〜綾小路清隆の視点〜
無人島特別試験から3日が経った。あれから新たな試験が行われる事なく穏やかな時間が保たれていた。
これで終わりなのか。本当に終わりならば、このまま何もなく帰れる事を願うばかりだ。オレは客室の窓から見える海の景色を一人眺めていた。
『息子をこの学校から退学させろ』
無人島特別試験の前、茶柱先生がオレに伝えてきた言葉。あの男がもう動き出したのか。オレと狡噛は、ある理由からこの学校を選んで入学した。
高度育成高等学校 校則第〇条
卒業までの間、世間との接触を強制的に絶ち
外へ出ることを禁ずる。
しかし、あの男は外の世界から無理やり接触を図ろうとしている。そしてあろうことか、オレの担任の茶柱先生はAクラスに上がらないと父親の意向通りにこの学校から退学させると脅してきたのだ。
茶柱先生の話が嘘か真か確かめる術がオレにはない。力なきオレは嘘が真実だと想定して動かなければならないのだ。本当に困ったものだ。オレは平穏な学校生活を送る為にここに来たというのに。
『いつか来ると分かってはいたが、退学させたいのはお前だけか。なら俺はもう用済みかな。俺は最高傑作でも何でもないしな』
首輪が外れ、野に放たれた『猟犬』は一体何を思いどんな行動に出るのか。自由を謳歌し走り回るのか。
それとも、新たな飼い主を探すのか。
そして突然、オレの携帯が鳴り響いた。それが、新たな波乱を呼ぶ知らせだと気付いたのは、この後の船内アナウンスが入った時だった。
「チェックメイト」
「………強いとは思っていたが、まさかここまでやるとはな。俺の負けだ坂柳」
「私も何度か長考を余儀なくされました。これ程白熱した戦いは初めてです。流石ですね」
ここは坂柳の客室。俺と坂柳はチェス盤を挟んで向かい合っていた。そして今し方、手に汗握る戦いが終わったところである。
そもそも、何で坂柳の部屋にチェスの駒と盤があったのか疑問に思った俺だが、勝負が始まってからはそんな些細な要因に気を取られている場合ではなかった。それ程までに坂柳は強かった。
「さぁ、もう一戦といきましょうか?」
「まだやるのか?」
「当然です。たった一度の戦いで終わってはつまらないではありませんか。次は狡噛君が先行です」
チェスは基本先手が有利とされている。最初に駒を動かせるため、相手より先に攻撃の陣形を整え、ゲームの展開をコントロールしやすい。片や後手は先手の動きに合わせて防御や対応を迫られることが多いからだ。
だが俺は、そんな事を負けの言い訳に使う気はさらさらない。少なくとも、坂柳のチェスの腕は俺よりも上だと判断した。
「俺が勝っても泣いてくれるなよ?」
「うふふ。その鼻をへし折ってあげましょう」
今の坂柳は心の底から愉快に笑みを浮かべている。普段クラスメイトと接する表面上の笑みとは違うと俺にはハッキリと分かる。
今まで肩を並べる相手と出会わなかった。だからなのか、彼女は本当に楽しそうだ。こんなこと本人には到底言えないが、まるで新しいおもちゃを貰った子供のように坂柳ははしゃいでいる。
「あんた達、まだやってたの………?」
扉が開く音と共に、坂柳のルームメイトである神室が入ってきた。
「えぇ。これからもう一戦やるところです。わかっていると思いますが真澄さん、決して邪魔だけはしないで下さいね?」
「アンタの楽しそうな顔を見れば分かるわよ。けど、ここは私の部屋でもあるんだけど」
神室の言うことは正論だ。というか、女子の部屋で遊んでいる俺がおかしい。
「真澄さん。こうして私と狡噛君がチェスをしている事、それがどれだけの意味を持つのか、貴方には到底理解出来ないでしょうね」
「はぁ? 何それ意味分かんない」
神室は怪訝な表情を浮かべる。
「もう一度言いますが決して邪魔はしないよう、お願いしますね?」
