混沌より這い寄る透き通った青春   作:過負荷の後輩

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《みんなビックリ殺人事件! ただし被害者は球磨川禊》みたいな。

要するに死亡シーンがありますよという前置きでした。




第三話『便利屋68との邂逅』

アウトローってさ、なんか聞こえはいいけど、実際はそんな大層なもんじゃないんだよ。

“ルールを破るヒーロー”?

“自由に生きる強者”?

いやいや、そんな格好いいのは物語の中だけで、現実のアウトローなんてただの“うまく馴染めなかった人”だよ。

僕みたいなね。

 

ほら、みんな空気を読むじゃない?

いや、読めるじゃない?

“こうしたら嫌われるよ”とか、

“これは正解じゃないよ”とか、

人間関係のマニュアルが頭の中に標準装備されてるんだよ。

でもアウトローってさ、そのマニュアルがインストールされてないの。

もしくは途中でアップデートに失敗して、永遠に読み込み中のまま固まってるの。

可哀想と思うかい?

いや、本人はそこまで気にしてないと思うけどね。

 

“決まりごと”の外側にぽつんと立っている。

ちょっと寂しいし、ちょっと寒い。

まるで街灯が切れた夜道を、一人で歩くしかなくなったみたいにね。

 

でもさ――

夜道って悪いことばかりじゃないんだよ。

とやかく言う人がいないから、誰にも邪魔されないし、遠くの星がよく見えるし、足音がやけに大きく響くから、“あ、ちゃんと前に進めてるな”って実感できたりもする。

 

その隣に付いてきてくれる人達がいればもう正に無敵って感じだよね。

そういうのって、普通の道じゃなかなか味わえないんだ。

 

だから思うんだよ。

アウトローって、世界の端っこで拾った自由のかけらを、誰よりも大切にできる人なんじゃないかって。

 

ね?

ちょっとだけ明るいでしょ?

“外れ者”って案外悪くないんだよ、本当に。

 

その分彼女らに至ってはその最上だよね。アウトローの中のアウトロー。

僕らに助けられ、僕らを助けてくれた今や切っても切れない関係にある『便利屋68』。

その統領にして社長である陸八魔アル

昔の僕が、昔のままでいたとしても決してあんな風になれなかったんだろうな、とつくづく思うよ。さっきアウトローは落ちこぼれのはみ出し者みたいな感じで言ったけどさ、あれも言わば広い定義――広義的な意味な訳で、アルちゃんたちは少し違うよね。

 

どういう世界であれ、自分の信念を貫くこと。それは落ちこぼれでもはみ出し者でも、ましてや負け犬でも敗北者でも無い。そういうのを、僕達の世界では『勝ち馬』って言うんだよ。

 

 

それはそんな僕と『便利屋68』が正に運命的な邂逅を果たした翌日の昼の事だった。

根無し草たる僕は何度か凍死に怯えながら廃ビルの一室で寝泊まりしているんだけど、少し夜更かししたせいもあってか、僕が目覚めたのはもうだいぶ日が高く昇った時刻だった。

 

いつもの僕であれば眠たければ眠る、起きたければ起きるの生活を繰り返していたんだけど、今日は話が別だった。アビドス対策委員会の定例会議。そこに出席する予定だった。

流石の僕と言えども遅刻はマズいということくらい知っているさ。これでもちゃんと学校には遅刻せずに来ていたんだから。

 

身の汚れや臭いなんかを無かったことにしながら、僕は大急ぎで砂まみれの校舎に向かう。

一応女の子も(というか『しか』)いる訳だからね。エチケットは重要さ。

そんな些細な気遣いや、どうやって言い訳しようかとか考えていたけれど――。

 

『そういう訳で、遅れて来ちゃったわけだけど』

『流石に、これは、無いんじゃあないのかな……?』

 

「あわわっ!? 球磨川先輩!?」

 

対策本部の扉を開いた瞬間、僕の目の前にちゃぶ台が飛来してきた。

勿論避けれるはずが無いので、そのまま僕の眉間とちゃぶ台がごっつんこ。

いや可愛い感じで説明したけれど、ものすっごく痛い……。

 

「ああ! アヤネちゃんの伝統技であるちゃぶ台返しが!」

 

「あら~~~~~」

 

「ん、球磨川先輩。流石の不運力」

 

