もう一人のホワイトルーム生です   作:パクチーダンス

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第21話 グループディスカッション 4回目 

 

「それでは早速、クラスのグループチャットで

 『優待者』の法則を皆に知らせましょう」

 

 森下の携帯を、俺はすかさず取り上げる。

 

「なにしますか」

 

「もう少し待て」

 

 携帯を取り返そうと手を伸ばしてくるが、俺は腕を上げて携帯を頭よりも高い位置までもっていく。ピョンピョンと跳ねる森下を見て白石は微笑んでいた。

 

「今言わずしてどうします。こうしている内に、何処かのグループが試験を終わらせるかも知れません」

 

「まだ確定してない。偶々うちのクラスが当てはまっただけで他は違う可能性がある」

 

「何をビビっているんですか?これ以外に考えられませんよ。今日からチキンの狡噛慎也と呼びますよ」

 

「どう言われようと結構だが、より確実なものにするためには、他クラスの『優待者』を最低一人は知る必要がある」

 

「それをチキン野郎と言うのですよ」

 

 森下はどうやっても手が届かないので、俺の腹部に何発もパンチを当ててきた。けど弱いな。

 

「森下さん、もうその辺にしましょう」

 

 ようやく見守っていた白石が助けに来た。

 

「白石飛鳥、貴方はいいのですか?

 折角、私達が頑張って知恵を絞ったというのに」

 

「お前はベッドで寛いでたろ」

 

「記憶にございません」

 

 コイツ、今まで我慢してきたが、

   もう殴ってしまっても構わないか。

 

「森下さん、そもそも初めに法則に気が付いたのは

 狡噛君ですよ。私達は後から説明されたに過ぎません。一から全部、狡噛君の手柄ではありませんか」

 

「白石飛鳥は狡噛慎也の味方ですか。

      いいですね、女子に守ってもらえて」

 

「……とにかく、お前のスマホは返すが、クラスメイトに伝えるのは待て。その役目は白石に任す」

 

「私ですか?」

 

「その時は『優待者』の法則を伝えるのではなく、

 全グループの『優待者』を一斉に伝える」

 

 その時は、この特別試験が一瞬のうちに終わりを迎えることになる。

 

「後から白石には、全ての『優待者』の名前を送っておく。俺の合図でグループチャットにそれを送信してくれ」

 

「自分でやらないのは何故ですか?」

 

「逆に聞くが、俺や森下の言うことをクラスメイトがすぐに信じると思うか?」

 

 男子に人気かつ女子にも仲がいい白石ならば、ある程度の疑問が生まれるかもしれないが、それを差し引いても信用されるだろう。今まで一匹狼だった俺では出来ない。

 

「分かりました。お引き受けします」

 

「すまない。今度何か奢るよ」

 

 森下は自分を指差し「私は?私は?」と主張してくるが、お前に与えるものは何もない。

 

「『優待者』を知ると言っても、狡噛君はどのクラスと交渉するおつもりですか?」

 

「Bクラス以外に他はない。それと、悪いが森下が暴走しないよう側で監視しててくれ」

 

「私は子供ですか?」

 

 お前は子供だろう。口に出すとまた面倒だから、

 心の中だけに留めておく。

 

 白石はニコッと笑顔を返して、森下を連れて部屋を出て行った。それを見送った俺は、携帯を取り出してある人物に電話を掛ける。

 

『はぁ……狡噛、今度は何がいるんだ?』

 

「察しが良くて助かるよ。

 橋本、お前にはもう一仕事してもらう」

 

『何すればいいんだ?』

 

「これで最後だ。全グループのメンバーリストを送ってくれ。今まで働いた分、ポイントはやる」

 

『言質とったぜ。絶対だからな』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 2日目最後のグループディスカッションがもうすぐで始まる。今の所、私達Dクラスには何も進展が見られない。『優待者』の法則もこれっぽっちも浮かんでこない。本当はないのかもしれないと考えてしまう。

 

 かなり不味い状況だわ。他はどうなのだろう?特別試験が終わらないって事は全グループの『優待者』はまだ分かっていないってことよね?

