諸葛亮孔明は紅茶を嗜む   作:白石基山

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3.諸葛亮孔明、董卓や袁紹を茶友達とする

 董卓仲穎は何進から何故か無理矢理洛陽に招かれて、何進やらの盾にされた挙句に圧倒的軍事力を勝手にビビられて相国にまで上り詰めてしまった。洛陽の宦官は皆言うことを聞かずにほとんど孤立した董卓は、寝ずに頑張って働きはしたものの、無理が祟って表情筋は死んだ。

 

 異民族である姜族相手にバリバリ戦って名を上げ、益州牧まで上り詰めた超が付く武闘派と思われている董卓仲穎こと月ちゃん的には、実際は売られた喧嘩を買わざるを得ない状況に追い込まれたら、仲間全員「月の為なら!」と張り切って勝ち、何度も喧嘩を売られ何度も勝っちゃったみたいなノリである。

 

 んで本当は涼州で大人しくしていたいのに益州牧にさせられて、ついでになんか漢王朝から危険人物扱いされ「益州牧にする代わりに軍没収するから」と言われ、周りが切れて月ちゃんを担いで軍そのまままるごと益州入りして「文句あるなら来いよ、歓迎するぞコラ」的なメッセージを周りが勝手に送りつけて、軍没収を有耶無耶にした経緯もあり宦官からはめちゃくちゃ嫌われているし、超が付くほどビビられているので本当に孤立していた。

 

 そんなこんなで三十日程徹夜して頭がハイになった月ちゃんの親友、賈詡こと詠ちゃんが「そうよ! お金が無いなら刷れば良いじゃない!」と知能が死んだ頭で生み出した迷案を言い出したことから、ビビるほど粗悪、水に浮くほど軽いと言われる粗悪、画像検索したら笑える(笑えない)董卓五銖銭、所謂董卓銭とかいうゴミ通貨が誕生した。

 

 そして史実でも董卓が行った最悪の失策である董卓銭が発端となるハイパーインフレがここはジンバブエか? というレベルで起こす筈だった。だったのだが。

 

 その董卓銭、あまり流通しなかった。そもそもである。この時代、まともな良銭は金持ちしか持たず、一般庶民が扱っていたほとんどは悪銭である。つまり董卓銭のせいで貨幣価値が暴落しようがそもそも庶民が扱っていたのは悪銭。本来、ダメージが入るのは諸侯や豪族といった金持ち達である。そんで金持ちに大ダメージが入った挙句、ブチギレた袁家を筆頭に反董卓連合は起こる筈だったが。

 

 

「えーい☆」

 

 

 孔明、軍師ビームで鋳造所を破壊する。残骸は無双乱舞で吹き飛ばす。

 

 

「国庫に金が無い? これあげます。うちで発行してる茶券です。いま凄く高く売れます。貨幣価値が落ちるとそれの価値も暴落するんで今のうちに売り抜けて下さいね」

 

 

 何進からの紹介で董卓達の唯一と言ってもいい頼れる存在となった諸葛亮孔明その人が国の財政を立て直す。

 

 

「流通しちゃった董卓銭、諸葛茶家にお持ち下さーい! 本来の価値の十倍扱いでウチの美味しい饅頭と引き換えちゃいまーす!」

 

 

 その結果から言うと、諸葛茶家は死に体になった。諸葛茶家の財政は破綻寸前まで行った。茶券の儲け、胴元である諸葛茶家は大層稼いでいたが全てと言っていいほど吹き飛んだ。

 だが、ただ一つの商家が死に体となっただげで、国の財政は死を免れた。

 そうして何進の肉屋が潰れたのだ。

 

 

「なんで???」

「何進さんは偉いですね。董卓さんを中央に招いた責任を自ら取って……。ええ、とても立派です。まあ看板だけ残して休業中だったお肉屋さんですしそんなに痛くはないでしょうけど」 

