転送先はBW2でした。   作:400円

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01話「さよなら現実。こんにちはポケモンの世界」

 ポケットモンスター、縮めてポケモン。

 任天堂社の作り上げた世界でも超有名ブランドのゲームタイトルの一つでジャンルも多岐に渡って存在し、カードや玩具に日用品等々……大人から子供に愛されるコンテンツだ。

 そのポケモンが此処まで有名になったルーツが1995年…正確には1996年の2月にゲームボーイソフトとして発売された「初代」と呼ばれるポケットモンスター赤、緑が当時ブームとなったのがきっかけ。

 それからもポケモンは色んなタイトルを出していき、今となっては世界大会が開かれるほどの人口を誇る。

 

 勿論、ポケモンの世界大会は甘くない。ゲームのハードを越えての「厳選」と呼ばれる作業で選び抜かれた「めざめるパワー」「性格」「個体値」を持つポケモンを引き当てるのには相当の苦労と根気が必要になる。

 その作業時間は数時間で終わるものもあれば一週間もかかる時もあるこの作業をこなすユーザーは専ら「廃人」と呼ばれ、世界大会の出場者は廃人が殆ど。というか県大会の時点で廃人じゃないユーザーがいないのが普通でもあるが。

 そしてこの物語の主人公である俺もまた、その県大会に向けてポケモンを厳選していた…

 

 

 ………………

 

 

「性格不一致ィ…」

 

 画面に映る捕獲したポケモンの性格にガクリ、と項垂れる。心が折れるとめざパをいれない路線なら多少の妥協はするがそれでもキッツい。さっきからスマホの個体値計算アプリと3DSを延々と交互に見ててそろそろ目が疲れてきた。

 因みに現在プレイしているのは2012年頃発売された「ポケットモンスターブラック2」とよばれるポケモン初のナンバリングタイトル。

 前作と舞台は同じでも2年後の設定でフィールドが色々変化した為、前作プレイヤーもまた新しい気持ちで始められる。また前作のラスボスでもあったキャラクターのポケモンが手に入る事もあって、前作プレイヤーへのファンサービスもある事から個人的には前作をプレイしてからこれをプレイすることを推奨している。主人公デザインは男の子は正直前作の方が好みだったりするけど。

 因みに厳選作業は間違いなく「スカーレット・バイオレット」こと通称SVのほうが何十倍もしやすい。此方では下手すれば数日かかる作業も、SVであればものの数時間で終わる。

 では何故旧型でやっているのかと聞かれると、建前でいえば「BW2が好きだから」で本音を言えば「逆張り」の一言で終わる。

 

 

「はぁ……これで何匹目だ…」

 

 軽く百は余裕で越えただろう作業に深い溜息と終わらない厳選作業に悟りを開きつつある俺。こういう時はイーブイ♀6V性格一致のタマゴ作業を思い出して頑張ってる。あれに比べたらまだマシだと思えるから。

 

「やっべ…ボール補充忘れてる……」

 

 マジかよと思いながらも、適当な町へ「そらをとぶ」で移動してポケモンセンターに入る……すると、見慣れないNPCがショップ店員の近くにいた。

 

「…あれ、不思議な贈り物のNPC?たしかBW2の贈り物サービス終わってた筈だよな…」

 

 不思議な贈り物は配信サービスの一種で映画やイベント等で特別配布されるポケモンを受け取るWi-Fiサービスだったのだけれども…ポケモンの世代交代もあって、BW2のWi-Fiサービスは終了した。

 おまけに今プレイしているデータは一度綺麗さっぱりリセットして一から始めたデータなので不思議な贈り物をした時に現れるNPCは絶対に現れない筈…なのに画面には確りと所定の位置に立っている。

 

 バグかな?と思って、万が一に備えセーブを行った後、そのNPCに話しかけた。

 

 

【おめでとうございます!!あなたは見事兄に選ばれました!! 】

「……はぁ?兄って、何の?」

【メイ の お兄ちゃんです!!】

「………うわぁっ!?」

 

 答える筈のないであろう質問にNPCが答え、驚いて3DSを離す。たまたま?と思い恐る恐る画面を覗き込むと、ボタンもタッチパネルも触れてないのに勝手にテキストが進みだした。

 

【私達の世界は今危機に瀕しています。しかし貴方もご存知のこの世界で主人公になる筈のメイには一つの問題がありました】

「……な、な、なんだよ、これ!?」

【それは、……の相手がいなかったことです。それによりメイはプラズマ団にその身を置いてしまい、イッシュ……いや、ポケモンの世界はメチャクチャになりました】

「はぁ!?…そんなストーリー、知らないぞ!?ってか何なんだよこのテキスト!バグにしては出来すぎだろ!?」

【なので、貴方に此方側へ来ていただき、貴方にはメイの……になってほしいのです】

「い、意味がわからねぇ!くそっ!」

 

 段々怖くなってきた俺は3DSの電源ボタンを長押しし、不気味なこの状況にピリオドを打とうとした…なのに、電源は落ちない。

 homeボタンを押しても中断されず、スリープモードにもならない。データ破損覚悟でカードを抜いても、テキストは勝手に進み、やがてよく見た選択肢が現れた。

 

【此方側の世界に来ますか?

