ガイアが俺に早く消えろと囁いている   作:差六

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第12話「ドッグランの戯れ」

 クリアガイアが改めてレギオンの発生、およびその場所を確認してから、彼女達は現場に急行した。

 

 それなりに栄えている狭間市はどこであっても高い建物には事足りる。そのため彼女達は今回も現場を高所から、ビルの屋上から観察することが出来た。

 

 結界内、不気味な月明かりのみでも分かるほど鮮やかな芝生が広がる場所。囲う高いフェンスも無数の遊具も、屋上から見れば手のひらに収まるほどに小さい。

 

 上から見る光景に新鮮さを覚えつつ、耕太郎は憂鬱そうに息を漏らした。

 

「よりにもよってここか……」

 

 ぼやく姿を不思議そうに見られた耕太郎は、少し戸惑い混じりに説明する。

 

「ついこの間友達と、えぇと、妹的な子も一緒に遊びに来たとこなんだ」

「え、そうなんですか? 実は私もなんです。最近兄さんと、兄さんの友達と来ました」

「へー、奇遇。もしかしたら、俺達そこで会ってたりするかもね」

 

 もしかしたらも何もない。

 

 そんなツッコミをクリアガイアは呑み込んだ。驚異的な忍耐力であった。

 

 その代わり口に出したのは、現在ドッグランの中心に我が物で居座る黒い巨体に関すること。

 

「あれは犬、かしら」

 

 突き出た口元からは牙が覗き、つんと尖った二つの耳は時折揺れ動く。窮屈そうに折りたたまれた四肢と体躯も含め、見た目は紛れもなく犬である。当然尻尾もある。

 

 ただし、例の如く身体は尋常ではなく大きい。高さは二メートル、全長は四メートルはあるだろうか。そして全身は首輪も含め、通常のレギオンと同様黒い硬質的な物質で構成されている。時枝七海がこよなく愛するような、触り心地の良い体毛など一切生えていない。

 

「俺もそう思う。よく見ると首輪ついてるし、あれ誰かのペットだったりするのかな?」

「だとしたら大した趣味ね。いっそ感心する」

 

 皮肉げにクリアシャインは肩を竦めた。

 

 余談だが、彼女は昨夜アメリカンジョークの飛び合うB級アクション映画を見ていた。

 

 芝居がかった妹の振る舞いを横目に映しながらも、クリアガイアは姉としてスルーを決め込む。そのまま冷静な眼差しで仲間達を見回し、念を押すように告げた。

 

「いい、皆。今日もあのバイクの時と同じ、事前にレムナントの集積は確認出来なかったわ。だからきっと」

「前回よろしくあの犬、ドッグレギオンも訳分かんない挙動があるかもしれない?」

「可能性はあるわ。もしかすると、突然二本足で立ったりするかもしれない」

「……えぇー」

 

 レギオンは元となった存在の能力を模倣する、と考えられている。

 

 にもかかわらず変形し、飛行し、挙句の果てにミサイルまで放ったバイクレギオン。語るまでも無いが、どれも現実のバイクにはあり得ない機構だ。

 

 フィクションも含めればその限りではない、と思う二人もいたものの、結局口には出さなかった。ある種の茶々にしかならないと理解していたからだ。

 

 こうして戦闘前、観察だけで分かる範囲の作戦会議を終え、クリアガイアはもう一度周囲を見回す。ただし、先ほど仲間に向けたものと比べて、今回の視線は格段に冷たい。

 

「ところでグレイ、あのウサギは?」

「さっきあっち行ったよ。いつも通りだって」

「……巻き込まれた人の捜索ね。本当にいるのかしら」

 

 クリアガイアが軽く杖を振るう。発動したのは探知の魔法、しかし彼女達を除いて周囲に人間を示す反応はない。

 

 嘘を見抜く結界を用意してなお、酷く辛酸を舐めさせられたあの話し合い。

 

 あの時こそ耕太郎の説得で一旦納得はしたものの、日々を重ねる度に不信感は増していく。

 