「大丈夫かい……ミソギ?」

 

『う、うん……大丈夫。前頭骨がちょっと砕けちゃったけど、まあ問題ないよ』

『もともと少ない脳を守る頭蓋なんざ僕には意味ないしね』

 

「いや問題しか無いんだけど!?」

 

「ご、ごめんなさい! 今すぐ緊急キットを――」

 

慌ててキットを取り出すアヤネちゃんに僕は待ったをかける。

こんな程度の傷でアビドスの備品を使わせるわけにはいかないさ。

実際これくらいは、何ともないし。痛いっちゃ痛いけどね。

 

『だからアヤネちゃん。出来ればその手で僕の額を押さえててくれ』

 

「え? こ、こうですか……?」

 

『そう。そのまま優しく左右に擦りながらいい子、いい子と――』

 

「いい子、いい子……」

 

『よし。治った』

 

「あれで治ったの!?」

 

う~~んやっぱりセリカちゃんのツッコミは良いね。心地が良い。これが向こうだったら今頃(グーパン)足技(サバット)の一つでも飛んできているよ。まあでも治ったのは本当だ。正確に言えば、無かったことにしただけなんだけどね。

 

「そう考えると球磨川先輩って何だか不思議ですよね★ 私たちみたいに銃火器を用いらずとも生活できるくらいに強いはずなのに、防御力はペラって感じがしますし」

 

『ペラじゃなくてスカなのさ』

『全身が弱点、どこを受けても致命傷、空気よりも抵抗が無い男とは僕のことだ』

 

「ん。だから球磨川先輩は風って呼ばれている」

 

シロコちゃん間違ってる!

みんなもああ、だからか。みたいな顔しないで!

 

『まあそれで、話を戻す様で、というか戻った話すら分からないから恐縮だけど、とにかく』

『アヤネちゃんのちゃぶ台返しが決まったという事は、どうやら会議は難攻している様だね』

 

あの冷静で可愛いアヤネちゃんがこうまで荒れるとは……全く、僕を見習って欲しいものだよ。

 

「ええそうなんです……借金返済の良い方法を皆で議論していたのですが迷走しちゃってまして、球磨川先輩、何か案はありますか?」

 

よくぞ聞いてくれたとばかりに胸を叩く。

寧ろ遅刻した理由はそれを徹夜で考えていたせいでもある。

まあ耳の穴開いてよく聞いてくれたまえ。

 

『まず三通り考えてきたんだ』

 

「そうなんですか?」

 

羨望の眼差しを向けるアヤネちゃんだった。

 

『ああそうだとも』

『まず町内で見た広告にあるこの壺を購入して――』

 

 

「だ・か・ら! どうしてみんなそんな搦め手しか無いんですか!!?」

 

 

ガクッと再びちゃぶ台が持ち上げられそうになる。

あわば十八番(ちゃぶ台返し)再びかと皆が身構えるけど、ちゃぶ台の足が少しだけ浮くだけでひっくり返る事は無かった。

 

「あ、あれ……なんで――」

 

ふう危ない危ない。予め釘を刺しておいてよかったぜ。

まあもっとも刺したのは釘ではなく――。

 

「ちゃぶ台に巨大な螺子が!?」

 

なんだけどね。ちゃぶ台には通常の十倍はあろう大きな螺子が一本、突き刺さっていた。これで縫い止めたという訳だ。

 

「ん、奇術師もビックリの早業」

 

「わ~凄いですね」

 

「確かに凄いけど……なんで螺子!?」

 

ふふん愚問だよセリカちゃん。そんな理由なんて一つしか無いじゃないか。

僕が武器を持てば相手に警戒されちゃうけど、工具用品を携えた所で脅威ではない。

殺傷能力の無い螺子で攻撃しても大した傷にはならない。

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「ん。いいこと思い付いた」

 

シロコちゃんがちゃぶ台と床を縫い止めている螺子を見やる。

 

「球磨川先輩の螺子を売ろう」

 

『シロコちゃん?』

 

「それか球磨川先輩を使って曲芸師をやる」

 

『シロコちゃん???』

 

「大丈夫一人にはさせない。私たちは横でアイドルやるから」

 

それはそれで是非とも観賞したいところだけども。

あわよくば着終わった後の制服をお借りしたい所だけども。

 

