のんのんびより ― ある田舎男子の日常 ― 【ばけーしょん編更新中】 作:NIZI
アニメ二期・第八話の、みんな大好きカレー事件のお話です。
工作はカットした。よしおではハッキリ言って、卓の技術力にはついていけない……。
今回は過去編なので閑話扱いで。
幼さゆえに、いつもより自重しないよっくんを生暖かい目で見守ってやってください。
それは、今から五年前のある朝のことだ。
分校の教室で起きた、にぎやかで、少しばかり騒がしい出来事である。
「やっすみじかーん! やっすみじかーん!」
当時小学二年生だった越谷夏海が、椅子から飛び降りる勢いで両手を振り回している。全身からあふれる元気は、最初から「じっとする」という選択肢を持っていない。
「よっくん! 一緒に積み木しよー!」
「積み木か。よし、わかった。卓も一緒にやるか?」
声をかけられた富士宮よしおは、十歳になったばかりの小学四年生だ。得意げに胸を張りつつ、隣の席へ視線を送る。
「……(コクリ)」
越谷卓は、短く頷いた。夏海の兄で、よしおと同じ小学四年生。口数は少ないが、動きは無駄がない。
夏海の手によって、床には色とりどりの積み木が広げられていく。その少し離れた席では、別種の平穏が流れていた。
「えへへ……小吉さーん……」
小学三年生の越谷小鞠が、くまのぬいぐるみ――“小吉さん”と名付けたそれを両手で抱きしめ、陶然と見つめている。
「小鞠ちゃん、学校にぬいぐるみを持ってきちゃダメじゃない……」
やんわり注意したのは、よしおの姉である富士宮このみ。中学一年生だ。
「先生に見つかったら没収されるぞ?」
低めの声で続けたのは、年少組から“駄菓子屋”と呼ばれている加賀山楓。当時は中学三年生で、頬杖をつきながら半ば呆れた表情をしていた。
「先生も、授業中に遊ばなければいいって言ってたよ!」
小鞠はきっぱり言い切る。本人なりに、規則は守っているつもりらしい。
「ふーん。ところで、ひかげは今日は休みか?」
楓の一言で、教室の動きが一瞬止まった。
「さぁ? 風邪でもひいたのかな?」
このみは首をかしげる。だが、昨日の様子を思い返すと、どうにも現実味がない。
「昨日は、あんなに元気だったのにな……」
よしおも腕を組む。あの騒がしさを思えば、心配より違和感の方が先に立った。
「まあ、あれだな。今日の給食はカレーだし、ひかげの分も食べられるな」
楓が、さらりと本音を落とす。
「ちょっと、ひかげちゃんの心配もしてあげなよ」
「じゃあ、このみはおかわり無しだな」
「それはダメ! 私もカレー、たくさん食べたいもん!」
嗜める側だったこのみは、カレーの話題が出た途端、あっさり態度を崩した。
「確かに、ひか姉だけ食べられないのは可哀そうだな……。よし、帰りにお供えしに行こう!」
「なんか、死んだみたいな言い方だな……」
神妙な顔で言葉選びを誤ったよしおに、楓が眉をひそめる。
「よっくん、それよりさ。お腹いっぱい食べて『美味しかったよ』って報告してあげた方が、きっとひかげちゃんも喜ぶと思うよ♪」
このみが、悪戯っぽく笑いながら軌道修正する。
「そうだな! さすが姉ちゃん!」
「どう見ても煽ってるよな、それ……」
楓は隣席の友人の手管に、小さくため息をついた。
ひかげの安否より、カレーの行方。
この日の分校では、その優先順位がやけに明確だった。
そのとき、教室のドアが勢いよく開いた。
「ういーっす!」
