のんのんびより ― ある田舎男子の日常 ― 【ばけーしょん編更新中】   作:NIZI

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アニメ一期七話です。ほぼ全編よしお視点一人称。全体的にれんげ回みたいになりました。

ウサギガニゲテル! アラホント!


第9話 ウサギにいっぱいくわされた

 九月に入ったばかりの朝の空気は、夏の名残の湿気を纏って、肌にまとわりつくように重かった。

 その中でオレは、自転車を押しながら長い坂道をゆっくり登っていた。

 

「よっくん何してんのさ! 早く早く!!」

 

 すぐ近くでバタバタと必死に自転車を漕いでいくのは、寝癖のついた髪をそのままにした幼馴染――越谷夏海だ。

 オレたちは揃って寝坊し、始業時間に間に合うバスに乗り遅れてしまった。

 ひか姉曰く東京のバスは十分刻みで走ってるようだが、こんな田舎では二時間に一本が現実だ。

 

 その結果――二学期最初の日なのに、自転車登校である。

 

「この坂長いし、最初から押してった方が体力温存できるよ」

「でもこのままじゃ遅刻しちゃうじゃん!」

「どのみちもう遅刻は確定なんだし、理由の一つでも考えた方が――」

「まだ急げば間に合うかもしれないのに! もういい! 置いてくから!!」

 

 なっちゃんは立ちながら根性だけでペダルを踏み込み、坂をぐいぐい登っていく。

 オレを置き去りにしてどんどん離れていく後ろ姿。

 その必死さといったら、もう……。

 

 ――もうちょっと……。もうちょい前へ乗り出して……。

 よし、その姿勢……、見え……。

 

 水色、確認。

 ありがたや、ありがたや……。

 

「もうダメ……進まない……。誰だよ! こんな坂作ったの!!」

 

 とうとう止まり、なっちゃんは自転車を降りてしまった。

 うむ、残念。でも朝からいいもの見せてもらえたな。

 

「はぁ~……もう押して行こう……。よっくん? なんで頭下げてんの?」

「……ちょっとお礼をね」

 

 ありがとうなっちゃん。君のおかげで早くも今日は幸福な一日になった。

 

 

 

 

 学校に着いたオレ達は、自転車を停めて全速力で校舎へ。

 時計を見たら……はい、一時間目は完全に始まっている。遅刻確定。

 

 なっちゃんは身だしなみなんてお構いなしに、勢いよく教室の扉をバーンと開いた。

 

「すいません寝坊しました! でもウチが悪いんじゃないんです!起こしてくれなかった姉ちゃんが悪いんです!!」

「これ、小鞠ちゃんの監督不行届きですよね! 先生!」

 もはや言い訳出来ないので、オレもウケ狙いで便乗するが。

 

「あれ? 先生は?」

「今日は遅刻してるみたいです」

「姉々は布団の中で“あと五分だけ”を一時間以上続けてたので放っておきました」

「なんだそりゃ……」

「何回も起こしてたのに全然起きなかったのん……」

「そりゃ起きない先生が悪いよ。しゃあない先生だねぇ」

 

 まさかの先生まで寝坊。あまりの拍子抜けっぷりに、オレ達は気が抜けて席に座った。

 

「姉さん! おはようございます!」

「小鞠ちゃん! 今日も可愛いねぇ!」

「そろいもそろって、なんかムカつくな!」

 

 小鞠ちゃん、どうどう……、怒ってると可愛い顔が台無しだぞ。

 

 

 

 

「ねぇ、先生いないって事は、来るまで外で遊んでて良いのかな?」

「今は一応授業中なんだから、教室で大人しくしていなよ」

「ちっ、真面目ちゃんめ……」

 越谷姉妹のそんなやり取りが聞こえてくる。

 

 一時間目は国語だけど――先生がいないんじゃ、授業のしようもない。

 オレは受験生だし、ひか姉から貰った過去問でも進めるか。

 

「お、蛍、あやとりしてるんだ」

「はい、家庭科で使った毛糸が余ったのでオリジナルで猫を作ってみたんですけど……」

「おお! オリジナルとか作れるんだ!」

「ウチもあやとりするん!」

「ウチも暇だし、しようかな……」

「あ、毛糸なら沢山あるのでどうぞ」

 

 女子達の間ではあやとりが始まった。卓の方を見ると、デパートで買ったらしきラノベを読んでいた。

 オレ以外見事に自由時間を満喫していてうらやましいが、まだ志望校の合格ラインに届いてないオレは時間を無駄には出来ない。

 