『そもそも人が少ないここでちんどん屋よろしく芸をやりながら練り歩いた所で』

『せいぜい一日数千円程度が関の山なんじゃ無い?』

 

「ん、確かにそうだった。それじゃあカイザー相手にやってみる?」

 

カイザーというのは、カイザーコーポレーションという会社名であり、アビドス高等学校の九億を越える借金を産み出している存在だ。シロコちゃん、そんなやつらに金をせびようと言うだなんて、随分と格好良いことを言うなあ。

 

そのうち銀行強盗でも画策してきそうだぜ。

何故か机上にある覆面(しかも人数分)に目を配らせながら僕は思考する。

楽して金を稼ぐ手段なんかこの世の中に無い。

だって楽というのは基本的に、誰かの不幸で成り立っているものだから。

誰かの不幸せの上に成り立つ幸福を彼女らは望まないだろう。

だけど――もしも、もしも仮に。彼女らが『そういう決断』を取ろうと言うのならば。

 

きっと、昔の僕ならばそう扇動していたんだろうな。

彼女たちが気付かない様に善意と韜晦(とうかい)の微笑みで擬装した道を大手振るって先導していたのかもしれない。

 

『……ほとほと僕も甘くなったもんだ』

 

僕はそう戯言を呟き、肩を竦める。

そのもしもだなんて事は起こらないだろう。彼女たちはそれを選択しない善良さを持っているし、そして何よりも――。

 

「……? どうしたんだい、ミソギ」

 

ここにはちゃんと教え諭してくれる大人がいる。

 

『いいや特になにも』

『強いて言うなら、お腹がちょっと減っちゃった』

 

「ははは。それじゃあ柴関ラーメンにでも行く?」

 

「「「「「『賛成っ』」」」」」

 

 

そんな感じで僕らがウキウキな(本当にそんな感じ)気分で柴関ラーメン屋の扉を開けると、店内には四人のお客さんがいた。四人で一つの丼にがっついて(女子にこの表現は良くなかったね)いる姿は微笑ましく、僕は餓えた野良犬達が餌を貪っている所を思い出した(全然微笑ましく無かったね)。

 

僕たちの事なんか目もくれずあまりにも目の前の大きなラーメンに集中していたので、僕は声を掛けようとしたけれど、結局黙って離れたテーブル席に腰を降ろすことにした。さあて、何を食べようか。どうせお金は先生が出すんだから、しかし二度に渡って高価なものを注文するのはカスみたいに残っている僕の良心が痛むしな……と逡巡し、結局前回頼んだメニュー(もちろん僕は学習する男なので今度は中盛り)を頼もうと声を掛けた――その時だった。

 

 

「その声――く、球磨川ミソギ!?」

 

 

おや、ようやく気づいた様だね。

やあ久しぶりアルちゃん。いや正しくはさっきぶりかな?

まあ僕にとって時間的概念なんざどこぞの人外との遭遇によって壊滅的に破壊されたもんでね。トイレに行って帰っただけのほんの細やかな数分だけ時間でも僕にとっては久しく感じてしまうし、それが例え本当に久しぶりの再会だとしても、僕は昨日であった友人かのように接することだろう。

 

アルちゃんの驚愕の声に真っ先に反応したのは紫髪の女の子――伊草ハルカちゃんだった。ハルカちゃんはそれはもう惚れ惚れするくらいの速度でショットガンを取り出して、僕にその銃口を向ける。

 

「うぅぅ……アル様に酷いことをした敵! ししし、死んでください……!」

 

それが合図だった。真っ先に動いていたのはシロコちゃんで、隣に座っていた先生を銃弾が当たらない様に押し倒し、こちらも銃を展開した。両者が睨みあう中、僕は取り敢えずセリカちゃんにラーメンの注文をしていた。

 

「あ、あんたね……!」

 

『ああしまった。今回の君はバイトじゃなくてお客さんだったもんね』

 

「違っ……いやそれもそうだけど……! あんた、この状況が分からないの!?」

 

『おいおいセリカちゃん。僕らはここに何をしに来たと思ってるんだい?』

『食事をしに来たんだろう? アルちゃん達もそうじゃないのかい?』

 

「ただの食事で銃を抜く状況(シチュエーション)が生まれる訳無いじゃない!!」

 

