ガイアが俺に早く消えろと囁いている   作:差六

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第19話「リードブレス」

 魔法少女二人と別れて早々、耕太郎はこっそりと二階の靴屋から飛び出した。

 

 周囲を探り、誰の目もないことを確認してから変身、再び駆け出したのがおよそ十分前のこと。

 

「悪い、遅れた!」

 

 ショッピングモール一階のイベント会場にて、ようやく耕太郎はクリアシャイン達と合流した。

 

 これほど遅れたのは、念のため通り過ぎるテナントを全て確認していたことが大きい。散発的に遭遇するレギオンに関しては、変身した彼からすれば路傍の石にもならなかった。

 

 顔を合わせた途端勢いよく謝る彼に向け、クリアシャインはからかうように笑う。

 

「ふふん。そうね、大遅刻。あんたが来る前に、あたしたちでもう大体終わらせちゃったから!」

「巻き込まれた人の避難も?」

「あら、人がいるの気づいてたの? 大丈夫、そっちも終わり。さっき姉さんから、全員移動出来たって連絡もらったから」

「そっか。よかったぁ」

 

 それはすなわち、クリアガイアが助けた七海達も無事に避難出来たということ。

 

 まったく事実とは異なるが、とにかくそれで耕太郎は胸を撫で下ろす。

 

 そして一安心して落ち着いたところで、彼はすぐそこにある異常に気がついた。

 

「えへへ、兄さんってば、もうっ」

 

 クリアオーシャンはちょっとおかしくなっていた。

 

 紅潮した両頬に手を当てて、にやけそうになる頬を支える姿は年相応で微笑ましい。

 

 微笑ましいが現状、緊急事態には到底見合わない様子である。有体に言えば空気の読めない、浮かれポンチのアホである。

 

 耕太郎は脳裏に浮かんだ言葉を呑み込み、控え目な形に整えてから問いかけた。

 

「……ところで、オーシャンはあれ、どうしたの?」

「あれは、まあ、気にしないで。さっきいいことがあって、ちょっとご機嫌なだけ」

 

 何も語らない情けがクリアシャインにも存在した。

 

 そんな間の抜けた会話を交わす中、駆ける足音が再び周囲に響く。耕太郎よりも軽く遅いその音は、彼らの前で止まった。

 

「皆、揃ってるみたいね」

「姉さん! もしかして、あのレギオンの本体が」

「ええ、居場所が分かったわ。ついて来て」

 

 到着してすぐさま彼女は、クリアガイアは言葉少なく指示を出す。

 

 人々の避難誘導に結界の作成及び補強、そして敵の捜索。涼しい顔に滲む疲労を指摘する者は誰一人としていない。一刻も早くレギオンを討伐することが何よりの労わりになると、全員が理解していた。

 

 誘導のもと四人揃って進んだ先には鉄製の扉があった。そこに掲示されている『関係者以外立ち入り禁止』の赤文字が、生真面目なクリアオーシャンに生唾を飲ませる。 

 

 その扉を潜り抜けた先にはとても無機質な空気が流れていた。

 

 むき出しのコンクリートは世界に染められるまでもなく灰色で、パレットや台車に並ぶ段ボールは画一的な茶色。同じ商品が並んでいるにもかかわらず、晴れやかに彩られた表とは正反対の印象を受ける。

 

 見慣れないその光景に緊張感を覚えつつ、クリアガイアは慎重に仲間達を誘導する。

 

「ここの奥、もう少し進んだ先よ」

「盲点、バックヤードにいたのか。入ったことなかったなぁ」

「あたしも初めて。こういう風になってるのねー」

 

 働いたことのない少年少女からすれば、店の裏側に足を踏み入れるという選択肢すら存在しない。

 

 ここバックヤードこそ今回のレギオンが潜む場所。また、そこにいた店員は今回結界に巻き込まれていない。そのため今の今まで、救助活動中の捜索では一切本体を見つけられていなかった。

 

 様々な商品、食品から掃除道具、はたまた衣服の山を乗り越えた先、一段と広い場所に辿り着いたその時、クリアガイアは足を止めた。 

 