再度念を押して神室によう忠告する坂柳。大袈裟だな。別にチェスぐらい、俺はいつでも構わないんだが。
ピロリン
「ん? 「何?」
突如、俺のポケットに入っていた携帯が鳴った。おかしいな。坂柳との戦いに集中する為に音量をゼロに設定していた筈なのに。
受信されたメールを確認しようと、俺は携帯を取り出した。それとほぼ同時に船内にアナウンスが入る。
『生徒の皆さんにご連絡いたします。先ほど全ての生徒宛に学校から連絡事項を記載したメールを送信いたしました。各自携帯を確認し、その指示に従ってください。繰り返しますー』
俺は船内のアナウンスを耳で聞くと同時に、携帯を操作してメールに書かれていた内容を確認する。
『まもなく特別試験が開始します。各自指定された部屋に、指定された時間に集合して下さいー』
俺はスラスラと目を通していく。指定された部屋、指定された時間を確認した後、俺は携帯から顔を上げる。
「どうやら、次の特別試験が始まるようですね」
「そのようだな。神室、
お前もメール来てるだろ、見せてくれ」
「はいはい」
俺は、神室の携帯が俺と同時期に鳴っていたことに気付いていた。神室は携帯を見せるように掲げた。
「指定された部屋も時間も俺と同じか」
これだけじゃ今は何も分からない。
もっと情報が必要だ。
「そうなの。坂柳、アンタの方は?」
坂柳は携帯を確認しようともせず、
チェスの駒を手の中で転がして遊んでいた。
「いいえ、それには及びません。
今回の特別試験、私は参加しませんので」
「え?」 「は?」
坂柳の流れるような発言に俺は一瞬耳を疑った。
特別試験に参加しないだって?
坂柳は事情を全て知り尽くしているような顔だ。
「お前、知っていたろ?」
「はい」
坂柳は隠そうともしなかった。
「私が豪華客船に乗れたのは、学校側の配慮なんです。無人島試験という厳しい試験があるからこそ、生徒達はこの豪華客船に乗れている。しかし、私はこの身体ですので試験に参加出来ない」
さらに坂柳はこう言葉を続けた。
「私は学校側から条件を付けられました。皆さんと一緒に豪華客船に乗れますが、特別試験に一切介入することは出来ないと。加えて、いくつかの船内の娯楽施設の使用も禁止されています」
「そうだったのか」
神室の表情から察するに、彼女も知らなかったようだ。娯楽施設も使えないとなると、俺達が無人島にいる間は、さぞかし退屈だった事だろうよ。
俺はベッドから立ち上がった。
「俺は一旦部屋に戻る。坂柳、済まんがまた今度だ」
「はい。この特別試験が終わったら、もう一度」
そうして坂柳と神室に見送られて俺は部屋から出る。するとそこには、
「え? 狡噛君?」
「あら狡噛君、こんにちは」
ドアを開けた俺の目の前にいたのは、同じクラスメイトの帆足と白石。彼女達は丁度、坂柳・神室の部屋の前を通り過ぎるところであった。
「ど、どうして坂柳さんと神室さんの部屋から狡噛君が? ま、まさか!?」
「まさか、なんだ? 悪いがお前のくだらない妄想に付き合うつもりはない。じゃあな」
「じょ、冗談だって。冷たいなもう」
帆足は去ろうとする俺を見て慌てて引き止める。
「坂柳さんとは何をされていたのですか?」
俺と帆足を一歩引いた所から見ていた白石が、そう問い掛けてくる。
「別に。ただのボードゲームさ」
「………そうですか」
白石は他にも何か言いたそうな顔だったが、言葉を飲み込んで納得したようだ。それを横で見ていた帆足は俺の制服の袖をグイグイと引っ張る。
「ちょっといいかな、狡噛君」
「何だ?」
「い、い、か、ら」
「………はぁ、わかったよ」
帆足の謎の圧に押された俺は、彼女の言われるがままに連れて行かれ、白石と距離を取る形となった。
「狡噛君さ、ちょっとは自分の行動に気を付けるべきじゃないかな?」
コイツ、何で俺に怒ってるんだ?
