【短編】FGO×ブルアカコラボイベント風味 作:サボテン男爵
天にそびえるような黒い巨躯が崩れ落ちる様は、世界で言葉がひとつであった時代に作られたという塔が崩れ落ちる様を連想させた。
「勝った……なんで勝てたんだろう、こんなの相手に。私、ひょっとして自分が凄いんじゃないかって勘違いしそうになるわ」
シナシナと地面にへたり込むセリカに、ノノミが応える。
「いえいえ、セリカちゃんは十分スゴイですよ☆ 皆さん、お疲れ様でした。ホシノ先輩じゃないですけど、しばらくゆっくりお昼寝でもしたいですね」
「うへ~、ノノミちゃん。それじゃあおじさんがいっつもお昼寝してるみたいじゃないのさ」
「……してますね、結構な頻度で」
アヤネが煤けた眼鏡をハンカチでふき取り、今後のことを考えて大きく息を吐く。
「片付け、すごく大変そうですね」
「まあまあ、みんな大きなケガもなくてよかったよ」
「ん、ユメ先輩もナイスタンク」
「ありがとう。戦いは得意じゃないけど、先輩として後輩の盾くらいにはならなきゃね……あっ!? これはマスターさんを揶揄しているわけじゃ……」
「だいじょうぶ、分かっているよ」
アワアワと慌てるユメの横で、シロコが歩き始める。
「だけど――」
動かなくなったビナーの残骸の前でしゃがみ込み、黒いボディをコンコンとノックする。
「思ったより、凶暴じゃなかった」
「そう、ですね。シロコ先輩の言うように、一番硬いマシュさんに攻撃を集中させて、他に対しては流れ弾くらいに……いえ、むしろ射線に入れないよう気を使っていたようにさえ見えました」
立香と共に後方でのサポートに徹していたアヤネは、全体の光景をある程度俯瞰していたのでその光景をはっきりと見ていた。
「その分、マシュさんには負担が集中してしまいましたが……」
「私なら平気です。このとおり!」
盾を横に置き、力こぶを作って見せるマシュに、一同は頬を緩ませながらも「マジで硬いな」と戦慄する。
『華奢に見えても、マシュだっていくつもの特異点と異聞帯を越えてきた猛者だからね。数多の英霊が集うカルデアの中でも、胸を張ってマスターくんのメインサーヴァントを名乗れるさ……おっと、聖杯が顕現するよ!』
ダ・ヴィンチの言葉に沿うように、崩れ去ったビナー*テラーから抜け出した光の粒子が集うように黄金の杯を為す。
「これが、聖杯――」
誰かの呟きと同時に、ビナー*テラーの巨躯から黒が拭いさられ、本来のものである白い姿に戻る。
『ビナーは聖杯の影響で変質していたようだね。マシュ、いつも通り回収作業をよろしく』
「了解です」
地面にへたり込んでいたセリカが立ち上がる。
「これで、全部元通りになるのよね?」
「はい、聖杯を回収すれば、多少のインターバルをおいてアビドス自治区に蔓延した異常は解消されていきます。特異点も修復され、じきに正常な時空に戻るはずです」
「そっか、これで終わり……」
セリカは自分の言葉を反芻するように呟き、こわごわと問いかける。
「――でも、そしたらユメ先輩とも、マシュとも立香とも、もう二度と会えないのよね? 覚えていることすらできないって……」
最後の方は、もはや消え入りそうな声であった。
否定してほしい――そんな願いさえ込められているようであった。
しかしマシュは沈痛な面持ちを浮かべながらも、ハッキリと答える。
「はい――特異点における異常の中には、この時代にいるはずのない私たちの存在も含まれます。特異点内での出来事は全てがなかったことになる訳ではありませんが、ある程度の整合性が合うように修正されます。それにこのキヴォトスは、私たちからすれば極めて特殊な時空・座標。通常の手段では辿り着くことは叶いません。今回の件が終わってしまえば、残念ですが――」