ああもう、本当に可愛いなこの子は。

ついついイジメたくなってしまう。

 

「君たちは一体――ミソギに何の様なのかな?」

 

「私達は便利屋68(べんりやシックスティーエイト)。そして私はその社長――陸八魔(りくはちま)アル。名前だけなら聞いたことあるんじゃないかしら」

 

「便利屋68……ゲヘナ学園で生まれた部活で、現在は空﨑(そらさき)ヒナ率いる風紀委員会と対立している組織です。そして、陸八魔アルは――事あるごとに周囲に甚大な被害をまき散らしている極悪人です!」

 

「ご、極悪人……! ええそう、そうよね。私達は極悪人なの」

 

『え~っ!』

『アルちゃんたちってば、そんなに怖い人達だったの!?』

『これは小心者な僕も足がガクブルだよ! ほら、ガクブル!』

 

「……」

 

僕がせっかくよいしょしてあげたというのに、アルちゃんは何だか難しい表情をしていた。まるで目の前に本当の巨悪がいる手前悪を名乗れない様なそんな感じだ。

あちゃあ。流石に怒ってるよね。やっぱ初めましてが良くなかったかな。

 

まあだけど、本当に僕達はここでご飯を食べにきただけなんだ。

分かってくれないかな。

そんな事を伝えたくて、僕はにこりと笑いかけながら、便利屋68の面々を見据える。

 

数瞬後には便利屋68の全員が武器を構える事態となっていた。

うーんどうしてだろうね?

 

「くぅ……幾ら安いとはいえここで食事するんじゃなかったわ。せっかく美味しいラーメン屋さんに出会えたというのに!」

 

「ごごごごめんなさいアル様。私が『お腹を螺子で貫かれたからお腹が空いてしまいました』と言ってしまったばかりに……」

 

「しかもよりによってアビドスの生徒もいるし、あの男の人は――噂に名高いシャーレの先生か。運悪すぎ。それよりもハルカ、私らそれ抜きにしても最近食べてなさすぎだったから、別にハルカのせいじゃ――」

 

「だっ、だから!」

 

ハルカちゃんはカヨコちゃんの話を聞いちゃいなかった。

銃口が僕の頭部へと向かう。

 

「せ、責任! 責任を果たします!」

 

ハルカちゃんはその仄暗い眼差しを僕に向けて、開口した。

 

「取り敢えずっ! 撃ちます!」

 

そう言うと共に、大きな炸裂音と共に広がる弾丸。撃たれる事にもう驚きはない。

それにしてもショットガン――前回のホシノちゃんと違う点は二つある。

まずこの狭い店内では回避行動に制限が掛かること。そして二つ目は、その回避行動をもってしても被弾は免れない事だ。ハルカちゃん、狙ってやったのかそれとも勘なのか、とにかく良い狙いをしているぜ。

 

……え? しゃがんで回避すれば良いだろうって?

確かに扇状に広がった弾丸であれば極端な話、僕が地面に全身をくっつけて伏せてしまえば避けられるさ。出来る出来ないを除いた可能性の話としては、やっぱりシロコちゃんが先生にやったように姿勢を低くするほか無いだろうさ。

 

だけどそれは出来ない。当たり前だろ? 僕一人じゃないんだからさ。

 

僕の右側、ハルカちゃんから見て僕の後側か、そんな些細な差はどうでも良いとして。

僕が仮に避ければ、避けてしまえば。

 

――後ろにいる大切な後輩(ホシノちゃん)が怪我しちゃうだろ?

 

だから僕は敢えて抵抗もせずに、寧ろ拡散した弾丸が当たらない様に両手を広げて撃たれた。

 

「ミソギ!」

 

「球磨川先輩!?」

 

崩れ落ちる僕の身体。頭部はものの見事に破壊され、破壊され尽くされた。喉もズタズタにされてしまったので声さえあげることも出来ない。脳漿が飛び散り、鮮血がハルカちゃんの顔に掛かる。

 

「え? ……ええっ??」

 

ハルカちゃん達は状況を呑み込めず混乱していた。

キヴォトスに住まう生徒達は皆銃に対して強力な耐性を持っている。弾丸は皮膚を貫かないし、爆弾で身体が爆散することもない。故に高火力のショットガンでようやく相手に痛い思いをさせれるわけだけど――。