 ……決してあやとりが得意じゃないから会話に参加しないわけじゃないからな……

 

 

 

 

 しばらく黙々と解いて、間違えたところを解説で復習して……

 ふぅ、ちょっと休憩……と顔を上げたら。

 

 ――時計の針が、"12"を指していた。

 

 周りの声が聞こえないほど没頭していたらしい。

 教室を見渡すと、女子達はイスを寄せて机を囲み、今度は粘土をこねている。

 

 そして卓は……平らに伸ばした粘土の前で、ショックを受けたように項垂れていた。

 一体何があった。絶対何か面白い事があった奴じゃん! 気になるじゃんか……。くそっ! 完全に見逃した……!

 

 というか、もうすぐ十二時になる。授業はどうした授業は!

 そう思っていたところで、勢いよく教室のドアが開いた。

 

「ごめーん、先生寝坊しちゃって! 今から授業始めるよ! ……って、もうお昼休みの時間だねぇ」

 

 先生は悪びれもせず、教卓に置いてある鉄琴をチーンと鳴らして、そのまま普通に昼休みを開始させた。

 大遅刻したにも関わらず、これっぽちも自責の念を見せない担任の姿に、さすがの生徒一同も言葉を失うのであった。

 

 

 

 

 

 

 放課後の教室。一穂は教卓の前に立ち、まとめたゴミ袋を足元に置いたまま、間の抜けた声を上げた。

 

「――というわけで、誰か帰る前にこのゴミ捨ててきてくれませんか?」

「ウチ、今から釣り行くのでパス」

 ドアの前で鞄を肩にかけていた夏海は、振り向きもせず即答する。

 

「お早い拒否やねぇ」

「焼却炉使う時は、かず姉がやるって言ってたじゃん」

「そうだったっけ? しゃあないなぁ……チャッチャとやって帰りますかねぇ」

 一穂は観念したようにゴミ袋を引きずり、教室を後にした。

 

 

 

 一方その頃。

 

 オレはれんげに誘われて、ウサギとにわとりのエサが入ったバケツを持ち、二人でウサギ小屋への道を歩いていた。

 

「うーさぎー小屋ー♪ うっさぎ小屋ー♪」

 

 れんげは跳ねるような足取りで進んでいく。

 

「おっ世話しましょー♪ こっとりっさん♪」

「おー世話しましょっ♪ うっさぎっさんっ♪」

「きれいにけづくろい♪ いったしましょー♪」

 

 身振り手振りまでつけて、ノリノリだ。見ていて微笑ましい。

 ――と思った次の瞬間。

 

「そーしてまっとめって♪ ダイナマイッ!!」

 急にヘッドスライディングをした。

 

 ――ドンッ! ズササーッ!

 

 宮内れんげ選手。三メートル八十センチ……世界記録です……って、そうじゃなくて!

 

「膝……やっちまいました……」

「大丈夫か!? どうした急に……」

「ウサギ小屋に行くと思ったら、ついテンションあげあげしてしまいました……」

「……本当に好きだな、動物の世話」

 庭に住み着いたタヌキに、夏休み前のカニ、少し前にはカブトエビを捕まえて自ら当番に名乗り出ている。

 れんげは「週末はウサギ小屋に行くのが趣味」と真顔で言うくらいの動物好きだ。

 

 そんな話をしながら小屋に着き、鍵を開けようとした。――その時だった。

 

 ――ヒョコ。

 

「……ん?」

 

 小屋の外に、なぜかウサギがいる。

 

「ウサギが外に!?」

 

 近くを見ると、地面に穴。まさか中から掘って逃げたのか……すげぇな。

 ――感心してる場合じゃない。

 

 ウサギは一瞬こちらを見たかと思うと、あっという間に逃げて見えなくなった。

 

「よっくん、ウサギを普通に捕まえるのは難しいのん! そんな時は、こうして……」

 れんげはバケツからとうもろこしを取り出し、地面にぽんぽんと置いていく。

 ウサギ小屋へ向かう道筋になるように。

 

「これで良し! 小屋まで来たら、もろこしより好物のにんじんで釣りますん!」

「なるほど……それで小屋に入った所で戸を閉めるわけか。考えたな……」

 

 追いかけても無理だ。足の速さが違う。

 オレは、れんげの作戦を信じて小屋の中に隠れて待つしかなかった。

 

 しばらくして――。

 

 もろこしに誘われるように、ウサギが小屋の前に現れた。

 

「おいでー……おいでー……こっちに来たら、にんじんいっぱい食べられるのん」

 

 れんげはしゃがみ込み、両手のにんじんを見せながら、優しく呼びかける。

 

「こっちにおいでー……」

 ウサギと目線を合わせ、根気よく――。

 

 ピョンッ!