「いやいやいやいや。孔明どうしてこうなった?」

「何進さんは国の為に尽くしたという名を残せた。被害はほとんど私の懐のみ。美味しいくらいに思っておけばいいんですよ」

「うーん……。それもそうか?」

 

 

 表向き、なんか尽力して国を救ったことになった何進はともかく、全てを理解している董卓勢は孔明に洒落にならないくらい大きな貸しが出来た。

 

 そんな中。

 

 全てを極めた董卓は暴虐の限りを尽くしたらしい。洛陽の富豪を襲って金品を奪ったらしいし、村祭りに参加していた農民を皆殺しにしたらしいし、董卓の兵が毎夜のごとく女官を凌辱したらしい。他にも他人の妻を寝取ろうとして批判されたら死ぬまで殴打するなど悪道非道を重ねたとかなんとかかんとか。

 

 と言った噂が国中で立った。

 

 董卓銭は国庫にまじで金が無かった苦肉というか自殺行為なのは確かだが、董卓は実は民から税を徴収した記録がない。ほんとに悪逆非道かお前?

 

 んでもって董卓許すまじ、と起こった反董卓連合の勢いはほとんどない。多分ウソだろうなーというのを皆分かっていた。ただ、董卓勢が脳が死んだまま働いて宦官が誰も言うこと聞かない状態の漢王朝による政策は、それはもう酷い状態なのは事実としてあったので、「董卓マジぶっ殺す連合」から「董卓お前失策ひどいから降りて田舎に引っ込め連合」へ勢いが落ちた。

 

 董卓側からすると「いやマジで田舎に帰りたいけど、ちょっと陛下が離してくれないから負けて田舎に帰る言い訳が欲しい。宜しく」といった、なんやこの戦ゴミ過ぎという後世から評価される戦が起こった。

 

 双方、出来るだけ被害を出さない為に合図して明後日の方向に弓を撃ってからお互いに矢を回収し、董卓側が「うわー負けたー(棒読み)」と言ってどんどん洛陽側に撤収していく。

 

 のちに諸葛茶家が双方から糸を引いていたということが発覚し「茶番」の語源となった戦争だとかなんとかかんとか。(民明書房より)

 

 

 いつもの如く、勝手に何処かに行って帰ってきた孔明は反董卓連合に参加した劉備義勇軍に合流した。

 

 

「おーっほっほっほ! 孔明さん、貴女の言うとおり、適当に弓を引くだけで相手が引いていきますわ!」

「袁紹さんの威光が眩しすぎるので董卓さん達が怖がっているんですよ」

「おーっほっほっほ! それで孔明さん、貴女の諸葛茶家、大丈夫ですの? 貴女のおかげで儲けさせて貰ってますから少しは助けてあげても良くってよ?」

「ふふ、まあなんとか大丈夫です。それもこれも贔屓にしてくれる袁紹さんのお陰ですね」

「そうでしょうそうでしょう! それで孔明さん、いつわたくしの軍師になるんですの?」

「私はそんな器ではありませんので。商売の片手間に義勇軍のお手伝いをやってるくらいが丁度良いんです。名門袁家の袁紹さんと、たまにお茶を共にさせて頂いているだけで充分ですよ」

「あら、とても謙虚なこと。困ったことがあったらいつでもおっしゃって下さいな」

「その時は頼りにさせて貰いますね」

 

 

 早速、単独で袁紹という太客の元へ向かった孔明は袁紹を見事に誑かした。戦時の行動については董卓側と孔明は打ち合わせ済みである。孔明からすれば反董卓連合の盟主である袁紹をコントロールするだけの簡単な仕事だ。

 

 

「……天才か」

 

 

 曹操孟徳。幼き頃から天才と言われた彼女をして、孔明の器の底が見えなかった。

 時代の中心は間違いなく孔明だ。孔明がどこまで先を見通せているのか文武に優れた完璧超人である曹操こと華琳の目をもってしても分かるものではない。

 

