイト達には不安な色が見え隠れしている。だがそう言う白石は、何故かこの状況を楽しんでいるように見える。

 

「……………」

 

「どうされました?」

 

黙っている俺を不思議そうに見つめる白石。中間試験前、俺は白石に『お前は誰だ?』と質問した。だがその質問に白石は答えず黙ってしまった。あの時から、白石は俺と距離を置くかと思われたが、白石は俺に気兼ねなく話しかけて来る。彼女は一体何なのか。

 

「いや、何でもない」

 

ただ一つだけ言えるのは、もし白石飛鳥が俺と清隆の敵だったならば、その時は容赦なく潰すだけ。可能性は低いと思うがな。

 

その後、何事もなく一日目は終了した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 二日目の朝、葛城の指示により、俺たちAクラスは活動範囲を広げる為に、探索グループの人数を増やしてスポットの発見と占有を図る。俺は白石と橋本と共に、昨日訪れた川までスムーズに辿り着くと、そのまま川に沿って下流に向かって歩き出した。

 

「ん?何か声が聞こえねぇか狡噛」

 

歩き出して数分後、奥から人の声が聞こえてきた。近づいて行くにつれ、その声の数は多くなる。

 

「どうやら、ここは既に他クラスに占有されているようだな」

 

「おい、お前ら誰だよ?」

 

「どうした山内?」

 

森の中から現れた俺たちに向かって指を差してきた男子生徒。その声を聞いて、続々とクラスメイト、主に男子達が集まって来た。

 

「おい、お前達どこのクラスだ!ここは俺たち占有したスポットだぞ!すぐに出ていけ!」

 

先程俺たちを指を差した男、山内と呼ばれていた男子生徒が、声を大きくして追い出そうとする。

 

「橋本、何処のクラスか分かるか?」

 

「Dクラスだな」

 

Dクラス、ならば清隆がいるクラス。そしてクラスメイトか。見た目だけで悪いが、なんだか頭が悪そうな奴らだ。清隆はこんなクラスでやっていけているのか?

 

「どうしたんだ皆んな?」

 

どうやら話が通じそうな奴が俺たちの前に現れた。

 

「朝から邪魔して悪い。俺たちはAクラスだ。探索に出かけていた所、偶然ここに来てしまっただけだ。すぐに出て行く」

 

「そうなんだね、状況は分かったよ」

 

爽やかで気さくな男子生徒だ。女子からモテそうな見た目をしている。クラスで人気も高そうだな。

 

「おい平田、そんな簡単に返していいのかよ。俺たちの陣地に無断で入っているんだぜ」

 

「確かにここは僕たちの占有スポットだけど、他クラスの生徒が入ってはいけない、なんてルールはないよ山内くん」

 

平田と呼ばれた生徒は、山内にルールに抵触していないと説明した。ペナルティを受けるのは、あくまでも許可なく使用した場合に限る。俺達はここに訪れただけだからルールに違反しない。

 

「話が早くて助かるぜ。狡噛、白石、早くここを立ち去ろうぜ」

 

「そうだな」

 

このままじっとしていても無駄なので、俺達は踵を返して来た道を戻ろうとした。

 

「待ちなさい」

 

すると、俺たちを呼び止める女子生徒の声が聞こえて来た。その声を、俺は聞いたことはある。

 

「………何か用か?」

 

周りに人を寄せ付けないような雰囲気を纏った女子生徒、生徒会長堀北学の妹、堀北鈴音。その後ろには清隆の姿もあった。

 

「私達Dクラスは、貴方達Aクラスに占有場所を知られてしまった。ただ何も置いてかずに帰るのは不公平よ。帰る前に、Aクラスが何処に拠点を置いているのか教えなさい」

 

上から目線な物言いだが、別に拠点が知られても問題ないだろう。葛城には事後報告でいいか。

 

「この先を真っ直ぐ行った所に、俺たちAクラスが占有している洞窟がある。もし信じられないなら、俺たちについて来るか?案内するが」

 

「方向が分かればいいわ。結構よ」

 

「そうか」

 

俺達は今度こそ、洞窟へ帰る為に足を進めた。だが帰り際、清隆と視線を合わせた時、清隆が俺に向かって3回も瞬きを行った。

 

(……何かあったのか?)

 

俺に何かサインを送ってきた。流石に瞬きだけでは分からないので、一人の時間ができて抜けられそうな時、こっそりとここに来ようと決めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 慎也達が居なくなったDクラスは、各自の作業に戻りつつあった。俺もその例に漏れず、与えられた仕事をこなすだけだ。

 

「何かあの黒髪の奴、スカした感じでムカつくぜ。後ろに女子を連れてよ」

 

「そうだよな。それにあの女子、めっちゃ可愛かったよな。何て名前なのかな?」

 

山内に同調するように池が発言する。確かに後ろの女子生徒は可愛らしい見た目をしていた。慎也の奴、早くもガールフレンドでも出来たか?