「そ、そのさ。聖杯を回収するの、もう少し遅らせることってできないの? ほら、最初に助けて貰ったお礼も、まだちゃんと出来てないしさ! まだ、案内したいところも一緒にやりたいことだって――」
まくしたてるような言葉を、シロコが遮る。
「セリカ。あんまりマシュたちを困らせたらダメ」
「でもっ、シロコ先輩!」
「セリカちゃん、泣いて――」
「そういうアヤネちゃんだって、目が潤んで……何なのよ、これ。たった数日一緒に過ごしただけなのに――永遠の別れって、こんなに寂しくて悲しいの?」
自分の瞳から零れ落ちる雫を、信じられないという思いで見送るセリカ。
「――お気持ちは、とてもありがたいです。別れがたい気持ちは、私たちにももちろんあります。ですが今回の一件は、まだ未解明の部分があります。聖杯を放置すれば、また新たな異変が起こりかねません」
「……………………やだ」
聞き逃してもおかしくない、溶けるような声だった。
しかしユメが、その声を聞き逃すはずもなく。
「ホシノ、ちゃん? 体、震えて――」
「いやだ」
ホシノは俯きながらもはっきりと告げた。
「正常な時空ってなに? ユメ先輩がいない世界のこと?」
「ユメ先輩はさ、正直頭はあんまりよくない」
「戦っても強くないし、発想もいちいち斜め上だし」
「お人好しで能天気。すぐに悪い大人に騙されて、何度も私が助けにいった」
「でもいくら騙されても、ケロリとした顔でまたすぐに人を信じて」
「呆れたことも、イラついたこともある。もっとちゃんとしてくれって、何度も思った」
「人としては欠点だらけで、頼りない人だったけど――善い人だった」
「あの笑顔に、あの温もりに、あの善性に、あの前向きさに、私は救われた」
「そんな善い人が、さ。砂漠のど真ん中で、誰に看取られることもなく、たった一人で野垂れ死ぬ? そんなヒドイ話が、正しい歴史?」
「――なんて冗談」
吐き捨てるように、溢れだすように、内に溜まった熱が零れ出る。
「ユメ先輩はっ! あんな終わり方をしていい人じゃなかった!!」
初めて見るホシノの激昂に静まり返る後輩たち。
そんな中で、ポツリポツリと続ける。
「立香、マシュ、二人の言っていることはきっと正しい」
「でもね、私は――あの喪失と後悔の日々に戻るくらいなら、間違った人間でいい」
「世界なんて、狂ったままでいい」
「だって今、手を伸ばせばそこに、ユメ先輩がいるんだから――」
突き刺すような慟哭。しかしその表情は、今にも泣きだしそうな子供のそれで――
天を衝く嘆きに、応える声があった。
『よくぞ言った』
「――っ!? 今の声、誰!?」
「聖杯がホシノさんの元に――!!」
「ホシノちゃん!!」
明らかな異変にユメはホシノに駆け寄り――共に巨大な火柱に呑まれた。
「ホシノ先輩!? ユメ先輩!?」
誰かが悲鳴を上げ、ダ・ヴィンチを急ぎ解析を試みる。
『聖杯とユメくんが、ホシノに取り込まれて――!? くっ、魔力量・霊基指数、共に爆発的に増加! ニトクリスの霊基パターンとの類似点を観測! これは、ホルス神が顕現するとでも――』
「いいや――違う」
炎の中から、否定の声が響く。
「私は――我らは、そうだな」
火柱がはじけ、炎を押し固めたような紅いドレスを纏った少女が歩み出る。
「女神アビドス、とでも名乗らせてもらおうか」
体躯としては、ちょうどホシノとユメを足して2で割ったくらいか。
「我らはこの地を新生する者――救う者」
桃色のショートカットに、一房の長い緑が混じる。
「今まで苦労をかけたな、愛しき後輩たちよ」
慈しみの言葉――されど巨大な神性が込められた言霊は、それだけで圧となる。
「我らは今度こそ、成し遂げる」
女神アドビスは、高らかに宣言した。