「……まあ、いいわ。とにかく皆、今日も気をつけて。無理だけはしないで」

 

 クリアガイアは常と変わらぬ平静な顔のまま、内心それを嚙み潰した。

 

 こうして送り出された耕太郎達だったが、今回の戦場であるドッグランに遮蔽物はない。つまり、接近後に隠れて様子を窺えるような場所は存在しない。

 

 そのためドッグレギオンの近くへ着地して早々、クリアシャインは攻撃をしかけた。

 

「先手必勝、まずは撃つ!」

 

 威勢のいい掛け声と共に、クリアシャインが杖の先と周囲に赤の魔法陣を展開する。

 

 更にその数だけ赤き魔弾を生み出し、勢いよくドッグレギオンへと放った。

 

 魔弾が迫ろうとドッグレギオンに避ける素振りはない。全てが着弾し、

 

「貫通した!?」

 

 全てが通り抜け、やがて地面や壁に激突した。

 

 赤い魔弾は炎に姿を変え、世界とドッグレギオンを煌々と照らす。

 

 耕太郎はその光景に動揺しながらも、今まで隠していた本音を漏らしてしまう。

 

「……シャインの攻撃で先手必勝になったことないよね」

「ぐ、グレイさん、しっです、しっ!」

 

 無礼極まりない仲間をひと睨み。それで気を取り直したクリアシャインは、再びドッグレギオンに杖を向けた。

 

 杖の先にもう一度魔法陣が瞬く。産まれた赤い光は先ほどよりも強く輝き、大きな球形となる。

 

「『シャイン・レイ』!」

 

 そこから放たれた熱線はドッグレギオンの身体を容易く貫通する。貫き、赤の光はそのまま空へと羽ばたく。不気味な月明かりのみが照らす空は、僅かな間赤く輝いた。

 

 それでもなお、ドッグレギオンは身動ぎ一つしない。魔法により開いた穴は瞬く間に閉じられた。

 

 十八番の一手を容易く凌がれ、クリアシャインの眉間に皺が走る。

 

「……見た感じ再生ってより、そもそも効いてなさそう」

 

 しかし、彼女は努めて冷静に敵を窺っていた。

 

 二度にわたる攻撃、魔弾と熱線という種類の異なる魔法に対し、起きた現象は同一。

 

 ドッグレギオンに何かをした素振りはなく、その上攻撃を受けても反応すら見せない。

 

 このまま戦っても埒が明かないと、クリアシャインの直感が囁いている。

 

「あたしこのまま攻撃続けるから、あんたたちで観察してみて!」

「手助けは?」

「いらない! こいつ全然動かないし!」

 

 しかし突破口を見出す糸口すら今は掴めていない。

 

 掴むこと自体は仲間に託し、とにかく自分は叩いてほつれを出してみよう。

 

 考えなしの考えのもと、クリアシャインが別の魔法を繰り出そうとしたその時のことだ。突然ドッグレギオンがのっそりと起き上がった。

 

「ようやくやる気になったのね。さあ、お手でもするつもりなのかしら」

 

 くるくると手遊びするように杖を回す。赤く灯る杖の先には魔力が充填されており、魔法として解き放たれる瞬間を今か今かと待ち望んでいる。

 

 次に放つ魔法をクリアシャインが選ぶよりも先に、ドッグレギオンが四肢に力を籠める。

 

 その様子で彼女も決めた。飛び掛かる敵に対する魔法は一つ、防壁である。

 

 赤い半透明の壁が出来るのと、ドッグレギオンが駆け出すのはほぼ同時だった。

 

「……って、あら?」

 

 しかしドッグレギオンはクリアシャインになど見向きもせず、とある方向へ一直線に駆けていく。

 

 その先にいるのは。

 

「わ、え、ちょ、な、なんで私!?」

 

 クリアシャインの声を受け、すっかり観察の構えを取っていたクリアオーシャンだ。

 

