英雄と女王の子   作:剣の舞姫

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大変お待たせいたしました! 第四話の投稿です。
引越しや仕事の疲れ、スランプなどで書けなかった日が続いた中、ようやく復活!!
今回はリメイク前の第一話の話になります。


第四話 「麻帆良学園」

英雄と女王の子

~Re-make~

 

第四話

「麻帆良学園」

 

 アリスの乗った飛行機が無事に日本は東京の新東京国際空港に着陸して、アリスは飛行機を降りると空港内で遅めの昼食を摂り、その日は東京都内のホテルに泊まって一夜を明かした。

 翌日の朝になるとホテルをチェックアウトして電車に乗り、埼玉県麻帆良学園都市へ向かう。

 此処までの道のりはそれなりに苦労があった。何せアリスは日本生まれと言っても京都で生まれ、その後はずっとイギリスで、関東圏は初めてだから地理などはサッパリなのだ。

 

「しかし、日本の冬は雪が積もると聞いていたのだが…積もっていないな、四季がハッキリした国ではなかったのか?」

 

 電車の外の景色を見ていたアリスは、冬なのに雪が積もっていない事に首を傾げる。基本的に関東圏で雪が北海道並に積もる事はあり得ないという知識は、流石の日本生まれであるアリスにも無かったのだ。

 

『次は~、麻帆良学園都市~、麻帆良学園都市~』

「あ、着いたか」

 

 電車が駅に着いたので降りる。改札を出てみれば既に麻帆良学園都市の広大な敷地内で、これから更に乗り継いで麻帆良学園女子中等部を目指すことになるのだ。

 

「それにしても、妙な結界を張っているな…魔力だけではないな、この結界の力の源は」

 

 麻帆良学園の敷地に電車が入った時から気付いていたが、学園都市一帯を覆う結界がアリスの知識にある結界とは些か違う事に気付き、眉を顰めた。

 西洋魔術の結界の様に魔力だけを使ったものではない、東洋魔術である呪術の様に気を使った結界でもない。

 

「何か妙なモノでも隠しているのか…?」

 

 術式から何かを封印する為の結界である事は見抜けた。だが、何を対象としたモノなのかは不明、見た感じだと少なくとも2つ(・・)以上の何かを封印するのに使っている様だが……。

 

「まぁ、関係無いか」

 

 そう呟くと、見えてきた女子中等部エリアを視界に納め、乗り継ぎの電車を降りる準備をするアリスであった。

 

 

 電車を降りたアリスは女子中等部のエリアに足を踏み入れ、駅にあった案内図を見ていたのだが、何気に広い敷地に校舎まで如何行けば良いのか困っていた。

 流石に誰かに聞いた方が良いだろうと、登校中であろう学生達に目を向け、ふとローラースケートで走る美しい黒のストレートヘアが目立つ一人の少女の姿が目に止まる。

 

「…木乃美さん?」

「はい?」

 

 突然の事に目の前の少女は立ち止まり訝しげな表情でアリスを見つめてきた。

 当のアリスは知り合いに似た少女に驚くも、明らかに自分が知る人物よりも幼い見た目の為、人違いをしてしまった事を恥じている。

 

「あ、ごめんね…君が知り合いに似ていたから」

「知り合い? おにーさん、ウチこれから学校やねんから、ナンパはお断りやよ?」

「本当にごめん、見た目といい、そのしゃべり方…京都弁、って言うのかな? といい、本当に似てたから」

「ん~? ウチに似てて、京都弁も一緒? なんやおにーさんもしかしてウチのお母様の知り合いなん? 木乃美いうたらウチのお母様の名前や」

 

 何と、知り合いの娘だというのか、それでは彼女が近衛木乃美の娘という事は、彼女の名前は近衛詠春と近衛木乃美の娘の…。

 

「もしかして君…木乃香ちゃん?」

「ウチの事も知っとるん?」

「あ、うん。私の両親と君の両親…詠春さんと木乃美さんは友人同士だったから、君が生まれたばかりの頃に、私と君は一度会った事があるよ」

 

 随分と昔の事なので、アリスも記憶が薄れているが、まだ幼かった頃にナギとアリカがアリスを連れて京都へ来た時、詠春が生まれたばかりの娘、木乃香に会わせてくれたのを覚えている。