「私、ホシノ先輩の事何もわかってなかった」
女神アビドスが立ち去った後、調査の為に残ったマシュを除く一同は対策委員会の部室へと戻り、そこで意気消沈していた。
「のんびり屋さんで、昼寝が好きで、うへうへ言ってて、何故か一人称おじさんで……だけどいつも、優しく見守ってくれていた。でも、あんなに思い詰めていたなんて――」
「セリカちゃん……ううん、それは私も同じ。先輩の痛みに気付かず、知ろうともしなかった」
部室に壁に背中を預け、膝を抱えるセリカと、寄り添うように彼女の方に手を添えるアヤネ。
「私は……知っていました」
そうつぶやくノノミは、まるで懺悔する囚人のようであった。
「ユメ先輩に会ったのは今回が初めてですけど、ホシノ先輩の思いの一部くらいは知っていた――はずでした。でも、それこそおこがましかったんでしょうね。知っているつもりで、全然寄り添えていなかった。対策委員会で過ごす内に、少しくらい傷が癒えたはずだなんて、そんな……甘い考えで……」
ポタポタと、涙が落ちる。
「ぐすっ……すみません、今はしっかりしなきゃいけないところなのに」
「――ホシノも、そうだったんだと思うよ」
「え?」
「ノノミは、なんで今しっかりしなきゃって思ったの?」
「それは、今は私とシロコちゃんが一番の先輩で――あっ」
立香の言葉に、ノノミはハッとしたような顔になる。
「ホシノはみんなの中で、ひとりだけ年上の先輩だったから。先輩っていうのは、後輩には強がってみせたいものだから――これ、マシュには内緒にしてね?」
立香が困ったように笑うと、他の皆も釣られるように笑った。
「マシュもこんな先輩をもったんじゃ、さぞかし苦労してるでしょうね。――でも先輩には先輩なりの、後輩には後輩なりの苦労も悩みもあるってことか」
「そうだね、セリカちゃん。私たちにもきっと、先輩としての苦労が分かる日が来る」
「来年、後輩が入ってくれればね。その為にも、さっさと先輩たちを連れ戻してちょっとでもいい学校にしなきゃ」
目に光が戻ったセリカは立ち上がり、己の頬をパァンと叩く。
「メソメソするのは終わり! まずはやるべきことをやろう!」
「――そう、ですね。泣いてる場合じゃなかったです。取りこぼさないためにも、今は立ち上がらなくちゃ」
服の袖で涙をぬぐい、ノノミも大きく頷く。
そのタイミングで部室の扉がガラリと開けられ、マシュが顔を出す。
「皆さん、戻りました……? 私の顔に何かついていますか?」
「ん、何でもない。ナイスタイミング、マシュ。作戦会議をしよう」
『女神アビドスの現在位置ははっきりとしている』
通信越しにダ・ヴィンチの説明が始まり、立体的に表示されたアビドス自治区の地図に光点が表示される。
「随分と砂漠の奥地に入り込んでいますね~」
『あの巨大な魔力反応を隠す気もないようだ』
「でもこんな場所で何を――まあ、行ってみれば分かる話か。それに、何か足が欲しいところね」
「だったらカイザーPMCが置いていった装甲車を使いましょう。修理すれば使えそうなものもありましたから」
「ん、アヤネも目ざとい」
「だったら私も手伝います。簡単な処置のスキルは持っていますので」
アヤネの提案にマシュも頷き、ダ・ヴィンチからも声がかかる。
『分からないところがあったら私に聞いてくれたまえ。そっちに直接レイシフトは出来ないけど、アドバイスくらいなら出来るよ』
「ありがとうございます。頼りにしていますね、ダ・ヴィンチちゃんさん」
「足の方はアヤネちゃん達にお任せするとして、肝心の女神アビドスとどう渡り合うかも問題ですね」
ノノミが難しそうな顔を浮かべる。
「先ほどは、言葉一つで気圧されてしまいました」
『高位の神性を持った相手の言霊だ。委縮しても仕方ないさ』