「いたわ。あれが本体」

 

 品出し前の商品が高く積まれたカート類、その影に隠れながら四人は様子を窺う。

 

 その先には彼らがモール内で遭遇した兵士の姿をしたレギオンが六体、彫像のように武器を携え立っていた。

 

 そしてそれに囲まれるようにして豪奢な鎧を身に付けた、一回り大きなレギオンが椅子に座り佇んでいる。

 

 ちなみに、その椅子はどう見ても一般的に販売されているようなものではない。今では映像の中でしか拝見出来ないような、やけに巨大で煌びやかなものだった。

 

 耕太郎が引っかかったのはそこだけではない。加えて更にどうでもいい細かい点に、彼はつい疑問を零してしまう。

 

「……なんであいつ、兜だけ戦国風なんだ?」

「さあ? 兵士の親玉だから、将軍的なイメージでとか?」

「適当過ぎる和洋折衷。どいつこいつも自由だなぁ、レギオンって」

 

 サソリがレーザーを放つ時点で今更の話ではあった。

 

 なお、実のところクリアガイアも、兜の意味不明さには内心首を捻っている。兜に何故か漢字が、それも誠と刻まれている理由を考えている。それは将軍ですらないのでは。

 

 けれどそれは隠しつつ、彼女は今日も軽口を叩く二人を注意しようと意識を切り替える。

 

「二人とも、無駄話は後にして。見つかる前に」

「『アイシクルカノン』!」

「奇、襲を……?」

 

 そのため振り向こうとした瞬間、横から響いた声にクリアガイアは耳を疑った。ついでにその主のことを二度見した。

 

 その声の、魔法の主、クリアオーシャンは眉を吊り上げて氷柱を放った先、壁に串刺しにされたレギオンを強く睨む。通常なら既に死に体の体勢だ。

 

 だがレギオンは尋常の存在ではない。たとえ巨大な氷柱に腹部を貫かれようと、未だ戦闘は可能。それを示すかのように、そのレギオンは氷を砕き脱出しようと手を伸ばす。

 

 よってクリアオーシャンは、容赦なくダメ押しの一撃を放った。

 

「『トリプル』!」

 

 正確には二発放った。

 

 再度放たれた巨大な氷柱は配下ごとレギオンの両手を貫き、勢いのまま壁に押し付ける。文字通り磔の姿勢となったレギオンに抵抗の余地は、というより暇はなかった。

 

 クリアオーシャンの杖が青く輝いた瞬間、同調して三本の氷柱が鈍く光る。そして瞬きの後、爆ぜるように棘を生んだからだ。

 

 棘の塊となった氷に呑み込まれ、レギオンは全身をずたずたに切り刻まれる。そうして粉々にされる部位には、当然核も含まれていた。

 

 流れるように爆散するレギオンを鋭く睨みながら、彼女は大きく鼻を鳴らす。

 

「ふんすっ!」

 

 兄や親友とは異なり、酷く格好付かないものではあったが。

 

 だが普段は微笑ましく、かわいらしく感じるそれも、突如行われた残虐ファイトを目の当たりにしたこの瞬間では恐怖に変わる。

 

 特にクリアガイアなど、悪い夢でも見たかのように何度も瞬きを繰り返していた。

 

 彼女はこれまで人々の救助とレギオンの捜索に全力を傾けていた。そのため結界内で生じたトラブルについてほとんど察知していない。

 

 耕太郎が変身していなかったことも。そのために死にかけたことも。それを目の当たりにしたクリアオーシャン、時枝七海がかつてないほどに怒りを露わにしたことも。クリアガイアは何も知らない。

 

 よって彼女は戦慄のまま、恐る恐る二人に問いかける。

 

「……あの、もしかしてあの子、何かあったのかしら?」

「……うん。機嫌よかったんじゃないの?」

「……合流する前に色々あったの、色々」

 

 答えを知るクリアシャインは全力でお茶を濁す。親友に自分の怒りを吸い取られてしまった彼女は、ある意味この場でもっとも冷静だった。

 

 経緯はさておき、こうして無事にレギオンは討伐された。

 