 

「お父様の名前まで、ホンマの話なんやな」

「勿論、ナギ・スプリングフィールドって名前に聞き覚えは無い?」

「なぎ…? ああ~! 前にお父様が酔って口にした名前にナギいう名前があったなぁ!」

「やっぱり…私はそのナギの息子で、アリス・スプリングフィールド…近衛木乃香ちゃんで、良いのかな?」

「せや、近衛詠春の娘、近衛木乃香です。よろしゅうな」

 

 完全に警戒が解けた木乃香と握手をしたアリスだが、木乃香が何やら首を傾げているのに気付いた。

 

「どうしたの?」

「スプリングフィールド? …もしかしてアリスさん、ネギ君の親戚なんか?」

「あ、ネギの事も知ってるんだ。親戚っていうか、ネギは私の弟、実の兄弟だよ」

「そうなん!? 似てへんなぁ」

「あはは…ネギは父親に似たんだけど、私はどちらかと言うと母親に似たからね」

 

 最も、目元はアリスがナギに、ネギがアリカに似ているのだが。

 

「でも、アリスさんが何で此処におるん? ここ、一応は女子校エリアやえ」

「ネギの様子を見にね。ずっと仕事でネギに会えなかったんだけど、最近漸くひと段落出来たから日本で教師をやるって聞いてたし、会いに来たんだ」

「そうやったんか~、ほんなら案内したるわ。ネギ君も喜ぶえ」

「そう? なら…お願い出来るかな?」

「ほな! ウチに着いてきてや」

 

 木乃香に案内され、女子中等部の敷地内を歩いていると、彼方此方から視線を感じる。大半が好奇心だったのだが、一つだけ背後から感じる鋭い…敵意が含まれた視線があるのに気付く。

 最も、気配から感じられる実力はアリスと比べれば大した事は無い。片手であしらえる程度の実力でしかないので放置する事に。

 

「なぁなぁアリスさん、お父様とお母様の知り合いなら色々と知っとるん?」

「詠春さんと木乃美さんの事? そうだね……詠春さんは剣の達人なのは木乃香ちゃんも知ってると思うけど、私は詠春さんから剣術を教わっていた事もあるから、その実力はよく知ってるよ」

「はぁ~、お父様ってそんなに強いん?」

「強い、剣の腕なら世界最強クラスと言っても過言じゃない…いや、実際に詠春さんは世界最強クラスだね、その筋の人間なら知らぬ者は居ないほど世界中に名が通った人なんだ」

 

 旧世界でも魔法世界でも、近衛…青山詠春の名は有名だ。初代・紅き翼のサムライマスターとして、20年前の大戦の英雄として、裏の世界で知らぬ者は居ない。

 

「お父様がなぁ…」

「木乃美さんは有名こそ無いけど、優しい女性だよ。私も両親と京都に行くと遊び相手になってもらった事が何度もある。料理も美味しいし、美人で気の利く素敵な人だったね」

「ん? なんや、アリスさん随分とお母様の事を褒めるなぁ…好きやったん?」

「む…ま、まぁ、子供心に憧れは、あったかな?」

 

 何を隠そう、アリスの初恋は近衛木乃美だ。両親にも内緒にしていた事なので、そのまま口にする事は無いが。

 

「ほなウチは?」

「木乃香ちゃん? う~ん…会ったばかりだけど、木乃美さんに似てるし、雰囲気もそっくりだし、将来が楽しみ、かな?」

「いや~ん、褒めたって何も出ぇへんよ?」

 

 頬を赤く染めて照れる木乃香の笑顔が、木乃美にそっくりで、思わず懐かしいと感じた。子供の頃の淡い恋心を思い出して、苦笑しながら見えてきた校舎に目を向ける。

 

「えっと、ネギに会うには如何したら良いかな?」

「せやね…おじいちゃん、学園長に会えばええんやない?」

「おじいちゃん?」

「せや、ここの学園長は近衛近衛右門いうて、ウチのおじいちゃんなんよ」

 