何故か説教をし出す帆足に、俺は眉に皺を寄せる。
「急に何だ?」
「何だ?って分かるでしょ? 白石さんのことよ」
「……アイツがどうかしたのか?」
俺は振り返って白石を見る。
彼女は俺と帆足を不思議そうに眺めていた。
帆足は額に手を当ててため息を吐いた。どうやら俺の答えは帆足を呆れさせてしまったらしい。
「まさかその見た目でニブイってことあるの?
デートよデート。白石さんとするんでしょ?」
「白石が言ったのか?」
「あっ、誤解しないでね。私、無人島で狡噛君と白石さんが二人で話しているの見てたからさ。それで船に戻った時に何話していたかしつこく聞いちゃったの。ほら私、白石さんと同じ部屋だからさ」
白石とルームメイトだから、というのは全然理由になってないだろ。
「そう睨まないでよ。二人は入学初日から仲が良さそうだったし気になるのは当然じゃない? 実際に、二人のことを見てたのは私だけじゃないよ。ほら、西川さんや吉田君だって」
「………それで、お前は何が言いたいんだ?」
「要するに、デートの約束をしてる子がいるのに他の女子の部屋で遊んで、あまつさえその子にちゃんと説明しないのはいかがなものだと思うわけ。どう分かった?」
本当に坂柳とはボードゲーム(チェス)で遊んでいただけなんだが。ちゃんと説明しろと言われてもな、それ以上のことは何も無いのが事実だ。
だがこれを言ったら帆足は納得しないだろうし、またゴチャゴチャと言ってくるだろうな。
「はいはい、分かったよ」
「ちょっと、本当に分かったわけ?」
「まぁ見てろ」
帆足の懐疑的な目から視線を切り、俺は白石の元へ近寄る。彼女は近づいて来る俺を見て微笑んでいた。
「白石」
「はい」
「坂柳や神室とは何も無かった。だから安心しろ」
白石は目をぱちくりと瞬かせた。すると、彼女は手で口元を押さえながら肩を震わせる。その様子を見た俺と帆足は互いに顔を合わせる。
「おい、何で笑ってる?」
「私に聞かれても知らないわよ。それに、あの言葉はちょっと直接的すぎるって」
「じゃあ何なら良かったんだ?」
俺と帆足が話している間に、白石はまず息を整え、潤ませた目から出た涙を指先で拭っていた。
「本当に面白いですね。狡噛君って」
さっきの俺の言葉に面白い要素があったとは思えないけどな。
「帆足さん。私は大丈夫ですよ」
「本当に……?」
「誤解なさっているようですが、私と狡噛君は彼氏彼女の関係ではありませんよ。狡噛君が何処で何をしようと、それは狡噛君の自由ですから」
「そ、それはそうだけど………」
「あの時私が言おうとしたのは、先程届いた特別試験の案内の事です。まだどのような試験が行われるか分かっていない状態ですが、人が行き来する廊下で情報を口頭で伝えるわけには行かないと思ったので」
白石が言うことは理にかなっている。指定された時間そして部屋、これらが後から情報として武器になり得るのなら、この場で情報交換するわけにはいかない。だが、俺には白石の説明が後から考えて作られたものに思えた。
「あっ」
誰かが、俺達の後ろで短い声を漏らした。その声は小さいながらも、俺の耳にしっかりと届いていた。その声は、俺がこの3日間探し求めていた人物の声とあまりにも似ていた。いや、似ているのでは無い。
俺は上半身を捻って後方を確認する。
視界に獲物を捉えた時、俺は既に走り出していた。
「ここにいたのか食い逃げ野郎!」
「ヒェ!?」
俺の怒鳴り声に反応して情け無い声を上げる森下。その場からすぐに逃走を図ろうとする森下だが、俺が逃すわけがない。
森下の足は予想以上にとろく簡単に捕まえられた。
「は、離しなさい狡噛慎也! これは立派なセクハラですよ!」
「人の金で食う飯は美味かったか? どうなんだ!」
俺は森下の頭を指の関節でぐりぐりと押しこむ。