 諸葛茶家による茶券の取引はあまりに革新的だった。いち早く気付き、私財を投げ打って茶券に投資した華琳は大きな利益を得た。それは劉備義勇軍も孔明が離れている間も士元の指示で同じように大きな資産を形成したし、孫策も周瑜の指示で稼いだという話である。豪運の持ち主である袁紹には孔明自ら話を持ち掛け儲けた。それは中華一の名家といえる袁家と縁を繋ぐ利を優先した、くらいに思っていた。

 

 華琳は現状も見る。全てが孔明の手のひらの上ではないか、そう判断するしかなかった。

 

 自らの私財を投げ滅びる寸前だった漢王朝を救ったのは間違いなく孔明だった。地位もない孔明が何故漢王朝を救ったのかは分からない。彼女はそれによって地位や名誉を得たわけでもない。

 だが、今この大陸で起こっている現象全てをコントロールしているのは孔明だ。

 

 

 黄巾の乱において、反乱軍の討伐で劉備義勇軍と曹操は共闘し、一時的に華琳が義勇軍の面倒を見ていた時期がある。それは関羽の見事な武勇と美しさに惹かれてのことであった。筆頭軍師である士元の指揮も、それは見事なもので関羽や士元を欲しい、と華琳は思ったものだ。

 

 いつからか、華琳は気付いた。義勇軍の中心は間違いなく劉備である。だが動かしているのは孔明だった。それがあの諸葛茶家の諸葛亮孔明と知って華琳は孔明に興味を持った。何故諸葛茶家を一代で築いた人物が小さな義勇軍の軍師をしているのか。興味を持った華琳は孔明を知ろうとした。

 

 分からなかった。

 

 孔明と話しても分からなかった。推測も出来なかった。まるで複数名の偉人が孔明の中に同居しているのではという錯覚さえ芽生えた。そして孔明と話せば話すほど、自身の深淵を覗かれている、というより既に知られている。そんな気分になった。

 

 

「私は曹操さんを応援してますよ」

「あら、孔明。それなら私の元へ来ない?」

「私は劉備玄徳という人の甘い思想が好きなんですよ」

「そうかしら。なんとなくだけど、貴女は友に付き合っているだけ、ではないのかしら?」

「それもありますが、それだけではありませんよ」

「……『伏龍』と呼ばれていた貴女が未だ雲に隠れている。その才能を無為に消費するべきではないわ。私の元へ来なさい孔明」

「ふふふ、ありがとうございます。ですが私は曹操さんが思っているような人物ではないと思いますよ? あ、そうだ。これを差し上げますね」

「……これは?」

「炉気素忍という頭痛薬です。酷い時に飲んでくださいね」

 

 

 華琳は重度の頭痛持ちである。が、この時は親しい人間以外には言ってはいなかった。そんな華琳に華陀でも治せない上に漢ルートだと出てもこないかも知れないので孔明が用意した頭痛薬。これが華琳に効いた。様々な治療を試したことのある華琳は大層驚き、孔明を問い詰めたが孔明は一言。

 

 

「計算通りです」

 

 

 というだけだった。

 反董卓連合にて再び孔明と出会った華琳は孔明に聞く。

 

 

「どこまで、貴女は見通しているのかしら」

「見えているものだけ、としか」

 

 

 孔明ははぐらかす。孔明の見えているものが華琳には見えない。華琳にとって初めての出来事である。

 

 

「……こんな馬鹿な戦も?」

「死者が出ない素晴らしい戦ですね」

 

 

 もう全て仕込みは終わっている。華琳にはそう聞こえた。だからあの時の孔明の一言が華琳の心に大きく突き刺さった。

 

 

「計算通りです」




読んでくれる人がいるみたいなので続くかも。
少しでも楽しんでくれる人がいるなら嬉しいので……。感想も頂けると大変嬉しい、、、
執筆モチベ回復の為にリハビリ気分で書いてるので軽い気持ちで読んで欲しいです。

あとクリスマスはクソ。
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