 

 まだどのクラスもeven、だと思いたい。何としてでも、早く法則を見つけなくちゃいけない。4クラスが一つの結果を選ばないこと確定してる時点で、もはやディスカッションは意味をなしてないわ。

 

 龍園君と狡噛君は関係ない話を繰り広げているし、龍園君は執拗に私を狙ってくる。正直ウンザリしてる。だけど今は、少しでも会話をして情報を落とさせる。悔しいけど、今はそれくらいしか私に出来ることはない。

 

「堀北さん、そろそろ行こう」

 

「えぇ、そうね」

 

 平田君と櫛田さんと共に、私は昨日と同じ部屋に入室する。中には私達以外の生徒が揃っていた。

 

 いや違う。空席が一つ。狡噛君の姿だけなかった。彼はクラスメイトと仲が悪い?……余計な思考だわ。人のことを気にしてる場合じゃないのに。

 

「この集まりも段々面倒になってきたな。

        お前もそう思わないか、鈴音?」

 

「何度言えば分かるの?

      馴れ馴れしく下の名前で呼ばないで」

 

 狡噛君、早く来ないかしら。龍園君の相手を変わってほしいわ。

 

 その時、部屋の扉が開かれた。

 

「遅かったなぁ、狡噛」

 

「それに引き換え今日は早いな、龍園」

 

 

 

『ではこれより4回目のグループディスカッションを開始します』

 

 

 

 

「そろそろ『優待者』の法則でも掴めたか?鈴音?」

 

「それはこっちのセリフよ。貴方こそ、『優待者』を特定出来たのかしら?」

 

「あぁ、出来たぜ」

 

「ならどうして試験を終わらせないのかしら?それが特定出来てない、という何よりの証拠じゃない?」

 

 こうして腹の探り合いも、一体何度目だろう。

 

「俺からの慈悲さ。頭の悪いお前らに、少なからずチャンスを与えてやってるんだ」

 

「慈悲ですって?」

 

 彼の発言の一つ一つが私を逆撫でしてくる。

 

「リーダーが機能してねぇAクラス、仲良しこよしのBクラス、そして不良品のお前らDクラス。同情するぜ鈴音。バカの相手するのも大変だろう」

 

「……確かに、私達は4月にクラスポイントを全て吐き出した。けど、今はAクラスを目指して皆が一丸となってー」

 

「ハッハッハッ、お笑い草だぜ。それはお前が勝手に思ってることだろうがな」

 

「どういう意味かしら?」

 

「自分で考えな。お前は能力で見れば間違いなく優秀な部類に入る。でもな鈴音、Dクラスに配属されたのが運の尽きだ。お前は雑魚どもを背負って歩かなきゃならねぇ」

 

「…………」

 

 私の視線がだんだんと下を向いていく。

 

「お前は所詮、裏で糸を引いてる奴の哀れな女にすぎねぇ。お前に出来ることは精々、Dクラスの黒幕を俺に喋ることだけだ」

 

「……………………」

 

 

 悔しい。何一つ言い返せないのが。私は何も出来ていない。無人島試験だって、気が付いたら終わっていた。綾小路君のお陰で、Dクラスは225cpも獲得した。今回も、私は何もできなくて………今回も………

 

「諦めるのか?」

 

「えっ?」

 

 私は顔を上げる。

 

「この試験を諦めるのか、と聞いているんだ。堀北」

 

 狡噛君? 一体何を……………。

 

「狡噛?」

 

「おい狡噛、邪魔するなよ。

 今、鈴音と遊んでる良いところなんだからよ」

 

「悪いが後にしろ」

 

「あぁ?」

 

 龍園君を視界に入れることなく、狡噛君はそう返答した。彼はただ、真っ直ぐコチラを見つめていた。

 

「堀北、もしお前に戦う気が残っているのなら、

 俺と一緒に『優待者』の法則でも考えないか?」

 

「何ですって……?」

 

 『優待者』の法則を考える? 私と狡噛君が?

 

「狡噛君、どうしたの?」

 

「狡噛、またお前は勝手な事を!

       ふざけるのも大概にしろ!」

 

 西川さんの問い掛ける声も、的場君が椅子から立ち上がって非難する言葉も、彼には聞こえている筈なのに見向きもしない。

 

「思考を放棄するのは、死んでいるのと変わらない。

 ただ座っているのなら誰でも出来る。足掻くか?

 それとも、このまま運命に身を委ねるか?」

 

 何故、狡噛君はそんなことを……………。

 

 運命、、このまま龍園君にいいようにされて、私達のクラスは負けてしまう、それが私の運命……………

……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………いやよ。断じていや!だってそんなの、私自身のプライドが許さない!