 

「あの黒髪の子、めっちゃカッコよかったよねー」

 

「知らないのー?あれがイケメンランキング1位の狡噛慎也君なんだよ。何か落ち着いた雰囲気でイケてるよねー」

 

女子の方は慎也のカッコ良さにうつつを抜かしているようだ。イケメンランキングだって?確かに慎也は平田とはまた違うジャンルのイケメン。なんか慎也が遠くへ行ってしまったような感じだ。

 

(それにあの女子生徒、俺と目があった気がするが……)

 

まぁいいか。それよりも、慎也にも伝えなくてはいけない。アイツが接触して来た事を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 洞窟に帰ってきた俺達は、Dクラスの占有場所を葛城に報告した。

 

「なるほど、川のスポットか」

 

「事後報告で済まないが、俺たちの洞窟のスポットも教えてしまったが良かったか?」

 

「別に構わん。知られてしまったとしても問題ない。ご苦労だったな、しばらく休んでくれ」

 

「そうするよ」

 

葛城の言葉に甘えて俺は洞窟内に入った。帰ってきた時間は丁度お昼時。洞窟内でクラスメイトは昼食を取っていた。

 

「狡噛君、お疲れ様です」

 

「済まないな、真田」

 

真田から昼食を受け取ると、俺は洞窟の壁にもたれながら食べ始める。

 

「よっこいしょと。なぁ狡噛、聞いたかよ?Cクラスの話」

 

「Cクラスがどうかしたのか?」

 

自然と横に座った橋本が、俺にCクラスについて話しかけてきた。

 

「他の探索グループの話なんだが、Cクラスは300ポイントを全て使い果たしたみたいなんだ。浜辺でバーベキューしたり、ビーチバレーしたり、水上バイクで海を走ったりしてよ」

 

「豪遊か……なら明日にはリタイアするかもな」

 

これも龍園の策なのだろう。硬派な葛城では思いつけない斬新な考え。面白いな。

 

「Cクラスの奴らはいつでも歓迎だって言ってたぜ。俺たちも行って遊ぶか?」

 

「ゴメンだね、そんな事したらAクラスで俺たちの居場所は無くなるぞ」

 

「ははは、冗談だぜ」

 

今のは半分くらい本気だった気もするが、まぁいい。そんな事よりも、俺は清隆に会わなければならない。昼食を取った後、コッソリ抜け出すか。

 

「なぁ狡噛、白石の事なんだが………」

 

「………………」

 

珍しく真剣な表情の橋本。俺は、次に橋本が口にする言葉ををジッと待つ事にした。

 

「………お前って、白石と付き合ってるのか?」

 

「………………………………」

 

何を言ってるんだコイツは?なんだか拍子抜けした気分だ。

 

「俺と白石が?なんでそう思ったか聞いて良いか?」

 

「だってよ、放課後に白石と一緒に遊んだりしてただろ?探索グループを作る時も同じグループになったり、昨日も二人で楽しく話してたじゃねぇか」

 

放課後にケーキを買いに行った事を話しているなら西川もいた筈だが、

 

「そんな事実は無い。同じグループになったのは偶然だ。それに、昨日は向こうから話しかけてきたんだ」

 

「付き合ってないのか……じゃあ、白石がお前の事を一方的に好きなのか?」

 

「知らん。そんなに気になるなら本人に聞きにいけ」

 

「それが出来ないからお前に聞いているんだろう?お前は知らないだろうが、クラスじゃお前と白石が付き合ってるんじゃないかって噂なんだぜ」

 

そんな噂がクラスで流れていたのか。全く知らなかったな。確かに白石は、クラスの女子の中ではよく話す生徒だ。隣の席だしな。仲良くもなるだろう。

 

「お前は白石を好きっていう訳じゃないのか?」

 

「ああ、そんな気は無い」

 

「そうか?お前なら、白石を落とせると思うけどな。イケメンランキング1位の狡噛慎也様ならな」

 

ニヤニヤとしながら肩を回してくる橋本。少しめんどくさいな。俺は肩を振り解く様に立ち上がった。

 

「おい、何処に行くんだ狡噛?」

 

「少し洞窟の周りを歩いてくるだけだ。。心配せずともすぐに戻る」

 

俺は、洞窟を抜けて少し森の中に足を踏み入れた。そして、誰にも見られないように、Dクラスの拠点へと走った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 昼食を取り、休憩時間に入ったDクラスは、各々友人達と雑談していた。ろくな友人もいない俺はというと、少し皆んなから離れた場所で、木にもたれ掛かりながら待っていた。

 

「清隆」

 

案外早く来てくれたようだ。俺の木の反対側には慎也がいる。

 

「慎也、抜け出して来てもらって済まない。お前に伝えなければならない事がある」

 

俺はそのままの体勢で慎也と会話を始める。慎也に迷惑を掛けないように端的に話す。

 

「何かあったか?」

 

「あの男が学校に接触してきた」

 

「………先生が?」

 

俺に疑問を投げるが、慎也の声に驚きは感じられない。俺も分かっていた事だ。いつかアイツがこの学校に接触して来る事を。

 

「あぁ、俺を退学させろとな。学校側にそう伝えたらしい」

 

「そうか、先生が…………」

 

「オレは今、担任の教師に脅されている状態だ。この特別試験でDクラスが成果を上げないといけない」

 

「お前の担任が、ソイツはあの施設の関係者か?」

 

「いや、まだ分からない。アイツが接触してきた、それをお前に伝えてたくてな」

 

茶柱先生がどの程度知っているのかまだ検討はつかないが、今の俺には素直に従う他にない。面倒だがな。

 

「なら、Aクラスのリーダーを教えようか?」

 

「いや、それはもう知ってる」

 

「フッ、流石だな。了解した」

 

すると、慎也が立ち上がる気配を感じた。俺は話したい事を言い終えた。狡噛もそろそろ戻らなくてはならない。

 

「いつか来ると分かっていたが、退学させたいのはお前だけか。なら俺は、もう用済みという訳だ。最高傑作のお前に、俺は及ばないからな」

 

そう言って慎也の足音が遠ざかっていった。俺は慎也がいた場所を確認するが、既に慎也の姿は無かった。

 

(用済み………あの男が慎也を切り捨てるとは到底思えない。あの男にとって慎也は、昔から興味深い対象として見ていたからな)

 

何故なら狡噛慎也は、初めてあの男に『質問』をした生徒であり、『反抗』した生徒でもあるからな。

 

 

 

 

 

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