 彼女達はここ数回の例に漏れず、今回も爆心地に残された物を確認する。

 

「なんかやたら多いチョコと、また茶色の石」

 

 今回現場に残っていたのは、バレンタインキャンペーンのため用意されていた無数のチョコレート。そしてまたしても転がっていた、茶色の不可思議な宝玉だ。どれも濡れているのは御愛嬌である。

 

 その場でクリアガイアが解析の魔法を唱えるも、チョコは何の変哲もない普通の物。また、石に関しては今回も複雑極まりないため、この場で調べる程度では何も分からない。

 

 そのため彼らは石のみを回収し、すぐにその場を後にした。

 

「それ結局なんなんだろうなー。毎回何かと一緒に転がってるけど」

「前に説明した通り、概念を形にしたものだと思うわ。これは、あのレギオンの身体はチョコだったから、残る要素からして鎧とかになるのかしら」

 

 バックヤードから一階の広場に戻っても、未だそこは結界の中だ。明かりはない。

 

 よってまだ薄暗いにもかかわらず、クリアガイアは手癖で石を高く掲げ眺める。

 

「それにしてもバイクに首輪にチョコ、全部レギオンの姿と一緒。まさか、あのレギオンはこれから生まれた?」

「その推察は正しい。あのレギオンは物体に残留したレムナントを元に作成した」

 

 そしていきなり横から伸びた手に、それは奪われた。

 

 しかし奪われたというにはあまりにも自然な、鮮やかな手つきだった。拾い上げたという方が近い表現だったからか、誰一人として反応は出来なかった。

 

 もしくは、突如背後から生じたその声、その気配に驚き戸惑い、全員思わず足を止めたせいかもしれない。

 

「無論、その程度では形にならない。そのため繋ぎとしてスフィアクオリアを、今回はこの『トルーパー』クオリアを用いた」

 

 彼らの注目の先で語るのは、白いローブの男。百八十を超える長身、顔も深いフードに隠されていて、相貌を窺うことも出来ない。

 

 異常を前にしていち早く正気に戻ったのは耕太郎だった。彼はいつでも飛び出せるよう重心を傾けつつ、突然現れた脅威に声をかける。

 

「……誰だか知らないけど、それ返してくれる?」

「返すという表現はいささか見当違いだろう。これは元々我々の所有物だ」

「ああ、そうかよ!」

 

 言葉と同時に放った跳び蹴りは優雅な跳躍で躱される。

 

 そのまま数メートル後方に着地、距離を取った男は疑問の声を上げた。

 

「言葉を交わす途中に暴力とは、君らしくもない。不穏当な振る舞いだ」

「俺の何を、てかあのレギオン生み出したって言うなら、お前は敵だろ」

「そちらの見当は合っている。ならばその対応も妥当か」

 

 納得したような答えは耕太郎の問いかけを肯定するもの、その男が敵だという証明。にもかかわらず、その口調に敵意は含まれていない。

 

 この男は何者なのか。スフィアクオリアとは何か。レギオンを作ったとはどういうことか。

 

 これら以外にも無数の疑問が彼らの間に生じる。

 

 覚えた疑問に誰もが戸惑う中、クリアシャインが一歩前に出る。そして杖を突きつけた。

 

「あんた、何者?」

「無駄を省いた端的でよい質問だ。君の存在はさておき、その問いは素晴らしい」

「あっそ。じゃあぐだぐだ語ってないで、さっさと自己紹介でもしなさい。あたしが魔法ぶっ飛ばす前にね」

 

 そう語る杖の先には、既に赤い煌めきが宿っていた。クリアシャインがその気になれば、すぐさま熱線は放たれるだろう。

 

 まるで銃口、込められた魔力を鑑みれば砲口を向けられているようなもの。魔法に関する知識、真っ当な感性があれば恐怖を覚えて然るべき状況だ。

 

「申し訳ないが、訳あって名は名乗れない。故に私のことは、ドクターとでも呼んでくれたまえ」

 

 しかし白いローブの男には、ドクターと名乗る彼の口調には、一切の動揺がなかった。

 