姿を現したのは、噂の人物――宮内ひかげ。小学五年生である。
「お! ひか姉! おっはよー!!」
よしおはひかげの顔を見るなり、大型犬さながらの勢いで駆け出した。
その背中を、このみは一瞬だけ目で追い、すぐに興味を失ったように視線を外す。
「ふん!」
「ぐはっ! な、なんで今日は前にランドセルが……!? ガクリ……」
「ったく、危ねぇだろ……」
ひかげは背負うのではなく、腹側に抱えたランドセルで見事にガードしていた。
弾かれたよしおは、時代劇の斬られ役のような大仰な動きで床へ倒れ込む。
「お、噂をすれば。ずいぶん余裕の登校だな?」
「いやぁ、ちょっとゴタゴタがあって遅れた……」
よしおの即興寸劇など意にも介さず、一同は会話を続けていた。
「ひか姉、遅刻か!?」
今度は積み木を広げていた夏海が立ち上がる。
「いいじゃんか、別に……」
「いーっけないんだ♪ いっけないんだ♪ せーんせーに言っちゃーおう♪」
「子供か!」
「子供だろ」
夏海の言動にツッコミを入れるひかげと、それをさらに上から指摘する楓。
「あ! ひか姉の後ろに、なんかいる!」
夏海が、ひかげの背後に違和感を見つけた。
「だぅー!」
ひょこっと顔を出したのは、ひかげの妹・宮内れんげ。当時、推定一歳の赤ん坊である。
「おお! 動いてる! すごーい!」
「ちょっと、ひかげちゃん! 学校にそんなもの持ってきちゃダメじゃない!」
「先生に見つかったら没収されるぞ?」
「アンタら、ウチの妹をなんだと思ってる……」
赤ん坊をぬいぐるみ同然に扱うクラスメイト達に、ひかげは深く息をついた。
「お! れんげじゃん。ちーっす!」
「だーう!」
よしおは既に顔見知りらしく、気軽に挨拶を交わす。
事情を聞けば、親が急に熱を出して病院へ行くことになり、やむを得ず学校で預かる流れになったらしい。
「それで遅刻したんだ……」
「そんな事情なら、休めばよかったじゃん」
「それはダメ! 今日の給食はカレーだから休めない!」
「ちっ、覚えてたか……」
結局、話はそこへ戻る。それだけカレーは、彼らにとって重大案件だった。
「ってわけで、はい。駄菓子屋!」
「え?」
「先生がさ、一番年長者の駄菓子屋が世話係やれって言ってた」
ひかげは楓に向かって、れんげを差し出す。
「はぁ!? なんだよそれ! こういうのは、このみが適任だろ!?」
「そう言われてもな。先生が決めたことだし」
「おい、このみ……」
楓は助けを求めるように視線を向けたが――。
「それじゃあ、みんなこっちにおいでー♪ 邪魔にならないように、一緒に遊ぼうねー♪」
「おい! 逃げんな!!」
完全に受け流された。
そんな中、よしおが輪の中から一歩前へ出る。
「楓ちゃんが嫌なら、オレが面倒見よっか?」
「よしお? 良いのか!?」
楓の顔には、露骨な安堵が浮かんだ。
「ふふん、任せろ!」
「……お前はダメだ。前に任せたとき、れんげを落としてただろ」
ひかげは即座に却下する。
「大丈夫だって! 前は一回しか落とさなかったじゃん!」
「まぁ一回だけなら……ってなるか! その一回でアウトなんだよ。向こう行ってろ!」
「しょんなー……」
しっしと追い払われ、よしおはしょんぼりしながらこのみたちの元へ戻っていった。
気を取り直し、ひかげは楓に改めて頼み込む。
「そんな訳でアイツには任せられないし、よろしく頼むよ、年長者♪」
「そう言われてもな……」
「ほらほら、抱っこしてみ?」