俗に言う、ぐりぐり攻撃である。
「イ、イタタタタタタタタタ!!??」
俺を殴って逃れようとする森下だが、そんな軽いパンチじゃ痛くも痒くもない。
「な、何やってるの狡噛君…………?」
「うふふ、本当に面白いですね。あの二人」
指定時間3分前、俺は指定された〇〇号室にたどり着いた。俺はポケットから手を出し、部屋をコンコンとノックする。
「入れ」
「失礼します」
許可を受けて俺は足を踏み入れる。するとそこには、同じクラスメイトの橋本の姿とDクラスの担任教師である茶柱先生の姿があった。
「狡噛、お前も一緒なのか」
「あぁ、そのようだな」
俺が橋本の横に座ると、
それと同時に誰かがドアを開けて入って来た。
「ゲッ」
神室は席に座る俺、ではなく橋本を見た途端に顔を顰めてそう呟いた。
「人の顔を見てそれはねぇぜ。真澄ちゃん」
「その呼び方やめてって言ったわよね?」
すごく嫌な顔をしながら席に座る神室。
「全員揃ったな。只今より特別試験の説明を行う」
この部屋に集まるのは俺達3人だけなのか。
さて、今回はどんな内容なんだ。
「今回の特別試験では、1年全員に干支になぞらえた12のグループに分け、そのグループ内で試験を行う。試験の目的はシンキング能力を問うものになっている」
シンキング能力。ようは考える力ということ。
「社会人に求められる基礎力には大きく分けて3つある。アクション、シンキング、チームワーク。先の無人島特別試験では、クラスのチームワークが試された試験だった。そして今回はシンキング。現状を分析し、問題を明らかにする力。準備する力。創造力を働かせ、新しい価値を生み出す力。そういったものが必要となってくる」
茶柱先生はさらに言葉を続ける。
「ここにいる3人は同じグループとなる。そして今の時間、別の部屋でお前たちと同じグループになる生徒に対して同じような説明が行われている」
今の時間?ということはつまり、
「お前たちのグループ名は『戌』。そしてこれが、『戌』グループのメンバーリストだ」
茶柱先生は机の中心に一枚の紙を置く。俺たちはその用紙に書かれている各クラスの名前を凝視した。
Aクラス
神室真澄 狡噛慎也 橋本正義
Bクラス
網倉麻子 柴田楓 白波千尋 時任克己
Cクラス
石崎大地 小宮叶吾 近藤 玲音 西野武子
Dクラス
小野寺かや乃 前園杏 王美雨
知らない生徒ばかりだな。
「最後に、この特別試験のルールを説明する。特別試験の各グループにおける結果は4通りしかない。例外は無く、必ず4つのうちどれかの結果になるように作られている」
ルール
試験開始当日午前8時に一斉にメールが送られる。『優待者』に選ばれた生徒は、『優待者』に選ばれた事も書かれている。試験の日程は明日から4日後の午後9時まで(1日の完全自由日を挟む)。
1日に2度、グループだけで所定の時間と部屋に集まり1時間の話し合いを行うこと。話し合いの内容はグループの自主性に全てを委ねるものとする。
試験の解答は試験終了後、午後9時半から午後10時までの間のみ『優待者』が誰であったかの答えを受け付ける。解答は1人1回までとする。
解答は自分の携帯電話を使って所定のアドレスに送信することでのみ受け付ける。『優待者』にはメールにて答えを送る権利が無い。
自身が配属された干支グループ以外への解答は全て無効とする。試験結果の詳細は最終日の午後11時に全生徒にメールにて伝える。
結果1
グループ内で『優待者』及び『優待者』の所属するクラスメイトを除く全員の解答が正解していた場合、グループ全員に50万ppが支給される。『優待者』と同じクラスの生徒もそれぞれ同様のポイントを得る。『優待者』には100万ppが支給される。
結果2
『優待者』及び所属するクラスメイトを除く全員の答えで、一人でも未解答や不正解があった場合、『優待者』に50万ppが支給される。