 眉間に皺を寄せるクリアシャインの後ろで、耕太郎はひっそりとクリアガイアに口を寄せる。

 

「ガイア、あいつって」

「……駄目、探知の魔法が通らない。妨害されてる。私たちと同じ認識阻害よ」

「分かってたけど、やっぱり魔法使える相手か」

 

 引き続き魔法を行使するクリアガイアを隠すよう、耕太郎も前に出る。クリアシャインの横に立った彼は、彼女の言葉を繋いだ。

 

「それでそのドクターさんは、いったいどこの何者なんだ?」

「まだ自己紹介が足りない、ということか。このような場合、次は趣味でも語るべきなのだろうか?」

「……ふざけてるの?」

 

 淡々とした口調に嘲りはなく、冗談も親しみもない。しかし語る中身は戯けたもの。

 

 だからこそ、全てが耕太郎達を酷く苛立たせる。

 

 それを出来るだけ抑えながら、彼は続けてドクターを問い詰めた。

 

「今回のもこの前の二回も、お前が仕組んだレギオンなんだろ?」

「その通りだ。バイクに首輪、どちらも私が用意した」

「なんで、何が目的でこんな、あんなことを!」

「ふむ、君であれば教えても構わないが」

 

 顎に手を当てて数秒後、ドクターは突如腕を広げた。仰々しい振る舞いに耕太郎達の警戒が強まる。

 

「だがまずは賞賛をしておこう。素晴らしい献身だった」

「……は?」

「とりわけ少年、君への賛美は言葉に出来ない。またしても勇敢な、まさに英雄の卵たる振る舞いだった」

 

 その警戒も、一瞬にして置き去りにされてしまったが。

 

 相変わらず声に偽りはなく、敵意も感じられない。だが今回は、これまで一切感じられなかった感情を、熱を四人とも捉えてしまったからだ。

 

 呆気にとられる耕太郎達を放置して、ドクターは浸るようになおも続ける。

 

「紛い物が時を経て形となる。何度経験しても信じがたい、得難い光景だ」

 

 素性の分からない男に、意味不明なことで感心、感動される。恐ろしく不気味な体験だ。

 

 おかげでクリアオーシャンには鳥肌が立っており、クリアガイアは更に多大な冷や汗、眩暈と動悸まで生じてしまっている。

 

 二人の動揺を見た、感じたクリアシャインの導火線の火はますます強くなった。

 

「訳分かんない呑気なことばっか言ってるけど、お得意のレギオンはもう消し飛ばした。次はあんたの番だから」

「楽しみにさせてもらおう。だがその前に、君達に礼を返さなければ」

「はあ? お礼?」

 

 もはや爆発寸前となったクリアシャインに対し、ドクターは依然鷹揚に頷く。

 

「もちろん、よいものを見せてもらった返礼だ」

 

 そしてローブの右腕を捲り上げ、白銀の腕輪を見せつけるように構えた。

 

≪リードブレス≫

 

 一か所に丸く小さな穴が空いた、幾何学的模様が刻まれた腕輪。それから生じた奇妙な機械音声に、一同は身構え動きを止める。

 

 警戒を露わにする彼らを平然と見回しながら、ドクターは平坦な語り口のまま続けた。

 

「先日我が英雄に勧められた本にも書いてあった。もの知らぬ子供に知識を授けるのは大人の使命であると。故に教えよう。君達が知らぬまま手にした、その奇跡の価値を」

 

 語りながらドクターが伸ばした左手の先、虚空に紫の魔法陣が広がる。

 

 それは彼が魂の内に作成した世界、いわゆる内的宇宙にアクセスするための魔法だ。

 

 魔法陣は一瞬光り輝くと紫色の宝玉を放出する。それはレギオンが倒れた後に残るもの、先ほど彼がスフィアクオリアと呼んだものによく似ていた。

 

 彼はそれを恭しく掴み取ると、即座に腕輪の穴へと嵌め込む。

 

≪Set Code『Violet』 Reading≫

 

 途端紫のラインが腕輪全体に走り、同時にまたしても不可思議な声が響く。

 