 > はい はい】

「……ひっ!?」

 

 ビクッ!と震えた途端、誤ってボタンを押してしまい、聞きなれたSEがスピーカーから出てしまった。

 

「し、しまった!!」

【来てくれますか!ありがとう!】

「ち、ちが……!」

【それでは、貴方の所持してるポケモンを3匹選んでください!一度しか出来ないのでよーくかんがえて下さいね!】

 

 テキストが進むと今度はポケモンの選択画面が現れた。下画面にはボックスに入った俺のポケモンが。ここでもさっきの強制終了させる一連の行動を取ったけど無理だった。

 いっそのこと放棄しようとも思ったけど手以外の身体が重りを付けられたかのように重い。手だけは自由に動くと言うことは、もはや逃がさないと言うことだろうか。

 

「く…や、やってやらぁ!!」

 

 覚悟を決めてポケモンの選択に入る。3枠全てに600族を入れて安定を図ろうと思い、バンギラス、ガブリアス、メタグロスを選択しようとしたら後の2匹が灰色の枠に囲まれた。

 

「600族1匹までかよ…!?」

 

 やむを得ずハチマキテンプレガブリアスを選択。陽気鮫肌の攻撃と素早さ極振りといったテンプレ構成。技も逆鱗と地震といったメジャーなものばかりだけど、こいつには何度も助けられ、BW2では相棒の様な感覚で接していた。また頼むぞと画面のガブリアスに語りかけると、ガブリアスの鳴き声が流れた。

 

 2匹目はイーブイ♀厳選によって獲得したグレイシア。控えめの体力特攻極振り個体。俗にいう嫁ポケというやつで、特に選ばれやすいイーブイ系統の内の1匹。しかし嫁ってだけで弱いのは嫌だという廃人は大体俺と同じ様に更に厳選をする。因みにイーブイの♀の割合は狙ったかのように低いのでそれがまた一段と厳選を難しくしていたりする。

 

 最後の3匹目は悩んだ結果ウォーグルに。

 素早さ的にムクホークの方が良いのだけど、個人的に好きなポケモンだったのでコイツを選んだ。性格は陽気で攻撃と素早さ激戦区の80族である事から素早さの極振り。メインウェポンの岩雪崩とブレイブバードの火力は伊達じゃない事をぜひとも教えてほしい。

 

【それでは、健闘を祈ります!夢と冒険に満ちたポケットモンスターの世界へ!】

「や、やっぱり…!う、うわぁあっ!!?」

 

 ウィンドウが閉じられると、3DSの画面から目映い光が広がって視界が何も見えなくなっていく…意識が途切れる直前に見えたのは、画面の向こうに見える見慣れた部屋の風景だった。

 

 …………

 

 今日はアララギ博士という人の助手さんからポケモンを貰える日。数日前にお母さんからその話を聞いたとき、私は胸が踊った。

 お兄ちゃんのポケモン達を見て、いつか私もお兄ちゃんの様なポケモントレーナーになると意気こんで……その始まりが今日なのだ。

 

「ん……よしっ!」

 

 旅立つ為にお母さんが用意してくれた服を着て、鏡の前で確認……変なとこもなし。少し胸が苦しいかなと思ったけど、それは後で調整するとして…準備が出来た私は隣のお兄ちゃんの部屋へ乗り込んだ。

 いつもなら起きてる筈のお兄ちゃんが珍しく爆睡していて、ベッドで死んだように眠っていた。もしかして、私の旅立ちにドキドキして眠れなかったり……なーんて。

 

「お兄ちゃん…」

「…………」

 

 お兄ちゃんの寝顔をじっと見つめる。整った顔で起きてるときはカッコいいのに、寝顔はとっても幼く見えて可愛い。

 いつも私の事を守ってくれて、かっこよくて強いポケモン達と仲良しで…そんなお兄ちゃんを異性として見るようになったのは…何時からだったのかな。思い出せないけど…お兄ちゃんの事を兄として見れなくなっているのは間違いない。だから無防備な寝顔を見せられると……

 

「お兄ちゃん…起きて?起きないと……悪戯しちゃうよ?ほ、本気だよ……?」

 

 聞こえない程の大きさで呼び掛ける…当然、目は覚まさない。ドキドキと鼓動がはやくなり、お兄ちゃんの唇に自分の唇を……

 

「……ん?うわぁっ!?」

「ひゃあっ!?お、お兄ちゃんっ!」

「め、メイっ!?ほ、本物……!?」

 

