「……孔明、色々助かったわ」
「いえいえこれくらい」
「本当に感謝しています……」
「こんなに美味しい紅茶を淹れてもらえただけでお釣りがきますよ」
「ふふ、淹れ方を教えてくれたのは孔明ちゃんですけどね」
戦が始まる少し前。洛陽禁城にてこの世界一メイドが似合う月こと董卓と、董卓の懐刀である賈詡文和こと詠ちゃんと孔明は落ち着いた時間を過ごしていた。紅茶の淹れ方を董卓に教え、完璧に孔明の所作をトレースしてみせた董卓を見て、やはりメイドの才能があるんだなとしみじみ思っていた。
「……ただ、洛陽を離れても董卓軍は戦が続くことにはなってしまいますが」
「「ここにいるよりマシ(です)(よ!)」」
「……ですか」
孔明はティーカップ内の水面を見つめながら、本当に董卓達は嫌がらせされまくってたんだなあと考え、少しティーカップを揺らす。茶の香りが立ち、孔明の鼻腔を刺激する。
「ですが宜しいですか? 両陛下までお任せしても。負担が増すだけかと思いますが」
「ここに残って頂くわけにはいきませんから……」
「それより孔明こそ良いの? 私達に私心があれば陛下を手中に置いておく私達こそ錦の旗を掲げることが出来るのよ?」
「構いませんよ。些細なことです」
些細なこと、と孔明は言ってのけた。
その一言は董卓と賈詡に、孔明が見ている世界は明確に違うことを分からせるに充分だった。だからこそ、二人は孔明に賭けたのだと改めて思わされたのだった。
四世三公。四世代に渡り漢王朝のスリートップともいえるほどの役職に就き続けたスーパーエリート一族、名門中の名門汝南袁氏の頭領たる袁紹は、恋姫においてとてもアホな感じで描かれてるが曹操統治下の住民に「袁紹様の頃は良かったな」と言わしめるくらい、住んでいる人にとって実は素晴らしい統治者であり人材も財力もあらゆる方面のコネも頭抜けた存在である。
こんなんもうアホにするしかないやんってなるのも頷けるスペックの袁紹、織田信長の出世戦である桶狭間で敗北し、近年再評価されている今川義元のように曹操の出世戦である官渡の戦いで内輪のゴタゴタによる奇跡の大敗北をした袁紹もいつか部分的でも再評価さ……いや宦官虐殺しまくったりしてるから無理か。
話はそれまくったが、董卓が「負けました。涼州に帰るので後はよろしくお願いします」と、洛陽からまるで事前に準備が完了していたかのように即座に撤退した。さあいよいよ反董卓連合が洛陽に乗り込んで舵取りやら美味しいとこ寄越せやとわいわいやっている所に一報。十常侍の張讓と名乗った誰かが帝姉妹(ついでに何進と何太后)を拉致して行方不明に。え、恋姫に張讓いたかって? 姿は幼女だったらしいよ。誰だろうねほんと。
「姐様に言われてきた馬岱っていいまーす。諸葛亮さんで合ってますか?」
「はい、私が諸葛亮です。よろしくね?」
「よろしくお願いしまーす。で、姉様から諸葛亮さんが私を指名したって聞いたんですけど本当ですか?」
「そうですよ。涼州軍が州に戻る際に積荷を運んで頂きたくて」
「……ちなみに中身は?」
「内緒です」
「あ、コレ見ちゃいけないやつだ。……でも内緒って言っても勝手に中見られちゃうかも知れないよー? 見られても分からないでしょ?」
「見ると不幸になりますよ? それに見ちゃいけないってもう認識されてるようなので安心してます」
「あー……、姉様だったら中身確かめちゃうかもしれないから蒲公英に。って諸葛亮さん蒲公英のこと知らないよね? なんで蒲公英に?」
「内緒です♪」
「……ちょっと怖いかなー」
「あ、でもたまに食料を入れてくださいね」
「それもう人だって言ってるよね!? っていうかいま起こってること考えるともうそれ答え」
「馬岱さん? 知らないほうが涼州にとっても良いと思いますよ?」
「……積荷、運ぶだけだからね?」
「ええ、助かります。途中で董卓軍の方が報酬と引き換えに引き取りにくるので渡して下さい。それとこれ、張三姉妹のらいぶ券です」
「え!? いいの!? よーし蒲公英頑張っちゃうぞー!」