「蒙昧たる人間に本質は理解出来ない。よって事象とは、己が感覚で認識して初めて形を成すもの。もっともその認識、クオリアも今の人類ではそのものを伝えられない、共有することすら不可能だが」

 

 ドクターの語り口は、それまでの平静さが嘘だったかのようにますます熱を増す。

 

 しかし耕太郎達に、最も諸般の事情に詳しいクリアガイアでさえ、ドクターの語る内容を理解することは出来ない。そもそも彼らは元々何も知らない、ただの中学生と小学生だった。

 

 よってドクターの説明は無意味な音として彼らの耳を通り抜けていく。

 

≪Reading Reading  Reading≫

 

 その間もまるでページをめくるような音と共に、腕輪は声を上げ続けていた。

 

「だがそれを、クオリアの複製、マテリアライズに成功し、真理に足をかけた天才がいた。まさに神の如き、いいや、世界の意思たる神をも退けた大いなる偉業だ」

 

 長々とした演説を前にして、耕太郎達はただ身構えるだけだった。

 

 攻撃も妨害も出来た。何かしらの小細工を用意する時間もあった。しかし腕輪から流れる謎の音声とドクターの雰囲気に圧倒され、彼らはただ警戒を強くするだけだった。

 

 こうして語り続けてようやく満足をしたのか、はたまた準備が整ったのか。

 

 ドクターは再び腕輪を前に構えると、右手をそこに、紫の宝玉を嵌めた部分に添える。

 

「チェンジクオリア」

 

 そして指を引き、腕輪に嵌められた宝玉を勢いよく回転させた。

 

 紫の宝玉、スフィアクオリアに秘められた概念及び魔力、そしてドクターの魂。

 

 起動したリードブレスは全ての色が一致することを確認し、その力を開放させる。

 

 その瞬間、爆発的な紫の光が腕輪から放たれた。

 

「きゃあ!?」

 

 クリアガイアが悲鳴を上げるほどの輝きに世界が呑み込まれたのは、ほんの一瞬のこと。

 

 光が収まった後の光景に、耕太郎の口から無意識に言葉が零れ落ちる。

 

「なんだよ、それ」

 

 ドクターは大きく姿を変えていた。だがそれは、異形と呼ぶにはあまりにも整い過ぎていた。

 

 全身に纏うのは、古式ゆかしい鎧と最新のパワードスーツを混ぜたような装い。主に紫、そして白銀の差し色に彩られたその鎧は、優美なメタリックカラーで輝いている。

 

 また、変身してなおその容姿は確認出来ない。顔はマスクに鎧の意匠を盛り込んだような、蛇を思わせる奇妙なものに包まれていた。

 

 姿かたちが変わったという点においては、ある意味魔法少女と同じ変身ではある。だが誰がどう見ても、何もかもが異なるのは歴然だった。

 

 その違いが耕太郎達を大きく惑わせる。

 

≪Complete Inspection 『Maris』≫

 

 よって冷静さを失った今の耕太郎達に、腕輪が最後に述べた口上の意味など分からない。

 

第三世代型ドライバー(アドバンスドサード)、リードブレス。出力を捧げることで適合者の数と安全性を飛躍的に高めた逸品。我が神や英雄には到底及ばないが人知を極めた至高の極致、人類の可能性そのものとも呼べる」

 

 当然こちらの説明も、何もかもが理解に及ばない。

 

 突然現れた結界とレギオン。そこに巻き込まれた人々、その中には兄もいた。そして現れたドクターを名乗る、今回レギオンを生み出したという男。挙句の果てに、その男は変身した。

 

 限界を超えた混乱のあまり、クリアオーシャンはクリアガイアに縋りつく。

 

「が、ガイア、あれって」

「……ごめんなさい。私にも、何も」

 

 だが探知の魔法は依然通用せず、クリアガイアの持つ知識にもその姿は存在しない。彼女もまた同等以上に焦り、惑っている。

 

 残りの二人も構え戦う意志こそ表しているものの、顔色には強い動揺が見て取れる。

 

 ドクターは彼らを何の感情も映さない瞳で眺めた後、極めて自然な動作で語り掛けた。

 

「それでは、返礼の続きをしよう」

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