「――でも、女神アビドス。アレはいったい、誰なんだろう」
シロコの言葉に皆の視線が集まる。
「少なくとも、ホシノ先輩じゃない。それに、ユメ先輩でも。かと言って、見た目通りに二人が合体したからってあんな風になるとも思えない」
皆が確かにと頷く。
「あの時、声がしたわよね? 誰か知らない人の声が――“よくぞ言った”ってさ」
「そう、ですね。女神アビドスの声音自体はホシノ先輩のものでしたけど、声の雰囲気はあの直前に聞こえたものに似ていました」
セリカとノノミが、それぞれシロコの言葉に続き意見を述べる。
『あの時聖杯は、自らホシノの元に向かった。聖杯は万能の願望器だけど、基本的には受動的。聖杯自体が勝手に動くことは――まあなくもないけど』
「あるんだ」
『極めて特殊な事例だから、今回の件の参考にはならないかな』
聖杯に足が生えて高速で走ったり、ジェットで飛んだり、ワープしたりとかはここで話してもあまり意味がないので黙っておいた。
『おそらくだが、あの聖杯には何かが憑りついていた』
代わりに、もっと現実的な推論を告げる。
『そいつが、聖杯の真の所有者だったんだろう』
「つまりアビドスの異変も、ビナーの襲撃も、そいつが画策したってことね!?」
『だね。そして今、聖杯ごとホシノに憑りつき、ユメくんも取り込み、ホルス神の霊基を中核として女神アビドスの霊基を構築したんだろう。……ユメくんの方は、事故だったのかもだけど』
なんせユメから突っ込んでいった形なのだ。
合体事故――のようなものなのだろう。
『そして女神アビドスへの対抗手段だけど、王様たちから提案があるって』
「うじゃうじゃいますね~」
ノノミが双眼鏡をのぞき込みながら述べる。
装甲車で目的の地点まで乗り込んだ一行だが、立ち塞がるエネミー群に阻まれていた。
魔獣、オートマタ、ドローンに加え、数は少ないが神獣たるスフィンクスまで配置されている。
『女神アビドスの魔力反応はあの施設で間違いない』
「いつの間にアビドス砂漠にこんな施設が……」
アヤネが驚きを露わにする。
簡易的なものではなく、かなりしっかりと建てられた大規模な基地。
もっとも重厚かつ頑強であったはずの正面ゲートは、無残に灼け落ちているのだが。
「さっきの様子からして、カイザーの連中でしょ。どうせ」
セリカは不満げに頬を膨らませている。
ここに来るまでの道中、逃げ出してきたカイザーPMCの兵士たちと何度かすれ違っていた。
その事から目の前の施設がカイザーコーポレーションの関連施設であることは、容易に想像することができた。
「ん。噂をすれば影、って言うのかな?」
ケモミミをピクリを動かしたシロコが振り向くと、その先には砂煙を立ち上げながら迫ってくる軍団が目に入る。
先頭のひと際立派な装甲車がアビドスの面々の前で止まり、先日戦ったばかりの相手が降り立った。
「――ふん、またお前たちか。こんな僻地まで、ご苦労なことだ」
カイザーPMCの理事が尊大に告げる。
だがその言葉には以前のように、小馬鹿にするような響きは込められていなかった。
「またってのはこっちの台詞よ! 何をしに――」
「我々の施設だ、あそこは。奪われた以上、取り戻すのは当然の話だろう?」
食ってかかるセリカの言葉を遮り、理事は端的に告げた。
そんな理事に、険しい顔のアヤネが問いかける。
「そもそもあの施設はいったい何なのですか?」
「あるものを採掘するための基地だ」
「まさか石油!? それともレアメタル!」
「どっちも違う。もちろん最近流行りだした胡乱な黄金でもない。敢えて言うなら宝探しだ。――とは言えこんな問答をしに来たのかな? 黒見セリカ」
「うっ、それは……」
「ひとつ、確認したい」
正論だが素直に頷きたくないセリカに代わり、シロコが告げる。
