シングルファザーローランくん   作:なめなめろう(旧名:ELDERSIGN)

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ルイナで1番好きな曲がPoems of a Machineで、その次がChildren of the Cityです。



Poems of a Machine

 

 

 光の中から飛び出して最初に目に入ったのは、やはりアルガリアだった。

 

 ただ1人立っているねじれたアルガリア。周りには疲労困憊の総記の司書補達。アルガリア以外のねじれは見当たらない。

 

「アンジェラ……ちょっと待ってろ」

 

 黒い手袋をしっかりと着ける。うん、いつも通りだな。

 

「ローラン……」

「アルガリア。お前のお友達はどうした」

「みんな死んだよ。でも、本当に美しい演奏だったんだ。皆、アンコールに応えて素晴らしい演奏をしてくれたよ……」

「そりゃよかったな。で、お前はどうするんだ?」

「……指揮者がタクトを下すまでは、終わらない。まだフィナーレには早いんだ」

「そうか。なら、仕方ないな」

 

 E.G.Oを発現させる。背中に現れる白い翼。そして手に握るは白と黒のデュランダル。

 

「お前が白い翼だなんて……本当に虫唾が走るねぇ……」

「勝手に言ってろ」

 

 一歩、踏み出す。それだけで十分だった。翼による加速によって俺は一瞬でアルガリアの目の前へと躍り出た。

 

 しかしアルガリアは腐っても特色だ。平然と俺の速度に対応してくる。鎌と剣が交錯し、火花が散った。何度も、何度も。

 

 踊るように、奏でるように、刃と刃が交わる。死の舞踏。気を抜けば一瞬で命が奪われるというのに、司書も司書補も、そしてアンジェラさえもただ俺たちの戦いを見守り、その音に耳を傾けていた。

 

 その時だった。

 

 聞き慣れない足音と気配。俺とアルガリアは一瞬で距離をとった。

 

 アルガリアへの警戒を怠らず、気配のする方へと視線を向ける。そこにいたのは目と足爪、そして調律者だった。

 

「そこで指一本でも動かした瞬間引き裂く。肝に銘じるように。いくらお前らでも今の状態なら八つ裂きにしてやれるからな」

「クソッ……」

「頭? これは……」

 

 アルガリアとアイコンタクトを取る。一時休戦だ。

 

 頭の存在を認識したアンジェラが俺たちの元へとやってくる。

 

「……頭が今になってお出ましになるなんてね。理由は何なのかしら」

「お前と図書館を都市から放逐しようと来たんだよ。ついでに此処に居る……砕け散った仲間を回収しようとな」

「ってことは……」

「図書館をL社の巣から外郭へ放逐するということだよ。図書館は都市の不純物よ。これ以上は見てばかり居られない状況なんだ」

「図書館に力があるから?」

「違うのよ。心を持つ機械はこの都市の如何なる場所にも属することが出来ないのだよ。それ故、放っておく訳にはいかないのだ」

「俺たちがこの場でお前達を殺せば?」

「放逐は予定通り進行する。避けられないんだよ。アンジェラ……人間の心を抱いた機械よ。お前如きのせいで扉が閉ざされてはいけないから」

「だから私を殺して図書館を外郭に追い出すってことでしょ?」

「そういうことよ」

 

 調律者はただ頷いた。その態度は超然としていて、どこか慢心していた。

 

「私は既にここに私として存在して、自分の力で立ってるわ。だからあんたたちがほざいてる戯言は軽く聞き流してあげることも出来るわよ。そして……ビナーもそうだけど、あんたたちは本当に話をわざわざ長くするわね」

「……処刑者」

「……!」

 

 パチン、といつもの音がした。

 

「まだこのくらいの力は残ってたんだな」

「ゲストの相手をするのと同じで一時的に引き下がらせただけだけど」

「ついに頭までゲストとして迎え入れるんだな……アルガリア。お前はどうするんだ?」

 