 

「ど、どうして……。ハッ! 球磨川先輩、貴方はもしかして――」

 

痛いならぬ遺体になりかけている僕に、アヤネちゃんは、いやこの場にいる全員が悟った。

僕がこの世界の人では無いと。生徒では無いということを。

そうして僕の意識が徐々に遠ざかっていって、最後に僕は半分潰れた眼球を動かして隣を伺った。

 

ホシノちゃんは――。

 

「……なんで、」

 

少しだけ、泣きそうな顔をしていた。

ああちくしょう。その顔は反則だぜホシノちゃん。

そんな顔をしたら、僕は是が非でもその顔を崩したくなってくるじゃないか。君は笑顔が素敵な子なんだから、もっと笑わないとさ。

 

そんな事を思いながら、僕はようやく絶命した。

それじゃあまあ、気持ちを切り替えて。

半年ぶりなんで長めに矯めて――。

 

『「大嘘憑き(オールフィクション)」!』

 

 

『僕の絶命を』

 

 

 

 

 

 

『なかったことにした!』

 

……っと、へえ、なるほど。こんな感じか。

 

僕は自分の傷一つ汚れ一つ付いていない学ランを手で撫でながら、安心させるように皆を見渡す。

引き攣った表情を浮かべているのが大半で、ハルカちゃんは手に持っていた散弾銃(ショットガン)を落してしまった。それでホシノちゃんに至っては――。

 

「……は?」

 

信じられないものを見る様な目つきになっていた。まるで出来の悪い夢でも見た後かの様に。

うん。これは後で説明するのが大変そうだ。僕だってマジックの種を教える様な行為なるべくしたくない。なので、ここは一度に全て説明してやる。

 

『もう気づいている通り、僕はそこにいる先生と同じく外から来た人間だ

『銃弾一発で死んじゃうような、この世界じゃスペランカー顔負けの弱い生き物さ』

『けれど僕も、皆と同じようなスキルを持っている』

 

僕は皆が手に持っている銃火器に目をやる。

 

『『大嘘憑き(オールフィクション)』いや今は『虚数大嘘憑き(ノンフィクション)』か――まあ好きに呼んでくれても構わないさ』

現実(すべて)虚構(なかったこと)にする――それが僕の過負荷(マイナス)、君たちで言う所のスキルだぜ』

 

「全てを無かった事にするスキルって――そんな神様みたいな事が出来るわけ……」

 

そうセリカちゃんは言っていたけれど、それでは先ほどの事象を説明できないと分かったからか、口を噤んでしまった。先生は本当に怪我はないか僕の身体をじろじろと見てくるので、両手を広げて問題無い事をアピールした。先生はそれで安心したのか、ほっと息を吐いて安堵していた。つーか、いつまでシロコちゃんの下にいるつもりなんだろうか。

 

ホシノちゃんは、まだ僕を疑い半分、驚き半分の眼差しで見つめている。

 

現実(すべて)虚構(なかったこと)にするスキル――人の死さえも、無かったことに出来る」

 

何度も、何度も何度もその言葉を口の中で転がしていた。

確かめるように、単語を一つ一つ取って、咀嚼するように。

その意味を決して間違えない様に。何度も、何度も――ぶつぶつと繰り返し言っている。

 

 

 

それなら――

 

 

 

 

『そうだ良い事を思いついた』

『アビドスの借金を返す良い案だよ』

 

僕は先端が長い螺子を二つ、両手に持ち構えて便利屋68の面々を臨む。

ここで一つ、厨房で縮こまっている大将に言い訳をさせてもらうと。

僕たちはただ普通に食事を楽しみにきただけだ。

 

『アヤネちゃんの説明だと、彼女たちって今絶賛追われている最中って事でしょ?』

 

僕のせいじゃない。

君たちが悪い。

 

『なら――彼女たちを捕まえてその賞金を頂くというのはどうかな?』

 

だから僕は――

 

 

 

 

 

悪くない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




球磨川先輩、目の前の便利屋68に懸賞金掛けられてない事知ったら驚きそう(小並感)
因みにこの世界観のハルカちゃんはあの後しっかりトラウマを植え付けられたので口癖の『死んでください』連呼がなくなります。

生徒にトラウマを植え付けるな。
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