シングルファザーローランくん 作:なめなめろう(旧名:ELDERSIGN)
本編とは全然関係ないんですけど、リンバスの9章がやばいです。ほんとに。しばらく興奮して寝れなさそうです。
「よう、久しぶりだな。オリヴィエ」
「ローラン……帰ってきてたのか。それにアンジーも」
取材のために図書館から遠路はるばる都市にやってきた訳だが、運のいいことに偶然オリヴィエと出会った。
「元気そうで良かったよ。あ、そうだ。ほら、アンジーも挨拶するんだぞ」
「オリヴィエおじさん久しぶり!」
アンジェラの屈託のない表情から放たれたおじさんという言葉に、オリヴィエの顔が少しだけ引き攣った。
「あ、ああ。久しぶり。そっちこそ元気そうで良かったよ。……子供の成長っていうのは早いもんだな。随分と背が伸びた気がする」
「前会った時から10cmも伸びたんだよ!」
そう言いながらアンジェラは精一杯身体を伸ばして自分の身長が伸びたことをアピールした。
「そうだオリヴィエ。せっかく会ったんだし、この後時間があるなら一杯どうだ? あの居酒屋でさ」
「ああ、いいぞ」
オリヴィエは楽しそうに僅かに笑った。
◇◇◇
「「「乾杯!」」」
カチンと器が音を立てる。俺とオリヴィエはマッコリを、アンジェラはリンゴジュースで乾杯だ。
「それで、今回も取材か?」
「ああ。今回は遂にハナ協会とリウ協会に取材しようと思ってな。ほんと、ちょうど良かったよ」
「それは何よりだな。リウ協会はやっぱりシャオ達を頼るつもりか?」
「まあな。ちゃんと顔見知りって言えるのはそいつらくらいだし。……ちなみに最近ハナ協会はどうなんだ?」
オリヴィエはマッコリをぐいっと呷って、ドンっと机に盃を置いた。
「死ぬほど忙しい。都市悪夢級の案件がいくつも上がってきてるし、特にねじれが原因の事件が多すぎる。フィクサーもE.G.Oを発現した奴がちらほら出始めて、そいつらの扱いもどうすべきか話し合っているしな」
そう言うオリヴィエの眼は明らかに「お前のせいだぞ……」という恨みと怨念のこもったものだった。
「待て待て、流石にそれは俺のせいじゃないだろ! 第一俺だってなあ……」
「わかってるわかってる。お前があの時図書館で色んなことを考えて、その結果取れるであろう最善の手を尽くしたのは。それでも図書館、ひいては旧L社がねじれなんかの原因なんだから多少の愚痴は出る」
「まあ、うん。それはそうだな……」
俺たちがそんな話をしている間に、アンジェラはリンゴジュースを飲み干した。まあ、大人の話はつまらないからな。
「アンジー、次は何が飲みたい?」
「うーん……オレンジジュースかな」
その時、オリヴィエがいきなり口を開いた。
「ああそうだ、ローラン。今日の会計は俺が持つ」
「はい? なんだって急に……」
「どうせ図書館に篭ってるせいで碌に金を稼いでないだろ。俺は金だけはあるからな。久しぶりの再会なんだ、これくらいはさせてくれ」
「お〜〜じゃあお言葉に甘えるとするか! すいません店員さん! これとこれと……あとこれも」
そうやってアンジェラも食べれそうなものをいくつか注文して数分。最初に注文したものが来た。
「こちらジョンでございます」
「これだよこれ! これが美味いんだよなあ!」
「本当に好きだよな。美味いのには同意するけど」
「私も好き!」
早速熱々のジョンをみんなでつつく。出来立てが一番美味いからな。
「いやあ、美味いなあ! これがまたマッコリと合う!」
「本当に美味い……それにしてもお前は美味いものを食べる時が一番幸せそうだよな」
「まあな。食べるもので身体ができてるわけだし。そういやハムハムパンパンのサンドイッチも外郭じゃ食べれないし食い溜めしないと……」
「ハムハムパンパンか。あそこは相変わらず人気だよ。最近は新作の期間限定メニューが出たとかでやたら混んでる。開店前から行列だ」
「マジかよ……」
並ぶのってあんま好きじゃないんだけどな……でもあれを食べないと都市に来た意味がないと言っても過言じゃない。早起きするか……。
「それにしても、アンジーは好き嫌いをしないな」
オリヴィエの視線の先には、色んなジョンをパクパクと口に頬張るアンジェラの姿があった。見られていることに気づいたアンジェラは、口を恥ずかしそうに両手で隠しながら一旦口の中の物を無くすために細かくモグモグと咀嚼した。
「アンジーも食べるのが好きなんだよ。俺に似たのかも」
「いいことだな」
「むーそんなじっと見てないで! 二人とも食べないと私が全部食べちゃうよ!」
威勢のいいその声に俺たち二人は笑った。
「好きなだけ食べていいぞ。なんてったって今日はオリヴィエおじさんの奢りなんだからな」
「おい。お前が俺のことをおじさんって言うな」
「はは、悪い悪い。……とと、ちょっとお手洗いに行ってくるわ。よろしく」
「ああ」
そうして俺は席を立った。
◇◇◇
ローランの後ろ姿を見送った後、美味しそうに次々とご飯を平らげていくアンジェラを見つめる。
黒髪ではあるが、顔立ちは本当にアンジェリカにそっくりだ。特にその青い瞳。俺とローランがいっつも一緒にいるせいで、二人が付き合う直前は結構その眼で「邪魔なんだよ……」って睨まれてた気がする。なんだか懐かしい気持ちになってくる。
「……パパはいつも図書館で何をしてるんだ?」
「パパ? うーんとね、大体いつも本を書いてるか、司書のみんなとお話ししてる。たまに色んな武器の手入れとかもしてるよ! それに、私が遊びたいって言ったら遊んでくれるの! 最近はピアノとかも一緒に弾いてるし」
「ピアノ……」
……ローラン、お前はすごいな。しっかりと過去を乗り越えて、今を生きてるんだな。
「じゃあ、パパのこと好きか?」
「うん、大好き! とっても優しくてかっこいいんだよ!」
「そうだな……あいつはきっといいパパだよ」
「でもたまにだらしないけどね。ネツァクと一緒に騒いだ後にそのまま床で寝てるし」
「…………」
まあ、うん。それもローランらしいか。
「オリヴィエおじさんは? パパのこと好き?」
「俺か? うーん……まあ、好きだよ。一番の友達だしな」
改めて口にするとなんだか恥ずかしいな。まあ、本人に聞かれてないからいいか。
そう思ってローランが向かっていったトイレの方を見ると、ニマニマとした笑顔を浮かべたローランが立っていた。
「な、ロ、ローラン!」
「へえ〜俺のこと好きなのか。一番の友達なのか。いやあ〜いい言葉だね。もう一回言ってくれよ」
「クソ、趣味が悪いぞ!」
ローランは親しげに俺の肩へ腕を回してくる。うざったい手つきだ。
「おい、なんとか言えよ。ほらもう一回」
「……いい加減殴るぞ」
「あはは、やっぱりパパ達すっごく仲良いんだね!」
じゃれあう俺たちと、それを見て笑う幼いアンジェラ。まあ、たまにはこういうのも悪くないか。いつもはハナ協会で必死に仕事してるし。
ローランと二人で都市悪夢の事件を解決していた頃。一番楽しかったあの時には戻れない。それでも、これからを楽しくすることはできる。ひょっとしたらあの時よりも楽しい日々にできるかもしれない。憎しみも怒りも、しがらみも乗り越えられたんだから。
なんだかそんなことを想う、そんな夜だった。