 いつの間にか人の姿へと戻っていたアルガリアに声をかける。嫌に大人しい。

 

「頭か……いいよ。手伝ってあげようか」

「へえ? これは驚いたな? どんな心境の変化だ?」

「都市に演奏を響かせるなら、当然頭にもこの旋律を聴かせないと。それに……アンジェリカの忘れ形見を壊される訳にはいかないね」

「おぉ〜、お前と意見が一致するなんてな」

 

 初めてアルガリアと肩を並べる。お互いボロボロだ。全身に血がついてないところを探す方が難しい。だけど、不思議と負ける気がしなかった。

 

「舞台が俺たちを呼んでいる……義弟、邪魔はしないでくれよ?」

「はぁいはーい、勝手に言ってろ。義兄」

 

 さあ、最後の接待の時間だ。

 

 

 ◇◇◇

 

 

「正直、勝てるとは思ってない。だけど時間稼ぎさえできれば何とかなる……多分な」

 

 調律者と足爪の処刑者。文句なしの都市の頂点。少なくとも疲れてる状態で戦うような相手じゃない。でも、耐えればいいなら話は別だ。

 

 処刑者の腕に刺さっている、青い血清が使用される。その瞬間、処刑者の姿が消えた。

 

「ローラン、処刑者の対応は俺がするよ。だからお前は調律者を……ッ」

 

 アルガリアはそう言い切る前に処刑者とともにどこかへ消えた。

 

「厄介な方を残しやがって……」

「笑いを禁じ得ないな。足掻こうと変わるものはないはずだよ」

「やってみなきゃわかんないだろ?」

 

 E.G.Oを発現させ、その翼で駆け出す。その俺目掛けて幾つもの線が射出される。

 

「……ほう。これを防ぐか。感心だな」

 

 盾のように翼で身体を覆う。この翼は変化しない。故に最強の盾となる。

 

「しかし……悲しいかな。それも余り意味はないのだよ」

「クソッ……」

 

 線が鎖となり、俺にまとわりついた。逃げる術がない。

 

 俺の動きが封じられたと同時に、アルガリアもまた、処刑者に首を掴まれた状態で現れた。

 

「くっ……」

「はは、無様な姿だな」

「お互いにだろ……」

 

 危機的状況。間違いなく人生で最も死が近い。でも、俺たちは余裕を崩さなかった。何故かって? そりゃ……視界の端に赤と黒と金色が見えてるからな。

 

 二つの影が戦場に落ちる。最強と最恐。

 

 赤い斬撃が処刑者の腕へと襲いかかり、黄金の衝撃波が鎖を伝う。その結果、処刑者はアルガリアから手を離さざるを得ず、俺を縛る鎖は一瞬で消えた。

 

 赤い霧と元調律者。疲弊の具合から考えて、これでようやく五分五分ってところか。

 

「早く立ち上がれよ。もうへたり込んでるのかよ……」

「はいはい……」

 

 流石最強。スパルタでございますね。

 

「……確かに話が冗長になると隙が見えるな」

「ガリオン……」

「その名を聞くのは絶えて久しいことよ……もはや私の為の名前では無いだろうがな」

「責任を果たせぬのみならず……ここで眠りに就いて彼らを助けているのね。愚かな……処刑者、準備して。もうすぐだよ」

 

 再び戦端が開かれる。恐らく、都市で最も凄まじい戦いが始まる。

 

「俺の旋律を、調律してくれるかい?」

「其方は只踊るが善い。私が調えよう」

 

 線を柱が撃ち落とす。鎖には錠前がつけられ、鳥籠を妖精が開ける。そんな地獄絵図の中をアルガリアは悠然と歩く。その姿はまさに指揮をするようだった。

 

「アレグロ……ラルゴ……クレッシェンド」

 

 音が響く。その次第に大きくなる音を、誰も止めることができない。都市の頂点へと、音が響き渡る。

 

「嗚呼、分かるよ。図書館も俺に力を貸してくれるんだね……」

 

 アルガリアの姿が変わっていく。白と黒を基調とした服装。音符を模った黒い鎌。静かなオーケストラがアルガリアに共鳴した。

 

「ダ・カーポ。再び戻って、演奏を始めよう。この永遠なる演奏を!」

「あいつ……随分と楽しそうだな?」

「無駄口もその辺にしておけ。前に集中しろ」

 

 俺とゲブラーが相手をするのは足爪の処刑者。血清を何個も腕に刺しちゃって……痛くないのか?