 そういえば麻帆良学園学園長にして関東魔法協会会長の名が近衛近衛右門という名だったのを思い出した。

 関西呪術協会の元・長筆頭候補であったのにも関わらず、麻帆良学園で学生をしていた頃に魔法使いへ転身し、関西を抜けた日本最強の魔法使い、それが近衛近衛右門だ。

 

「それじゃあ、学園長室に案内してもらえるかな?」

「ええよ~」

 

 生徒玄関から木乃香が校舎に入り、アリスは来賓用玄関から中に入って木乃香と校舎内で合流、そのまま学園長室を目指した。

 

「先にウチが入っておじいちゃんに事情説明して来るから、此処で待っとってな?」

 

 そう言って先に学園長室に入った木乃香を待っているアリスは何となく窓の外を眺めた。

 この学園に入ってから感じる強者の気配、それも圧倒的な実力者の気配が感じられるのは、窓から見える屋上の上、そこに目を向けると、遠目だがハッキリと見えた。

 木乃香と同じ、麻帆良学園女子中等部の制服を着た金髪の少女が屋上の柵の向こうからこちらを見ている。

 

「……あの子、何処かで」

「アリスさん?」

「あ、木乃香ちゃん…」

「どないしたん? 窓の外に、何かおるん?」

「いや…」

 

 一度木乃香の方を向いてしまっていた為、もう一度屋上に目を向けると、そこには既に少女の姿は無かった。

 

「なんでもないよ。それより、もう中に入っても?」

「あ、せやった。おじいちゃんが是非とも話がしたい言うてたから、入って」

「わかった」

 

 学園長室の扉をノックしてから開き、中に入ると最初に目に映ったのは…、ぬらりひょんだった。

 

「……」

「む? な、何故黙るんじゃ!?」

「あ、いえ…初めまして、ネギ・スプリングフィールドの兄、アリス・スプリングフィールドです」

「うむ、木乃香から話は聞いておるぞ? ネギ君に会いに来たとな」

「ええ、弟がお世話になってます。あいつは元気にしてますか?」

「元気じゃ、数えで10の子供じゃから元気なのは勿論、礼儀正しい良い子じゃよ」

 

 それを聞いて安心した。もう何年も会っていない弟が元気にしているのなら何より、これならネカネに報告しても安心してくれそうだ。

 

「そうじゃ、此処までは木乃香が案内してくれたんじゃったな」

「せやよ、駅で偶然アリスさんに会ってな」

「うむうむ、ありがとうのぅ木乃香や。ほれ、もう授業が始まっている時間じゃ、先生にはワシに呼ばれた事にしておるから、もうお行き」

「ほな、ウチはこれで…アリスさん、またな~」

「うん、ありがとう、木乃香ちゃん」

 

 学園長室から木乃香が立ち去り、室内にはアリスと学園長だけになった途端、室内の雰囲気が変わった。

 弟の勤め先に来た兄と、その弟の雇い主の雰囲気から、魔法使いとしての雰囲気に切り替わり、空気が一変する。

 

「こうして会うのは初めてじゃな、アリス君」

「はい、父がお世話になったようで」

「フォフォフォフォフォ! あの男め、ネギ君といい、アリス君といい、何故あの荒唐無稽な男からこのような良い子が生まれるのかのぅ」

 

 実に愉快そうな口調で学園長は目を細めて笑う。その口調は本当に懐かしいものを思い出して随分と柔らかい。

 

「さて、黄昏の王殿、弟君に会いに来て早々で申し訳ないが…ちと依頼したい事があるのじゃが」

「依頼、ですか…」

「うむ、メガロメセンブリアや関東魔法協会など関係ない、ワシ個人の依頼じゃ」

「心得てますね」

「当然じゃ、君達…二代目・紅き翼がメガロメセンブリアからの依頼は一切受け付けていないのは知っておる。故にワシもワシ個人的な依頼をするだけじゃ」

 

 関東魔法協会会長としてではない、近衛近衛右門一個人としての依頼、どのような依頼になるのか。

 

「ワシの孫、近衛木乃香の護衛を、お主に依頼したい」

 

 それは、孫の心配する祖父としての、本当に個人的な、優しい依頼であった。




次回はご存知の方も居ると思いますが、アリスが麻帆良に暫く留まります。
リメイク前と比べて如何だったか、是非とも感想頂けたら幸いです。
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