 

 

「受けるわ、その提案」

 

 何のつもりかは分からないけど、これは転機。この暗い迷路の中で、何かが見えてくるのなら。

 

「狡噛!やめろ!」

 

「おいおい邪魔してやるなよ」

 

「龍園!?」

 

 的場君が狡噛君に伸ばした手を、龍園君が止める。

 力強く掴まれた的場君の顔が歪む。

 

「ぐぁ!?」

 

「よせ龍園!」

 

「雑魚は黙って見てろよ。

     面白くなってきたところじゃねぇか」 

 

 

 葛城君が、それに神崎君も龍園君を止めようと立ち上がる。私はそっちに気を取られそうになるもの、

 

 

 

「集中しろ」

 

 声量は普通なのに、狡噛君の落ち着き払った声が私の耳に届く。まるですぐ横にいるような、そんな感覚を覚える。

 

「まずは己の現状を正しく再認識しろ。

     堀北鈴音、お前は今何をしている?」

 

「何その質問、何してるかって………」

 

「いいから答えろ」

 

 これに何の意味が、、、、、

 

「…………特別試験、その真っ最中よ」

 

「その内容は?」

 

「1学年全体が、12に分かれたグループで『優待者』

 を探し、学校側から提示された4つの結果の中から

 一つを選択し、解答する」

 

「他には?」

 

「他?……… 1日に2度、グループだけで所定の

 時間と部屋に集まり1時間の話し合いが行われる」

 

「他には?」

 

「………… 解答は、自分の携帯電話を使って所定の

 アドレスに送信することでのみ受け付けている。

 『優待者』にはメールで答えを送る権利が無い」

 

「他には?」

 

「ねぇ、貴方馬鹿にしてるの?

        これに一体何の意味があるの?」

 

 さっきから口を開けば「他には?」って、

 もしかして、私は揶揄われていただけなの、、、

 

「落ち着け堀北、この話はなんの為のものだ?

 『優待者』の法則を見つけるものだろ?」

 

「試験の"内容"を話せと言ったのは貴方でしょう?」

 

「俺は"ルール"を言えと言ったか?

 お前はさっきから試験の"内容"の中から"ルール"を

 選択し、ご丁寧に説明していただけだ。

 お前が言った中に、法則に繋がる鍵はあったか?」

 

 法則に繋がる鍵ですって?そんなの無いわ。

 

「じゃあ他に、何を説明すれば良いのよ?」

 

「俺が同じ質問を繰り返したのは、

   お前が"何か"を見落としているからだ」

 

 見落としている?

 私が何見落としているって言うの?

 試験の内容は全部頭に叩き込んだわ。それなのに、

 その筈なのに、狡噛君が言った"何か"に、

 何故こうも、胸の中で引っ掛かるのかしら?

 

「一体、私が何を………………」

 

「思い出せ。それは既にお前の頭の中にある筈だ」

 

 既に私の中にある?

 それは、私が聞いたことがあるってこと?

 何を、何を見落としているの、、、、、、

 特別試験が始まって、職員から説明を聞かされて

 試験のルールだけじゃない。この耳で聞いたこと。

 

 

 それは、、、、、それは、、、、、、、

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

『今回の特別試験では、1年全員に干支になぞらえた

 12のグループに分けそのグループ内で試験を行う。

 目的は、シンキング能力を問うものになっている』

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「干支…………」

 

 堀北が発したその二文字に、龍園が動きを一瞬止め、堀北の方を見たのを俺は見逃さなかった。

 

 俺はテーブルに両手をつく。

 

「お前は特別試験が始まって早々、ただのグループ分けだと、瑣末なことだと思考から切り離した。だが、その一見どうでも良いことが、実は最も重要な時がある」

 

「十二干支になぞらえたグループ名が、

         重要だって貴方は言いたいの?」

 

「あぁそうだ。じゃあそれが何に結び付くのか、

 次はそれを探していこう」

 

「……………」

 

 少しずつだが、堀北はゴールへと歩き始めている。

 そして同時に、この試験の終わりも近づいてきた。

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

       狡噛慎也 携帯

 

        白石飛鳥 

 

   通話時間 09 : 10……11……12……

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 確かにそう。私は少しも気にしていなかった。

 干支になぞらえたグループと言われて、

 あぁそうなんだ、と理解してしまった。そこに、

 ほんの少しの疑問も挟むことなく。

 