「抱っこと言われても……子供とか苦手なんだが……大丈夫か?」
「大丈夫、大丈夫!」
半ば強引にれんげを託され、楓は恐る恐る抱き上げた。その瞬間――。
「あーう、あうあう……だーう!」
れんげは、加えていたおしゃぶりが床に落ちるのも構わず、楓の胸に、はむっとしゃぶりついた。
「んな!? 噛まれた!?」
「お、れんげは気に入ったものを噛む癖があるんだ。よかったじゃん、気に入られたみたいで」
「よくない! ベタベタだ……。服、洗ってくる……!」
楓はれんげをそっと床に下ろし、足早に廊下へ出る。
「あ、待ってよ、駄菓子屋! 私も落ちたおしゃぶり洗わないと……待ってよ!」
ひかげも慌てて追いかけた。
そして――。
教室の真ん中に、れんげがぽつんと取り残された。
れんげは、きょろきょろと周囲を見回すと、教室の中央では夏海が積み木の塔と真剣勝負を繰り広げていた。
小さな手で、一段、また一段。慎重に、しかし確実に積み上げていく。
「これ、最高記録いけそう! 見てて、見てて!」
「すごいよ、なっちゃん! がんばれー!」
誇らしげに振り返る夏海に、このみは目線を合わせるようにしゃがみ込み、ぱちぱちと手を叩く。
よしおも腕を組み、感心したように何度もうなずいた。
その時だった。
床に座っていたれんげが、むくりと立ち上がった。
「お、れんげが立った!」
よしおが目を丸くする。
「あれ? あの二人、赤ちゃんほったらかしでどこ行ったの? もう……」
このみは教室内を見回したが、楓とひかげの姿は見当たらない。
「こっち来た!」
「へぇ、この子、もう歩けるんだ!」
れんげは小さな足で、よち、よち、と歩き出す。転びそうで転ばない、奇跡のようなバランス感覚だった。
「おーい、こっちおいでー」
このみはしゃがんだまま両手を広げる。どうやら母性本能を刺激されたらしい。
「あ、来た来た! かわいい……あれ?」
だが、れんげはこのみの腕に飛び込まず、すっと真横を通り過ぎた。その進行方向にあったのは――。
「夏海ちゃん、最高記録達せ――」
歓喜の言葉が最後まで届くことはなかった。
「だーう!」
れんげのボディプレス。積み木の塔は、無惨にも四散した。
ぱらぱら、がしゃん。乾いた音を立て、積み木が床へと崩れ落ちる。
「うー、きゃっきゃ♪ だーう♪」
れんげは崩壊現場の中心でご機嫌だ。両手をばたつかせ、まるで偉業を成し遂げたかのように笑っている。
一方、夏海は――。
「ウチの……最高記録……」
時間が止まったように、崩れた積み木を見つめていた。
「ウチの! 最高記録がぁぁぁ!!」
堰を切ったように、涙があふれ出す。
「あと一個だったのに! どういうことぉ!!」
教室に、大号泣が響き渡った。
「うおおっ! なっちゃん、泣かないで! いないいない、ばぁっ……!」
よしおが慌てて顔の前で手を振る。
「それで泣き止む年齢じゃないと思うよ、よっくん」
このみの冷静なツッコミが入る。そもそも、赤子相手でも成功率は高いとは言えない。
そんな中、小鞠がきりっとした表情で一歩前へ出た。
「夏海、それくらいで泣かないの! 家に帰ったら、お菓子半分分けてあげるから!」
「……えっ。マジで!?」
涙がぴたりと止まる。お菓子の力は偉大だった。
「おお、さすがお姉さんだね。えらいよ、小鞠ちゃん!」
「やるな……今回はオレの負けにしといてやる……」
「いつの間に勝負になってたの……?」
