【悲報】シャア・アズナブル(本物)に転生した件   作:むにゃ枕

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作者は0083が書きたかったと供述しており(ry


小説パート
闇落ちシロー・アマダ


 アナハイム・エレクトロニクスは大企業であった。かつてのオランダ東インド会社のように、歴史に名を残す企業と比べても何ら遜色ない企業に成長するだろう。そんな自負と予測をアナハイム社は持っていた。

 

 しかし、ジオン独立戦争における連邦政府の敗北が全てを変えた。この事実は、連邦政府を利用してきたアナハイム社にとって、大打撃となっていた。

 

「ついに完成したわ…! ガンダム2号機。ジオンの要望を取り入れた核搭載モビルスーツが!」

 

 アナハイム・エレクトロニクス、グラナダ支社にあるモビルスーツハンガー。試作機やテスト機が詰まったそこに、ニナ・パープルトンはいた。

 ガンダム試作2号機は、グラナダ支社の作り上げたどのモビルスーツよりも威容がある。そう彼女は確信している。

 

「ニナさん…? その機体は危険なのでは??」

「ジオンは独立戦争時に、核兵器をバンバン撃ちまくっていたのよ。南極停戦条約で核兵器の使用は禁止されたけれど、連邦ジオン両軍はそれを守っていない。有名無実化されているわ」

 

 ニナ・パープルトンは、恋人であるアナベル・ガトーの影響で、すっかりジオニズムに染まっていた。

 アナハイム社の経営不振の煽りで、フォン・ブラウン本社からグラナダ支社に飛ばされた時は、絶望したものだ。 けれどニナはすっかり立ち直っていた。

 

 この新型ガンダムをジオンに売り込んで、アナハイムに大口取引をもたらすのだ。そうすればニナの評価は鰻登りである。フォン・ブラウン本社にも戻れるだろう。

 

「ジオン技術本部としては、その機体の制式採用は難しいです。核兵器を撃つのは条約違反ですし、コロニー共栄圏の運営で、軍事予算が削減されているので……」

「アイナ。お願い。私の出世が掛かってるの。要望通りのものを作ったのよ」

 

 アイナ・サハリンはジオン技術本部からの出向者であり、ある程度の決定権を持っている。ニナとは良い友人だ。

 

 けれど、私情に流され判断を誤ることはしない。

 

「ニナ。ダメです。コストが高過ぎるわ。連邦軍のジーラインをベースにしている時点で、技術本部は良い顔をしないわ。それに、リック・ゴッグ改を上回るような画期性がない。これだとジオニックのリック・ゴッグ改の方が良いわね」

 

 アイナの指摘にニナはショックを受けた。けれど、ここで折れたままではいられない。ガンダムの開発者としてのプライドがニナには有るのだ。

 積極的にアイナの説得を行ったが、結果は変わりそうにない。

 

 ニナは、苛立ちを隠せなかった。それを自覚した彼女は、気分を落ち着かせるために、アイナから離れる。

 

「はぁ……あら、火災点検?」

「ええ、そうです」

 

 点検業者であろう男が、作業用リフトを操作する。リフトはそのまま上昇していった。

 

 男は、コクピットの開いているガンダム試作2号機に乗り込もうとする。

 

「ちょっと!! 何をしているの! 降りなさい!」

 

 ニナが喚くが、男はそれを無視した。ニナの叫び声を聞いたアイナが駆け寄る。

 

「あれは敵です。ニナさん、退避しましょう! 早く!」

「嫌よ。私のガンダムなのよ!」

 

 アイナはニナをモビルスーツハンガーから引っ張り出した。気密を保持するためのエアロックが、勢いよく閉まる。

 ガンダム試作2号機が、モビルスーツハンガーの搬出口を破壊したのだ。

 

「このモビルスーツは……連邦軍再興のために必要なんだ」

 

 男は、覇気のない声でそう言った。宣言すると言うよりは、自分に言い聞かせているような言葉遣いだった。

 

「アイナ! 試作1号機を使って! 2号機を奪い返すのよ。連邦のテロリストの手に渡るくらいなら壊しても良いわ」

「ええ。分かった」

 

 アナハイム・エレクトロニクスのロゴ・マークの描かれたノーマルスーツ。アイナはそれを素早く着込む。それから、気密警報が鳴り響くモビルスーツハンガーに入っていった。

 

「連邦のテロリスト。無駄な抵抗はやめなさい。逃げても無駄よ。グラナダの警備局が動くわ」

「……無駄な抵抗?? ジオンがそれを言うのか?」

 

 アイナは、サーベル越しの通信回線で男に呼び掛けた。

 

「アイランド・イフィッシュの住民がどう死んだか知っているか?」

「それと、今の状況に関係があるの?」

「俺はアイランド・イフィッシュの生き残りだ。あの時から、俺の時間は止まったままなんだよっッ…!!」

 

 試作2号機の増設されたスラスターが点火し、アイナの1号機が押し倒される。

 

「あんたの声を聞くと、毒ガスで殺されたアイツを思い出す!! お前らさえ、居なければッッッ!!」

 

 2号機のビーム・サーベルが、アイナの目と鼻の先で止まる。

 

「チッ、時間か……」

 

 男は、即座にビーム・サーベルを収める。アイナは自分が生命の危機に瀕していたことをようやく理解した。

 

「私はアイナ・サハリン。あなたは…?」

 

 アイナ自身、自分がどうしてこんなことを言ったのか全く理解していなかった。それても、ここで言葉を交わさなければ何かを失ってしまう気がした。

 

「……シロー・アマダだ。哀れな一年戦争の亡霊だよ」

 

 シローの声は深い絶望と悔恨が音を成しているようだった。彼の操る2号機は、複雑に張り巡らされたグラナダの地下通路の中に消えていった。

 

 

 アイナが1号機から降りるや否や、ニナがすっ飛んでくる。2号機を取り返せなかったことをニナが怒るのだろう。そう思いアイナは口を開いた。

 

「ごめんニナ。2号機を取り返せなかった」

「ごめん、じゃないわ。あなたが生きていてくれて良かった! 私が無茶を言ったせいであなたが死んだと思ったのよ」

 

 ニナがアイナに抱きつく。ニナは本気でアイナの身を案じているようだった。

 

「敵パイロットは、シロー・アマダ。彼はアイランド・イフィッシュの生き残りと言っていたわ」

「……それって」

 

 アイランド・イフィッシュの話題は、ジオンにおけるタブーだ。ジオン軍が戦争犯罪をした事実は、誰の目にも明らかであった。

 

「私たちは過去の清算をしなければならないのよ」

 

 シローの怨嗟に満ちた声がアイナの耳から離れなかった。アイナたちは、彼の大事な人を、思い出を奪ったのだ。

 あの恨みがジオンに向いた時に、惨劇が齎されるのは明らかである。分かり合うと簡単に言えないほど、ジオンは悲しみを作り出しているのだから。

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