シングルファザーローランくん 作:なめなめろう(旧名:ELDERSIGN)
下手するとこういう話をずっと書いて本編をおざなりにしてしまいそう。司書達がわちゃわちゃしてるだけで楽しいんだよな……
最近、アンジェラはハイハイとよちよち歩きを覚えた。だから、より一層しっかり見てあげる必要があるんだけど……。
「…………」
「…………」
「ア、アンジー……ダメだぞ〜。その赤い人の髪によじ登るのだけはダメだぞ〜」
寝ているのか、あるいは瞑想しているのか、座って目を閉じているゲブラー。その赤く長い髪にアンジェラはよじ登って不思議そうな顔をしていた。
そんな光景を見て、ケセドは肩を震わせて顔を背けているし、ティファレトはなんとかこの状況を解決できないか育児の本のページをひたすらめくっている。多分、意味ないぞ。どんな育児本にも最強の赤い霧の髪から手を離させる方法なんて載ってないだろうから。
それにしても、ティファレトには結構世話になっている。自分で年齢は俺より上とか言っていたけど、本人としてはやっぱり自分がまだまだ子供だって認識があるらしい。そのせいか、アンジェラに対しては年上として頑張ってお世話をしようとしてくれている。だから自然科学の階に行くと、小難しい本の山の隣には育児本も積み上がっている。
ティファレトが本をパタンと閉じた。どうやらどうするべきか決まったみたいだ。
「アンジー、ちょっと早いけどおやつよ。だからこっちまで来て」
手に持っているのは小さなビスケット。可愛らしい動物の形をしている。
それを見たアンジェラはよだれを少し垂らし始めた。可愛い。
「ああっ!なんてことなの!」
「……くっ、あははははは!」
「や、やばい……!」
よだれを垂らし始めたアンジェラは、そのビスケットをじっと見つめたまま、ゲブラーの髪の毛を食べた。小さな口で頬張るようにもぐもぐと口に入れていく。……なんだかゲブラーの髪の毛がナポリタンに見えてきたな。
その光景に耐えきれず、ケセドはらしくもない笑い声を上げながら、コーヒーカップを震わせている。黒い液体がぶるぶると震えて少しだけ溢れた。
ふとゲブラーの方に目を向けると、ゲブラーは目を開けてこちらを見ていた。完全に起きている。
ゲブラーは優しい手つきでアンジェラの脇の辺りに手を入れて、自分の髪からアンジェラを離した。髪にアンジェラのよだれがついている。
「……。アンジー、私の髪の毛はおやつじゃないんだ。食べても美味しくない」
「うー……げぶらーすき」
ゲブラーはアンジェラの言葉に答えるように頭を撫でた。雑だけど確かに愛情を感じる手つきだった。
「ティファレト。アンジーを預かっていてくれ。ちょうどおやつも手に持ってるし、食べさせてやれ」
「ええ。そうするつもりよ」
「おっと、何か用でもあるのかいゲブラ〜?」
「ああ。お前達を始末するっていう用がな」
やっべ。逃げろ! 俺はケセドと一緒に一目散に逃げ出した。
「ゲブラー! ずっと笑ってたケセドはわかるけど、なんで俺もなんだよ!」
「え〜? 俺だって見てただけなんだけどな〜。それにどうすればいいか考えていたんだよ〜」
「嘘つけ。面白がってただけだろ。それにローラン。子どものやらかしは当然親に責任があると思わないか?」
「……クソ! 正論すぎるな!」
長い長い鬼ごっこが始まった。そんな俺たちを見ながら、アンジェラは小さなビスケットを食べてにっこり笑った。