 慌てた彼女が防壁を張るも、覚悟の出来ていない魔法など濡れ紙に等しい。飛び掛かるドッグレギオンの爪を僅か一瞬受け止め、すぐに儚くも破れた。

 

 だがその爪がそれ以上迫るよりも早く、隣の耕太郎がクリアオーシャンを抱え、すれ違うように跳び避けた。

 

「平気?」

「は、はいっ! ありがとうございます!」

 

 お礼を言いつつも、クリアオーシャンはどこか居心地悪そうに身を縮める。

 

 抱える身体に緊張を察した耕太郎はドッグレギオンの追撃の暇を縫い、クリアシャインの隣に移動する。

 

 そしてすぐさま、放り投げるようにクリアオーシャンを押し付けた。

 

「ならシャイン、パス!」

「きゃあ!?」

「パスされた!」

 

 手渡されたクリアシャインはにっと笑みを浮かべると魔弾を放ちつつ跳躍、ドッグレギオンから素早く距離を取る。

 

 それを横目で見送った後、耕太郎は中腰になり敵を見据えた。

 

「この間ドッグラン行った時、正直物足りなかったんだ。だからワンちゃん、今度は俺と遊んで」

 

 そしてその姿勢のまま挑発的に何度も手を叩くも、

 

「……もらおう、かな?」

 

 ドッグレギオンは耕太郎になど見向きもせず、とある場所へ一直線に駆けていく。

 

 その先は案の定。

 

「え、ま、また私なの!?」

 

 未だクリアシャインに抱きついたままのクリアオーシャンである。

 

 そんな親友を片手で支え、もう片手は自身の顎に回しながら、クリアシャインは魔弾をいくつも放った。

 

「あからさまにオーシャン狙ってる。どうして、美味しそうだからとか?」

「ええ!? わ、私、そんなに美味しそうなの!?」

「食べようなんて思ったことないから分かんない。面白そうなら分かるんだけどねぇ」

「そっちも分からなくていいよ!」

 

 戦場に不釣り合いなボケとツッコミを交わすも、二人は戦いを積み重ねてきた魔法少女だ。クリアシャインは応戦のため新たな魔法を、クリアオーシャンは防壁を既に構えている。

 

 それを目の当たりにしながら、本当にしているのかはもの言わぬ本体にしか分からないが、ドッグレギオンはクリアオーシャン目掛けて飛びかかろうとする。

 

 跳躍のため屈む身体、動きを止めた頭を、その瞬間容赦ない踵落としが粉砕する。

 

「グレイ!」

「ちっ、蹴りも駄目か!」

 

 耕太郎の悪態通り、踵落としで崩壊したように思えた頭は、彼が着地した頃には元に戻っていた。

 

 そのとても不気味な光景、叩きつけた足の奇妙な感覚に不愉快さを覚えながら、彼は魔法少女二人を庇うように構える。

 

 だが不思議なことに、それを前にドッグレギオンは数歩引き下がる。更にはまるで不貞腐れたかのように、戦闘前と同じく地に伏せ丸くなった。

 

「……退いた、なんで? 気まぐれで面倒なワンちゃんだな」

 

 理由は分からずとも、耕太郎達にとっては非常に好都合である。

 

 彼らはこれ幸いと小さく輪を作り、ドッグレギオンを刺激しないよう囁き声で相談を交わし始めた。

 

「それで、どうする?」

「オーシャンにご執心みたいだから、この子囮にしてタコ殴りとか?」

「え、えぇー。そ、それしかないなら頑張るけど……」

「ごめん、冗談。あんたにそんなことさせる訳ないでしょ」

 

 そもそも攻撃が当たらないのだから、オーシャンを囮にしても意味はない。

 

 言わぬが花ということを、二人を生暖かい目で見守る耕太郎も、クリアシフター越しに聞くクリアガイアも理解していた。

 

 耕太郎は咳払いで場と心を仕切り直し、改めて問題を口にする。

 

