いち! にち! いち! あく! (大声量)
はい! はい! シックスティーエイト!!(鼓膜破壊)
『ふ……む』
きっかり十秒。僕がその事態の把握に要した時間だった。
ゲヘナ学園の大っぴらな所で、先生がイオリちゃんの足を舐めている。
よく見れば少し遠くで見ていたヒナちゃんが顔を真っ赤にしていた。
いやーーーーーー、ははっ。
なるほど、なるほど。
‘‘あ、ミソギ! そっちはもう終わったんだね! 今私は――‘‘
取り敢えず螺子伏せてみるか。
‘‘どわーーーーっ!!?‘‘
少女の足を舐めていた不審者は突如降って来た二本の柄が長い螺子に貫かれた。
『生徒会、死刑執行をする――なんてね』
‘‘なんてね、じゃないよ! 危ないでしょ!‘‘
不審者――もとい先生はスーツの袖口と地面を縫い付ける細い螺子に表情を青ざめていた。
というかさっきまで普通の大人だったのに今は禿げ散らかしたマスコットキャラみたいになってるんだけど……幻覚かな?
『危ないのはそっちの思想でしょ』
『いや性癖って言った方が良いのかな』
‘‘断じて違うよ! これはイオリが足を舐めろって……‘‘
『などと犯人は供述しており』
‘‘違うってば!‘‘
『成人男性が女子高生の生足に舌を這わせて美味しそうに舐めている絵を見て事案以外の何を思えば良いのかな』
‘‘そう言われたら何も言い返せないけども! というか美味しそうに舐めてなんかないよ!‘‘
僕が珍しく(自分で言うのもなんだけど)頭を働かせてナギサちゃんとの舌戦を繰り広げたというのに、そっちは呑気に茶じゃなくて美少女の足を頂いてたって訳か。
これはもう一本螺子伏せなければいけない気がするなあ。
‘‘ミ、ミソギ? なんか表情が怖くなっているよ?‘‘
『安心して良いよ先生。死にはしない』
‘‘死以外の全てをやろうとしている!?‘‘
『勿論、死んだとしても僕のマイナスで無かったことにしてあげるさ』
‘‘私一体何をされるの!!?‘‘
徐々に近づいていく僕に先生の額から汗が大量に流れ落ちる。禿げ散らかしたその風貌と相まって中々にギャグ度が高かった。
まあ茶番はここまでにしておこうか。僕が両手に持った螺子を仕舞うのを見て、先生は安堵した表情になり、いつもの姿に戻ってから立ち上がった。
『それで……イオリちゃん』
「な、なんだよ……確かに足を舐めろとは言ったけど、こんなになるまで舐めろとは誰だって――」
『まさかそれ以上の足舐めをご所望で?』
『仕方ないなイオリちゃんは』
『片足を出したまえ。先生とは比べ物にならない本当の足舐めというやつを――』
「だからいらないって言ってるだろ! このマイナスが!」
跪いてイオリちゃんの足元に顔を近づけようとしたけれど、その足で顎を蹴られてしまった。
残念。僕もこの機会に一度味わっておこうかと思ったんだけどなー。
「足……舐め……」
あーあ。ヒナちゃんがとうとうパンクしちゃった。
◆
まあそんなこんなありながらも無事にゲヘナの協力は得る事に成功した。
元々ゲヘナはこっち側に借りがあると(少なくとも思っているらしい)の事だったので、これで今度こそ差し引きゼロに戻す事を条件だけどね。
先生はゲヘナとトリニティの生徒がぶつかる事を危惧していたけれど、そこら辺はナギサちゃんとヒナちゃんの采配に掛かっているかな。最悪僕が割り込んでめちゃくちゃに引っ掻き回すし。
残るは後輩ちゃんズと便利屋68だけれど……。
‘‘ミソギは良い先輩だね‘‘
アビドス高等学校へ向かう際、唐突に先生は言った。
‘‘成功度合で言えば今回の交渉、確実に一陣営を抑える為にもミソギが便利屋の皆の元に向かうのが最もセオリーだった‘‘
‘‘それをしなかったのは、アビドス対策委員会の皆に経験を積ませたかったからでしょ?‘‘
‘‘困った時は誰かに頼っても良いんだよって伝えたい為に‘‘
『……さあね』
『僕はそんなに聖人君子じゃないさ』
『ただ自分の力がどこまで通じるか知りたかっただけ』
『昔から、分の悪い賭けが大好きだからね』
先生は薄く笑うだけでそれ以上は何も言えなかった。
少しだけムカつくからイオリちゃんの件シロコちゃんにチクってやろうか。
そんな悪だくみを思いついていると、ポケットの中に入れて置いた携帯が震えた。
どうやらこちらも無事に済んだらしい。
まあ元々便利屋には事前に頼んでおいたから断ることは無いだろうと思ってたけどね。
どうやら今は紫関ラーメンでラーメンを食べているそうだ。
シロコちゃんが送ってくれた写真は何故か外が映って随分と開放的だけど、何かあったんだろうか。
その理由は来てみて直ぐに分かった。紫関ラーメン、どうやら屋台型式になっているらしい。
『なになにどうしたの?』
『ハルカちゃんってば、また堪えきれなくなって店舗爆破しちゃったの?』
『しょうがないなあ。僕がまた元通りにするから、ちょっと待っててね――』
「わ、わわ、私のせいじゃないですぅ……ご、ごめんなさいっ!」
「ハルカのせいじゃないから謝らなくて良いって」
まあ確かに爆破されてるにしては皆のほほんとラーメン食べているし、当の大将に至ってはいつもの気さくな笑みを浮かべて来客を歓迎してくれていた。
僕はハルカちゃんに軽く謝りながら大将の話を聞いて事態を把握した。どうやら立ち退きの勧告が来ていたそうだ。そうして店を構える前の屋台型式に心機一転して頑張る最中だって……おいおい、完全に僕達のとばっちりじゃないか。それなのに大盛りやら無料サービスしてくれちゃって。
だけど知ってか知らずか、そのお陰でこちらの士気は上々だ。元々高かったけど今じゃもう天元突破しているよ。
まあ、それは僕の方もなんだけどね。
『それじゃあ善意に甘えて、沢山食べようか』
『どうせ明日は長い一日になるんだ』
『ここで英気を養おう』
「「「「「「「「‘‘はーーい!‘‘」」」」」」」」
さて、それじゃあ覚悟しといてねホシノちゃん。
君の想いとか気持ちとかそんなの全部無視して、台無しにして。
君を助けて見せるからさ。
こっから割と文字数使う事になると思うので更新に時間が空くかもしれません。
コメント高評価よろしくね。