他人を寄せつけない雰囲気をもつ元アイドルを助けたら、懐かれて(軽い表現)しまった 作:片桐きな粉
「うっそぉ........」
今さっき介抱をした女性は、どう見たって桐矢フキ。
「....悪いけど....いまファンサとかはやってねぇぞ....」
私の反応に気づいたのか体調が悪そうな顔で断った。
普段の口調に戻っている。
フラフラしながら立ち上がって離れようとするけど、フラフラしすぎて流石に見ていられないから支える。
「その状態は普通に見れられないです...病院とか」
「...保険証...ぁー、財布そもそも忘れてた...」
「えー...」
「頭痛ぇ...痛い...」
額に手を当ててしゃがみこんで呻き声を出すフキ様。
場合によっては役得と言えるのだろうかな。
少なくともきらりが見たら「やばい!!!!!!」って言うだろう。
そんな普段見れない彼女の1面と、そもそも街中で普通に出会えたことで私の気分は高揚していた。
そこで、ひとつ冗談のようなことを言ってみた。ほんとにじょーだんのつもりだったんだけど。
「...それじゃ、ウチ来ます?...なーんて」
「....ぁー、?..あー、じゃあそーする.....休ませ...」
ふらつきながら私に寄りかかってそのまま全体重が私にのしかかってきた。
のしかかってきたと言うには軽く、
「...え軽すぎない..?」
アイドルって体重管理凄いって聞くけどこんなもなの?と思いながら改めて発言を思い出す。
「......ん?」
ウチ来るって言った?
所変わって、
私はごく普通のアパートに一人暮らしをしている。それなりに綺麗にしているが、人様、それも話題の人を呼び込めるようなものでは無いのは自覚している。
でも
「....連れてきちゃった...」
気づけば玄関の前まで来ていた。
被さってそのまま寝た彼女を放っておくのはなんか人として良くないから、言葉の通り背負って来てしまった...
「....んぁ...着いた..?」
私の声で意識を取り戻したのか背中から声が聞こえた。
「そうですけど...ほんとにきて良かったんですか?」
「......いいんじゃないの?」
私が言ったことでしょ?とまるでそれが当たり前かのような返答をしてきた。
一応あなた時の人だからね。あんまり他人の家着いてっちゃダメなんだよ...
鍵を開けて中に入る。
見慣れたワンルームだ。特に何の変哲もない。
壁の時計は21時くらいを指している。
「...ただいまー、」
「誰かいるの?」
困惑の声がした。
「いませんよ、ただの習慣みたいなもんです」
家に入りソファに彼女を座らせ、一旦地べたに座る。
「_____なんでこうなったんだっけ..?」
頭を抱えて落ち着いた時に出てくる疑問が思考を埋めつくした。
いつも通りの部屋。プライベートな空間。
と、ソファに横たわった元アイドル。
「いいんじゃねぇの?推しが部屋にいるとか幸せらしいじゃん?」
憎たらしい顔をこちらに向けて言ってくる。
くっ顔がいい...
「...なんでそんなこと分かるんですか」
別に言ってないんだけどな...と思って聞くと桐矢フキはヘラヘラした顔で横を指さした。
指した方向は、テレビ...の台にあるフォノンのアクスタやポスカ等々。
あバレるわそれはさすがに___
なんかすごい気まずくなった。
沈黙に耐えられなくなった私は気になっていたことを聞くことにした。
「そういえば、なんであんな場所で寝てたんです?」
「疲れてた」
まあそうなんだろうけど
「投稿した場所と同じ場所じゃないです?あーゆーのって後から投稿するんじゃないんですか?」
と聞くと初めて聞く音が聞こえた
「え”」
それはもう驚いた顔で直ぐにスマホを取りだし確認しだした。
「.....まじ」
「はい」
また気まずくなった
「今日復活したのってなんでなんですか?」
「事務所から許可貰った...結構踏み込んでくるなお前」
そりゃ家に上げましたし...これくらいはいいかなって
「じゃなんで今まで活休だったんですか?なんでファノンって解散したんですか」
「お前には関係ないだろ」
今度は冷たく返された。
でも、なんかここで終わらせるとダメな気がした。のでここは強引にでも聞きたくなったからなんとかする、してみせる。
「でもでも、関係ない人の方が色々と言いやすくないです?ここ誰も居ないんですし!」
鬱陶しそうにこちらを見てきた。そりゃそうだろう急に態度が変わったんだから。
少し考えたような様子を見せた後、
「__あんまりファンの幻想を壊すなって言われてて」
「初めて会った日にゲロられたんだからもうあんまり意味ないですよそれ」
すかさず私が刺す。少しの歪みがあればいける。
長い溜息の後、観念したようにぽつりぽつりと喋り始めた。
「.....言っとくけど、アタシを神格化してみてるなら後悔するぞ」
「...営業で最後の場所...都心だったか...の方に行った時、アタシらは...正確には、アタシは刺された」