「堀北、まず干支と聞いて思い浮かぶのは何だ?」

 

 干支といえば、それに関係してくる動物よね。この『辰』グループでは、龍が想像出来る。龍と考えて思い浮かんだのは龍園君の名前。彼の名前には、龍という字が入ってるわ。それと何か関係が………

 

「今お前の頭の中に浮かんだものは、

  『優待者』の法則に関係がありそうなものか?」

 

「………貴方、私の頭の中が分かるの?」

 

「分かると言ったら?」

 

「それ、プライバシーの侵害よ」

 

 鼻で笑われたわ。何だか腹が立つのだけど。

 

 というか、さっきから私だけ考えていないかしら?

 狡噛君は質問を投げかけるだけ、

 だけどそのお陰で、何かが見えた気がした。

 暗闇の中に、一筋の光が差し込んだような。

 

「もう一度聞く。それは、『優待者』の法則に関係がありそうなものか?」

 

「…………」

 

 考えましょう。今思い浮かんだのは、各グループに割り振られた、干支の動物も関係する漢字を持つ生徒が『優待者』である可能性。ありそうな話だけど、これは間違いだとすぐに分かるわ。

 

 だって、この『辰』グループの『優待者』は、

 龍園翔ではない(・・・・・・・)のだから。それは確実よ。

 だからこの可能性はない。

 

「間違いだと気づいたみたいだな」

 

「だから、プライバシーの侵害だと言ったわよね?

 次に頭の中を覗いたら、ppを払ってもらうわ」

 

「悪かったよ」

 

 狡噛君はわざとらしく肩を落とした。

 

「次だ、他に何か考えられることはないか?」

 

「他って…………」

 

 他に何があるのだろう………………………………

 …………………………………ダメ、思いつかない。

 

 せっかく調子良くいっていたのに、ここで止まってしまった。動物で何かあるかしら?何か他に、考えられることは、、、、、、

 

「………この特別試験の日数、お前はどう思う?」

 

「えっ? 日数?」

 

 唐突に変な質問をされて、私は視線が上がる。そこでやっと気が付いたのだけれど、龍園君や葛城君、神崎君、的場君も、私の方をジッと見ていた。自分の世界にのめり込んで、周りの視線に気が付かなかった。大分注目されていた。

 

「試験期間は4日間、

 長くもなく、また短くもなくといった印象よ」

 

「本当にそうか?なら考えてみろ。『優待者』の法則を探すのに全ての時間を当てたなら、お前の手元にはどのくらい時間が残っている?」

 

 この特別試験は、試験開始当日(1日目)午前8時に一斉にメールが送られるから、そこからスタートして4日目の午後の9時。計85時間の時間がある。けど、そこからディスカッションの時間も引いたら79時間。

 

 またそこから日常生活における食事、就寝、入浴、その他の時間も差し引いたら、私の手元に残っている時間は、微々たるもの。

 

「……つまり、貴方はこう言いたいのね。『優待者』の法則を見つけるのは、それ程難しくないって」

 

「また少し近づいたんじゃないか?」

 

「難しくないと言っても、現状何も掴めていない」

 

「それはお前の思考が固いからだ」

 

「言ってくれるわね」

 

 でも事実は事実、認めなくてはならない。私には柔軟性が欠けていた。それに、与えられた情報に対し、些細なことでも疑問を持たなければならなかった。これじゃあ、入学して早々にプライベートポイントを使い果たした馬鹿な人達と一緒だわ。

 

「狡噛君は、『辰』グループに各クラスのリーダー的立ち位置の人が集まったのは、『優待者』の法則と何か関係があると思う?」

 

「それは無いな。学校側が面白がって組み合わせただけだろ」

 

 面白がってるかは分からないけど、

 意図的に組み合わされたに違いない。けど、

 

「それだと、一之瀬さんがこのグループに入ってないのが気になるわ」

 

「ハンッ、一之瀬はその程度の奴だったってことさ」

 

 一之瀬さんを馬鹿にした龍園君の態度に、神崎君や他のBクラスの生徒の顔が険しくなる。

 

「龍園、すこし黙ってろ」

 

「オイオイ、そんなことテメェに言われる筋合いはねぇぞ。…………なぁ狡噛、お前ひょっとして、もう分かってるんじゃねぇのか?」

 

「分かってるって?」

 

 私の声に龍園君は鼻で笑う。

 