 ドン!

 バタンッ!!

 

「……あ」

 

 突然ウサギが跳ね、戸に体当たりしたかと思えば、その衝撃で、戸が閉まった。

 ウサギは小屋の中に入らず、そのまま去っていった。

 

「ウサギににんじんいっぱい食わせるどころか……ウサギに一杯食わされてしまいました……」

「うまい! 座布団一枚!」

「えへへ……」

 

 ――ってやってる場合か!!

 

「ドア開かねぇ!? 今の衝撃で外の鍵閉まってんじゃん! 出れねぇじゃん!!」

 オレたちは二人仲良く小屋の中に閉じ込められた。どうしてこうなった!?

 

「確か鍵の場所はあそこら辺だったよな……だったらこの近くから手を出せば……」

 

 駄目だ。金網の目が細かすぎて指一本通らない。

 

「おマヌケうさぎに見せかけて、最初からこれが狙いだったとは……中々やりおる……」

「言ってる場合か! 誰も来なかったら、オレ達閉じ込められっぱなしだぞ……!」

 

 既に放課後だ。もう生徒も先生もいない。

 ここは校舎から少し離れているし、誰にも行き先を言っていない。

 今日は金曜日。次の飼育当番が来るのは、土日を挟んで三日後――。

 

 本気で、マズい。

 

「大丈夫! 三日くらいなら、エサ用の野菜がいっぱいあるのん!」

「しなしなじゃねぇかソレ……」

 

「それに、にわとりの卵もあるのん!」

 

 ――ゴケエエェッ!!!

 

「にわとりさん卵取られて、めちゃくちゃキレたように鳴いてんだけど!?」

 

「時々、半分くらいの確率でヒヨコっぽいのが出てくるけど……」

「食えるか!! いや、本当に……どうすんだよ、この状況……」

 

 

 

 小屋に閉じ込められてから、たぶん体感で三十分くらいが経過した。

 

「どうしよう……今日は駄菓子屋に行く約束があったんだけどな……」

 

 オレがそう呟くと、れんげが首を傾げる。

 

「駄菓子屋? 駄菓子買うのん?」

「いや、楓ちゃんが通販で頼んだスキーの用具セットが今日届くらしくてさ。倉庫にしまうから人手が欲しいんだって」

「スキーは冬にやる物では?」

「中古品らしい。今は時期じゃないし、相場よりかなり安く買えるんだって言ってた」

「ほうほう……」

 

 黙ってると、どうしても悪い想像ばかり浮かんでくる。だから無理やり会話を続ける。

 約束すっぽかしたら、楓ちゃん怒るかな……。いや、家に帰ってないと分かれば、顔色変えて本気で探してくれるはずだ。

 ……オレじゃなくて、れんげの方を。

 

 ――ぐぅ~……

 

 腹が鳴った。

 時間的に、いつもおやつを食べてる三時過ぎくらいだろうか。

 

「よっくん、野菜食べるん?」

 れんげはそう言いながら、きゅうりをポリポリ齧ってる。オレにも一本差し出してきた。

 

「いやいや、そのまま食うと腹壊すからやめとけって。熱湯で消毒するとか、せめて水道でちゃんと洗わないと……」

「水道、外にあるのん」

 れんげが小屋のすぐ外にある蛇口を指さす。

 

「……え?」

 一拍置いて、嫌な想像が頭をよぎる。

 

「……これ、水も飲めない状況ってこと……?」

 

 思ってた以上にヤバい。

 オレの見積もり、全然甘かった。全身から血の気が引いていく。

 

「お水だったら、あそこにありますん」

 そう言ってれんげが指さしたのは、簡易ウォーターサーバー。

 

「……あ……よかったぁ……」

 一瞬焦ったけど心底ホッとした。こんな炎天下で三日も水が飲めないとか、本気で命に関わる所だった。

 

 ――が。

 

 排水口、小さくね?

 

「……これ、口つけて水出すやつじゃん……」

 ウサギとか、にわとりとかが、絶対口つけてるやつじゃん……。

 野菜以上に衛生的にアウトじゃん……。

 

 オレは考えるのをやめ――

 

 ……あれ?