 重ねる前にお兄ちゃんが突然目を開き、吃驚して咄嗟に距離をとる。ばくばくと心臓が激しく脈打ったままお兄ちゃんを見つめる。

 お兄ちゃんも吃驚してるのは…当然だよね。いきなり私がいるんだし…うう、ちょっと残念だなぁ。

 

 ………………

 

 

 3DSに飲み込まれ、意識がはっきりしたと思ったら目の前に女の子主人公であるメイがいた。しかも喋った。おまけにおっぱいがイラストよりも大きく見える。

 辺りを見回すと、見慣れない部屋に見たことのないポケモングッズ…俺と思わしき少年と女の子の写真等々…見たことない尽くしの部屋。デスクには3つのモンスターボールが。

 

「本当に、来てしまったんだな…」

「……うん。お兄ちゃん」

「な、なんだ?(め、メイにお兄ちゃんって呼ばれたー……!)」

「その、昨日の約束……覚えてる?」

「…え?」

 

 き、昨日の約束とはなんだろうか。昨日も俺はポケモン厳選していたのでそんなイベントは……というかこのイベント自体初なので対処法に困っているのが現状なのだけど。とりあえず寝惚けてる事にして乗り切ってみよう。

 

「悪い…寝惚けてるみたいだ」

「もぅ……一緒に旅してくれるって約束」

「…ああ、そうだったな。勿論だとも」

「ホント?一緒に、いてくれる?」

「約束したしな。さて、俺も着替えるか」

「あ…わ、私、外で待ってるね!」

 

 顔を赤くして部屋を出ていくメイ。その途端に張り詰めていた気を緩め、事の重大さを再認識する。夢かと思いつねってみるも痛みを感じ、頭を抱える。

 

(マジで来たよ…BW2の世界…)

 

 しかも自分が本当にメイの兄になっている。あとメイの視線が兄妹のソレとはまた別な感じがした。何というかギャルゲー特有の恋する乙女の目をしていた……気がする。

 リアルの恋人はゲームだったからこういうのには疎いのが悔しいが、ギャルゲーも一応経験してるから多分近親に対しての禁断の過ちを犯している気がしてならない。

 しかも二人旅の約束とはいよいよ持って怪しい関係としか思えない。過去に何があったのか知りたいが、下手に聞けばメイに不審な目でみられかねない。

 

(とりあえず、兄妹関係は置いとこう……で、あのボールの中には…)

 

 試しにボールを一つとり、投げるとグレイシアが現れた。主の俺をみてふりふりと尻尾を嬉しそうに振っている。

 

「きゅーん」

「やっぱりか……という事はあと2つには」

 

 ガブリアス、ウォーグルが其々に入っていると…どれも先程選出した俺のポケモン達。ポケモンの世界へ来てしまった事を確定付けてしまい、ガクリと項垂れた。

 どうやって帰るかとか、どうすればいいのかとか色々な悩みが渦巻く。それを見かねたのか、グレイシアがてしてしと脛を叩く。

 

「慰めてくれるのか?」

「きゅー!」

「ははは…ありがとな、グレイシア」

 

 撫でてあげると嬉しそうに尻尾をふりふり。グレイシアを連れてきてよかったと感じた瞬間だった。連れてこなかったら心が折れてしまってたかもしれない。

 

「……いつまでもクヨクヨは、駄目だよな」

「きゅぅ、きゅーきゅー!」

 

 元気付けるように鳴くグレイシアに励まされ、心を入れ換えて覚悟を決める。何をするべきかは分からないけど、やるべき事はこのイッシュをBW2と同じシナリオに納める事。

 その条件としてメイが何らかの鍵を握っているみたいだけど…分からない以上メイとの旅で掴んでいくしかない。

 

「お、お兄ちゃん……もう、大丈夫かな?」

「裸をみたいならいいぞ」

「ふぇっ!?ご、ごめんなさいっ!」

「…くくっ、よし!着替えるか!」

「きゅう!」

 

 グレイシアのおかげでからかう位の元気を取り戻し、クローゼットの戸に手をかける。

 開くとそこには数着の服が掛けられているだけでスペースを持て余していた。勿体ないと思いながらも色々みていると、BW主人公のトウヤが着ていた服を見つけた。何であるのかは分からないけど、丁度いいからトウヤの服を着て扉を開く。

 

「悪い、待たせたな」

「ううん、平気だよ……カッコいいなぁ」

「そうか?…ありがとな」

「えへへ…お兄ちゃんなら何でも似合うよ」

「ホントか?」

「ホントだもん」

 

 真っ直ぐに伝えてきたメイに嬉しくて撫で撫でしているとメイの母親から「いちゃついてないではやく行け」と言われた。

 別にいちゃついてないつもりだったのだけど…他人からみたらそう見えたのだろう。メイはそれを指摘されて顔を赤くしてもじもじ…俺を見ては目が合うと逸らすというあからさまな態度になっていた。

 

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