「『優待者』の法則に決まってんだろ、

         もう目星はついてんだろ?」 

 

 龍園君が椅子に座る狡噛君の後ろからそう言って囁く。対する狡噛君は何も発しない。龍園君の瞳がますます鋭さを増していく。

 

「さっきまでの会話を聞いてりゃ、不審な点は幾つもあった。お前が上手い具合に鈴音の思考を誘導してることくらい、俺にはお見通しさ」

 

「……狡噛君、龍園君の言ってることは本当なの?」

 

「狡噛、どうなんだ?」

 

 私と葛城君の追求に、狡噛君はしばらくしてから深くため息を吐いた。

 

「流石に分かるか」

 

 私含め、この場にいる龍園君以外の生徒が驚愕する。とてもめんどくさそうな顔をして、彼はそう呟いた。

 

「嘘、ではないのだな?」

 

「ここにきて嘘をつく理由はない。認めるよ(・・・・)

 

 逃れることはできないと踏んだのか、狡噛君はアッサリと認めた。

 

「まさか、橋本が嗅ぎ回っていたのはお前の仕業か!

 Aクラスの『優待者』を探し回っていたんだな!」

 

「あぁそうだ」

 

「だが狡噛、どうやって『優待者』を見つけた?

 坂柳は今回の特別試験に参加不可だろ?」

 

 度々登場する坂柳という生徒。

 Aクラスのもう一人のリーダーと聞いたけど、、、

 

「テメェのクラスの大半は、坂柳の指示に従う犬だ」

 

「だから俺は、坂柳の権威を借りることにした」

 

「ハッ、なるほどな。虎の威を借る狐か。

    体格差的にはお前が虎の筈なんだがな」

 

 龍園君の言葉に狡噛君がうっすらと笑みを浮かべる。そんなことよりも、

 

「ちょっと待って狡噛君。既に『優待者』の法則を知っていると言うのなら、さっきまでの私との会話は一体何の意味があったの?」

 

 何故、私と考えるフリをしていたの?

 

「堀北の言う通りだ。お前は何がしたかったんだ?」

 

「何のつもりなのかは知らねぇが、そうなってくると話は変わってくる。討論の時間も残り少ない。まだ楽しみ足りないが仕方ねぇ。特別試験はもう終わりだ」

 

「何ですって?」

 

 龍園君はこの場にいる全員に見せびらかすように、自分の携帯を天井へと掲げた。

 

「今から、全グループの『優待者』の情報をクラスの奴らに一斉送信する」

 

 龍園君の口から発せられた衝撃の言葉。驚いた表情の私達を他所に、龍園君は狡噛君を見てニヤニヤと笑っていた。

 

「俺と堀北の会話の最中、携帯を使用していたのは気付いていたが……………」

 

「狡噛、お前が本当に『優待者』を知っているのなら、早くクラスの奴らに知らせるんだな。最も、お前がポチポチ押して送信する頃にはもう終わっているだろうがな」

 

「なっ!? やめろー!」

 

「よせ!的場!」

 

「狡噛、お前は遊び過ぎたんだ」

 

 送信を阻止しようと、決死の表情の的場君が龍園君に襲い掛かるが、ひらりと躱され、あげく足を引っ掛けられて転ばされた。

 

「じゃあな。最後はまぁまぁ楽しかったぜ」

 

「狡噛!お前も早く!」

 

「そんな…………まって…………」

 

 私はまだ何も掴めていない。まだ分かってない。けど後少しなの。後少しで、何かが掴めそうなの。だから待って、お願い。 

 

 また、負けるの。

 無人島試験では伊吹さんに、次は龍園君に。

 

 龍園君の指が携帯の画面と重なった次の瞬間、

 

     ピロロロロロロロロンッ

 

 私達の携帯に連続してメッセージが送信された。

 

 

 

 

 

『丑グループの試験が終了いたしました。猿グループの方は以後試験へ参加する必要がありません。他の生徒の邪魔をしないよう気をつけて行動して下さい』

 

 

『寅グループの試験が終了いたしました。猿グループの方は以後試験へ参加する必要がありません。他の生徒の邪魔をしないよう気をつけて行動して下さい』

 

 

『卯グループの試験が終了いたしました。猿グループの方は以後試験へ参加する必要がありません。他の生徒の邪魔をしないよう気をつけて行動して下さい』

 

 