 

「おい……うそだろ……!」

 

 極限状態を自覚した瞬間、緊張が一気にきた。

 腹が痛い。トイレ行きたい。

 

 しかも――大きい方。

 

「トイレなら、あそこに」

 れんげが指さしたのは、目隠しも仕切りもない、動物用の湿った土の区画。

 

「できるかあぁ!!」

 

 ついに我慢できず叫んだ。

 

「もうやだああああああああああ!!!」

 

 あんまりだろぉ!

 オレが何したって言うんだよおおおお!

 

「よっくん!? 落ち着くん! よっくん! しっかりするん! よっくん!? よっくぅぅん!!」

 

 半狂乱になりかけた、その時だった。

 

「ここにも、もろこし発見! 焼却炉で焼いて、焼きもろこしにしよっと」

 

 小屋の外から、聞き覚えのある声。

 

 先生だ。

 

 さっきれんげが道に置いたもろこしを、次々拾いながら歩いてくる。その横には――例の逃げたウサギの姿があった。

 

「なぁに? お前も食べたいの? いいぞぉ、たらふくお食べ」

 

 先生はもろこしを一本置き、もぐもぐ食べるウサギを優しく見つめて――そこでようやく、小屋の中のオレ達に気づいたらしい。

 

「キミ達も食べます? もろこし?

 ところで、なんでウサギみたいに真っ赤な目してるの?」

 

「見事にエサで釣れました……うちの姉々が……」

 

 助かった……。

 本当に助かった……。

 

 ……が、れんげは、何とも言えない複雑な顔をしていた。

 

 

 

 

 ウサギ小屋から無事に救出されたあと、オレとれんげは二人で駄菓子屋に行った。

 

「いらっしゃい」

 カウンターの奥から、楓ちゃんが顔を出す。

 

「楓ちゃん、待たせてごめん」

「別に待っちゃいないが……今日はれんげも一緒か?」

 

 声色は普段通りなのに、れんげを見た瞬間、明らかに目の色が変わった。

 この人、ほんと分かりやすい。

 

「まあ、二人で九死に一生を得たからね。絆が深まった記念に、打ち上げってことで連れてきた」

「深まりましたん!」

 

「……こいつと連んでるとバカがうつるぞ。お前も、れんげに変なこと教えんなよ」

 

 いやいや、楓ちゃんや。

 れんげは、オレが何か教えるまでもなく、既に独特の価値観を完成させてると思う。

 

 れんげは店の外に置かれたガチャガチャに興味を示し、じっと見つめていた。

 

「お、それはすごいヤツだぞ。腕時計が出る」

「ウチ、知ってるん。こういうのは腕時計が出ると見せかけて、変なのが出るん」

 

 な!と圧をかけるように楓ちゃんを見る。

 

「……いや、出るかもしれないだろ、腕時計……」

「カプセルが黒くて中身見えないのが証拠なのん」

「いや、それはそういう物なだけで……」

 

 れんげはふいっとオレを見る。

「よっくんが百円まで奢ってくれる約束だから、こんな物に使うのは勿体ないん!」

 

「おいよしお、どうせ奢るならケチくさい制限つけんなって」

「分かってないな、楓ちゃん。あえて制限をつけることで、れんげに金銭感覚を養わせてるんだよ」

 

「……ちっ、よしおのくせに真っ当なこと言いやがって」

 

 楓ちゃん的には、いっぱい買ってもらえた方が嬉しいんだろうけどな。

 生憎、オレの財布にも限界はある。

 

「しかし、インチキ扱いは納得いかんな」

「嘘だと思うなら、駄菓子屋がやってみるのん」

「いいぜ。時計出たら金払えよ」

「ハズレだったら楓ちゃん持ちだからそのつもりでね」

 

 念のため釘は刺しておく。

 楓ちゃんは「上等だ」と言ってガチャガチャに百円を入れ、レバーを回した。

 

 出てきた黒いカプセルを開けると――

 中身は『つくしんぼ君(絶叫ver)』。

 

 ……誰だよ。

 

 絶叫verってことは通常版もあるんだろうか。

 集める気は一ミリも起きないが。

 

「……すまん」

「やっぱり思った通りだったのん」

 

 楓ちゃんは手元のガラクタを見て素直に謝り、れんげは勝ち誇った顔で店内へ入っていった。

 

 店の中で、れんげはさくらんぼ餅(三十円)を手に取る。

「駄菓子屋! これ! いくらなのん?」

 

 ウキウキしたれんげに対して楓ちゃんは、にやっと悪い顔をして答えた。

「それか? それは高いぞ。三十万だ」

「高い!? ウチ、もっと安いと思ってたん……」

 