さてこれに慌てた諸侯、急ぎ洛陽に乗り込み張讓大捜索(もちろん涼州送りされているので見つからず)。とくに権威に拘る袁紹と、恋姫ではイメージないけど実は漢王朝に厚い忠義を持つ曹操らが特に真剣に探す。史実でも献帝を廃さず、何なら娘三人を嫁がせた漢の忠臣たる曹操だからそりゃあ真剣である。帝を廃して魏を建国したの曹操が死んで即座に動いたムスッコだからね。で、そんな中で目の前をすたたたたーと走っていた幼女が落とした物を拾ったら玉璽でしたという、拾った孫策も「え、私に何をさせる気?」とドン引きな出来事があったりも裏では起こったりした。不思議だねー。
結局、大混乱で締まらない中、十常侍ら宦官勢力にも顔が利き、というかそんな毒虫共の扱いにも四世代に渡り長けたノウハウを持つ袁紹が洛陽を取った(押し付けられたともいう)。史実なら虐殺タイムが始まるがこの恋姫袁紹だからそれはないのだ。飴と鞭をちゃんと使い分けると思われる。
ここからの劉備軍の、曹操の下に付いたり袁紹の下に付いたりどっかに転がり込んだり乗っ取ったりハチャメチャしだすのだが、基本的に龐統士元に任せれば良いと孔明は考えていた。
孔明は今、大変忙しい。異民族対策である。
『烏丸』、『鮮卑』は公孫瓚の元へ居た時点で交易を結び友好を築いた。『氐』も洛陽に滞在した際の董卓から馬騰という伝手を頼りに友好を築きつつある。『羌』はもともとバチバチにやり合っていた董卓軍を涼州に戻したので、董卓軍がある程度削った後に、馬超の一族に羌族の者がいるので馬超が仲裁に入ることとなっている。
『南蛮』は……のちになんとでもなるというかこの世界の『南蛮』は非常に可愛いのでとりあえず良いとして、最大の問題は紀元前の周の時代からの宿敵である『匈奴』だ。孔明が今現在に裏で対処している問題がそれである。つまり恋姫における全勢力のエンディングにおける最大の問題である異民族問題を三国時代になる前に全部なんとかしとこうと考えたのだ。
『匈奴』については秦の始皇帝が対匈奴の為に万里の長城(現在と違い騎馬が乗り越えることが出来ない土塁のようなもの)を築くなど昔から匈奴には苦慮しており、漢王朝を立てた劉邦は大敗北の末に屈辱的な和平を結ばされたり、その後に武帝がバチバチにやりあって契約はなんとかするも財政が死んだりするなど碌なことがないのだ。
史実だと勝手に三分割して最終的に曹操に膝を折るのだが、恋姫だとシナリオ次第で異民族軍団となり百万単位で攻めてきて「私たちの戦いはこれからだ!」展開になるので洒落にならない。モンゴル帝国ちゃうねんぞ。時期が千百年くらい早すぎる。この時期の中華の人口考えてもろて。
なので孔明の取った行動は一つ。
異民族に異民族をぶつける、「うるせー異民族ぶつけんぞコラ」という画期的な解決策である。
孔明が異民族との交易に使ったのは大量に保有するゴミ、董卓銭だ。同じ貨幣を文化として浸透させることから始めた。ゴミ使ってどうすんのって? 粗悪であろうが一応は銅だもの。この時代の戦には必需品である。武器も防具も多くは銅製である。貨幣を紐で束ねて銅としての重量で取引をした。それにより相手の交易品に対して、貨幣何枚分の価値があると分かりやすく示した。
そして最初に甘い汁を吸わせてから、あっちの人たちのほうが安く売ってくれたのになー。チラチラ、と口八丁で丸め込む、競わせるなんてのはとても簡単だった。そこから終いには何故か異民族をまるで自身の戦力として扱えるようになるのが孔明クオリティである。
なので後は他の異民族まとめて『匈奴』にぶつけましょうねーというのが今現在、孔明が行っていることである。
忙しく動き回る孔明は、朱里は気付かなかった。
朱里の動きをなんとなくは知る雛里がその必要性を理解しつつも、何故朱里ちゃんは我らが主である劉備玄徳を支えてくれないのか不満を溜めつつあることを。
忙しくて中々書けない……
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【完結】真・誤解†夢想-革命?- 蒼天の覇王
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