「こっちに手を出すつもりはないってことでいい?」
「先ほども言ったが、基地の奪還に来ただけだ。こちらに攻撃してこない限りは、何もするつもりはない。そちらはそちらで好きにするがいい」
「ん、わかった」
シロコは手短に話を終わらせ、それを見計らったマシュが声を張り上げる。
「あの、理事さん。ありがとうございます!」
「……礼を言われる筋合いはないが、受け取っておいてやろう。ああ、それから別口での客も来ているようだぞ?」
「え?」
理事の言葉が終わるタイミングを見計らっていた訳ではないだろうが、大型の特殊車両が近くで止まり、その中からぞろぞろと生徒たちが降りてくる。
「大変なことになっていると伺いましたので、お節介かとも思いましたが参上した次第ですわ」
先頭に立っているお嬢様然とした少女が黒い片翼を広げ、優雅に微笑みかける。
「美食研究会並びに――」
「放課後スイーツ部、微力ながら力になるよ~」
両部活を代表して、黒舘ハルナと柚鳥ナツが参戦を表明する。
「先日の一件以降、一緒にアビドスグルメの食べ歩きをしていたんですよ。そしたら今回の一件を小耳に挟んだので」
「ま、どこまで力になれるか分からないし、無理するつもりもないけど。あの時のお礼ってことで」
余裕のある笑みを浮かべる鰐渕アカリと仏頂面の杏山カズサが補足をする。
「お師匠様、イズナもまいりましたよ! 早速修業の成果を発揮してみせます、ニンニン!」
ウインクを浮かべるのは百鬼夜行連合の久田イズナ。
アビドスでの活動中、ひょんなことから忍術を伝授した少女だった。
「ううう……レッドウィンターの寒さは堪えるけどこの暑さも辛いです……」
「うわ、スゴイ光景~。不謹慎だけどネタの宝庫!!」
レッドウィンター学園からアビドスへと黄金探し件ネタ探しに訪れていた、知識解放戦線の秋泉モミジと姫木メル。
同人活動に携わるものとして交流をした二人。
「特異現象捜査部のエイミ。来たよ」
アビドスの暑さにまいり自治区内で際どい格好になっていたミレニアムの学生。
口数は少ないながらもやる気を見せている。
「ククク……アタシらもいるぜ?」
「まあ、柴関で奢ってもらったDXセットの礼くらいはしようと思ってな」
「スケバンの皆さんまで――えっと、そちらの方々は? イズナさんのご姉妹ですか?」
最後に降りてきた見知らぬ少女たちにキョトンとしたマシュに、イズナが応える。
「いえ、イズナたちをここまで運んでくださった親切な方々です!」
サングラスをかけた4人の狐耳の少女たちを代表し、黒髪の少女が声を上げる。
「義勇兵だ。義を見てせざるは、というやつだと思ってくれ」
固い言い回しであったが、それを聞いていた他の3人は困った人だという表情を浮かべ、黒髪の少女はその反応を受けて一瞬ムッとした顔をする。
が、すぐにそれを引っ込めて再び声をかけてきた。
「そちらもそちらでやるべきことがあるのだろう? 露払いくらいはさせて貰う。お互い、為すべきことを為そう」
『しかし、本当のその機体でよろしかったのですか?』
「なに、データ取りも終わっている。埃を被らせておくだけならば、精々有効活用するまでだ」
部下からの問いかけに、理事はコックピット内での立ち上げ作業を進める。
『その試作型ゴリアテはパワーこそあるものの、操作性と安定性に難ありとされていたものですが……』
「くどい。私とて現場からの叩き上げだ。この程度のじゃじゃ馬、使いこなしてみせよう」
正式採用型より一回り巨大な鉄巨人が、唸りを上げて立ち上がる。
「総員配置についたな! これより採掘基地奪還作戦を開始する! 学生共は射線に入れず、精々うまく利用してやれ!」
砂漠の奥地を舞台に、女神アビドスの軍団との戦端が開かれた。