「なんにしても、攻撃が当たらないとどうにもならないよな」

「シャインのもグレイさんのも効かないなら、私も駄目ですよね。いったいどうすれば」

「……あたし思ったんだけど」

 

 意見を述べるクリアシャインは学校で授業を受けている時と同じく、とても大きく手を挙げていた。

 

「とりあえず一回、全部まとめてぶっ飛ばしてみない?」

 

 ただしその答えは、勉学とは正反対の極めて乱暴なものだった。

 

 それからクリアガイアも交えていくつか相談を交わし、数分もすれば作戦は決まった。いっそ恐ろしいほどに雑極まりないものではあったが。

 

 そのあまりの雑っぷりに、クリアオーシャンは何度目か分からない不安を口にする。

 

「ね、ねぇシャイン、本当にこれでいいの?」

「いいんじゃない? 試しにこれ被ってから動いてないし」

「て、適当ー」

 

 手を繋ぎながら魔法をチャージする彼女達が被っているのは、耕太郎が変身中常に身に纏っている白衣だ。クリアガイアの干渉により複製、加工され、現在は普段の数倍の大きさになっている。おかげである種の巨大なシーツにも見えた。

 

 犬だから大体匂いで判別してるんじゃないかしら。じゃあ誰かの、なるべく違う人の匂いを被せれば、ドッグレギオンはオーシャンを見つけられないかもしれない。

 

 クリアガイアが言い出した、今回の作戦における雑ポイントその一である。

 

 そもそも何故クリアオーシャンを隠しているのか。

 

 これまでドッグレギオンが能動的に動いたのは彼女を襲う時だけ。よって彼女が見つからなければドッグレギオンは何もしないのではないか、という適当な予想を耕太郎が並べたからだ。

 

 雑ポイントその二ではあるが、彼の想定通りドッグレギオンは寝そべったまま身動き一つしない。

 

「グレイはそこにいて。そのまま壁やってて」

「はいはい。背中撃たないでね」

「分かってる。って、ちょうど溜まった! 早くどいて!」

「はーい」

 

 そのためいまいち緊張感に欠けるほど、あっさりと魔法のチャージは完了する。

 

 耕太郎が退き、クリアシャイン達が白衣をはぎ棄てたことで、ようやくドックレギオンも状況に気がついた。

 

 続いて立ち上がるが、もう遅い。彼が四肢に力を籠めるよりも早く、赤と青の光が解き放たれる。

 

「『クリアレイ・ストリーム』!」

 

 最大まで溜めた魔の暴流は、いともたやすくドッグレギオンの全身を吞み込んだ。

 

 さて、今回の作戦の発端、クリアシャインが覚えた疑問はレギオンの特徴に関するものだ。

 

 最近は全身を粉砕することが多く忘れがちだが、レギオンには核が存在する。この核を壊さなければレギオンは倒せず、逆説的に言えば核さえ破壊すればどうとでもなる。

 

 また、どのようなレギオンであっても核本体に能力はなく、直撃してしまえば勝利は決まったも同然だ。

 

 今回のドッグレギオンはいかなる手段か攻撃を躱す。だがそれは身体だから出来ることで、どこかにある核では不可能なはず。ならば全てを吹き飛ばせばいい。

 

 力技にもほどがある手段ではあったが、目論見通りドッグレギオンは消し飛んだ。

 

「よし、全部まとめてぶっ飛ばした!」

「ううん、見てシャイン! あれ、首輪!」

 

 クリアオーシャンが指差した先、空を飛ぶ巨大な黒い首輪を除いて。

 

 対照的にさらさらと落ちる粒は黒い欠片、ドッグレギオンの身体を構成していたもの。首輪が揺れる度にその粒は剥がれ落ちていく。その度に首輪の地肌が、赤い姿が見えてくる。

 

 未だ誰一人として回避の理屈は分かっていないが、クリアレイ・ストリームはドッグレギオンにも通用した。攻撃を無効化するその身体を貫き、無にする一撃だった。

 

