シングルファザーローランくん 作:なめなめろう(旧名:ELDERSIGN)
遂に不純物に突入しました。終わりが近いですね…
俺が休んでいる間に、とうとうハナ協会が来たらしい。……いい加減休むのも終わりだな。
「アンジェラ。結構長い間休んじゃったな。そろそろ俺もまた働くよ」
「もう大丈夫なの?」
「ああ。もうバッチリ!」
サムズアップすると、アンジェラは少し笑った。アンジェラも本当に最初の頃と比べると柔らかくなったよな。
「……どうやら新しいゲストが来たみたい。ハナ協会の生き残りね」
「そうか。気をつけてな」
「私は死なないのだけど」
「まあそれはそうだけどさ」
俺がそう言うと、アンジェラはいつも通りパチンと音を立てて消えた。
「なんか嫌な予感がするんだよなぁ」
◇◇◇
「ほら、やっぱり嫌な予感がしたんだ」
予感に従ってアンジェラのところまで行くと、そこにはオリヴィエの罠にかかったアンジェラがいた。急いでアンジェラのところまで駆け寄って、オリヴィエの持つT社の装置を奪い取る。
「ボタンを押せばたったの1秒で作動する単発装置だけど……効果は確かだ。……オリヴィエ。ハナ協会に入ったくせに、こんな贅沢で危ないものを使うなんてな。全財産でも注ぎ込んだか? あと無駄口が多い」
「……ローラン!? なんでこんな所にいるんだ」
「なんでって……そりゃあ紫の涙の奴にいきなりここに送り込まれたからだけど」
「なんだって……? 紫の涙、一体何を……」
オリヴィエは疑念に満ちた表情になった。こいつも紫の涙になんか唆されでもしたのか?
「まあいい。それでローラン、お前はここで人間の真似をする化け物を守っていたのか?」
「はぁ、化け物だって? 厳格な俺の上司であり友達なんだぞ?……アンジェラ。こいつは俺が1人で相手するからちょっと下がっててくれ」
「……ありがとう。私の助けは?」
「要らないな。1人で解決できる」
「分かった。……助けが必要ならいつでも言って」
そう言ってアンジェラは後ろへと下がっていった。
「どういうつもりだ、ローラン。なんでお前が、俺たちが今まで見て、やられてきた全ての悲劇と大差ないことを……この図書館でやっているんだ」
「そうでもしなきゃ生きてここから出られなかったからな。それに、図書館には俺の娘もいるし」
「娘……紫の涙は、お前の娘まで図書館に送り込んだのか」
「まあ、正直それは助かったけどな。娘だけ置き去りなんてことになったらどうなってたかわかんないし」
「そうか……それにしても、いきなりいなくなったかと思えば、まさかこんな所にいたなんてな。そのせいでどれだけ沢山の後始末をしたのかお前にはわかんないだろうな」
「おいおい勘弁してくれよ……それ、俺に言ってもどうしようもないぞ! 文句があるなら紫の涙に言ってくれ」
「はぁ……その紫の涙も図書館が飲み込んだんだけどな」
紫の涙。あいつも図書館に来て本になったけど、なんで俺を図書館に送り込んだのか、そしてどんな目的があったのか、その全てが本には書いていなかった。多分、図書館に来る前に記憶処理をしたんだろうな。お陰でこっちはいい迷惑だった。
「……そういえば、お前の家に残されていた仮面を一応今持っている。必要か?」
「……そうだな。受け取るよ」
オリヴィエから手渡された黒い仮面。決別した筈の仮面が、結局今俺の手の中にある。なんというか、変な巡り合わせってやつがあるみたいだな。
「よくよく考えてみると、こうして顔を合わせるのも連絡受け取って急いで行ったあの時以来だな」
「あの日か……短い連絡でも何も言わずに来てくれてありがとう……。その後は……ごめん」
「いいよ。どうせ俺も巣の移住権を得られるかもしれないって言葉にあたふたしながら行ったんだし」
「色々とごめんな」
こいつ……随分と負い目を感じてるみたいだな? はぁ、別に気にしてないんだけどな。あれは本当に、仕方のないことだった。
「オリヴィエ。2人で初めて都市悪夢事件を任された時のこと覚えてるか? そのなんだ……事件の名前が……」
「16区の裏路地で起きたデミグラスソースの秘法」
「そうだそうだ。……あのときが1番楽しかったよ。あれこれ気にせず目の前にあるものにだけ集中すれば良かったからな」
「ああ……でも、もうあのときには戻れない、ローラン。お前も守るべきものが増えたし、その為に色んなことを覚悟しただろうな」
「ああ。お互い遠くに行き過ぎたよ。でも久しぶりに話せて良かったよ、オリヴィエ」
その言葉に僅かに笑うオリヴィエ。でも、その笑顔もすぐに真剣な表情へと変わる。
「俺はこれからハナ協会のフィクサーとしてやるべきことをやるだけだ。仲間たちの本を回収し、危険要素を処理する。それはそれで、これはこれだろ?」
「…………。」
それはそれで、これはこれ。……今までの俺なら、そう言って受け入れていた、いや、受け入れるふりをしていただろうな。でも。
「オリヴィエ。最後に頼みがある」
「……なんだ?」
「もし、もしもだ。お前が勝って俺が死んで……その後も全てが順調にいって、図書館が沈んだら。俺の娘を頼む」
「……わかった。お前には、借りがあるから」
「そんなんじゃないさ、オリヴィエ。これは、ただの1人の親友としてのお願いだ。お前だから、頼むんだ」
オリヴィエの顔が歪む。涙を堪えるように、全てを飲み込むように。
「ローラン……お前は本当に、酷いやつだな」
「そうだな。俺もそう思うよ」
「……行くぞ」
そうして、覚悟を決めたオリヴィエが俺に向かって走り出した。
その後の闘いと結末について、語る必要はないだろう。あの闘いは、俺とオリヴィエだけのものだから。……はあ、また一つ、ゲスト達を生き返らせる理由ができたな。