なぜか敗北宣言をするよしおに、このみは肩をすくめる。対して、小鞠は得意げに胸を張った。
「ふっふん! 私もう三年生だもん! これくらい――」
言葉は、そこで途切れた。
小鞠の視線の先では、れんげがくまのぬいぐるみ――小吉さんを、しゃぶっていた。
やがて飽きたのか、れんげはそれをぽいっと放り投げる。
床に落ちた小吉さんは、見るも無惨な姿だった。
「小吉さん小吉さん! 小吉さんがぁぁぁ!!」
今度は小鞠の悲鳴が教室に響く。
「ああ、小鞠ちゃん! 落ち着いて!」
このみが慌てて宥める。
その様子を見て、よしおは卓に声をかけた。
「卓、トーテムポールをするぞ! 手を貸せ!」
「……!(こくり)」
突然の連携。卓が膝を構え、よしおがその上に足を乗せる。
卓が腰を支え、よしおは両腕を翼のように広げた。
即席の二人組体操、その完成である。
「それ! どうだ、小鞠ちゃん! いつもより前に出てるぜ!」
「よっくん、すげー!」
尚も泣き続ける小鞠を余所に、夏海はすっかり元気を取り戻した様子だ。
「すごいけど、それで泣き止む状況じゃないと思うよ、よっくん」
このみの的確なツッコミが、再び教室に落ちた。
そこへ、廊下から戻ってきた二人が足を止める。
「なんだなんだ? どうした!?」
崩れた積み木、床に転がるぬいぐるみ、泣き叫ぶ小鞠。中央で展開される謎の組体操。
楓は理解を放棄したように頭を抱えた。
「あ、ひか姉! 楓ちゃん! どう? トーテムポール! すごいだろ!」
卓に支えられたまま、よしおは得意満面だ。
「すごいな……それはすごいけど、何がどうなってるんだ?」
ひかげは額に手を当てた。状況説明を求めているのは、全員同じである。
「ちょっと、いろいろあって……」
このみは曖昧に答えた。説明するには、出来事が濃すぎた。
――そのときだった。
「あっ……ぶべっ!!」
調子に乗って前へ傾きすぎたよしおを、卓は支えきれなかった。
よしおは、そのまま顔から床へと落下する。
「よっくん!? 大丈夫!?」
このみがすぐに駆け寄る。
「痛ってぇ……! ったく、ちゃんと支えろよ……な!?」
文句を言いながら仰向けになったよしおは、途中で言葉を失った。
視界いっぱいに広がる、思わぬ光景。
倒れた位置から、彼の目線には、極上の光景が広がる。
(あかしろきいろ♪ きれいだな♪*1 卓、ありがとう! 最高の景色だ!」
よしおの頭の中で、どこかで聞いた歌が流れる。
そして人生最大級の感謝を、卓に捧げた。
なお、その感動が表に出ている自覚は、本人にはなかった。
「……おわっ!」
「こいつ……油断も隙もねぇな!」
「よっくん……ひょっとして、狙ってた?」
ひかげは慌ててスカートを押さえ、楓は一歩引く。
このみは静かにしゃがみ込み、倒れたままのよしおの顔を右手でがっちり掴んだ。
伝家の宝刀――アイアンクローである。
「んなっ!? しまった……声に出てた……!?」
ようやく事態を理解したときには、すでに遅かった。
楓とひかげの耳にも、しっかりと届いている。
「最後に、言い残すことはそれでいい?」
このみは笑顔のままだ。だが、指先に込められる力は確実に増していた。
楓とひかげも拳を握り、完全に臨戦態勢である。
「え? 最後になっちゃうの!? えっと……みんな、感動をありがとう! 卓、お前のおかげだ! だからオレと一緒に死んでくれ!」
――ドカッ! バキッ! ボコッ! グチャッ!