『辰グループの試験が終了いたしました。猿グループの方は以後試験へ参加する必要がありません。他の生徒の邪魔をしないよう気をつけて行動して下さい』

 

 

『巳グループの試験が終了いたしました。猿グループの方は以後試験へ参加する必要がありません。他の生徒の邪魔をしないよう気をつけて行動して下さい』

 

 

『午グループの試験が終了いたしました。猿グループの方は以後試験へ参加する必要がありません。他の生徒の邪魔をしないよう気をつけて行動して下さい』

 

 

『未グループの試験が終了いたしました。猿グループの方は以後試験へ参加する必要がありません。他の生徒の邪魔をしないよう気をつけて行動して下さい』

 

 

『戌グループの試験が終了いたしました。猿グループの方は以後試験へ参加する必要がありません。他の生徒の邪魔をしないよう気をつけて行動して下さい』

 

 

 

 

 

 

 

「……どういうことだ?」

 

 それは龍園君から発せられた声だった。戸惑っているのは私たちも同じ。龍園君が押したと同時、コンマ1秒の時間差もなく届いた学校側からの試験終了のメール。そして、

 

 

 

『子グループの試験が終了いたしました。猿グループの方は以後試験へ参加する必要がありません。他の生徒の邪魔をしないよう気をつけて行動して下さい』

 

 

『酉グループの試験が終了いたしました。猿グループの方は以後試験へ参加する必要がありません。他の生徒の邪魔をしないよう気をつけて行動して下さい』

 

 

『亥グループの試験が終了いたしました。猿グループの方は以後試験へ参加する必要がありません。他の生徒の邪魔をしないよう気をつけて行動して下さい』

 

 

 後から送られてきた学校側のメールが3通。

 これは一体……………。

 

 

 

 

 

 

 

「ご苦労だった」

 

『はい。お役に立ててよかったです。それでは』

 

 今のは誰の声? 今、誰に労いの声を掛けたの?聞いたことのない女性の声。狡噛君のいる方から確かに聞こえた。

 

「えっ、今の声………飛鳥?」

 

「終わった?負けたのか俺たちは?それとも………」

 

 今だに状況が理解出来ていない者が大半の中、

 龍園君は鬼気迫る勢いで狡噛君の胸ぐらを掴んだ。

 

「やってくれたなぁ、狡噛!」

 

 先程までの余裕があった時とは大違い。

 自分の計画が大いに狂ったのか、

 今にも狡噛君に殴り掛かりそうになっている。

 

「龍園、さっきの言葉そっくりそのまま返そう。お前は遊び過ぎた。『優待者』の法則が分かったのなら、すぐに当てて終わらせるべきだったな。だが安心しろ。俺の計算が確かなら、お前のクラスポイントは変わらない筈だ」

 

「…………チッ! クソが!」

 

 龍園君は狡噛君から手を離すと、悪態をつきながら勢いよく扉を開けて出て行った。後を追いかけるように、Cクラスの生徒が退室する。

 

「何が起こったのかまだよく理解出来ないが、

 狡噛、お前の仕業なんだよな?」

 

 神崎君が狡噛君に問う。

 

「あぁ。だが神崎、心配することはない。

 約束はちゃんと守っている」

 

「約束?何の話だ?」

 

「それは一之瀬に聞いてくれ」

 

 神崎君達Bクラスも足早と退席していく。一之瀬さんとの約束、それを聞きに行ったのだろう。

 

「狡噛」

 

「なんだ?」

 

「今回のお前の独断、許されることではない」

 

「許すか許さないか、それは決めるのは葛城、お前じゃない」

 

「……………」

 

 何かを言い掛けた葛城君だけど、何も言わず退室した。他のAクラスの生徒も狡噛君に言いたげな視線を向ける中、次々と部屋から出ていく。

 

 残されたのは、Dクラスの私達と狡噛君だけ。

 

「堀北さん、私たちもそろそろ出よう」

 

「…………」

 

 私は席を立つことを憚られた。何も終わっていない。まだ、何もかも。

 

「ごめんなさい、平田君、櫛田さん。

      先に行っててもらえないかしら」

 

「えっ?」 「堀北さん?」

 

「私は、まだ狡噛君と話さないといけないから」

 

 彼も椅子を引いて立ち上がる素振りを見せない。

 まだ終わっていない。試験は終わったけど、

 私の中でまだ謎が解かれていないのだから。

 

 

 

 

 

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