 

 赤い血清が使用され、放たれる凄まじい突進。まともに食らったら死ぬな。でも、こっちにはまともじゃ無い奴がいるんでな。

 

「遅いな」

「…………」

 

 俺に向かってきた突進に平然と割り込むゲブラー。上から振り下ろされる爪をあっさりとミミクリーで受け止める。だがその衝撃は凄まじい。一瞬で地面が陥没した。

 

「おい、ローラン。お前も動け」

「あ、すみませんでした」

 

 ロジックアトリエ製の銃で援護射撃をする。放たれる銀色の弾丸。しかし、それをまともに回避する素振りもなく、当たっても何の反応もない。やっぱりこのレベルの相手じゃ銃は使い物にならないな。

 

「Furioso」

「斬る」

「……引き裂く!」

 

 3つの血清が消費される。それでもなお、幾ら足爪の処刑者といえど、俺たち2人の同時攻撃に完全に対応するのは無理だ。俺のデュランダルが片腕を切り裂いた。嫌に硬い。

 

 あの血清には特異点の力が込められているらしいが……その負担は一体どれほどなんだろうな?

 

 そんなことを考えていると、いきなり地面が揺れ始めた。

 

「……何だよ、この振動?」

「……どうやら進んでいるみたいだな」

「ガリオン……最後まで砕け散ったお前の体を回収できなかったのは惜しくは在るが……時が来た。予定通り此処は放逐されるのよ。」

「…………」

「都市から離れた外郭の何処かに旅立つ準備をしなさい。二度と戻ってこないこと。再び都市に戻って来ればかかる誠意を無視したと判断する」

 

 調律者は薄く笑った。

 

「どうか、居るべき場所に大人しく居て呉れぬことを」

 

 そうして、図書館は外郭へと放逐された。

 

 

 ◇◇◇

 

 

「おい、アルガリア。お前はどうするんだ?」

「……都市にはもう戻れないだろうね。俺の、俺たちの演奏も、フィナーレを迎えたみたいだ」

 

 荒涼とした外郭を眺めながら、アルガリアはそう言った。

 

「俺は、外郭を巡るとしようかな。全部、無駄になったから。都市よりは、外郭の方がもっと素晴らしい演奏ができる手がかりがあるかもしれない」

「そうか、良かったよ。……アンジーの数少ない家族を殺すのは忍びなかったからな」

「…………」

 

 アルガリアが笑うのをやめた。初めて見る表情だった。

 

「お前は本当に利己的だね。お前たちは俺の友達を殺したくせに、俺は殺したくないだって? こんなに笑える話はないな?」

「そうだな。でも、お前もそうなんだろ。俺に刃を向けないのは」

「……ほんと、癪に障るなぁ」

 

 アルガリアは俺に背を向けて歩き出した。図書館の出口へと。

 

「アンジーによろしく伝えておいてよ、義弟」

「……わかったよ」

 

 きっと俺とアルガリアは、二度と会うことはないだろう。後には、ただ残響が残っていた。

 

「……アンジェラ!」

 

 1人佇むアンジェラの元へ歩み寄る。

 

 これからどうするか。考えることもやることもたくさんある。なんてったって、外郭に放逐されちまったからな。でも、何とかなる気がする。根拠なんて全くないけど、これからはいい感じに過ごせていけるんじゃないかな。

 

 そうだろ?アンジェリカ。だから……見守ってくれてると嬉しいな。俺と、アンジーを。

 

 

 

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