 本気でショックを受けた顔で、れんげは駄菓子をそっと棚に戻す。

 

「……別のにするん……」

 

 流石に罪悪感が湧いたのか、楓ちゃんが訂正する。

 

「嘘だよ。三十円だ」

「騙された!? なんでさっきからウチを騙そうとするん!」

「別に騙してねぇだろ……」

 

 楓ちゃんが困った顔をしたので、ここは一言いっておく。

 

「楓ちゃん、そういうのはダメだよ。あんまりやると、れんげが疑い深くて臆病な子になるぞ……オレみたいに、ね♪」

 ちょっとカッコつけて言った。

 

「……スカートめくりとかやってたクソガキが、何言ってんだよ」

「……昔の話だって。今は奥ゆかしいんだぜ、オレ」

 

「? よっくん、確か少し前に、こまちゃんのスカートを――」

「ちょっ、待て待て!」

 

 ヤバい。

 そういえば“あの時”、れんげもいたんだった。

 慌てて口を塞ぐ。

 

「相変わらずだな……お前」

「アレは事故なんだって!」

 

「あと、この前の肝試しの時も、このみ姉に――」

「やめろぉぉ!!」

 

 二度目の口封じ。

 姉ちゃん、あの時の事れんげに話したんかい!

 

「お前……、流石に実の姉に手を出すのは、どうかと思うぞ」

 

 楓ちゃんの目が、完全にゴミを見る目になっていた。

 

「だから事故なんだって……」

 

 くそ……。

 カッコつけたつもりが大火傷だ。

 

 そんな中、れんげが時計を見て、はっとした顔になる。

 

「もうすぐ四時! グレートマンが始まるん! 駄菓子屋! そこのテレビで見て良いん!?」

 

 レジ横の小さなテレビを指さす。

 

「ここ狭いし、奥の居間で見るか?」

 

 れんげに甘い楓ちゃんは迷いなくそう言って、れんげを中に招いた。

 

 よし、オレもここに来た目的を果たすか。

 

「楓ちゃん、荷物届いてる? 倉庫に運ぶよ」

「悪いな、いつもの場所だ。頼んだ」

 

 れんげがテレビに夢中なうちに終わらせよう。

 そう思って、店の裏へ回った。

 

 

 ――約三十分後。

 

 

「よし、終わった」

 

 スキー道具の入った段ボールを運び、ついでに倉庫を軽く掃除して戻る。

 

 れんげは煎餅を齧りながら、番組に釘付けだった。

 

「楓ちゃん、終わったよ。少し整理もしといた」

「お、サンキュー。これでも食って休んでいけ」

 

 お茶と煎餅が出てくる。

 

「いただきます」

 

 れんげがいるせいか、楓ちゃんの優しさがいつもより三割増しだ。ありがたくいただく。

 

 番組は、グレートマンが怪人を倒し、スタッフロールが流れた。

 

「ふぅ、面白かったん!」

「れんげ、そろそろ帰らないと暗くなるぞ」

「分かったん!」

 

「遅くなりそうだし、れんげは私が送ってく」

 

 楓ちゃんは迷いなくヘルメットを出し、バイクの準備を始めた。

 

 あ、そうだ。

 

「楓ちゃん、はい」

 そう言って、二百円を渡す。

 

「何の金だ?」

「れんげに奢るつもりだった分。オレも煎餅ご馳走になったし、それ含めた代金ってことで」

 

「いらん気を回すな。あの煎餅は売り物じゃねぇ」

「あ、ごめん。厚意に水を差しちゃったかな……」

 

 商売人としてのプライドってヤツか。

 さすが楓ちゃん、カッコ良い。

 

「まあ、くれるって言うならもらっておくが……」

 

 金の前じゃプライドは紙切れらしい。

 さすが楓ちゃん、カッコ悪い。

 

 楓ちゃんは、れんげをバイクに乗せてそのまま店を後にした。

 今日はもう店を閉めるみたいだ。

 

 辺りも暗くなってきたし、オレも家に帰ろう。

 

 色々あったが、今日も、楽しい一日だった。




アニメ第七話。教室場面は女子達の空間で、よしおには卓のような超スキルがないから出る幕なし。ウサギ小屋場面は、れんげと蛍の話でよしおがいたらノイズになる。駄菓子屋場面はれんげと楓の話でよしおがいたら(ry。
なので当初第三話のようにカットしようと思ったけど、ウサギ小屋の相方を蛍からよしおに変える事を思いついて掲載。その勢いで駄菓子屋場面まで書く事が出来ました。
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