結果3
『優待者』以外の者が、試験終了を待たず答えを学校に告げ正解していた場合、正解者に50万ppが支給される。また正解者の所属クラスは50cp得る。『優待者』の所属クラスは50cp失う。
結果4
『優待者』以外の者が、試験終了を待たず答えを学校に告げ不正解だった場合、答えを間違えた生徒が所属するクラスは50cp失う。『優待者』に50万ppが支給される。また『優待者』の所属クラスは50cp得る。
俺はこの特別試験のルールと、各結果によってもたらす恩恵を頭に叩き込んだ。
「説明は以上だ」
そう言って茶柱先生は誰よりも早く部屋から退室した。それを見送った俺も席を立って自室に帰ろうとした時、俺は橋本に腕を掴まれた。
「ちょっと待てよ狡噛」
「何だ?」
「少し作戦会議しようぜ。真澄ちゃんもいいよな?」
「…………………」
神室からの返事はないが、席を立たないということは了承したのだろう。俺も席に座り直す。
「まず確認なんだがよ狡噛、今回の特別試験お前はどう動くつもりだ? いやそもそも、動くつもりはあるのか?」
橋本は俺に特別試験に参加する意思があるのか尋ねてくる。
「何て答えたらお前は喜ぶんだ?」
「そりゃ勿論、クラスの為に尽力するってよ。俺もそろそろ、お前の本当の実力を見てみたいのさ」
「あんま期待してくれるな」
「期待しなきゃ嘘だぜ。お前はクラスで唯一、姫さんと対等な人間なんだからよ」
「………………」
対等な人間ね。橋本は自分がただの駒でしかないと理解しているわけか。それで良く働くものだ。健気な奴だな。
「神室、坂柳は何か言ってたか?」
「今回の特別試験も葛城に任せるって」
「はぁ? 何で姫さんは動かないんだ?」
「動かないんじゃなくて動けないの。坂柳は学校側から特別試験の参加を禁止されてるの」
「だから何で?」
「あーもう、説明が面倒だから自分で聞いてきて」
これ以上説明する気がない神室は俺たちに背を向けた。
「これで葛城が挽回して功績を上げでもしたら、信用を得て派閥が復活しかねない。どーすっかなぁ」
テーブルに突っ伏して頭を抱える橋本を、俺は頬杖をつきながら眺めていた。
「あぁそうだ狡噛、
私、坂柳からアンタに伝言を預かってるんだった」
また俺たちの方へ体を向ける神室。
「俺に?」
それは最初に言うべきものじゃないのか。
一体どんな内容なんだ?
「"葛城君に何を指示されようとも、今回の特別試験、狡噛君の自由にしてください" だってさ」
「…………そうか」
自由にしてもいいか。分かったよ坂柳。
俺は口元にうっすらと笑みを浮かべる。
「それがアイツのオーダーなら、俺はそれに従おう」
「いや狡噛、今のは命令とは違うんじゃないか?」
「今日はこれで終わりだ」
俺は席を立つ。
「おいおい、もう帰るのかよ」
「私も行く。橋本と二人は嫌だから」
「ヒデェな真澄ちゃ「フンッ!」痛っ!」
こうして俺達の作戦会議は終わった。と言っても碌な作戦も出てなかったが。しゃがんで足を撫でている橋本を置いて、俺と神室は部屋を出ていった。
そして翌日。
『厳正なる調整の結果、あなたは『優待者』に選ばれませんでした。本日の午後ー』
学校側から届いたメールの内容は、俺が『優待者』ではないと告げるものと、試験の開始時間とその場所を伝えるものだった。
「この中の三人、誰も『優待者』にはならなかったな」
「あぁ」
互いに送られた内容を見せ合う。橋本と神室の文章には、俺と同じ内容が書かれていた。
何にせよ、俺たちは新たな特別試験に挑むことになった。そこで出会う他クラスの生徒、誰か『優待者』でどんな思惑が交差し、どんな結果に着地するのか。それにしても。
『厳正なる調整の結果ーー
俺はその一文が気になって仕方がなかった。