シングルファザーローランくん 作:なめなめろう(旧名:ELDERSIGN)
皆様、アンケートご協力ありがとうございました!結果、アンジェラ(ローランの娘)のあだ名はアンジーにしようと思います。あくまでもあだ名ですので、名前を呼ぶときにアンジェラだったりアンジーだったりすると思いますのでその点ご了承ください。
遂に、アルガリアの野郎が、歯車を頭に突き刺した連中を引き連れて図書館に来やがった。
「…………。」
「歓迎いたします、ゲストのお方。私はここの館長兼司書のアンジェラです」
「アンジェリカ……?」
「私はアンジェラです」
「……そうだね。お前みたいな醜いものがアンジェリカなわけ」
「おいおい、俺の上司になんてこと言うんだよお前」
アンジェラの後ろから出てきて話しかけた俺にアルガリアは目を見開いた。
「ローラン……? これは驚いたね。どうしてお前がここにいるんだろう」
「それは俺も聞きたいところだな。お前の師匠が俺をいきなりここに飛ばしたんだ。お陰で相当苦労したんだぞ?」
「師匠が……? あの人は、本当に読めないね。……ならアンジェリカの忘れ形見はどうしたんだい?」
「俺と一緒にいるさ。ご丁寧に一緒に飛ばしてくれたからな」
「へえ……よかったじゃないかローラン。俺の師匠も少しは気が効くみたいだ」
「そもそも俺をここに飛ばさなければいい話なんだけどな」
「……無駄口もその辺にしてくれるかしら」
アンジェラが不愉快そうにそう言った。まあ、いきなり他人と間違われた挙句、罵倒してくるような奴はさっさといなくなって欲しいだろうな。
「はいはい、わかりましたよ、館長様。いつも通り、接待すればよろしいので?」
「……ええ」
ふとそこでアルガリアを見ると、アルガリアはアンジェラを興味深そうに眺めていた。
「機械すら人間になれるようにする力……。やはりもっと熟さないとね……。待ってて、アンジェリカ」
嫌そうな顔でアルガリアを見つめるアンジェラ。パチン、といつもの音が響いた。
◇◇◇
気づけば、俺はいつも接待する時と同じように、総記の階へと移動していた。
正面にはアルガリアと歯車の教団。でもまあ、アルガリアさえなんとかすれば問題ないな。
「さて、俺の相手をしてくれるのかな、ローラン?」
「はあ……実力的にそうせざるを得ないだろ」
アルガリアと戦うのも久しぶりだな。アンジェリカと結ばれてしばらくはしょっちゅう喧嘩というか揉め合いで斬り合ってたけど、最後はいっつもアンジェリカが俺たち二人を纏めてボコボコにしてたっけ。懐かしいな。
青い残響の由来にもなった大鎌。アルガリアはそれを軽々と振り回し、斬りかかってくる。それをデュランダルで防ぐと、細かく振動する大鎌の刃とデュランダルが触れ合い、音が鳴り響く。
だんだんと速く、鋭く振るわれる大鎌。それに合わせるように俺のデュランダルも速度を上げていく。剣戟はやがて、常人では見ることすら叶わない速さまで速度を上げる。幾度打ち合っているのかは、もはや音だけが頼りだ。
ちらりと横を見ると、司書補たちが歯車の教団員たちと戦っている。これなら俺はこのままアルガリアに集中して良さそうだな。
切り結びながらもアルガリアは余裕のある態度を崩さない。それどころか、俺に話しかけてきた。
「それにしても、お前の上司のアンジェラ……まさかお前の娘と同じ名前だなんてね。これは偶然かな?」
「さあな。仮に偶然だったとしても、お前の師匠はこのことを知ってるような気がしてならないな!」
そう言い放つと同時に、俺は大鎌を弾く。得物を上に弾かれたアルガリアは、大きく胴体がガラ空きになった。そこにロジックアトリエをぶち込む。
「俺に銃は効かないよ」
その言葉の通り、弾丸は全てアルガリアの服で止まる。
「ダメージ与えるのが目的じゃねえからな。隙さえできればいいんだよ」
ダメージが入らなくても、衝撃はある。実際、アルガリアは少しだけ体勢を崩した。その間に懐に潜り込む。
取り出す武器は水晶の双剣、クリスタルアトリエ製だ。アルガリアの纏う、弾丸を防ぐ上質な服ですら意に介さず切り裂く。
「くっ……」
「遅い」
初撃はアルガリアが後ろに跳躍して、ダメージを減らされたが、二撃目は無理だろ。
水晶の半透明の白い刃がアルガリアに傷を刻む。血飛沫が舞い、白い刃が赤く染まる。
「アルガリア、油断しすぎだろ。お前、手を抜いてるな?」
「……ふふ、そうだね。少し遊びすぎたよ。でも、今回はこのくらいにしておこうかな」
「ああ?」
傷を負った部分を手で押さえながら、後ろに下がっていくアルガリア。唐突に凄まじい速度で距離を取られ、俺はほとんど反応できなかった。
「お、おい、待て、アルガリア! お前、せめてなんでこんな意味がわからないことをしてるのかくらい言え!」
「どうせすぐ会えるよ、ローラン。それに、俺がやりたいことは前言ったことと何一つ変わってない。今回もそれの一環だ」
その言葉を最後に、アルガリアは図書館から抜け出した。
「クソ……結局逃したか。司書補のみんなは……」
周りを見ると、ほとんどの歯車の教団員は既に本にされ、もう間も無く戦いも終わるところだった。
「まあ、今回の接待はこんなところか」
俺は残り少なくなった歯車の教団員を仕留めて接待を完了させるため、走った。
◇◇◇
残りの歯車の教団員も仕留めて接待を終わらせた俺に、アンジェラが話しかけてきた。
「あなたはあの青い残響と、どういう関係なの? それなりに親しげに話していた割に普通に殺し合っていたけど」
アンジェラは困惑したような顔でそう言った。いや、うーん……。ここであいつを義兄って言うと色々まずいか。ねじれのせいであいつの妹が死んでるってことはアンジェラも知ってるし、そこから芋づる式で俺の嫁もねじれのせいで死んだってわかるもんな。
「まあ、割と昔からの知り合いだな。腐れ縁みたいなもんだ」
「そう……。なのに殺し合ったりして、大丈夫なの?」
「別にあいつのことは嫌いだしな。それにそんなのは今までもやってきたことだろ? どうしたんだ?」
「いえ……なんでもないわ」
アンジェラは少し悲しげな顔をした。最近、アンジェラはこうやって感情が顔に出やすくなってきたように思える。いい傾向なのかはわからないけど。
「まあ、俺は娘さえ守れればいいんだ。そのためだったら大したことじゃない」
「……わかったわ。今回も接待、お疲れ様」
物憂げな表情のまま、アンジェラはそう言うのだった。
気づけば物語も都市の星に入って終盤ですね。後どのくらい続くかは秘密ですが、楽しみに待っていただけると嬉しいです。