 それでもなお、あの首輪だけが残っている。否、身体を犠牲にしてでも、あの首輪を残したということは。

 

「つまり、あれが本体ってことだ!」

 

 言うや否や、耕太郎は駆け出す。

 

 同時に強く胸元の懐中時計を握り締め、遠くの仲間に向けて叫んだ。

 

「ガイア!」

『この距離だともって二秒よ。注意して』

「十分!」

 

 耕太郎が返事をした瞬間、足元で金色の輝きが灯る。

 

 それはすぐに灰の光と混じり合い、強大無比な力へと昇華する。抑えられない魔力がスパークとなり、世界を二つの色に染める。

 

 一瞬、赤い首輪がふわりと移動した。それはまるで金と灰の輝きから逃げようとする、儚い抵抗に見えた。

 

「おらあぁぁッ!」

 

 無論、その程度で逃れられるはずもない。

 

 高く高く跳んだ耕太郎の蹴りが斜め上から直撃し、首輪は砕け散りながら芝生の上に降り注いた。

 

 そして次の瞬間にはその全てが爆発四散、盛大に炎上する。

 

 現実であれば大火事確定の光景だが、ここにいるのは全て幻想の存在だ。すぐにクリアオーシャンが大慌てで水の魔法をばら撒き、あっけなく鎮火する。

 

 密かに胸をなでおろす彼に駆け寄りハイタッチを交わしながらも、クリアシャインは分かりやすく不満を露わにしていた。

 

「お疲れー。でも二回連続でいいとこ持ってくのずるくない?」

「ずるくないずるくない。今まではずっと二人が必殺技撃ってたじゃん」

「それもそっか。順番ね」

「……レギオンが倒せるなら、どっちでもいいような?」

 

 ロマンに生きるクリアシャインとは反対に、クリアオーシャンにはドライなところがあった。

 

 和気あいあいとした空気が流れ始めた時、タイミングを見計らっていた通信が届く。

 

『お疲れ様、皆。そのままレギオンが爆発した場所を調べてくれるかしら』

「ほいほい、りょーかい」

「ほいほい、あたしもりょーかい」

『……まったくもう。変な言葉遣いばっかり影響されて』

「あ、あはは」

 

 馬鹿二人の戯けた言葉遣いにも、クリアガイアの姉としての苦言にも、もはや戦闘中の緊張感はない。

 

 若干の焦げ臭さに鼻を曲げながら探すこと数分、すぐに彼らは二つの物体を見つけた。

 

「壊れた首輪と」

「また石、今度は茶色のがある。なんなのかしら、これ?」

『分からないわ。だから調べるのよ』

 

 大きく首を捻る三人に出す答えを、まだクリアガイアは持っていなかった。

 

 

 

 狭間市内のとあるマンション、その一室にて。

 

 ソファーに座る男は、それまで覗いていたタブレットをスリープさせた。

 

「……まさか正面からの力押しで倒されるとは」

 

 零れ落ちる感想は先ほどまで観察していた光景、魔法少女達の戦いについて。

 

 果たして彼女達が、『砂』の力を纏うレギオンをどのようにして攻略するか。

 

 『水氷』の力を持つクリアオーシャンが身を凝縮させ、それをクリアシャインが『炎』で焼き固める。その後クリアグレイが合体魔法を用い、動きを止めた敵を粉砕する。

 

 それが男の予想だったが、現実はとんでもない力技であった。残念ながら彼が想像するほど世の人間は、とりわけ子供達はそこまで賢くない。

 

「やはりこの手法では形成されるレギオンも弱い。補完のため合成してみたが所詮は残照、馴染む前に彼らに倒されてしまう。困ったものだ」

 

 言葉とは裏腹に、口調は淡々としたもの。誰が聞いても感情は読めない。また、素振りも機械のように均一で、こちらも情緒を窺うことは出来ないだろう。

 

「さて、次の手はどうすべきか」

 

 考えに耽る男の足元で、子犬が一声鳴いた。

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