制裁は、当然のように一人分だった。
数秒後。
床には、さきほどまで絶景に酔っていた少年が、見る影もなく転がっている。
「すーくん、汚いから片付けておいてね♪ このゴミクズを♪」
笑顔のまま告げるこのみ。
「……!(こくこくこく……!)」
卓は滝のような汗を流しながら、全力でうなずいた。逆らうという選択肢は存在しない。
「よっくん、大丈夫!? 目を覚ましてよ! よっくうん!」
「夏海、近づいちゃダメ!」
駆け寄ろうとする夏海を、小鞠が慌てて止める。
今のよしおには、色々な意味で触れてはいけなかった。
卓は、ぐったりとしたよしおを背負い、静かに保健室へと向かったのだった。
一同が、保健室へ向かった卓とよしおを見送った直後のことだった。
「……あれ? れんげがいない?」
ひかげの視線が教室をさまよう。その一言で、空気が凍りつく。
「うそ!? さっきまで、ここにいたのに!? もしかして廊下に出ちゃった!?」
このみの顔色が、みるみる青ざめていく。
「えっ!? 戻ってくる時、見なかったぞ!?」
楓も思わず声を上げた。
「別の方向に行ったのかも……とにかく、探さなきゃ……!」
ひかげはそう言い残し、勢いよく廊下へ飛び出した。
全員が、その背中を追う。
「あっ! 向こうにいた! 配膳室の方だ!」
角を曲がる小さな影を、楓が捉えた。
ひかげは息を切らしながら、れんげを追って配膳室へ駆け寄る。
「……ったく、世話かけさせやが――って、ええ!?」
扉を開けた瞬間、目に飛び込んできた光景に、言葉を失った。
「それは……大おかず!? カレーに何するつもりだ!?」
配膳室の中央には、巨大なアルミ製の大鍋。
本日の給食の主役、カレーが入っているはずの鍋である。
その取っ手にしがみつき、小さな体でぐいぐいと引っ張っているのが――れんげだった。
「どうした!?」
「れんげが……カレーを人質――いや、カレー質に!」
駆け寄った楓は、その説明を聞いて首をかしげる。
「……何言ってるんだ? って、危ないっ!」
「れんげ!? ストップ、ストーップ!!」
ひかげの必死の叫びは、ほんのわずかに間に合わなかった。
どばあああ――。
鈍い音とともに鍋が傾き、次の瞬間、黄金色の海が床一面へと広がった。
配膳室は、一気にスパイスの香りに包まれる。
食欲をそそる匂いが、皮肉にも悲劇を際立たせていた。
騒ぎを聞きつけ、他の面々も次々と集まる。
そして、目の前の惨状を見て、全員が言葉を失った。
床一面に広がるカレー。
本日の給食の主役は、無惨にも流れ落ちていた。
「だう? あむ……! うまうまうー!」
張本人であるれんげは、床のカレーをちょんと触り、それを口へ運ぶ。
次の瞬間、ぱあっと満面の笑みを浮かべた。
――無邪気。
あまりにも無邪気。
その対照として、周囲の空気は完全にお通夜だった。
「……カレーが……」
「……たのしみに、してたのに……」
越谷姉妹の声が、かすかに震える。
「カレーカレーカレぇぇぇ!! ずっと楽しみにしてたカレーがぁぁぁ!!」
二人の絶叫が、廊下中に響き渡った。
「ててて……何の騒ぎだ……って、カレーがぁぁぁ!!」
そこへ、ふらつきながら現れたのは、復活したよしおだった。
「吸うぞ、みんな!!」
状況を把握した瞬間、別の意味で叫ぶ。
「えっ!?」
全員が困惑する中、よしおは床に這いつくばった。
黄金の海へ、一直線。
だが――。
「おい、やめろ!!」
「やめなさい!」
「よっくん! ダメだって!」
四方八方から、制止の声と腕が飛ぶ。
ひかげが肩を掴み、楓が反対側を押さえる。
このみは襟首を引き、小鞠と夏海が必死に腕を引っ張り、卓も無言で阻止に加わった。
「うるせー! もったいねーだろ! オレ達のカレーぇぇ!!」
よしおは必死に抵抗する。
「よっくん、お願い! 人としての尊厳は捨てないで!!」
このみの切実な訴えが、廊下に虚しく響いた。
「うまうまうー!」
その足元で、れんげは床のカレーをぺちぺちと叩き、ご満悦である。
こうして。
初登校にして給食を壊滅させた宮内れんげは、全員の心を打ち砕き、学校を制圧したのだった。
よしおの他者への呼称は基本的に、このみとひかげの影響を多分に受けています。
れんげをちゃん付けで呼んでいないのも、ひかげの影響です。
でもそれが、今の対等な関係に繋がっているようで、作者的にはしっくりきています。
裏設定として、よしおは当初、楓のことをひかげの影響で「駄菓子屋」と呼んでいました。
ですが、小二の時のスカートめくり騒動をきっかけに「楓ちゃん」呼びに。
楓は理由を知ったあと、なんとも言えない微妙な心境になったそうです。
原作でも、キャラごとの呼称をまとめると、関係性の考察が捗って、それだけで時間が潰れますね。